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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D |
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管理番号 | 1256890 |
審判番号 | 不服2010-18228 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-12 |
確定日 | 2012-05-09 |
事件の表示 | 特願2006-519745号「シートの品質をチェックするための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日国際公開、WO2005/008605、平成19年 3月22日国内公表、特表2007-507023号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成16年7月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年7月16日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2.平成22年8月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年8月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「複数のコピーを各々が備えているシートの表面の画像データを検出するための第一の検査装置(A)と、前記シートの裏面を検査するための第二の検査装置(B)と、前記シートを照明するための第三の検査装置(C)と、前記検査装置(A)の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置とを備え、前記シートを輸送するための独自の第一、第二及び第三の輸送ドラム(32、33、34)が各検査装置(A、B、C)に割り当てられている、シートの品質をチェックするための装置において、 前記評価装置が、個々のコピーの品質を個別に評価するように設計されており、 前記検査装置(A、B、C)の下流に配置されているマーキング装置(46)が、不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計されており、 3つの前記第一、第二及び第三輸送ドラム(32;33;34)が全て1対のサイドフレーム・パネル(11)の中に配置されていることを特徴とする、装置。」と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第一、第二及び第三輸送ドラム」について、「3つの前記第一、第二及び第三輸送ドラムが全て1対のサイドフレーム・パネルの中に配置されている」との限定を付加するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、実公平3-12510号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a)「図において、検査輪転印刷機11は、給紙装置12と、検査装置13と、印刷装置14および排紙装置15を備えており、給紙装置12には、前工程で絵柄が印刷された紙幣等の紙16を積載してその減量により自動的に上昇する紙積台17が設けられている。また、検査装置13の上端部には給紙装置12によつて差板18上へ1枚ずつ送り出された紙16を咥えて揺動するスイング19が配設されており、その下方には一対の検査胴20,21が、互に周面を対接させて回転自在に軸架されている。これらの検査胴20,21の外周切欠部内には、カム機構で開閉する複数個の爪が軸方向に並列して設けられており、スイング19の揺動によつて搬送された紙16を咥え替えたのち、第1図の矢印方向への胴回転により紙16を胴20,21の周面へ巻き付けながら搬送するように構成されている。また、各検査胴20,21の周面近傍には、搬送される紙16の表裏両面の絵柄を検査し不正紙を検出して信号を発する検査機構22,23がそれぞれ配設されている。検査胴21の斜め下方に渡し胴24を介して配設された紙取胴25と同軸上には、左右一対のスプロケツト26が軸着されており、このスプロケツト26と、印刷装置14の給紙胴27と同軸上の一対のスプロケツト28との間には、図に矢印で示す方向に走行する搬送チエーン29が張架されている。」(公報第3欄第30行-第4欄第12行、下線は当審にて付与。以下同様。) b)第2図から、胴20は検査機構22に、胴21は検査機構23に割り当てられていると認められる。 上記a)の記載事項、上記b)の認定事項および第2図の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。 「絵柄が印刷された紙幣等の紙16の表裏両面の絵柄を検査し不正紙を検出して信号を発する検査機構22,23を備え、前記紙16を搬送するための独自の胴20,21が各検査機構22,23に割り当てられている、紙16の品質を検査するための検査輪転印刷機11。」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-90206号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a)「【発明の属する技術分野】本発明は、シート外観検査装置に関し、特に、磁気カード等のカード製品となるカード部を印刷したシートの印刷仕上がり及び磁性層の塗りむら等を外観検査する装置に関するものである。 