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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1256801
審判番号 不服2011-4855  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-03 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2006- 30422「時刻認証要求機能付き画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-214720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、
平成18年2月8日付けの出願であって、
平成19年2月20日付けで審査請求がなされ、
平成22年6月4日付けで拒絶理由通知(同年同月15日発送)がなされ、
同年8月10日付けで意見書が提出されると共に、
同日付けで手続補正書が提出され、
同年12月1日付けで拒絶査定(同年同月7日発送)がなされ、
平成23年3月3日付けで審判請求がされると共に、
同日付けで手続補正書が提出されたものである。

なお、
平成23年3月25日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
同年10月20日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月25日発送)がなされ、これに対して
同年12月13日付けで回答書が提出されている。



第2.平成23年3月3日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年3月3日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成23年3月3日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記の<本件補正前の特許請求の範囲>から、下記<本件補正後の特許請求の範囲>に補正しようとするものである。

<本件補正前の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
文書を読み取って画像信号を生成する画像読取手段と、前記画像読取手段で読み取った画像信号にタイムスタンプを付与して記憶手段に保存する制御手段とを備えた時刻認証要求機能付き画像読取装置であって、
タイムスタンプを付与して保存する文書の種類を選択する文書種類選択手段を備え、前記制御手段が、前記文書種類選択手段で選択された文書種類に基づいて、文書種類に応じた保存先に当該文書を保存するとともに、文書名を識別できる文字列と通番を組み合わせて当該文書を保存する際のファイル名を作成することを特徴とする時刻認証要求機能付き画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載された時刻認証要求機能付き画像読取装置において、
文書の種類ごとに保存期間が指定されていることを特徴とする時刻認証要求機能付き画像読取装置。

<本件補正後の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
文書を読み取って画像信号を生成する画像読取手段と、前記画像読取手段で読み取った画像信号にタイムスタンプを付与して記憶手段に保存する制御手段とを備えた時刻認証要求機能付き画像読取装置であって、
タイムスタンプを付与して保存する文書の種類を選択する文書種類選択手段を備え、前記制御手段が、前記文書種類選択手段で選択された文書種類に基づいて、文書種類に応じた保存先に当該文書を保存するとともに、文書種類に応じた文書名を識別できる文字列と通番を組み合わせて当該文書を保存する際のファイル名を作成することを特徴とする時刻認証要求機能付き画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載された時刻認証要求機能付き画像読取装置において、
文書の種類ごとに保存期間が指定されていることを特徴とする時刻認証要求機能付き画像読取装置。」


2.本件補正の目的・独立特許要件について
本件補正は、補正前の請求項1における「文書名」を「文書種類に応じた文書名」に変更して下位概念化する補正である。そして、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。
したがって、本件補正の目的は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに該当し、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる事項(以下、「限定的減縮」と記す。)を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。


2-1.本件補正発明
本件補正発明は、上記1.に記載した、<補正後の特許請求の範囲>に【請求項1】として記載したとおりのものである。


2-2.先行技術文献の記載内容

(1)引用文献記載事項
原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年6月4日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)


<引用文献1>
特開2005-123980号公報(平成17年5月12日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項1】
原稿を読み取ってデジタルデータを生成する原稿読取手段と、
前記デジタルデータの時刻認証を要求し、該時刻認証が行われた時刻情報を取得する時刻認証要求手段と、
前記時刻情報と対応付けられた前記デジタルデータを保存先に保存するよう制御する保存制御手段とを備えた画像処理装置。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0038】
暗号化されたタイムスタンプとデジタルデータをセットにし、ユーザが操作パネル上(図15参照)で設定した保存方法(オプション選択肢)で、保存サーバ105に保存する(ステップS23)。保存後、保存先のポインタをMFP102に返信する(ステップS24)。この後、本処理を終了する。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0073】
さらに、MFPが大容量のデータ記憶装置を備える場合、タイムスタンプおよびデジタルデータを保存サーバに保存する代わりに、MFP自体が保存するようにしてもよい。」


<引用文献2>
「スキャナ別 紙文書を一気にPDF文書にするコツをつかむ」,アスキー.PC,株式会社アスキー発行,2005年8月1日発行,第8巻 第8号,p.23?28

