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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05H
管理番号 1256870
審判番号 不服2010-5211  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-09 
確定日 2012-05-09 
事件の表示 特願2005-518665「プラズマ発生アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日国際公開、WO2004/068916、平成18年 6月 1日国内公表、特表2006-515708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年1月28日を国際出願日(パリ条約に基づく優先権主張 平成15年1月31日及び同年2月24日 英国)とする特願2005-518665号であって、平成21年11月13日付けで拒絶査定がなされ、本件は、これを不服として平成22年3月9日に請求された拒絶査定不服審判事件である。
その後、当審において平成23年5月18日付けで拒絶理由を通知したところ、同年9月6日付けで手続補正書ならびに意見書が提出された。

第2 本願発明
本願に係る発明は、平成23年9月6日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲(補正前の請求項8、9の記載に補正を行うとともに、補正前の請求項7を削除して項番を繰り上げたもの)の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び7に係る発明は以下の【請求項1】及び【請求項7】のとおりであり、また、その請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下の【請求項11】のとおりである。なお、本願発明は、平成23年9月6日付け手続補正前の請求項12に係る発明と相違しない。
「【請求項1】
少なくとも一対の実質的に等間隔に離隔した電極(2)を備え、該電極(2)間の間隔はプロセスガスの導入時にプラズマゾーン(8)を形成するようになっており、必要に応じて、気体、液体及び/または固体前駆物質が通過できる大気圧プラズマアセンブリ(1)において、
前記少なくとも一対の電極(2)は内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え、前記内壁(5、6)は非多孔性の誘電体材料から形成され、前記ハウジング(20)は実質的に、少なくとも実質的に非金属性導電性材料を有し、前記電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更されることを特徴とする、プラズマグロー放電及び/または誘電障壁放電発生アセンブリ。」
「【請求項7】
前記電極(2)はそれぞれ立方形状であり、
前記電極(2)はそれぞれ、前記非金属性導電性材料を封入するようになっているチャンバ(11b)を有するハウジングを備え、
前記電極(2)はそれぞれ、ヒートシンクとしての役割を果たすようになっている金属製の外壁(6a)とは別の一体構造の誘電体材料(67)から形成され、前記チャンバは、前記誘電体材料を前記外壁で封止することにより前記ハウジング内に形成される、請求項1?6のいずれか一項に記載のアセンブリ。」
「【請求項11】
一対の実質的に等間隔に離隔した電極(2)において、
該電極(2)のうちの少なくとも1つは、内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え、
前記内壁(5)は非多孔性の誘電体材料から形成され、
前記ハウジング(20)は、少なくとも実質的に非金属導電性材料を有し、前記電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更されることを特徴とする電極。」

第3 当審において通知した拒絶理由
1 拒絶理由A
当審において平成23年5月18日付けで通知した拒絶理由のうち、拒絶理由Aは、平成23年9月6日付け手続補正前の請求項8に係る発明、すなわち、平成23年9月6日付け手続補正後の請求項7に係る発明(以下「請求項7発明」という。)について、特許法第36条第6項第1号の規定に違反しているという理由を含むものであって、概略、以下の具体的指摘を含むものである。
〈具体的指摘の概要〉
「電極(2)はそれぞれ、ヒートシンクとしての役割を果たすようになっている金属製の外壁(6a)とは別の一体構造の誘電体材料(67)から形成される」という特定事項からして、特に【図5b】に図示されている態様に係る発明と認められるところ、当該態様において、如何にして、電極のそれぞれの機能サイズが「非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更され」得るのか、具体的な態様について明細書に記載がなく、その態様が自明であるとも認められないから、請求項7発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。

2 拒絶理由B、C
また、上記拒絶理由のうち、平成23年9月6日付け手続補正前の請求項12に係る発明、すなわち、本願発明に関する拒絶理由Bは、本願発明は本願出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により拒絶すべきであるというものであり、また、拒絶理由Cは、本願発明は本願出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に発明をすることができたものであるから、本願は特許法第29条第2項の規定により拒絶すべきであるというものであって、前記刊行物は以下のとおりである。
〈刊行物〉特開平3-188285号公報

