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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1256872
審判番号 不服2010-6404  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-24 
確定日 2012-05-09 
事件の表示 特願2001-519238「通信装置用のバナーをダイナミックに更新する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月 1日国際公開、WO01/14939、平成15年 2月25日国内公表、特表2003-507984〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2000年 7月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年 8月23日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年 3月24日付けで審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成22年 3月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成22年 3月24日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】 通信装置の動作の待機モード中に通信装置の表示スクリーン上の現在の日付に対応するメッセージをダイナミックに表示する方法において、
通信装置はカレンダーからの複数の日付を現在の日付と比較して現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つに一致するか否かを決定する手段を備えており、
前記方法は、
カレンダー中の複数の日付のそれぞれと特有のメッセージを関連させ、
現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つに一致する場合に通信装置の表示スクリーン上に特有のメッセージを表示し、
その特有のメッセージは現在の日付自体とは異なるメッセージであり、
現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つと一致しない場合に通信装置の表示スクリーン上にデフォルトメッセージを表示するステップを有しており、
さらに、ユーザの選択により特有のメッセージを表示するステップをディスエーブルして、デフォルトメッセージを表示するステップを有している、メッセージのダイナミックな表示方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「【請求項1】 通信装置の動作の待機モード中に通信装置の表示スクリーン上の現在の日付に対応するバナーをダイナミックに表示する方法において、
通信装置はカレンダーからの複数の日付を現在の日付と比較して現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つに一致するか否かを決定する手段を備えており、
前記方法は、
カレンダー中の複数の日付のそれぞれと特有のバナーを関連させ、
現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つに一致する場合に通信装置の表示スクリーン上に特有のバナーを表示し、
その特有のバナーは現在の日付自体とは異なるものであり、編集可能であり、
現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つと一致しない場合に通信装置の表示スクリーン上にデフォルトバナーを表示するステップを有しており、
デフォルトバナーは現在の日付自体とは異なるものであり、編集可能であり、
さらに、ユーザの選択により特有のバナーを表示するステップをディスエーブルして、デフォルトバナーを表示するステップを有している、バナーのダイナミックな表示方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正では、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「特有のメッセージ」が「編集可能であ」ることを限定するとともに、同「デフォルトメッセージ」が「現在の日付自体とは異なるものであり、編集可能であ」ることを限定するから、特許請求の範囲を減縮するものである。
なお、上記補正では、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「メッセージ」を「バナー」と補正しているが、願書に最初に添付した明細書又は図面を参酌すると、当該補正は表現の変更に過ぎず、実質的な内容を変更するものではない。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

[引用発明]
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開平10-290478号公報(以下、「引用例1」という。)には、「携帯電話機」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項2】 年月日時間をカレンダー表示として待ち受け時に表示する携帯電話機において、表示部と、時計と、月日に対応してイベントの内容を表すキャラクターのデータを記憶するテーブルと、前記時計から出力される月日に対して前記テーブルを参照し、対応するイベントがあれば、当該イベントの内容を表すキャラクターのデータを読み込んで前記表示部に当該キャラクターを前記カレンダー表示に組み合わせて表示させる制御部とを有することを特徴とする携帯電話機。」(2頁1欄)

ロ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話機に係り、特にカレンダー表示に関連するキャラクター表示を組み合わせて表示できる携帯電話機に関する。」(2頁1欄)

ハ.「【0012】更に、制御部2には、時計22が設けられ、本機の処理において時計22が計時出力する月日が参照されるようになっている。
【0013】そして、本機の特徴部分として、EEPROM4内に特別なイベントのある月日に対応してそのイベントを表すキャラクターを表示するためのデータがテーブル(イベント/キャラクターテーブル)として格納されている。これらキャラクターに関するデータは予めEEPROM4内に用意されているものとする。
【0014】イベント情報としてメーカー設定のものとして、1/1(元旦)、2/14(バレンタインデー)、3/14(ホワイトデー)、5/5(子供の日)、10/10(体育の日)、12/24(クリスマスイヴ)、12/25(クリスマス)等が考えられ、ユーザー設定のものとして、誕生日、結婚記念日、休み、試験等がある。尚、設定項目は、上記以外に成人の日、節分、立春、建国記念の日、雛祭、啓蟄、春分の日、みどりの日、メーデー、憲法記念日、母の日、父の日、夏至、七夕、海の日、立秋、敬老の日、秋分の日、十五夜、文化の日、七五三、勤労感謝の日、冬至、天皇誕生日、大安等のいかなるものであっても構わない。
【0015】そして、キャラクターとしては、クリスマスイヴにはクリスマスツリーと星が、バレンタインデーにはハートマークとチョコレートが、例として考えられる。」(2頁2欄?3頁3欄)