<引用文献記載事項2-1>
『スキャン完了後、終了を告げるメッセージ画面が表示され、そこで[完了]を押すと、左画面が表示される。サムネイルをダブルクリックすれば、拡大表示も可能だ。標準設定ではファイルは「マイ ピクチャ」フォルダに保存されるが、●8(黒地の丸の中に8と言う白文字が配置された文字フォントを表す。以下同様。)[参照]から設定変更もできる。』(第25頁第1段?第2段)

<引用文献記載事項2-2>
『「マイ ピクチャ」フォルダ以外を指定してPDFファイルを保存することもできる。文書の種類毎にフォルダを作成して保存すればスキャン後のファイル管理が容易になる』(第25頁中段右側の図面の下部)

<引用文献記載事項2-3>
「ファイル名の設定」ウインドウを示す図であって、「先頭文字」という文字の右の入力フィールドに「雑誌切り抜き」との文字列が入力されていることを示す図(第26頁左側中段の図面)

<引用文献記載事項2-4>
『「ファイル名の設定」ウインドウが開くので、●8[自分で名前を付けます]をオンにして、連番の前に付くファイル名を●9に入力。OKをクリックしてウインドウを閉じる。』(第26頁左側中断の図面の下部)


(2)参考文献記載事項
本願の出願前に、頒布された刊行物である下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<参考文献1>
特開2005-45774号公報(平成17年2月17日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【0007】
また、特許文献2は、関連する一連のイメージ(画像データ)が入力されると、その一連のイメージにファイル名として名称と連番を付与するデータ登録方法を提案している。この時、同一のカテゴリに属するデータであることを示すファイル名の名称とデータ数が入力され、この名称とデータ数に基づいてフィル名としてその名称に連番が付与されるデータ登録方法を開示している。」

<参考文献記載事項1-2>
「【0049】
図7は、スキャナ1で原稿を読み取り、読み取った画像データのファイルにファイル名を自動的に付与して格納先に送信するフローを示すフローチャートである。ユーザがスキャナ1を操作して原稿を読み取らせる際、画像データのファイルを格納するフォルダを最初に選択する必要がある。そのため、読み取り操作が開始されると、S51(ステップ51)で、スキャナ1の操作部4にフォルダ一覧が表示される。図示しないが、このフォルダ一覧には既に登録されているフォルダのフォルダ名と、それに対応するファイル名の共通部分と、格納先(例えばファイルサーバ10や図示しない内部記憶装置)の情報が含まれる。S52で、希望するフォルダが存在しない場合は、原稿の読み取り・ファイル送信作業を一旦中止して、図6で説明した、新規フォルダの登録作業を行う。S52で、格納するフォルダが存在する場合は、S53で、フォルダ一覧からそのフォルダを選択する。」

<参考文献記載事項1-3>
「【0059】
以上説明したシングルページモードとマルチページモードとも、S70に分岐した時点で、原稿にそれぞれ対応する画像データがデータ蓄積部23に一時的に保存されている。これらの画像データのファイル化を行うために、S70では、シングルページモードかマルチページモードかの判定が行われる。シングルページモードの場合は、S71に移行し、一時的に保存されている画像データが1つずつファイルに変換されて、S80で、そのファイルに、S53で選択された格納先フォルダに対応するファイル名称の共通部分が与えられる。更に、S81で、格納先フォルダに存在するファイルのファイル名から最大番号が取得され、S82で、そのファイルに、共通部分と最大番号の次の番号とが付加記号で接続されて、ファイル名として付与される。最後に、S83で、こうしてファイル名が付与されたファイルが格納先フォルダに送信されて保存される。この繰り返しが、一時的に保存されている画像データ全てに対して行われる。
【0060】
S70で、マルチページモードの場合は、S72に移行し、一時的に保存されているそれぞれの画像データがまとめられて1つのファイルに変換され、S80で、そのファイルに、S53で選択された格納先フォルダに対応するファイル名称の共通部分が与えられる。更に、S81で、格納先フォルダに存在するファイルのファイル名から最大番号が取得され、S82で、そのファイルに、共通部分と最大番号の次の番号とが付加記号で接続されて、ファイル名として付与される。最後に、S83で、こうしてファイル名が付与されたファイルが格納先フォルダに送信されて保存される。なお、複数の画像データを複数のページからなる1つのファイルに変換する場合、各画像データをマルチパートMIME形式でエンコードし、それらを1つのファイルとして保存する方法や、PDF形式のファイルを使用して1つのファイルにする方法や、マルチページTIFF形式などの従来のファイル形式を使用する方法でも良いし、専用のファイル構造と形式を定義して使用しても良い。」