第4 平成23年9月6日付け意見書の主張
上記拒絶理由A、B、Cに対し、請求人は意見書において、
1 電極の機能サイズは、「誘電体材料を外壁で封止する」際、形成されるチャンバ内の非金属性導電性材料の量によって決定され、電極の機能サイズの変更は、誘電体材料から外壁を取り外し、非金属性導電性材料を、チャンバ内に追加するもしくはチャンバ内から一部を取り除くことにより達成されるから、拒絶理由は解消された旨、
2 刊行物発明の下部電極2は有効面積を可変にすることができないものであるから、「電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される」ものではなく、刊行物発明と本願発明は同一ではない旨、及び、
3 刊行物発明の上部電極7の構成を利用して、下部電極2についても有効面積を可変とすることは技術的に困難であるから、本願発明は刊行物発明に基いて容易に想到できるものではない旨、主張する。

第5 検討・判断
1 拒絶理由Aについて
最初に、請求項7発明が特許法第36条第6項第1項の規定に適合するか否か、すなわち、請求項7発明が明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるか否かについて、上記意見書の主張1を踏まえて検討する。
請求項7発明の「非金属性導電性材料を封入するようになっているチャンバ」は、誘電体材料をヒートシンクとしての役割を果たすようになっている金属製の外壁で封止することによりハウジング内に形成されるものであるから、請求項7発明の非金属性導電性材料は、誘電体材料を外壁によって封止する際に形成されるチャンバ内に封入されるものといえ、封止状態においてチャンバに開口部等が形成されることなく、非金属性導電性材料が当該チャンバ内に封じ込められている発明であるといえる。
ここで、「導入」及び「排出」は、それぞれ、「導き入れること」及び「中にたまっているいらないものを外へ押し出すこと」(「広辞苑」(岩波書店)参照)を意味する言葉であることからして、請求項1を引用する請求項7発明は、チャンバに開口部等が形成されることなく、非金属性導電性材料が封じ込められた封止状態において、非金属性導電性材料をチャンバ内に導き入れたり、チャンバから外に押し出したりすることができるアセンブリであるといえる。
一方、請求項7発明が、図5bに図示され、明細書の【0076】に説明された態様を意図する発明であることは請求人も自認する(平成23年9月6日付け意見書の「(3)ロ)」参照)ところ、そこに図示あるいは説明された態様は、チャンバ内に非金属性導電性材料が封入された封止状態において、非金属性導電性材料をチャンバ内に導き入れたり、チャンバの外に押し出したりすることができるアセンブリではなく、また、明細書の発明の詳細の他の記載を参酌しても、そのようなアセンブリとして拡張して一般化できるような記載ないし示唆を見出すことはできない。そして、請求人は、非金属性導電性材料の導入、排出は、外壁を取り外すことによりなされる旨主張するが、上述の「導入」及び「排出」の意味からして、採用の限りでない上、明細書の発明の詳細な説明には、外壁を取り外して非金属性導電性材料の導入や排出を行うとする記載もない。
そうすると、請求項7発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。

