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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B32B |
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管理番号 | 1256897 |
審判番号 | 不服2010-27914 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-09 |
確定日 | 2012-05-09 |
事件の表示 | 特願2003-585965「フルオロポリマー物品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月30日国際公開、WO03/89232、平成17年 9月22日国内公表、特表2005-528244〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2003年3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年4月18日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年1月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「少なくとも10重量%のフッ化ビニリデンを有する第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第1の層と、 少なくとも10重量%のフッ化ビニリデンを有する第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第2の層とを含み 前記第2の層は前記第1の層と接合しており、前記第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーと前記第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーとは異なる組成を有し、 各組成は本質的に、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、完全フッ素化アルコキシビニルエーテル、完全フッ素化アルキルビニルエーテル、非フッ素化オレフィン、下記式(I): -CF(X)-CX_(2)- (I) (式中、各Xは独立して、水素、ハロゲン原子、またはフッ素化されてもよいC_(1)?C_(8)アルキル基である。) で表される単位、およびそれらの組み合わせから選ばれる共重合単位からなり、 但し、第1の層と第2の層との間の接合界面は、連結層、接着剤、および一方または両方の層の材料に付加される反応性基を含まない、物品。」 第3 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第00/55130号(以下、「引用文献」という。なお、翻訳文に関し、特表2002-539293号公報参照。)には、以下の事項が記載されている。 「 6. A two-layer coating system for coating substrates selected from the group consisting of PMMA, PC, PET, and PS comprising an upper layer selected from the group consisting of: a) poly (TFE/HFP) and poly (VF_(2)/TFE/HFP), wherein the molar ratio of HFP to TFE is between about 0.9 and 1.9 and, in the case of the VF_(2)/TFE/HFP terpolymer, the concentration of VF_(2) is about 19 mole %; and b)...... and a lower coating layer selected from the group consisting of: a) poly (VF_(2)/TFE/HFP), wherein the ratio of TFE to HFP is between about 0.9 and 1.9 and the concentration of VF_(2) is between about 18 and 60 % on PMMA substrates and between about 12 and 40 mole % on PC, PET, and PS substrates; b)...... c)...... d) TFE graft to PVOH wherein about 46 mole % TFE has been grafted to the PVOH. 」(21頁18行?38行) (【請求項6】 PMMA、PC、PETおよびPSから成る群から選択される基質を被覆するための2層被覆系であって、 a)ポリ(TFE/HFP)およびポリ(VF_(2) /TFE/HFP)[ここで、TFEに対するHFPのモル比は約0.9から1.9の範囲であり、そしてVF_(2) /TFE/HFPターポリマーの場合、VF_(2) 濃度は約19モル%である]、および b)・・・・・・ から成る群から選択される上方層と、 a)ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)[ここで、HFPに対するTFEの比率は約0.9から1.9の範囲であり、そしてVF_(2) 濃度は、基質がPMMAの場合には約18から60%の範囲であり、そして基質がPC、PETおよびPSの場合には約12から40モル%の範囲である]、 b)・・・・・・ c)・・・・・・ d)PVOHにTFEが約46モル%グラフト化したTFEグラフト化PVOH、 から成る群から選択される下方被覆層、を含んで成る2層被覆系。) 「 Materials and Methods The following definitions are used herein and should be referred to for claim interpretation. ...... HFP - Hexafluoropropylene, CF_(2)=CF-CF_(3)...... PMMA - polymethylmethacrylate ...... TFE - Tetrafluoroethylene, CF_(2)=CF_(2)...... VF_(2) - Vinylidene fluoride, CF_(2)=CH_(2) 」(5頁6行?21行) ( 材料および方法 本明細書では下記の定義を用い、請求の範囲の解釈ではそれらを参照すべきである。 ・・・・・・ HFP - ヘキサフルオロプロピレン、即ちCF_(2) =CF-CF_(3)・・・・・・ PMMA - ポリメタアクリル酸メチル ・・・・・・ TFE - テトラフルオロエチレン、即ちCF_(2) =CF_(2)・・・・・・ VF_(2) - フッ化ビニリデン、即ちCF_(2) =CH_(2) ) 「 EXAMPLES 19-21 Two Coats both poly (VF_(2)/TFE/HFP) on PMMA Transmittance Independent of VF_(2) Content of Primer Coat Poly (VF_(2)/TFE/HFP) samples of different VF_(2) content, see Table 5 below, were used for the primer coat. Solutions, 1 wt % poly (VF_(2)/TFE/HFP) in acetone, were made by agitating chunks of the polymer with solvent for several days at room temperature. PMMA plates measuring 2.5 cm by 5.0 cm by 3 mm thick were used for testing The PMMA plates were coated by lowering the plates into the polymer solution at a rate of 300 mm/min. and then, immediately, raising the plates back out of the solution at 50 mm/min. After 5-10 minutes air drying, the plates were dried horizontally for 60 minutes in a 100℃ air oven. The topcoat, in every instance the same 18.7 mole % VF_(2) /43.3 mole % TFE/38.0 mole % HFP terpolymer, was prepared by the same method. Table 5 below lists Examples and Comparative Examples in order of increasing VF_(2) content. In spite of variation in VF_(2) content from 49.3 to 66.2 mole % in the lower layer, overall transmittance is relatively unaffected. Adhesion is excellent (100/100) for VF_(2) contents from 49.3 to 66.2 mole %. 」(9頁「Table 4」下5行?10頁4行) ( 実施例19-21 PMMAにポリ(VF_(2) /TFE/HFP)を2回被覆することで2層被覆 透過率はプライマーコートのVF_(2) 含有量から独立 VF_(2) 含有量が異なるポリ(VF_(2) /TFE/HFP)サンプル(以下の表5を参照)をプライマーコートで用いた。ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に1重量%入っている溶液を生じさせた。寸法が2.5cmx5.0cmx3mm(厚み)のPMMA板を試験で用いた。このPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせた。この板に空気乾燥を5-10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせた。全てのケースでトップコート、即ち同じ18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマーを同じ方法で生じさせた。 以下の表5に実施例および比較実施例をVF_(2 )含有量が高くなる順で挙げる。 下方層のVF_(2) 含有量を49.3から66.2モル%に及んで変えたにも拘らず、全体としての透過率は相対的に影響を受けなかった。VF_(2) 含有量が49.3から66.2モル%の時の接着力が卓越している(100/100)。) これらの記載、特に実施例19についての記載によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「VF_(2) /TFE/HFPのモル%が49.3/27.7/23.0のポリ(VF_(2) /TFE/HFP)から成るプライマーコートであって、 ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)の塊をアセトンと一緒に室温で数日間撹拌することで前記重合体が溶媒に1重量%入っている溶液を生じさせ、寸法が2.5cmx5.0cmx3mm(厚み)のPMMA板を300mm/分の速度で下げて前記重合体溶液の中に入れた後直ちに前記板を50mm/分で持ち上げて前記溶液から取り出すことを通して、前記板に被覆を受けさせ、この板に空気乾燥を5-10分間受けさせた後、100℃の空気オーブンに水平に入れて乾燥を60分間受けさせる方法で生じさせたプライマーコートと、 同じ方法で生じさせた、18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマーのトップコート とで2層被覆したPMMA。 (VF_(2) はフッ化ビニリデン、TFEはテトラフルオロエチレン、HFPはヘキサフルオロプロピレン、PMMAはポリメタアクリル酸メチル)」 第4 対比・判断 引用発明の「ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)から成るプライマーコート」についてみると、「ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)」は、フッ化ビニリデンを有する部分フッ素化熱可塑性ポリマーである。そして、VF_(2) /TFE/HFPのモル%が49.3/27.7/23.0であることと、各モノマーの分子量(VF_(2):64、TFE:100、HFP:150)を考慮すると、上記ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)は、大凡、34重量%のフッ化ビニリデンを有するものである。