ニ.「【0017】本機の電源がオンすると、イベントがない時には、図2に示すように、日時を示すカレンダー表示を行うものである。また、本機の電源がオンすると、イベントがある日には、図3に示すように、カレンダー表示における空白部分にイベントの内容を示すキャラクターを組み込んで表示するものである。ここでは、クリスマスイヴの日はクリスマスツリーと星のキャラクターをカレンダー表示に組み込んで表示されている。
【0018】具体的動作としては、電源オン時に、制御部2が内部の時計22の月日を参照し、その月日がEEPROM4内のイベント/キャラクターテーブルを検索し、当該テーブルにその月日が登録されているものであれば、その月日に対応したイベントのキャラクターをカレンダー表示に取り込んで表示するものである。
【0019】尚、クリスマスイヴのキャラクター表示におけるクリスマスツリーと星の場合、星のみをブリンク表示させて、クリスマスイヴの雰囲気を出すことも可能である。星のみをブリンク表示させる技術については、星があるツリーのキャラクターと星がないツリーのキャラクターを2つ用意しておき、内部時計のクロックに連動して両キャラクターを切り替えて表示するようにすれば実現可能であり、このようなブリンク表示の技術は既に知られているものである。
【0020】また、別の表示例として、図4に示すように、バレンタインデーにはカレンダー表示にハートマークとチョコレートのキャラクターを取り込んで表示しているものである。」(3頁3?4欄)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野の技術常識を考慮すると、上記イ.の記載から、引用例1は「携帯電話機」の「待ち受け時」における「表示器」の表示制御に係わるものである。
そして、同イ.【請求項2】の「・・・月日に対応してイベントの内容を表すキャラクターのデータを記憶するテーブル・・・」、同ロ.【0001】の「・・・特にカレンダー表示に関連するキャラクター表示を組み合わせて表示できる・・・」、同ハ.【0013】の「・・・本機の特徴部分として、EEPROM4内に特別なイベントのある月日に対応してそのイベントを表すキャラクターを表示するためのデータがテーブル(イベント/キャラクターテーブル)として格納されている。・・・」という記載から、カレンダーの月日と「イベントの内容を表すキャラクター」を関連させ、「表示する」ものである。
さらに、上記ニ.【0018】の「内部の時計」の「月日」は現在の「月日」といえ、同ニ.【0017】の「・・・本機の電源がオンすると、イベントがない時には、図2に示すように、日時を示すカレンダー表示を行うものである。また、本機の電源がオンすると、イベントがある日には、図3に示すように、カレンダー表示における空白部分にイベントの内容を示すキャラクターを組み込んで表示するものである。・・・」、同【0018】の「・・・電源オン時に、制御部2が内部の時計22の月日を参照し、その月日がEEPROM4内のイベント/キャラクターテーブルを検索し、当該テーブルにその月日が登録されているものであれば、その月日に対応したイベントのキャラクターをカレンダー表示に取り込んで表示するものである。」の記載から、引用例1は現在の「月日」と「イベントの内容を表すキャラクター」が「登録されている」「月日」を比較して、現在の「月日」が「登録されている」「月日」であれば、対応する「イベントの内容を表すキャラクター」を「表示する」ものである。
また、上記ハ.【0014】から「イベントの内容を表すキャラクター」が「登録されている」「月日」は複数の「月日」となることは明らかである。
したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「携帯電話機の待ち受け時に携帯電話機の表示器の現在の月日に対応するイベントの内容を表すキャラクタを表示する方法において、
携帯電話機はイベントの内容を表すキャラクターが登録されている複数の月日と現在の月日を比較し、
現在の月日が前記登録されている複数の月日の1つであれば、携帯電話機の表示器にイベントの内容を表すキャラクターを表示するステップを有している、イベントの内容を表すキャラクタを表示する方法。」

(2)同じく原査定の拒絶理由に引用された実願平4-21711号(実開平5-73593号のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)には、「メモリアルカレンダー」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】液晶カレンダー表示器において、時計機能とメモリとを組合せ、かつ表示部に接続した回路に構成し、該メモリには特別の日を設定すると共に該特別の日に表示するカラー付絵模様、情報、コメント等の情報を入力し、該当日には日付や曜日の日付等と共にメモリに入力した情報内容を同一表示面に液晶表示することを特徴とするメモリアルカレンダー。」(2頁1欄)

ロ.「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、液晶カレンダー表示器に利用されるメモリアルカレンダーに関するものである。
・・・・・・(中略)・・・・・
【0005】
・・・特別の日を設定して自由に入力し、該当日に日付等と入力情報の内容が同一表示面に表示可能なメモリアルカレンダーの提供を目的としている。」(3頁)