2 拒絶理由Bについて
次いで、上記意見書の主張2を踏まえ、上記拒絶理由Bについて検討する。
(1)引用例
拒絶理由Bにおいて提示した刊行物は、本願の優先日前に頒布された特開平3-188285号公報(以下「引用例」という。)であって、当該刊行物には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 第1頁左下欄第4?16行
「2.特許請求の範囲
(1)エッチング室内において対向配置された一対の電極と、
上記電極内に設けられた空間を複数個に区画して上記電極の内部に導電性液体が供給される小空間を複数個形成する導電性隔壁と、
上記導電性液体を上記小空間に供給する制御を行なって上記導電性液体と上記導電性隔壁とを選択的に接触させ、上記導電性液体と接触している導電性隔壁によって囲まれた部分を上記電極の有効面として機能させる導電性液体供給制御装置とを具備することを特徴とするドライエッチング装置。」
イ 第2頁左下欄第5行?第3頁左下欄第10行
「〈実施例〉
第1図は本発明の一実施例を示すドライエッチング装置の要部断面図であり、この例ではアノードカップル型のドライエッチング装置が示されている。
第1図において、1はベース板、2は下部電極を構成するエッチングステージで、例えば3mm程度の厚さに形成されている。3はウエハ基板、4は下部電極のエッチングステージ2の内部に埋設されていてウエハ基板3を冷却するための冷却管、5aはガス導入管、5bはガス排気管、6はチェンバー側壁、7aはテフロンなどの絶縁体から成る上部電極の下部、7bは絶縁体で囲まれた上部電極の内部であり、ここに例えば水銀などの導電性液体8をためることかできるようになっている。9aは上部電極7の下部絶縁体7aに固定された金属棒、9b?9fは各々上部電極内部7bにおいて、上部電極の下部の絶縁体7a上に設けられた貯液槽であり、実施例では金属の円筒a?dを同心円状に配置してこれらの貯液槽9b?9eを構成している。
10a?10eは給排出管であり、導電性液体8はこれらの内部を通して液体供給制御装置11から各貯液槽9b?9cに供給される。また、各貯液槽9b?9cに貯えられていた導電性液体8が各給排出管10a?10eを通して液体タンク(図示せず)内に排出される。12は流出入管で、この内部を通って絶縁物質が上部電極の内部7bに流出入する。14は上部電極7に接続された高周波数電源である。
実施例のドライエッチング装置はこのように構成されているので、液体供給制御装置11の制御により導電性液体8を供給する貯液槽9b?9eを選択することができ、これにより上部電極7の有効面積を可変することができる。すなわち、例えば第1図に示すように貯液槽9b、9c、9dに導電性液体8を供給すれば、金属の円筒cまで高周波電圧を印加することができる。したがって、第2図の上部電極の平面図において斜線で示すように、金属の円筒cによって囲まれる面積を上部電極7の有効面積とすることができる。このように、実施例のドライエッチング装置は上部電極7の有効面積を自由に変えることができるので、ウエハ基板3の大きさが種々であってもそのサイズに応じた大きさの電極を容易に作成することができる。したがって、ウエハ基板3のサイズに合ったプラズマ形状を容易に得ることができ、ウエハ基板3の大きさが変わっても良好なドライエッチングを常に行なうことができる。(当審注:下線は当審において付加した。)
また、実施例のドライエッチング装置は上部電極7の有効面積が全て金属の円筒a、b、cまたは導電性液体8によって形成される。したがって、上部電極7の有効面積内に導体の不連続な部分がないので、有効面積の全面にわたって均一な磁界を発生することが可能となり、極めて均一なエッチングを行なうことができる。
また、導電性液体8を介して金属の円筒に高周波電圧を印加し、かつ導電性液体8を供給する範囲を変えることにより高周波電圧を印加する範囲の切換えを行なっているので、印加電圧の周波数が高くてもそれによる悪影響はほとんどない。したがって、例えば機械的なスイッチを設けて高周波電圧を印加する範囲を切換える場合と比較して安定した動作が得られる。また、導通不良や焼損などがなく優れた信頼性および耐久性が得られる。
また、実施例では上部電極の内部7bに予め絶縁物質を充填しておき、導電性液体8を上部電極の内部7bに供給した量だけ絶縁物質を電極7の外部に排出するように制御している。したがって、導電性金属8によって導通されない金属円筒に対する絶縁性を良好に保つことができ、高周波電圧が印加されているときに金属円筒間でアーク放電が発生する危険を確実に防止することができる。
なお、上部電極の内部7bを真空にしておけば、物縁物質の充填および排出を行なわなくてもよく、したがって、この場合は給排気管12および流量制御装置13を設ける必要はなくなる。しかし、上部電極7の有効面積を小きざみに変更できるようにするために、金属の円筒の数を増やした場合は各金属の円筒間の間隔が小さくなるので、各導体間でアーク放電が発生する危険がある。また、導電性液体8として使用している水銀が気化した場合、この水銀蒸気を介して不必要な金属円筒が導通してしまう可能性がある。したがって、このように高周波電圧を印加する場合には、本実施例のように電極の内部7bに絶縁物質を充填しておくのがよい。」
ウ 第3頁左下欄第11行?第4頁左上欄第16行
「次に、第3図の断面図に従ってカソードカップル型に構成した実施例を説明する。
第3図において、15はベース板、16aは下部電極16を構成するエッチングステージで、例えばテフロンなどの絶縁体により厚さ3mm程度に形成されている。17は下部電極16a上に載置されたウエハ基板、18は冷却管でありウエハ基板17を冷却するためにエッチングステージ16aの内部に埋設されている。
16bは下部電極の内部で、ここに所望量の導電性液体20をためるようになっていて、その底面は中心部に行くに従って下がる断面V字状に形成されている。19a?19dは下部電極の内部16bに同心状に配置された金属円筒であり、これらの金属円筒19a?19dは上端面がエッチングステージ16aの下面に固定されている。これらの金属円筒19a?19dの上端面は単位電極面として用いられ、それぞれの間に微小な間隙が設けられている。
下部電極の内部16bにためられる導電性液体20は給排出管21を介して供給され、下部電極の内部16b内における液面レベルは貯液量制御装置22によって所定のレベルに制御される。下部電極の内部には給排出管23を介して絶縁性物質が充填され、充填量制御装置24で充填量を制御して導電性液体20の増減に対応させている。
次いで、25は下部電極16に高周波電圧を印加するための高周波電源、26aはガス導入管、26bはガス排気管、27はチェンバー側壁、28は上部電極、29は上部電極28を下部電極16と対向させて支持するとともに、上部電極28を接地するための金属棒である。
このように構成された実施例のカソードカップル型のドライエッチング装置においては、中心に配置された金属円筒19aが長く、中心から遠去かるに従って短く形成されている。このため、下部電極の内部16bにためる導電性液体20の量を貯液量制御装置22で加減することにより任意の金属円筒に高周波電圧を印加することができ、下部電極16の有効面積を可変することができる。すなわち、例えば第3図に示すように金属円筒19cと接触するまで導電性液体20を供給することにより、金属円筒19a、19bおよび19cに高周波電圧を印加することができるようになる。したがって、この場合は金属円筒19cよりも内側の部分を下部電極16の有効面積とすることができる。」
エ 第4頁左上欄第16行?同右上欄第6行
「なお、この実施例では各金属円筒の上端面を電極として使用するので、有効面積内において導電体の不連続部分が生じる。そこで、このような不連続部分が存在することによる電界の不均一が問題となるような精密加工を行なう場合には、下部電極16を第1図に示したように構成して導電性液体20の上面を電極として使用する構成にすれば、カソードカップル型のドライエッチング装置においても有効面積内において導体の不連続部分か生じないようにすることができる。」
オ 第4頁左下欄第13?17行
「本発明のドライエッチング装置はこのように接地側電極の有効面積を変えるようにすることもでき、また、接地側電極および高周波電圧を印加する側の電極の両方の有効面積を変えるようにすることもできる。」
カ 第1図、第2図

