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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1256811 |
審判番号 | 不服2011-8225 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-18 |
確定日 | 2012-05-07 |
事件の表示 | 特願2008-260399「発光ダイオ-ドユニット、照明器具、及び発光ダイオ-ドユニットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月22日出願公開、特開2010- 93008〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成20年10月7日の出願であって、平成22年7月16日付け拒絶理由通知に対し、平成22年10月15日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたところ、平成23年1月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月18日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされ、同年11月30日付けで審尋が通知されたが、指定された期間内に応答がなされなかったものである。 2.本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成23年4月18日付け手続補正により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のものである。 「【請求項1】 表面に電源配線がプリントされた基板に、該基板を貫通する複数の孔部を設け、 前記基板の裏面にヒートシンクを配設し、 その底面に放熱部材を備える複数の発光ダイオードチップを前記基板の複数の孔部の各々内に挿入し、 前記複数の発光ダイオードチップの各々の底部の放熱部材と前記ヒートシンクとを接合し、 前記基板上の電源配線と、該電源配線と面一の、前記発光ダイオードチップの電極端子とを電気的に接続してなる、 ことを特徴とする発光ダイオードユニット。」 3.引用刊行物の記載 原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2007-200727号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決にて付したもの。以下同じ。)。 (1)「【0002】 従来から、図14に示すように、LEDチップ10’と、LEDチップ10’が実装された実装基板20’と、実装基板20’におけるLEDチップ10’の実装面側でLEDチップ10’を囲んだ枠体40’と、枠体40’の内側でLEDチップ10’および当該LEDチップ10’に電気的に接続されたボンディングワイヤ14’,14’を封止した封止樹脂材料(エポキシ系樹脂またはシリコーン系樹脂)からなる封止部50’とを備えた発光装置1’が提案されている(特許文献1参照)。なお、上記特許文献1には、LEDチップ10’として青色光を放射するものを用い、封止部50’にYAG蛍光体を含有させておくことにより、白色発光が可能となることが記載されている。 【0003】 上述の発光装置1’は、実装基板20’を、熱伝導性材料(例えば、Cu,Alなど)からなりLEDチップ10’が実装される伝熱板21’と、伝熱板21’の一面側に積層されるガラスエポキシ基板からなり伝熱板21’側とは反対の表面側にLEDチップ10’への給電用の一対のリードパターン23’,23’が設けられるとともにLEDチップ10’を露出させる窓孔24’が形成されたガラスエポキシ基板からなる配線基板22’とで構成してある。したがって、上述の発光装置1’では、LEDチップ10’で発生した熱を配線基板22’を介さずに伝熱板21’を通して放熱できるので、放熱性が高いという利点を有している。 【0004】 ところで、上述の発光装置1’を照明器具の光源として用いる場合、各LEDチップ10’のジャンクション温度が最大ジャンクション温度を超えないように各LEDチップ10’への入力電力を制限する必要があるので、図15に示すように、複数の発光装置1’の接続関係を規定する導体パターンを有する回路基板200’として、上記導体パターンが形成されるとともに伝熱板21’を通す開口窓204’が形成されたガラスエポキシ基板を用い、各リードパターン23’,23’と回路基板200’の上記導体パターンとを半田からなる接合部220’,220’を介して接合し、伝熱板21’を金属製の器具本体100’に接触させることで放熱性を高めることが考えられる。 