ハ.「【0010】
【実施例】
実施例について図1から図4を参照して説明すると、本考案の液晶カレンダー表示器4は、図4のように、時計機能1とメモリ2とを組合せ、かつ表示部3に接続した回路に構成され、表示部3に液晶で表示される表示面31が設けられている。
【0011】
メモリ2は、時計機能1と連動して作動し、該メモリ2には、使用者が設定した特別の日を設定し、該特別の日に表示するカラー付絵模様、情報、コメント等の情報(以下情報という)を、自由に入力5してメモリさせている。」(4頁)

ニ.「【0018】
B.メモリへ自分の好きな内容の情報等が自由に入力でき、しかも表示される情報内容にバライテイを持たせることができるため、カレンダーを見るのが楽しくなる。」(5頁)

上記イ.?ニ.の記載及び図面から、引用例2はカレンダーの「日付」と共に「日付」に関連する「カラー付絵模様、情報、コメント等の情報」を「表示部」に「表示」するものであって、上記ハ.【0011】の「・・・該メモリ2には、使用者が設定した特別の日を設定し、該特別の日に表示するカラー付絵模様、情報、コメント等の情報(以下情報という)を、自由に入力5して・・・」、同ニ.「メモリへ自分の好きな内容の情報等が自由に入力でき、しかも表示される情報内容にバライテイを持たせることができる・・・」という記載から、「カラー付絵模様、情報、コメント等の情報」はユーザーが「自由に入力」できるものであるから、編集可能なものである。
したがって、上記引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「表示部にカレンダーの日付とともに表示するカレンダーの日付に関連する情報を編集可能とする手段。」

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「携帯電話機」、「待ち受け時」、「表示器」、「月日」は、補正後の発明の「通信装置」、「待機モード中」、「表示スクリーン」、「日付」に相当し、実質的な差違はない。
本願明細書【0002】を参酌すると、補正後の発明の「バナー」は「メッセージ」であり、さらに、同【0011】には「テキストおよび/またはイメージの形態を含んでいてもよい」、「可能なイメージの1例は、“ハート”の形状」と記載され、さらに、「メッセージは、例えば、“記念日”または“マタイの誕生日”である。」、「メッセージは、何かのイベント、休日、予約、リマインダー等の発生を・・・可視的に知らせることができる。」と記載されていることから、引用発明1の「イベントの内容を表すキャラクター」は補正後の発明の「バナー」に相当し、イベントの内容に応じて異なるものとすることができるのは明らかであるから、「特有のバナー」にも相当し、「現在の日付自体とは異なるもの」であることも明らかである。
そして、引用発明1の「複数の月日(日付)」と補正後の発明の「カレンダーからの複数の日付」及び「カレンダー中の複数の日付」は、いずれも「複数の日付」である点で一致し、引用発明1の「イベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)が登録されている月日(日付)」は「月日(日付)」と「イベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)」を関連させることであり、引用発明1と補正後の発明の発明は、「複数の日付のそれぞれと特有のバナーを関連させ」ている点で一致する。
さらに、引用発明1の「携帯電話機(通信装置)はイベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)が登録されている複数の月日(日付)と現在の月日(日付)を比較し、現在の月日(日付)が前記登録されている月日(日付)の1つであれば」は、「携帯電話機(通信装置)はイベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)が登録されている複数の月日(日付)と現在の月日(日付)を比較し」、「現在の月日(日付)」が「前記登録されている月日(日付)の1つ」に一致するか否かを決定することと実質的な差違はないから、引用発明1と補正後の発明は「通信装置は」「複数の日付を現在の日付と比較して現在の日付が複数の日付の1つに一致するか否かを決定する手段を備えて」いる点で一致し、引用発明1の「現在の月日(日付)が前記登録されている複数の月日(日付)の1つであれば、携帯電話機(通信装置)の表示器に(表示スクリーン上に)対応するイベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)を表示する」についても、引用発明1と補正後の発明は「現在の日付が」「複数の日付の1つに一致する場合に通信装置の表示スクリーン上に特有のバナーを表示」する点で一致する。
補正後の発明の「ダイナミックに表示する」、「ダイナミックな表示方法」は、本願明細書【0003】、【0004】を参酌すると、現在の日付に関係した情報を伝えるバナーを提供することを意味するものであるから、引用発明1の「現在の月日に対応するイベントの内容を表すキャラクタを表示する方法」との間に実質的な差違はない。
したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「通信装置の動作の待機モード中に通信装置の表示スクリーン上の現在の日付に対応するバナーをダイナミックに表示する方法において、
通信装置は複数の日付を現在の日付と比較して現在の日付が複数の日付の1つに一致するか否かを決定する手段を備えており、
前記方法は、
複数の日付のそれぞれと特有のバナーを関連させ、
現在の日付が複数の日付の1つに一致する場合に通信装置の表示スクリーン上に特有のバナーを表示するステップを有し、
その特有のバナーは現在の日付自体とは異なるものである、バナーのダイナミックな表示方法。」