キ 第3図


上記ア、イ、カの記載事項及び図示内容からして、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「エッチング室内において対向配置された一対の電極であって、
その上部電極は、テフロンなどの絶縁体から成る下部7aと絶縁体で囲まれた内部7bを有し、前記内部を複数個に区画し、前記上部電極の内部に導電性液体が供給される小空間を複数個形成する導電性隔壁と、
前記導電性液体を前記小空間に供給する制御を行なって前記導電性液体と前記導電性隔壁を選択的に接触させ、前記導電性液体と接触している前記導電性隔壁によって囲まれた部分を前記上部電極の有効面として機能させる導電性液体供給制御装置を具備する、電極。」

(2)対比、検討
ア 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「エッチング室内において対向配置された一対の電極」は、「上部電極」と「下部電極」から成ることは明らかであるから、引用発明の「その上部電極」が、本願発明の「一対の実質的に等間隔に離隔した電極(2)において、該電極(2)のうちの少なくとも1つ」に相当する。
イ また、引用発明は、「テフロンなどの絶縁体から成る下部7aと絶縁体で囲まれた内部7bを有」することからして、引用発明と本願発明は、「内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え、前記内壁(5)は非多孔性の誘電体材料から形成され」る点で一致する。
ウ 次いで、引用発明の「前記内部を複数個に区画し、前記上部電極の内部に導電性液体が供給される小空間を複数個形成する導電性隔壁と、前記導電性液体を前記小空間に供給する制御を行なって前記導電性液体と前記導電性隔壁を選択的に接触させ、前記導電性液体と接触している前記導電性隔壁によって囲まれた部分を前記上部電極の有効面として機能させる導電性液体供給制御装置とを具備する」という事項と、本願発明の「前記ハウジング(20)は、少なくとも実質的に非金属導電性材料を有し、前記電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される」という事項を対比すると、以下のことがいえる。
(あ)引用発明の「導電性液体」は、本願発明の「非金属性導電性材料」を包含する材料である。
(い)また、引用発明の「導電性液体と接触している導電性隔壁によって囲まれた部分を上部電極の有効面として機能させる」ことによる作用について検討すると、引用例には、「このように、実施例のドライエッチング装置は上部電極7の有効面積を自由に変えることができるので、ウエハ基板3の大きさが種々であってもそのサイズに応じた大きさの電極を容易に作成することができる。したがって、ウエハ基板3のサイズに合ったプラズマ形状を容易に得ることができ、ウエハ基板3の大きさが変わっても良好なドライエッチングを常に行なうことができる。」と記載されていて(上記「(1)」の「イ」の下線付加部参照)、引用発明の下部電極は、上部電極の有効面として機能している部分に応じて、プラズマ形成用の電極として有効に機能せしめられる、すなわち、引用発明の下部電極の機能サイズは、上部電極の機能サイズに応じて変更される、といえるから、引用発明の「前記導電性液体を前記小空間に供給する制御を行なって前記導電性液体と前記導電性隔壁を選択的に接触させ、前記導電性液体と接触している前記導電性隔壁によって囲まれた部分を前記上部電極の有効面として機能させる導電性液体供給制御装置とを具備する」という事項が、本願発明の「電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される」という事項に相当するといえる。
エ 以上のとおりであるから、本願発明と引用発明は「一対の実質的に等間隔に離隔した電極(2)において、
該電極(2)のうちの1つは、内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え、
前記内壁(5)は非多孔性の誘電体材料から形成され、
前記ハウジング(20)は、少なくとも実質的に非金属導電性材料を有し、前記電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される電極。」の点で一致し、両者に相違はない。