【従来の技術】図6に示すように、一般的に、表面に絵柄、図柄、写真等が印刷された印刷面2、裏面に磁性層3が形成され、N列×n行の複数のカード部が印刷がされているシート1を、打抜することによってN×n個の磁気カード4が得られる。」(段落【0001】-【0002】) b)「(実施の形態1)図1に示すように、実施の形態1のシート外観検査装置5は、シートフィーダー6、搬送部7、外観検査用カメラ8、良品シート用ストッカー9、不良品シート収納部10、パンチ穴開け部12により構成されている。 積層されたシート1は、シートフィーダー6より1枚ずつに分離されて搬送部7へ供給される。搬送部7の途中で、上下に設置されたカメラ8で、図6に示すようなシート1の印刷面2と磁性層3の画像を取り込み、先に入力しておいた基準画像との違いを検知して、良品と不良品の判別を行う。ここで、カメラ8は、シートの幅に相当する分だけの画像取り込みのために複数台並列配置されている。 良品と検査されたシートは、ストッカー9に収納される。不良品と検査されたシートは、弁別部11により搬送路から分離されて別経路に送られ、不良と判定されたカード部に、パンチ穴開け部12によりパンチ穴が開けられる。パンチ穴開け部12には、シートストッパー14とN×n個のパンチ15が、図2(b)に示すカードの磁気情報記録部Dに合わせて配置されている。シート外観検査装置の制御部より指示された、不良個所のカード部に対応するパンチが駆動され、パンチ穴を開ける機構となっている。 図2(a)に示すようなパンチ穴13が開けられた不良品シート1aは、パンチ穴開け部12の隣に設けられた不良品シート収納部10に送り出されて収納される。外観検査完了後の良品シートと不良品シートは、次工程のカード打抜機にかけられ、個片の磁気カードとなる。 この後、不良品シートで打ち抜かれたカードは、電気検査装置にかけられ、磁気情報記録部にパンチ穴を開けられた不良カードのみが磁気記録不良となって排出され、不良品シートからの良品カードは、マガジンに収納され、上記の良品シートで打ち抜かれたカードと一緒にされる。 (実施の形態2)図3、図4に示すように、実施の形態2のシート外観検査装置は、搬送部7にレーザーマーカー16をN列配置し、制御部より指示された不良カード部がきたとき、レーザーマーカー16により磁気情報記録部Dに印字する構成である。レーザーマーカーによる印字部17の磁性層3は、削り取られるため、磁気記録不良となる。印字後の不良シートは、弁別部11により、不良品シート収納部10に収納され、以降、上記と同様にカード打抜機、電気検査装置にかけられる。この例では、上記のパンチ穴方式と違って、シートを一時停止させる必要がなく、高速処理が可能である。 (実施の形態3)シート外観検査装置の搬送部に、市販の鉛筆またはマジック等の筆記具をN列、駆動機器により上下移動可能に配置し、不良カードのある列の筆記具を下方に移動させて、シートに押し付けながら搬送させることにより、図5に示すように、1列分の線条のマーク20を付けた後、不良品シート収納部に弁別、収納する。」(段落【0014】-【0020】) c)図1、図3、及び上記b)の記載から、「シート外観検査装置5」は、「カメラ8」の下流で、「不良個所のカード部に対応するパンチが駆動され、パンチ穴を開け」たり、「不良カード部がきたとき、レーザーマーカー16により磁気情報記録部Dに印字」したり、「不良カードのある列の筆記具を下方に移動させて」、「1列分の線条のマーク20を付け」たりするように設計されていると認められる。 上記a)?b)の記載事項、上記c)の認定事項および図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。 「表面に絵柄、図柄、写真等が印刷された印刷面2、裏面に磁性層3が形成され、N列×n行の複数のカード部が印刷されているシート1の外観検査装置において、 搬送部7の途中で、上下に設置され、シートの幅に相当する分だけの画像取り込みのために複数台並列配置されたカメラ8で、シート1の印刷面2と磁性層3の画像を取り込み、先に入力しておいた基準画像との違いを検知して、良品と不良品の判別を行うように設計されており、 カメラ8の下流で、不良個所のカード部に対応するパンチが駆動され、パンチ穴を開けたり、不良カード部がきたとき、レーザーマーカー16により磁気情報記録部Dに印字したり、不良カードのある列の筆記具を下方に移動させて、1列分の線条のマーク20を付けたりするように設計されている、シート外観検査装置5。」 (3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-175552号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a)「(構成) 本発明は、シートに光を反射または透過させ、その光量変化を光電検知することにより、シート上或いは内部に存在する欠陥を検出する方法において、同一欠陥に対して反射型光量変化として得られる電気信号レベル値と、透過型光量変化として得られる電気信号レベル値とを演算することにより、虫に起因する欠陥を判別することを特徴とする欠陥シートの検出方法である。」(公報第2頁右上欄第3?11行) b)「シート(1)は矢印方向に連続的に走行し、順に上面監視用の反射型欠陥検出装置(2)の投光器(3)及び受光器(4)、下面監視用の反射型欠陥検出装置(5)の投光器(6)及び受光器(7)、最後に透過型欠陥検出装置(8)の投光器(9)及び受光器(10)が配置されている。」(公報第2頁左下欄第17行?右下欄第2行) c)「シートに欠陥があれば、反射率、透過率、反射光軸などの変化により、受光器に入射される光量が変化するので、欠陥に対応して受光器(4、7、10)から信号が出力され、この信号は増巾器(12)でゲインに応じて増巾される。