【0005】 しかしながら、上述の照明器具では、伝熱板21’がCuやAlなどの金属により形成されている場合には、耐雷サージ性を確保するために、実装基板20’と金属製の器具本体100’との間にサーコン(登録商標)のような絶縁性を有するゴムシート状の放熱シートを挟む必要があり、伝熱板21’および器具本体100’と放熱シートとの間に空隙が発生して熱抵抗が増大したり発光装置1’ごとにLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗がばらついてしまうので、光出力の高出力化が難しかった。また、上記特許文献1には、伝熱板21’の材料として、金属材料以外に非金属材料を採用することも記載されているが、伝熱板21’と器具本体100’との互いの対向面の平面度に起因して両者の間に空隙が発生してしまい、熱抵抗が増大してしまうという不具合があった。 【0006】 そこで、発光装置1’の実装基板20’と器具本体100’とを熱伝導性に優れたグリーンシートを用いて固着することでLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗を低減するとともに発光装置1’ごとのLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗のばらつきを低減することが考えられる。」 (2)上記(1)【0003】の記載を踏まえて図14をみれば、伝熱板21’は、発光装置1’の底面に設けられていることが理解できる。 なお、図14は、次のとおりである。 (3)上記(1)【0004】の記載を踏まえて図15をみれば、器具本体100’は、回路基板200’の接合部220’,200’が設けられている面とは反対側の面に設けられているものと認められる。 なお、図15は、次のとおりである。 4.引用発明 上記3.によれば、引用刊行物には、 「発光装置1’を光源として用いる照明器具であって、 上記発光装置1’は、LEDチップ10’と、LEDチップ10’が実装された実装基板20’と、実装基板20’におけるLEDチップ10’の実装面側でLEDチップ10’を囲んだ枠体40’と、枠体40’の内側でLEDチップ10’および当該LEDチップ10’に電気的に接続されたボンディングワイヤ14’,14’を封止した封止樹脂材料からなる封止部50’とを備え、 上記発光装置1’は、実装基板20’を、熱伝導性材料からなりLEDチップ10’が実装される伝熱板21’と、伝熱板21’の一面側に積層されるガラスエポキシ基板からなり伝熱板21’側とは反対の表面側にLEDチップ10’への給電用の一対のリードパターン23’,23’が設けられるとともにLEDチップ10’を露出させる窓孔24’が形成されたガラスエポキシ基板からなる配線基板22’とで構成してあり、それによって、上記発光装置1’では、LEDチップ10’で発生した熱を配線基板22’を介さずに伝熱板21’を通して放熱できるので、放熱性が高いという利点を有し、 複数の発光装置1’の接続関係を規定する導体パターンを有する回路基板200’として、上記導体パターンが形成されるとともに伝熱板21’を通す開口窓204’が形成されたガラスエポキシ基板を用い、各リードパターン23’,23’と回路基板200’の上記導体パターンとを半田からなる接合部220’,220’を介して接合し、伝熱板21’を金属製の器具本体100’に接触させることで放熱性を高め、 発光装置1’の実装基板20’と器具本体100’とを熱伝導性に優れたグリーンシートを用いて固着することでLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗を低減するとともに発光装置1’ごとのLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗のばらつきを低減し、 伝熱板21’は、発光装置1’の底面に設けられ、 器具本体100’は、回路基板200’の接合部220’,200’が設けられている面とは反対側の面に設けられている照明器具。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 5.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「複数の発光装置1’の接続関係を規定する導体パターンを有する回路基板200’」は、本願発明の「表面に電源配線がプリントされた基板」に相当する。 (2)引用発明は、「伝熱板21’を金属製の器具本体100’に接触させることで放熱性を高め」るものであるから、引用発明の「器具本体100’」は、本願発明の「ヒートシンク」に相当する。さらに、引用発明は、「器具本体100’は、回路基板200’の接合部220’,200’が設けられている面とは反対側の面に設けられている」ことから、引用発明は、本願発明の「前記基板の裏面にヒートシンクを配設し」との構成を有する。 (3)引用発明の「開口窓204’」は、「複数の発光装置1’の接続関係を規定する導体パターンを有する回路基板200’」に形成されるものであって、発光装置1’に設けられる伝熱板21’を通すものであるから、「複数の発光装置1’」それぞれについて複数形成されるものと解される。したがって、引用発明は、本願発明の「表面に電源配線がプリントされた基板に、該基板を貫通する複数の孔部を設け」との構成を有する。 (4)本願明細書及び図面に記載の構成のうち、本願発明の「前記基板の複数の孔部の各々内に挿入」される「発光ダイオードチップ」に対応するものは、本願明細書の【0028】に「LED103は、基板101の孔部104の内部に挿入され」と記載されていることから、「LED103」であると認められる。 本願図面において、「LED103」として図示されているものの形状が、砲弾型であること(図2、図3(b)参照)、本願明細書の【0025】に「LED103は、…2本の電極端子103bを有している。」と記載されているところ、本願図面の図1、図3(a)に図示された「電極端子103b」は、チップ上に形成された電極ではなく、LED103から突出する細長い形状のものであることから、本願明細書及び図面に記載の「LED103」すなわち本願発明の「発光ダイオードチップ」は、発光ダイオードチップそのものではなく、発光ダイオードチップを備えた素子であり、本願発明の「発光ダイオードチップの電極端子」は、発光ダイオードチップそのものの上に形成された電極ではなく、発光ダイオードチップに接続された電極端子であると解される。 そうすると、引用発明の「LEDチップ10’…を備えた発光装置1’」及び「給電用の一対のリードパターン23’」は、本願発明の「発光ダイオードチップ」及び「発光ダイオードチップの電極端子」にそれぞれ相当する。 (5)引用発明の「伝熱板21’」は、本願発明の「放熱部材」に相当する。さらに、引用発明の「伝熱板21’」は、「発光装置1’の底面に設けられ」るものであり、上記(2)でみたように、「複数の発光装置1’」それぞれについて形成されるものと解される「開口窓204’」に通されるものであることから、引用発明は、本願発明の「その底面に放熱部材を備える複数の発光ダイオードチップを前記基板の複数の孔部の各々内に挿入し」との構成を備える。 (6)引用発明は、「発光装置1’の実装基板20’と器具本体100’とを熱伝導性に優れたグリーンシートを用いて固着することでLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗を低減するとともに発光装置1’ごとのLEDチップ10’から器具本体100’までの熱抵抗のばらつきを低減する」ものであるところ、「実装基板20’」は、「伝熱板21’」と「配線基板22’とで構成してあ」るものであるから、「発光装置1’の実装基板20’と器具本体100’とを熱伝導性に優れたグリーンシートを用いて固着する」と、複数の発光装置1’の各々の「伝熱板21’」と「器具本体100’」とが固着されるものと認められ、引用発明は、本願発明の「前記複数の発光ダイオードチップの各々の底部の放熱部材と前記ヒートシンクとを接合し」との構成を有する。 (7)本願発明の「前記基板上の電源配線と、該電源配線と面一の、前記発光ダイオードチップの電極端子とを電気的に接続してなる」との構成について、本願明細書には対応する記載はないが、本願の図1、図3(a)を参照すると、上記構成は、「前記基板上の電源配線と、該電源配線と平行な方向に延びる前記発光ダイオードチップの電極端子とを電気的に接続してなる」というほどの意味であると解される。 引用発明は、「(配線基板22’に設けられた)各リードパターン23’,23’と回路基板200’の上記導体パターンとを半田からなる接合部220’,220’を介して接合」するものであるから、本願発明の上記構成を有するものといえる。 (8)以上によれば、両者は、 「表面に電源配線がプリントされた基板に、該基板を貫通する複数の孔部を設け、 前記基板の裏面にヒートシンクを配設し、 その底面に放熱部材を備える複数の発光ダイオードチップを前記基板の複数の孔部の各々内に挿入し、 前記複数の発光ダイオードチップの各々の底部の放熱部材と前記ヒートシンクとを接合し、 前記基板上の電源配線と、該電源配線と面一の、前記発光ダイオードチップの電極端子とを電気的に接続してなる、 ことを特徴とする発光ダイオードユニット。」 で一致し、実質的な相違点はない。 6.請求人の主張について (1)請求人は、審判請求の理由の(3)(C)b)において、以下の旨主張する。 「 3)ここで、本願発明と、引用文献2(審決注、特開2007-200727号公報(審決における引用刊行物)を指す。)の図15の装置とを比較するに、 1. 