<参考文献2>
特開2002-199334号公報(平成14年7月12日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【請求項1】 撮影して得られた画像データをDCF規格に対応したファイル管理構造で記録媒体に記録する電子カメラ装置において、
前記記録媒体に前記DCF規格に対応したファイル管理構造で記録されたディレクトリに対して、前記DCF規格に規定されない形態の仮想ディレクトリ名を入力設定する入力手段と、
この入力手段で入力設定された仮想ディレクトリ名を記録名称とし、該仮想ディレクトリ名と、この仮想ディレクトリ名に対応する前記DCF規格に対応したディレクトリの名称とを対応させた仮想ディレクトリ管理用ファイルを作成して前記記録媒体に記録する記録手段と、
特定のキーを操作することにより、前記入力手段で入力設定された仮想ディレクトリ名の一覧リストを画面表示させる表示手段と、
この表示手段で表示された仮想ディレクトリ名の一覧リストから、所定の仮想ディレクトリ名を選択する選択手段と、
この選択手段で選択した仮想ディレクトリ名に対応する前記DCF規格に対応したディレクトリに、撮影して得られた画像データを記録する制御手段とを具備してなることを特徴とする電子カメラ装置。」


<参考文献3>
特開平7-110814号公報(平成7年4月25日出願公開)

<参考文献記載事項3-1>
「【0002】
【従来の技術】従来、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、あるいはワードプロセッサ等によって作成された電子文書を電子文書記憶装置にファイリングする際に先立って、ユーザは、手作業で電子文書に分類付けを行う。そして、この分類に基づいて、電子文書は、電子文書記憶装置等にファイリングされていた。上記従来の電子文書記憶装置は、上記電子文書をファイリングする際に、通常のファイルをキャビネットや書棚に格納する際の手法を模倣していた。たとえば、電子文書記憶装置にキャビネットやバインダーに相当するフォルダ(格納場所)を備え、ユーザは、このフォルダ毎に格納可能な電子文書の種類を定め、この分類規則にしたがって、電子文書のファイリングあるいは検索を行なっていた。」


<参考文献4>
特開2002-169715号公報(平成14年6月14日出願公開)

<参考文献記載事項4-1>
「【請求項1】デジタルデータファイルのファイル内容を表示するファイル名を生成するためのデータファイル名生成システムにおいて、データファイルのデータ内容を表現する第1?第nキーワードを選択するキーワード選択手段と、選択した前記第1?第nキーワードを加算して連結文字列を作成する加算キーワード作成手段と、作成した連結文字列と同一文字列に付与されている最大シリアル番号Xに1を加算したシリアル番号を付与するシリアル番号付与手段と、予め登録した文字列連結生成ルールテーブルに基づいて連結文字列とシリアル番号とを連結したファイル名文字列を生成出力する文字列生成手段を備え、該文字列生成手段から生成出力されるファイル名文字列をデータファイル名として登録付与することを特徴とするデータファイル名生成システム。」

<参考文献記載事項4-2>
「【0041】
【発明の効果】本発明のデータファイル名生成システムは、電子データ化したデータファイルの内容が即座に判るように、データファイルの1つ1つに識別可能な異なるファイル名を付与することができ、デジタルデータ(電子データ)化したデータを、コンピュータメモリや電子記録媒体にファイル化して保管する際に、そのファイル名を、その電子データの内容に適応したキーワードをキーワードリストの中から選択し、また順位付けして選択することにより、多数のデータファイルの1つ1つに対して付与すべきファイル名に意味付けをすることができる効果がある。」