<相違点>
(1)「複数の日付」に関し、補正後の発明は「カレンダーからの複数の日付」及び「カレンダー中の複数の日付」であるのに対し、引用発明1では「カレンダー」との関係を限定していない点。
(2)補正後の発明は「特有のバナー」が「編集可能」であるのに対し、引用発明1は「編集可能」であるか否か不明である点。
(3)補正後の発明は「現在の日付がカレンダーからの複数の日付の1つと一致しない場合に通信装置の表示スクリーン上にデフォルトバナーを表示するステップを有しており、デフォルトバナーは現在の日付自体とは異なるものであり、編集可能であ」るのに対し、引用発明1は当該構成を有していない点。
(4)補正後の発明は「ユーザの選択により特有のバナーを表示するステップをディスエーブルして、デフォルトバナーを表示するステップを有している」のに対し、引用発明1は当該構成を有していない点。

そこで、上記相違点(1)について検討すると、「カレンダー」に関し、本願明細書【0010】には「このカレンダーは複数の日付に対応する記憶位置を有しており、毎日のカレンダーであることが好ましい。複数の日付からの少なくとも1つの日付はそれに関連した特有のメッセージを有する。」、同【0012】には「カレンダーは感謝祭、クリスマス等のような共通の特有のメッセージを有する“特別の日”を記憶される・・・」と記載されていることから、補正後の発明の「カレンダー」は毎日の日付あるいは複数の日付毎の記憶領域を予め設け、当該領域に特有のメッセージ(バナー)を記憶するものと認められる。
一方、引用発明1は「イベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)が登録されている複数の月日(日付)」という構成のみで、月日(日付)に対応してイベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)のデータが記憶されている構成を有しているに過ぎない。
しかしながら、日付に対応する情報を記憶保持する構成として、カレンダーの毎日の日付あるいは情報を記憶する可能性のある複数の日付に対応する記憶領域を予め設け、当該領域に情報を記憶するか、あるいは、日付に対応する記憶領域を予め設けずに、日付とともに情報を記憶するかは、記憶すべき情報量等を考慮して適宜選択することのできる構成であるから、上記相違点(1)に係る「カレンダー」の構成は当業者が適宜採用することのできる設計的事項に過ぎない。
次に、上記相違点(2)について検討すると、「表示部にカレンダーの日付とともに表示するカレンダーの日付に関連する情報を編集可能とする手段。」は上記引用発明2として公知のものであり、上記相違点(2)に係る構成は、引用発明1に引用発明2を採用することにより当業者が容易になし得ることである。
さらに、上記相違点(3)について検討すると、通信装置の待ち受け(待機モード)時に表示器に表示させる文字列等の情報をユーザが任意に設定するすることは、特開平9-261309号公報(【請求項1】、【0005】)、特開平10-13883号公報(【0006】、【0009】)、欧州出願公開明細書第0831629号(1998年 3月25日公開、第1頁、第2頁第30?43行)に記載されるように周知技術であり、当該技術においてユーザが任意に設定する情報は、メッセージ等のデフォルト情報といえ、編集可能といえるものであり、現在の日付自体とは異なるものとすることができることは明らかである。
すると、引用発明1において、「現在の月日(日付)が前記登録されている複数の月日(日付)の1つで」ない場合に「携帯電話機(通信装置)の表示器に(表示スクリーン上に)」表示すべき「イベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)」がない状態において、どのような情報を表示するかは任意に選択できることであり、上記周知技術に基づいてユーザが任意に設定した待ち受け時のデフォルトメッセージ等の情報を表示するようにすることは、当業者が適宜なし得ることであり、上記相違点(3)も設計的事項の差違に過ぎないものである。
最後に、上記相違点(4)について検討すると、通信装置において特定の機能が作動しないようにユーザーがディスエーブル(無作動)とすることは普通になされていることであって、引用発明1において、ユーザが「イベントの内容を表すキャラクター(特有のバナー)を表示する」ことをディスエーブルするようにすることは、当業者が適宜なし得ることであり、ディスエーブルした時にはデフォルトバナーを表示することも、上記相違点(3)と同様に、当業者が適宜なし得ることである。
そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、上記補正後の発明は上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年 3月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、第2.1.本願発明と補正後の発明の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明1とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-24 
結審通知日 2011-11-29 
審決日 2011-12-12 
出願番号 特願2001-519238(P2001-519238)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢島 伸一  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 萩原 義則
宮田 繁仁
発明の名称 通信装置用のバナーをダイナミックに更新する方法およびシステム  
代理人 砂川 克  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 竹内 将訓  
代理人 峰 隆司  
代理人 山下 元  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 村松 貞男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 市原 卓三  
代理人 勝村 紘  
代理人 河野 直樹  
代理人 中村 誠  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 哲  

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