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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C |
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管理番号 | 1256853 |
審判番号 | 不服2009-12621 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-07-10 |
確定日 | 2012-05-09 |
事件の表示 | 特願2003-541613「カプセル製品を製造する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月15日国際公開、WO03/39727、平成17年 3月31日国内公表、特表2005-508265〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、2002年10月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年11月2日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年4月20日付けで拒絶査定がされ(発送日:同年4月24日)、これに対し、同年7月10日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。これに対し、当審において平成23年1月28日付けで拒絶理由を通知したところ(発送日:同年2月1日)、応答期間内である同年7月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 本願の各請求項に係る発明は、平成23年7月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 固体フィルム形成材料からカプセル封入に適したフィルムを作製する装置であって、 a)少なくとも一つのキャスティングドラムと、 b)前記キャスティングドラム上への前記フィルム形成材料の付着/押出しのレートのための、溶融されたフィルム形成材料に関する要求量を供給可能とするのに十分な量の溶融されたフィルム形成材料を提供するレートで、前記フィルム形成材料を要求に応じて連続的に溶融する手段であって、発熱する格子状の構造体を備える前記フィルム形成材料を溶融する手段と、 c)ポンプ手段と、 d)前記ポンプ手段の下流側に配置された押出デバイスであって、チャンバおよび押出スロットを備える押出デバイスと、を備え、 前記押出デバイスは、前記押出スロットが前記キャスティングドラムの中心から半径方向に延びる直線と交差するように配置されていることを特徴とする装置。」 2.引用例等及びその記載事項 当審で通知した拒絶理由に引用文献1として引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭62-207460号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (A)「本発明は薬剤あるいは栄養剤等をゼラチンシートによってカプセル状に包装したものを製造する装置において、カプセルを製造するにあたってその前段で必要とされるゼラチンシートの成形装置に関するものであって、特にシート成形にあたり用いられる冷却装置に係るものである。」(第1頁左下欄第15行?右下欄第1行) (B)「本発明は以上述べたような装置として具体化されているものであって、以下この作動状態について説明する。 i)ゼラチンシートSの成型 ゼラチンシートSの成型にあたっては、まずゼラチンタンク5内の充分溶融したゼラチンが供給ホース6のバルブ7が開放されることによってスプレダーボックス10に供給されるのである。このときスプレダーボックス10内にゼラチンが貯留していない場合にはフロートバルブ14が開放した状態であるから、順次スプレダーボックス10内をゼラチンで満たすように溶融したゼラチンが流入するのである。そして一定量ゼラチンが流入した際にはフロートバルブ14が閉じ、一定の液面でスプレダーボックス10が満たされるのである。このような状態で調整堰板12が適当な位置に調整されると、その調整堰板12の下端部と本体11の下端部との間に形成される吐出孔16から一定の幕圧で溶融ゼラチンが流出し、そこに臨む冷却ドラム30の表面にゼラチンが塗布されるようになるのである。尚この際このゼラチンの厚みの設定が極めて重要であり、そのためにはダイヤル20によって調整ロッド18を回動させ、これによって調整堰板12の本体11に対する設定高さを調節し吐出孔16の開口寸法を設定する。即ち調整ロッド18はその下端部の当接端部21が本体11側の基準端22に当接した状態であり、これを捻じ込むことによって調整堰板12側のメネジ部19が昇降し調整堰板12の設定がなされるのである。そしてこの設定数量はダイヤルゲージ26によって数値として表されてくるのである。従って数値的に種々のデータを具えておけばゼラチンシートSの幕圧調整等はその数値に頼った設定ができ、いわゆる熟練した作業者でなくとも設定が可能になり、好ましいものである。このようにして冷却ドラム30の表面に吐出されたゼラチンシートSは回転する冷却ドラム30の表面と充分接触した後、冷却されてフィードロール40に送り出される。この冷却ドラム30における冷却は冷凍機ユニット38からの冷却媒体、例えば冷却液あるいはフロンガス等の冷媒が冷却媒体供給ホース32からカップリング34を介して冷却ドラム30内の冷却媒体吐出管35から冷却ドラム30内に放出され、更にそれが回収してゆくことにより冷却ドラム30が充分に冷却される。そしてこの冷却ドラム30の表面に吐出されてきたシート伏のゼラチンがそこで熱交換され、充分な冷却がされて希望する粘度状態でカプセル成型部3に供給されてゆくのである。」(第4頁右下欄第15行?第5頁左下欄第6行) (C)第4図、第5図及び第8図からみて、吐出孔16は、冷却ドラム30の中心から半径方向に延びる直線と交差するように配置されていることが看て取れる。(中心から半径方向に延びる直線とは、中心から放射状に延びる無数にある直線と解されるから、そのような直線群の中には吐出孔16と交差する直線が必ず存在する。) 図面と共に、上記記載事項(A)?(C)を総合すると、引用例1には、 「ゼラチンからゼラチンシートを成形する装置であって、 少なくとも一つの冷却ドラム30と、 吐出孔16を備えるスプレダーボックス10と、を備え、 前記スプレダーボックス10は、前記吐出孔16が前記冷却ドラム30の中心から半径方向に延びる直線と交差するように配置されている装置。」