増巾器(12)からの出力は欠陥信号とノイズの混合信号波であるので、次の弁別器(14)により欠陥信号のみが取り出されて制御部(15)に入力される。 ・・・(中略)・・・ かかる結果に基づき制御部(15)は、必要に応じてアラーム(16)を鳴らすと同時に欠陥個所に同期させてマーキング装置(17)によりシート上にマーキングを行うとともに、表示部(18)に欠陥が虫或いは他の欠陥であるかの表示を行うものである。」(明細書第3頁右上欄第4行?左下欄第6行) d)「本発明の主要部をなす検出部(20)では、スインググリッパー付きロール(22)、第1段検査ロール(23)、第2段検査ロール(24)、第3段検査ロール(25)が各々の側面を接しながらほぼ水平に配置されている。各検査ロールには、図示されていないが送られてくる平判シートの先端部をくわえて次工程に送ることができるように、印刷機の圧胴などで使用されるグリッパー装置が設置されている。 第1段検査ロール(23)の上方には、シート上面をチェックする反射型欠陥検出装置(2)が、第2段検査ロール(24)の下方には、シート下面をチェックする反射型欠陥検出装置(5)が設けられ、第3段検査ロール(25)は透過光で平判シートをチェックするべく、アクリル系樹脂製の透明または半透明の中空パイプを使用しており、内部に投光器(9)、上方に受光器(10)が配没されており透過型欠陥検出装置(8)として作用するように構成されている。」(明細書第3頁左下欄第18行?右下欄第15行) e)上記c)に記載されているように「シートに欠陥があれば、・・・欠陥に対応して受光器(4、7、10)から信号が出力され」るとともに、「受光器(4、7、10)」は各検出装置(2、5、8)に配置されていることから、「装置」は、各「検出装置(2、5、8)」の検出結果に基づいて「シート」の品質を評価するための「評価装置」を備えていると認められる。 f)第1図から、「マーキング装置(17)」は「検出装置(2、5、8)」の下流に配置されていると認められる。 上記a)?d)の記載事項、上記e)?f)の認定事項および図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が開示されていると認められる。 「シート上面をチェックする反射型欠陥検出装置(2)と、前記シート下面をチェックする反射型欠陥検出装置(5)と、透過型欠陥検出装置(8)と、前記検出装置(2、5、8)の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置とを備え、前記シートを輸送するための独自の第1段検査ロール(23)、第2段検査ロール(24)及び第3段検査ロール(25)が各検出装置に割り当てられている、シートの品質をチェックするための装置において、 前記検出装置(2、5、8)の下流に配置されているマーキング装置(17)が、欠陥個所に同期させてシート上にマーキングを行うように設計されている、装置。」 3.対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「絵柄」は、本願補正発明の「コピー」に相当し、以下同様に、 「紙16」は「シート」に、 「胴20,21」は「第一、第二の輸送ドラム」に、 「(紙16の品質を検査するための)検査輪転印刷機11」は「(シートの品質をチェックするための)装置」に、 それぞれ相当する。 また、引用発明1の「絵柄が印刷された紙幣等の紙16」は本願補正発明の「コピーを各々が備えているシート」に相当し、引用発明1の「紙16を搬送する」ことは本願補正発明の「シートを輸送する」ことに相当する。 次に、引用発明1の「紙16の表裏両面の絵柄を検査し不正紙を検出して信号を発する検査機構22,23」について検討する。 第2図から、検査機構22が紙16の表面の絵柄を検査し、検査機構23が紙16の裏面の絵柄を検査していることは明らかである。また、絵柄を検査するために、検査機構22は表面の画像データを検出する「検査装置」を備え、検査機構23は裏面を検査するための「検査装置」を備えていると考えるのが自然である。さらに、「検査機構22,23」は「絵柄を検査し不正紙を検出して信号を発する」ことから、「検査機構22,23」が、前記「検査装置」の検出結果に基づいて「紙16」の品質を評価するための「評価装置」を備えていることは明らかである。 よって、引用発明1の「紙16の表裏両面の絵柄を検査し不正紙を検出して信号を発する検査機構22,23」は、本願補正発明の「シートの表面の画像データを検出するための第一の検査装置と、前記シートの裏面を検査するための第二の検査装置と」、「前記検査装置の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置」に相当する。 さらに、引用発明1の「検査機構22,23」は、それぞれ「検査装置」を備えていると考えられるから、引用発明1の「独自の胴20,21が各検査機構22,23に割り当てられている」ことは、本願補正発明の「独自の第一、第二」「の輸送ドラムが各検査装置に割り当てられている」ことに相当する。 したがって、両者は、 「コピーを各々が備えているシートの表面の画像データを検出するための第一の検査装置と、前記シートの裏面を検査するための第二の検査装置と、前記検査装置の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置とを備え、前記シートを輸送するための独自の第一、第二の輸送ドラムが各検査装置に割り当てられている、シートの品質をチェックするための装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明では、「シート」が「複数のコピー」を備え、「評価装置が、個々のコピーの品質を個別に評価するように設計されており、前記検査装置の下流に配置されているマーキング装置が、不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計され」ているのに対し、引用発明1は、当該構成を有しない点。 [相違点2] 本願補正発明は、「シートを照明するための第三の検査装置」とそれに割り当てられている「第三の輸送ドラム」を備えるのに対し、引用発明1は、当該構成を有しない点。 [相違点3] 本願補正発明では、「3つの前記第一、第二及び第三輸送ドラムが全て1対のサイドフレーム・パネルの中に配置されている」のに対し、引用発明1は、当該構成を有しない点。 4.判断 [相違点1]について 本願補正発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「カード部」は本願補正発明の「コピー」に相当し、以下同様に、「シート1」は「シート」に、「カメラ8」は「検査装置」に、「シート1の外観検査装置」は「(シートの品質をチェックするための)装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明2は「シートの幅に相当する分だけの画像取り込みのために複数台並列配置されたカメラ8で」「良品と不良品の判別を行うように設計されており」、「カメラ8の下流で」、複数の「カード部」のうち「不良カード部」にのみ、パンチ穴を開けたり、「レーザーマーカー16」により印字したりしていることから、引用発明2の「搬送部7の途中で、上下に設置され、シートの幅に相当する分だけの画像取り込みのために複数台並列配置されたカメラ8で、シート1の印刷面2と磁性層3の画像を取り込み、先に入力しておいた基準画像との違いを検知して、良品と不良品の判別を行うように設計されており、カメラ8の下流で、不良個所のカード部に対応するパンチが駆動され、パンチ穴を開けたり、不良カード部がきたとき、レーザーマーカー16により磁気情報記録部Dに印字したり、不良カードのある列の筆記具を下方に移動させて、1列分の線条のマーク20を付けたりするように設計されている」ことは、本願補正発明の「評価装置が、個々のコピーの品質を個別に評価するように設計されており」、「検査装置の下流に配置されているマーキング装置が、不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計されている」ことに相当する。 よって、引用発明2は、「複数のコピーを各々が備えているシートの品質をチェックするための装置において、評価装置が、個々のコピーの品質を個別に評価するように設計されており、検査装置の下流に配置されているマーキング装置が、不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計されている装置。」と言い換えることができる。 そして、引用発明1の「検査輪転印刷機11」と引用発明2の「シート外観検査装置5」とは、シートの表裏両面を検査して、シートの品質をチェックする装置という同一の技術分野に属する発明である。 また、同じく同一の技術分野に属する発明である引用発明3においても、「マーキング装置(17)」が備えられていることから、シートの品質をチェックする装置において、「マーキング装置」を備えさせることは、本願の優先日前から公知の技術事項であることがわかる。 そうすると、引用発明1に引用発明2を適用して、引用発明1において、検査対象である「紙16」を複数の絵柄(コピー)が印刷された紙(シート)にすること、及び、評価装置が個々の絵柄の品質を個別に評価するように設計し、「検査機構22,23」(検査装置)の下流に、不合格と見なされる絵柄(コピー)にのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計されたマーキング装置を配置することにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点2]について 本願補正発明と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「シート下面をチェックする反射型欠陥検出装置(5)」は本願補正発明の「シートの裏面を検査するための第二の検査装置」に相当し、以下同様に、「透過型欠陥検出装置(8)」は「シートを照明するための第三の検査装置」に、「第1段検査ロール(23)、第2段検査ロール(24)及び第3段検査ロール(25)」は「第一、第二及び第三の輸送ドラム」に、「マーキング装置(17)」は「マーキング装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明3の「シート上面をチェックする反射型欠陥検出装置(2)」と本願補正発明の「シートの表面の画像データを検出するための第一の検査装置」とは、「シートの表面を検査するための第一の検査装置」という点で共通するとともに、引用発明3の「欠陥個所に同期させてシート上にマーキングを行う」ことと本願補正発明の「不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付ける」こととは、「不合格と見なされるシートに目に見える印を付ける」という点で共通する。 