2-3.引用発明の認定

(1)引用文献1には引用文献記載事項1-1のとおりの
「原稿を読み取ってデジタルデータを生成する原稿読取手段と、
前記デジタルデータの時刻認証を要求し、該時刻認証が行われた時刻情報を取得する時刻認証要求手段と、
前記時刻情報と対応付けられた前記デジタルデータを保存先に保存するよう制御する保存制御手段とを備えた画像処理装置。」が記載されている。

(2)引用文献記載事項1-2、1-3からみて、該「保存先」を「MFP自体」すなわち「画像処理装置」自体とすることも、引用文献1に開示されている。


(3)よって、引用文献には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「原稿を読み取ってデジタルデータを生成する原稿読取手段と、
前記デジタルデータの時刻認証を要求し、該時刻認証が行われた時刻情報を取得する時刻認証要求手段と、
前記時刻情報と対応付けられた前記デジタルデータを保存先に保存するよう制御する保存制御手段とを備えた画像処理装置であって
該保存先は該画像処理装置自体である画像処理装置。」


2-4.対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は、「原稿読取手段」「を備えた画像処理装置」であるから、本件補正発明と同様に「画像読取装置」と言えるものである。

(2)引用発明における「原稿読取手段」は、本件補正発明における「画像読取手段」に対応付けられるものであるところ、前者は「原稿を読み取ってデジタルデータを生成する」ものであるから、後者と同様に「文書を読み取って画像信号を生成する画像読取手段」であると言える。

(3)引用発明における「時刻認証要求手段」及び「保存制御手段」は、本件補正発明における「制御手段」に対応付けられるものであるところ、前者は「前記デジタルデータの時刻認証を要求し、該時刻認証が行われた時刻情報を取得」し、「前記時刻情報と対応付けられた前記デジタルデータを」「画像処理装置自体」「に保存するよう制御する」ものであるから、後者と同様に「前記画像読取手段で読み取った画像信号にタイムスタンプを付与して記憶手段に保存する制御手段」であると言える。

(4)よって、本件補正発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「文書を読み取って画像信号を生成する画像読取手段と、前記画像読取手段で読み取った画像信号にタイムスタンプを付与して記憶手段に保存する制御手段とを備えた時刻認証要求機能付き画像読取装置。」

<相違点1>
タイムスタンプを付与して保存する文書の種類を選択する文書種類選択手段を備え、前記制御手段が、前記文書種類選択手段で選択された文書種類に基づいて、文書種類に応じた保存先に当該文書を保存する点。
(これに対して、引用文献1には原稿の「種類」を「選択」することや保存先でどの「フォルダ」(本件補正発明における「保存先」)に保存するのかは開示されていない。)

<相違点2>
文書種類に応じた文書名を識別できる文字列と通番を組み合わせて当該文書を保存する際のファイル名を作成する点。
(これに対して、引用文献1には「保存先」での「ファイル名」を如何にするのかは開示されていない。)


2-5.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
情報の保存に際して、その保存先のフォルダを選択可能と構成することは当業者の常套手段に過ぎないものであり(必要があれば引用文献2(特に引用文献記載事項2-1)、参考文献1(特に参考文献記載事項1-2)、参考文献2(特に参考文献記載事項2-1)等参照。)、また、フォルダは保存すべき情報の種類に対応して作成されるのが普通である(必要があれば引用文献2(特に引用文献記載事項2-2)、参考文献3(特に参考文献記載事項3-1)等参照。)から、引用発明における「保存制御手段」においても、「原稿」の種類に応じたフォルダを選択可能とし、該選択されたフォルダにデジタルデータを保存するすることは、当業者であれば通常採用する構成に他ならない。
そして、該「原稿」の種類に応じたフォルダを選択可能に構成することは、「タイムスタンプを付与して保存する文書の種類を選択する文書種類選択手段を備え」ることに他ならず、該選択されたフォルダにデジタルデータを保存することは「前記文書種類選択手段で選択された文書種類に基づいて、文書種類に応じた保存先に当該文書を保存する」ことに他ならない。
してみると、引用発明において、上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者であれば通常採用する事項に過ぎない。