また、プライマーコートの形成方法からみて、上記ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)は、実質的に中実である。よって、引用発明の「ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)」は、本願発明の「少なくとも10重量%のフッ化ビニリデンを有する第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマー」に相当し、引用発明の「プライマーコート」は、本願発明の「第1の層」に相当する。 引用発明の「18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマーのトップコート」についてみると、「18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマー」は、フッ化ビニリデンを有する部分フッ素化熱可塑性ポリマーであり、上記と同様に各モノマーのモル%と分子量を考慮すると、大凡、11重量%のフッ化ビニリデンを有するものである。また、トップコートは、プライマーコートと同じ方法で形成されることから、上記ターポリマーは、実質的に中実である。よって、引用発明の「18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマー」は、本願発明の「少なくとも10重量%のフッ化ビニリデンを有する第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマー」に相当し、引用発明の「トップコート」は、本願発明の「第2の層」に相当する。 引用発明の、「ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)」と「18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマー」とは、VF_(2) /TFE/HFPのモル%が異なるから、異なる組成を有するものである。よって、引用発明は、本願発明の「前記第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーと前記第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーとは異なる組成を有し」の要件を満たす。 引用発明の「ポリ(VF_(2) /TFE/HFP)」と「18.7モル%VF_(2) /43.3モル%TFE/38.0モル%HFPターポリマー」の組成は、いずれも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンを共重合単位とするものである。よって、引用発明は、本願発明の「各組成は本質的に、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、完全フッ素化アルコキシビニルエーテル、完全フッ素化アルキルビニルエーテル、非フッ素化オレフィン、下記式(I):-CF(X)-CX_(2)- (I)(式中、各Xは独立して、水素、ハロゲン原子、またはフッ素化されてもよいC_(1)?C_(8)アルキル基である。)で表される単位、およびそれらの組み合わせから選ばれる共重合単位からなり」の要件を満たす。 引用文献には、プライマーコートを形成した後、当該プライマーコートに何らかの処理を行うことや、プライマーコート上にトップコート以外の層を設けることは記載されていないから、引用発明は、プライマーコート上に直接トップコートを形成するものである。よって、引用発明は、本願発明の「前記第2の層は前記第1の層と接合しており」及び「第1の層と第2の層との間の接合界面は、連結層、接着剤、および一方または両方の層の材料に付加される反応性基を含まない」の要件を満たす。 本願発明の「物品」は、第1の層と第2の層とを含むものであって、第1の層と第2の層「のみ」から構成されるものではないことを考慮すると、引用発明の、プライマーコートとトップコートとで2層被覆した「PMMA」は、本願発明の、第1の層と第2の層とを含む「物品」に相当する。 よって、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、 「少なくとも10重量%のフッ化ビニリデンを有する第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第1の層と、 少なくとも10重量%のフッ化ビニリデンを有する第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーを含む第2の層とを含み 前記第2の層は前記第1の層と接合しており、前記第1の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーと前記第2の実質的に中実の部分フッ素化熱可塑性ポリマーとは異なる組成を有し、 各組成は本質的に、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、完全フッ素化アルコキシビニルエーテル、完全フッ素化アルキルビニルエーテル、非フッ素化オレフィン、下記式(I): -CF(X)-CX_(2)- (I) (式中、各Xは独立して、水素、ハロゲン原子、またはフッ素化されてもよいC_(1)?C_(8)アルキル基である。) で表される単位、およびそれらの組み合わせから選ばれる共重合単位からなり、 但し、第1の層と第2の層との間の接合界面は、連結層、接着剤、および一方または両方の層の材料に付加される反応性基を含まない、物品。」 の点で一致し、相違点は存在しない。 したがって、本願発明は、引用発明である。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-24 |
結審通知日 | 2011-11-29 |
審決日 | 2011-12-12 |
出願番号 | 特願2003-585965(P2003-585965) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
佐野 健治 紀本 孝 |
発明の名称 | フルオロポリマー物品 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 大森 規雄 |
代理人 | 古橋 伸茂 |
代理人 | 小林 純子 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 片山 英二 |