よって、引用発明3は、「シートの表面を検査するための第一の検査装置と、前記シートの裏面を検査するための第二の検査装置と、前記シートを照明するための第三の検査装置と、前記検査装置の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置とを備え、前記シートを輸送するための独自の第一、第二及び第三の輸送ドラムが各検査装置に割り当てられている、シートの品質をチェックするための装置において、 前記検査装置の下流に配置されているマーキング装置が、不合格と見なされるシートに目に見える印を付けるように設計されている、装置。」と言い換えることができる。 そして、引用発明1の「検査輪転印刷機11」と引用発明3の「装置」とは、シートの表裏両面を検査して、シートの品質をチェックする装置という同一の技術分野に属する発明である。 そうすると、引用発明1に引用発明3を適用して、引用発明1の「検査輪転印刷機11」に「シートを照明するための第三の検査装置」とそれに割り当てられている「第三の輸送ドラム」を付加して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点3]について 枚葉紙反転装置において、複数のドラムを1対のサイドフレームの中に配置することは、本願の優先日前から周知の技術事項であり(例えば、特開平2-235637号公報を参照。)、引用発明1に引用発明3を適用して、3つの輸送ドラムを配置する際、それら全てを1対のサイドフレームの中に配置することは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用発明1?3及び前記周知の技術事項から当業者が予測できる範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明1?3及び前記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 平成22年8月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年12月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「複数のコピーを各々が備えているシートの表面の画像データを検出するための第一の検査装置(A)と、前記シートの裏面を検査するための第二の検査装置(B)と、前記シートを照明するための第三の検査装置(C)と、前記検査装置(A)の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置とを備え、前記シートを輸送するための独自の第一、第二及び第三の輸送ドラム(32、33、34)が各検査装置(A、B、C)に割り当てられている、シートの品質をチェックするための装置において、 前記評価装置が、個々のコピーの品質を個別に評価するように設計されており、 前記検査装置(A、B、C)の下流に配置されているマーキング装置(46)が、不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計されていることを特徴とする、装置。」 1.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。 2.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、前記「第2.3.」と同様の検討により、両者は 「コピーを各々が備えているシートの表面の画像データを検出するための第一の検査装置と、前記シートの裏面を検査するための第二の検査装置と、前記検査装置の検出結果に基づいて前記シートの品質を評価するための評価装置とを備え、前記シートを輸送するための独自の第一、第二の輸送ドラムが各検査装置に割り当てられている、シートの品質をチェックするための装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明では、「シート」が「複数のコピー」を備え、「評価装置が、個々のコピーの品質を個別に評価するように設計されており、前記検査装置の下流に配置されているマーキング装置が、不合格と見なされるコピーにのみ又はこれに関連して目に見える印を付けるように設計され」ているのに対し、引用発明1は、当該構成を有しない点。 [相違点2] 本願発明は、「シートを照明するための第三の検査装置」とそれに割り当てられている「第三の輸送ドラム」を備えるのに対し、引用発明1は、当該構成を有しない点。 3.判断 [相違点1、2]について 前記「第2.4.[相違点1]について、及び、[相違点2]について」で検討したとおり、引用発明1に引用発明2及び3にを適用して、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 そうすると、本願発明は、引用発明1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-07 |
結審通知日 | 2011-12-13 |
審決日 | 2011-12-27 |
出願番号 | 特願2006-519745(P2006-519745) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G07D)
P 1 8・ 121- Z (G07D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平田 慎二 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
松下 聡 青木 良憲 |
発明の名称 | シートの品質をチェックするための装置 |
代理人 | 篠崎 正海 |
代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 大橋 康史 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 庸良 |