本願発明では、LEDチップ単体を、それぞれ複数の穴を設けた回路基板の該各穴内にそのまま挿入し、該LEDチップの底面側はその底部の放熱部材をヒートシンク上に直接接触させ、該LEDチップの表面側は該チップからそのまま露出する電極端子を上記回路基板の配線パターンに直接接触させているのに対し、引用文献2の図15の装置は、引用文献2の図14に示すLEDチップを1つ有する発光装置1’を形成したのち、該単体LEDよりなる発光装置1’を複数用いて引用文献2の図15に示す照明装置を形成しているものであり、 2. したがって、照明装置において用いるLEDは、本願発明のLEDチップ単体103そのものと、引用文献2の図14の、LEDチップをワイヤボンディングおよび樹脂封止等して形成した発光装置1’とで全く異なるものであります。特に、回路基板200’の開口に丁度嵌まる大きさであるのは、本願発明では、LEDチップ単体103そのものであるが、引用文献2の図15の構成では、LEDチップを搭載している伝熱板21’(実装基板20’)であって、LEDチップ10’ではありません。このように、LED発光装置単体は、本願発明と、引用文献2の図15とでは、その構成も製法も全く異なるものである。(したがって、本願発明の図3で示される構成は、到底、引用文献2の図15の構成から、当業者であっても決して容易に得られるものではない。) 3. このように、本願発明では、その構成、製造方法が、きわめて簡易、簡潔であるのに対し、引用文献2の図15の装置は、その構成がきわめて複雑であり、製造方法もきわめて複雑である。 4. 本願発明では、照明ユニットの全体の簡易な構成により、放熱性がよく、高出力の照明装置を構成できるが、引用文献2の図15の装置では、そのきわめて複雑な構成により、放熱性も良いものとはなっていない。 このように本願請求項1?3の構成は、引用文献2の図15の装置の構成とも、全く異なるものであり、したがって、本願請求項1?3の発明は、該引用文献2に基づいても決して当業者が容易に発明できたものではない。 」 請求人の上記主張について検討するに、前記5.(4)で検討したように、本願発明の「発光ダイオードチップ」は、本願明細書及び図面から、発光ダイオードチップそのものではなく、発光ダイオードチップを備えた素子であると解されるものであって、上記の「照明装置において用いるLEDは、本願発明のLEDチップ単体103そのものと、引用文献2の図14の、LEDチップをワイヤボンディングおよび樹脂封止等して形成した発光装置1’とで全く異なるものであります」、「特に、回路基板200’の開口に丁度嵌まる大きさであるのは、本願発明では、LEDチップ単体103そのものである」との主張は、本願明細書及び図面の記載に基づかないものである。 (2)また、請求人は、審判請求の理由の(3)の末尾において、 「本願発明は、その出願時点の段落(0034)ないし(0037)および図4に、従来のLEDユニットとともに本願発明のLEDユニットの発光開始後のジャンクション温度の変化が開示されており、従来のLEDユニットを構成するLEDが図6に示されるようにLEDチップであることを考慮すれば、本願発明のLEDユニットを構成するLEDもLEDチップであると考えられ」 とも主張しているが、図6に示されたLEDがLEDチップであるかどうかは明らかでなく、また、従来の発光ダイオードユニットの構成を示す図6の「LED503R、503G、503B」の形状と、本願発明の発光ダイオードユニットの構成を示す図2及び図3(b)の「LED103」の形状は異なっているのであるから、図6をもって本願発明の「LED103」がLEDチップそのものであると理解することはできない。 したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。 なお、原審において通知された拒絶の理由は、本願発明が引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものであるが、請求人は、本願発明と引用刊行物に記載された発明とを対比して相違点について意見書及び審判請求書において意見を述べているところである。 7.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-05 |
結審通知日 | 2012-03-06 |
審決日 | 2012-03-27 |
出願番号 | 特願2008-260399(P2008-260399) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 道祖土 新吾 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
北川 創 稲積 義登 |
発明の名称 | 発光ダイオ-ドユニット、照明器具、及び発光ダイオ-ドユニットの製造方法 |
代理人 | 早瀬 憲一 |
代理人 | 早瀬 憲一 |