(2)相違点2について
入力された情報の保存に際して、該情報名を識別可能な文字列と通番の組合わせで保存することも当業者が適宜に採用している周知慣用技術に過ぎない。(必要があれば引用文献2(特に引用文献記載事項2-3、2-4)、参考文献1(特に参考文献記載事項1-1、1-2、1-3)、参考文献4(特に参考文献記載事項4-1、4-2)等参照。)
したがって、引用発明においても「文書種類に応じた文書名を識別できる文字列と通番を組み合わせて当該文書を保存する際のファイル名を作成すること」すなわち上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者であれば適宜に採用し得る設計的事項に他ならない。

(3)してみると、本件補正発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


2-6.請求人の主張について
(1)請求人は審判請求書の【請求の理由】の「(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(d)本願発明と引用文献に記載された発明との対比」において、引用文献2記載のものに対し「本願発明では、文書の種類を選択すれば、自動的に文書の保存先が決定されるとともに、自動的にファイル名が作成されるので、文書の保存先を指定する必要がなく、かつ、ファイル名設定の手間がかからない、という効果を奏することが可能となる」旨の主張をしているので、この点について検討する。

(2)本件補正発明における「文書種類選択手段」による「選択」と「制御手段」による「保存」に関しては、請求項1には「前記制御手段が、前記文書種類選択手段で選択された文書種類に基づいて、文書種類に応じた保存先に当該文書を保存する」とあるのみで、「文書種類選択手段」における具体的な表示態様や選択手順等が限定されているわけではない。
したがって、本件補正発明における「文書の種類」の「選択」と、引用文献2記載のものにおける「設定変更」による「保存先」の変更との間に、格別な相違は無く、これを相違点とする請求人の主張は失当である。
また、参考文献2(特に参考文献記載事項2-1)記載の如き「仮想ディレクトリ名」の技術が、本願出願前に知られていたことを考慮すると、本件補正発明における「文書種類選択手段」の「選択」が、フォルダを直接選択することを意味するのではなく、フォルダに関連付けられた用語などを一覧表示し選択し、これを基に「保存先」のフォルダを自動的に決定することを意味していると仮定しても、この点に進歩性を認め得るものではない。

(3)本件補正発明における「ファイル名」の「作成」に関しては、請求項1には「文書種類に応じた文書名を識別できる文字列と通番を組み合わせて当該文書を保存する際のファイル名を作成する」とあるのみで、「自動的にファイル名が作成される」旨の記載は無い。
したがって、本件補正発明における「ファイル名」の「作成」と、引用文献2記載のものにおける「ファイル名」の「入力」とが、格別相違するものとは言えず、これを相違点とする請求人の主張も失当である。
また、「ファイル名」の「作成」を自動で行うことも、参考文献1(特に参考文献記載事項1-2、1-3)等に示される如く周知技術に過ぎないものであるから、仮に本願請求項1に「自動的にファイル名が作成される」旨の限定が加わったとしても、この点に進歩性を認め得るものではない。


2-7.小結
以上のとおりであるから、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.むすび
以上述べたように、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続きの経緯、本願発明の認定
本願の手続きの経緯は上記第1.記載のとおりのものであり、さらに、平成23年3月3日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
したがって、本願の特許請求の範囲は、上記第2.1.に記載した、<補正前の特許請求の範囲>に記載のとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は該<補正前の特許請求の範囲>に【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.引用文献の記載内容・引用発明の認定
原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年6月4日付けの拒絶理由通知における特許法第29条第2項についての拒絶理由において引用された上記引用文献1には、上記第2.2-2.記載の引用文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記第2.2-3.で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
上記第2.2.で検討した本件補正発明は、本願発明に対し上記第2.2.で述べた限定的減縮をしたものであるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当する。
そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明は、上記第2.2-5.に記載したとおり、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も同様の理由により、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
上記のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-01 
結審通知日 2012-03-06 
審決日 2012-03-22 
出願番号 特願2006-30422(P2006-30422)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
殿川 雅也
発明の名称 時刻認証要求機能付き画像読取装置  
代理人 西岡 義明  
代理人 川崎 勝弘  

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