(3)小括
したがって、本願発明は引用例に記載された発明である。

3 拒絶理由Cについて
次いで、上記意見書の上記主張2、3を踏まえ、上記拒絶理由Cについて検討する。
(1)引用例
拒絶理由Cにおいて提示した刊行物及びその記載事項は、上記「2 拒絶理由Bについて」の「(1)引用例」に記載したとおりであり、当該刊行物に記載された発明は、上述の引用発明のとおりである。

(2)対比
本願発明と引用発明を対比すると、上記「2 拒絶理由Bについて」の「(1)」に記載したとおりであるが、請求人の上記主張2、3は、本願発明を、「(一対の)電極(2)」の「いずれも」「内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え」ることにより、「電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される」発明であると限定的に解した主張であるといえる。
そこで、当該主張を参酌し、本願発明を、「(一対の)電極(2)」の「いずれも」「内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え」ることにより、「電極(2)のそれぞれの機能サイズは、前記非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される」構成を具備する発明であると限定的に解した場合について検討すると、本願発明と引用発明は、一対の電極(2)に関する、『内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え、機能サイズが非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更される』、という構成を、本願発明は、その一対の電極(2)の「いずれも」が具備するのに対し、引用発明は、その一対の電極(2)の一方(上部電極)のみが具備している点で相違することとなる。

(3)検討、判断
上記「(2)」で相違するとした点について検討すると、引用例には、下部電極について、下部電極内部に所望量の導電性液体を供給する制御を行ない、前記導電性液体の貯蔵量に応じて電極の有効面積を可変とする態様(上記「2 拒絶理由Bについて」の「(1)」の「ウ」及び「キ」参照)、及び、引用発明の上部電極と同じ態様の電極を用いる態様(上記「2 拒絶理由Bについて」の「(1)」の「エ」参照)についても記載され、さらに、上部電極、下部電極の両方の有効面積を変える態様(上記「2 拒絶理由Bについて」の「(1)」の「オ」参照)についても記載されている。
そうすると、引用発明において、ウエハ基板のサイズに合ったプラズマ形
状を得るため、下部電極にも上部電極と同様の構成を具備せしめ、下部電極の有効面として機能する部分を変更するよう構成すること、すなわち、「(一対の)電極(2)のいずれも」に「内壁(5)及び外壁(6)を有するハウジング(20)を備え」せしめ、「電極(2)のそれぞれの機能サイズ」を、「非金属性導電性材料の導入及び排出によって変更」できるよう構成することは、引用発明に基いて当業者が適宜なし得る設計変更であるといわざるを得ない。

(4)小括
以上検討のとおり、請求人の主張2、3を参酌し、本願発明を請求人の主張する発明であると限定的に解したとしても、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである

第6 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項7に記載された発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、本願の特許請求の範囲の請求項11に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明である、もしくは、前記引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第36条第6項第1号の規定により、また、特許法第29条第1項第3号もしくは同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-09 
結審通知日 2011-12-13 
審決日 2011-12-27 
出願番号 特願2005-518665(P2005-518665)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05H)
P 1 8・ 537- WZ (H05H)
P 1 8・ 113- WZ (H05H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 伊藤 幸仙
神 悦彦
発明の名称 プラズマ発生アセンブリ  
代理人 梶並 順  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道治  

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