に関する発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明でいう「ゼラチン」は、本願発明でいう「フィルム形成材料」に相当し、以下同様に、「冷却ドラム30」は「キャスティングドラム」に、「スプレダーボックス10」は「押出デバイス」に、「吐出孔16」は「押出スロット」に、それぞれ相当する。 また、記載事項(A)にあるように、引用例1には、ゼラチンシートによってカプセル状に包装する点が記載されているから、引用発明において「ゼラチンシート」を「成形」することは、本願発明において「カプセル封入に適したフィルム」を「作製」することに相当する。 さらに、引用例1における第4図から、引用発明における「スプレダーボックス10」は、その中に溶融したゼラチンを保持する室を備えていることが看て取れるから、本願発明における「チャンバ」を備えていることが明らかである。 (2)上記の対比関係からみて、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「フィルム形成材料からカプセル封入に適したフィルムを作製する装置であって、 少なくとも一つのキャスティングドラムと、 チャンバおよび押出スロットを備える押出デバイスと、を備え、 前記押出デバイスは、前記押出スロットが前記キャスティングドラムの中心から半径方向に延びる直線と交差するように配置されている装置。」 [相違点1] 本願発明では、固体であるフィルム形成材料を溶融するために「前記キャスティングドラム上への前記フィルム形成材料の付着/押出しのレートのための、溶融されたフィルム形成材料に関する要求量を供給可能とするのに十分な量の溶融されたフィルム形成材料を提供するレートで、前記フィルム形成材料を要求に応じて連続的に溶融する手段であって、発熱する格子状の構造体を備える前記フィルム形成材料を溶融する手段」を備えているのに対して、引用発明では、溶融したゼラチンを冷却してゼラチンシートを成形しているものの、ゼラチンを溶融する手段については記載されていない点。 [相違点2] 本願発明では、ポンプ手段を備えており、そのポンプ手段の下流側に押出デバイスが配置されているのに対して、引用発明では、ポンプ手段を備えていない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 樹脂等を溶融しそれを成形する技術において、発熱する格子状の構造体を備えた溶融する手段は、周知である(例えば、当審で通知した拒絶理由に引用文献5として引用された米国特許第3010147号明細書に記載された「melting grid 37」、同じく引用文献6として引用された特開昭50-36553号公報に記載された「加熱盤4」、「加熱突起7」、「格子状の通路8」、「ヒーター9」、同じく引用文献7として引用された実公昭15-6357号公報に記載された「抵抗桿(4)」を列植した「底面(3)」などを参照)。そして、引用発明において、ゼラチン(フィルム形成材料)を溶融する手段について記載されていないものの、フィルム形成材料を溶融させた状態を長く続けることはエネルギーの観点からも材料劣化の観点からも望ましくはないことは当業者にとって自明の課題といえるから、フィルム形成材料を溶融させた状態を短い時間で済むように上記周知の手段を引用発明に適用しようとすることは、当業者が容易に想到しえたことである。 また、樹脂等を溶融しそれを成形する技術において、成形品が不均一にならないよう考慮することは当然かつ自明の課題であり、押し出しに必要な量を過不足なく供給しようとすることもまた当然かつ自明の課題といえる。そして、このことは引用発明、上記周知例および当審で通知した拒絶理由に引用文献8として引用された特開昭61-92824号公報に記載された技術においても当てはまることである。したがって、周知の手段を引用発明に適用するにあたって、「キャスティングドラム上へのフィルム形成材料の付着/押出しのレートのための、溶融されたフィルム形成材料に関する要求量を供給可能とするのに十分な量の溶融されたフィルム形成材料を提供するレートで、フィルム形成材料を要求に応じて連続的に溶融する」ようにすることに特段の困難性があったものとは認められない。なお、「連続的に」溶融させる点も周知の手段である(例えば、上記周知例のうち、米国特許第3010147号明細書の第3欄第66、67行および第4欄第5、6行の「to flow in a continuous stream」や、特開昭61-92824号公報の第4頁左下欄第4行の「貯室に連続的に供給し」との記載参照)。 以上のことから、上記周知の手段を引用発明に適用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点2]について 樹脂等を溶融しそれを成形する技術において、材料を送り出すために、ポンプ手段を備え、そのポンプ手段の下流側に押出デバイスを配置する点は周知の手段である(例えば、当審で通知した拒絶理由に引用文献2として引用された特開平5-185488号公報における「ギヤポンプ7」と「Tダイ8」との配置関係や、当審で通知した拒絶理由に引用文献8として引用された特開昭61-92824号公報における「ロータリポンプ10」と「ノズル13」との配置関係を参照)。したがって、上記周知の手段を引用発明に適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の奏する作用効果について検討しても、引用発明に記載された事項及び周知の手段から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明に記載された事項及び周知の手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に記載された事項及び周知の手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-30 |
結審通知日 | 2011-12-06 |
審決日 | 2011-12-20 |
出願番号 | 特願2003-541613(P2003-541613) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B29C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 健史、保倉 行雄 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
田口 傑 小関 峰夫 |
発明の名称 | カプセル製品を製造する装置および方法 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 村山 靖彦 |