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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1257162
審判番号 不服2008-20007  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-06 
確定日 2012-05-16 
事件の表示 特願2000-613409「中和されたアクリル性粘着パッチを備えた経皮治療システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月 2日国際公開、WO00/64418、平成14年12月10日国内公表、特表2002-542277〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成12年4月7日(パリ条約による優先権主張1999年4月22日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成20年5月1日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年8月6日に拒絶査定不服審判が出され、同年8月29日付けで手続補正書が提出されたものである。
そして、当審からの平成23年5月25日付け拒絶理由通知に対し、同年9月14日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明

本願の請求項1?10に係る発明は、平成23年9月14日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
非接着性の裏当て層(backing layer)と、作用物質含有感圧接着剤マトリックスと、剥離可能な非接着性(dehesive)保護層とを含むマトリックスシステムである経皮治療システムであって、
前記マトリックスは、
塩基性薬学的作用剤と中性薬学的作用剤とからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的作用剤と、
ポリアクリレートポリマーを含む感圧接着剤とを含み、
前記ポリアクリレートポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸またはメタクリル酸のエステル誘導体からなる群から選択されるモノマー単位を含むポリアクリレート骨格を有し、
前記モノマー単位は、前記ポリアクリレートポリマーの平均ポリマー質量に対して少なくとも50%(w/w)を占め、
非エステル化アクリル酸と非エステル化メタクリル酸からなる群から選択されるモノマーの前記全量は、前記ポリアクリレートポリマーの平均ポリマー質量に対して0.5?10.0%(w/w)であり、
前記非エステル化アクリル酸モノマーと非エステル化メタクリル酸モノマーのカルボキシル基は、アルカリ塩またはアルカリ土類塩の形態で、化学量論的に5?100%の割合で存在しており、
前記塩は、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物のアルコール溶液と、前記アクリレートポリマーとの中和反応の反応生成物であるか、または、アルカリアルコラートもしくはアルカリ土類金属アルコラートと、前記アクリレートポリマーとの中和反応の反応生成物であり、
前記マトリックスが、乾燥状態で前記マトリックスに分散されている水吸収性固形剤を含有し、前記固形剤が、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩もしくはカリウム塩、架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩、およびカルボキシメチルデンプンのナトリウム塩もしくはカリウム塩からなる群から選択され、
前記水吸収性固形剤の量が、前記作用物質含有感圧接着剤マトリックスの全重量に対して0.1?5重量%の範囲であるシステム。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例

平成23年5月25日付け当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特許第2693212号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。)。

(1-a)「【請求項1】フリー塩基構造の塩基性薬物を粘着剤中に含有してなる薬物含有粘着剤層を、柔軟な支持体上に積層してなるテープ製剤であって、粘着剤が炭素数が4?12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基を分子内に有する単量体から得られる共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部を塩基性物質によって不活性化してなる共重合体であることを特徴とする疾患治療用テープ製剤。」

(1-b)「【請求項2】塩基性物質が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、4級アミンから選ばれる少なくとも一種である請求項(1)記載の疾患治療用テープ製剤。」

(1-c)「本発明の疾患治療用テープ製剤は、フリー塩基構造の塩基性薬物を粘着剤中に含有してなる薬物含有粘着剤層を、柔軟な支持体上に積層してなるテープ製剤であって、粘着剤が炭素数が4?12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基を分子内に有する単量体から得られる共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部を塩基性物質によって不活性化してなる共重合体であることを特徴とするものである。
本発明では粘着剤として上記共重合体を用いることによって、薬物が安定的に含有されると共に放出性が顕著に向上し、さらに薬物を長時間にわたって定量的に持続放出することができるのである。」(第2頁第3欄第26?37行)

(1-d)「上記共重合体を形成するために用いるアクリル酸アルキルエステルとしては、皮膚接着性の点から炭素数が4?12のアルキル基(シクロヘキシル基の如き環状アルキル基も含む)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種類もしくは2種類以上を主成分単量体として用いることが好ましく、通常、50重量%以上配合して共重合体を調製する。」(第2頁第3欄第43?49行)

(1-e)「このようなアクリル系共重合体は、前記アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として用い、これに、(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸のようなカルボキシル基を分子内に有する単量体を1種類以上共重合し、さらに塩基性物質を添加することによって得ることができる。共重合するに際しては、上記カルボキシル基を分子内に有する単量体を0.5?20重量%、好ましくは2?10重量%の範囲で配合する。0.5重量%に満たない場合は持続放出性、特に疑似0次放出性が不充分となるおそれがあり、また、20重量%を超えると粘着剤の凝集力が高くなりすぎて皮膚接着性が低下するおそれがある。」(第2頁第4欄第9?20行)

(1-f)「本発明ではカルボキシル基を分子内に有するアクリル系共重合体を粘着剤として用いたテープ製剤を皮膚面に貼付すると、皮膚刺激などが発現するおそれがあるので、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアやエタノールアミンなどの4級アミンを有する化合物の如き塩基性物質を配合して粘着剤中のカルボキシル基を不活性化する。この場合、塩基性物質の配合量は粘着剤中のカルボキシル基のモル数以下とする。」(第2頁第4欄第41?49行)
(1-g)「塩基性物質はその配合量を変化させることによって薬物の初期放出量を多くして速効性を付与することもでき、薬物の放出性を自在に変化させることができる。また、塩基性物質を配合すると粘着剤の凝集性が高まると共に親水性も向上するので、皮膚面への糊残りが防止でき、また皮膚面からの汗分の吸収も良好となり、皮膚接着性の向上や皮膚刺激の低減に効果的である。」(第2頁第4欄第50行?第3頁第5欄第6行)

(1-h)「以上のように本発明の疾患治療用テープ製剤は、薬物としてフリー塩基構造の塩基性薬物を用いているので経皮吸収性が良好なものである。また、薬物を含有する粘着剤として不活性化されたカルボキシル基を分子内に有するアクリル系共重合体からなる粘着剤を用いているので、上記特性以外に薬物の持続放出性が良好となる。」(第4頁第7欄第44?49行)
(1-i)「実施例1
アクリル酸イソノニルエステル96部、アクリル酸4部を、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として酢酸エチル中にて重合を行い、粘着剤溶液を得た。
得られた粘着剤溶液に水酸化ナトリウムを配合し、粘着剤中のカルボキシル基の90%を不活性化した。
以上のようにして得られたカルボキシル基の一部を不活性化した粘着剤溶液にチモロールを配合(チモロール含量20%/対固形分)し、これを12μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布、乾燥して本発明の疾患治療用テープ製剤を得た。なお、粘着剤中の全カルボキシル基量とチモロール量とのモル比は、4.44/6.32であった。」(第4頁第8欄第8?20行)

また、平成23年5月25日付け当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平7-206710号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。)。

(2-a)「【請求項1】 シート状支持体、薬物含有粘着剤層、セパレータからなる経皮投薬用テープ製剤であって、薬物含有粘着剤層は上記テープ製剤を適用面から剥離除去する際に、含有する吸湿性物質の一部が適用面上に残留するように、一種もしくは二種以上のエラストマー50?95重量%以上と、吸湿性物質5?50重量%と、経皮吸収用薬物とを含む均質分散状態からなることを特徴とする経皮投薬用テープ製剤。」

(2-b)「【請求項2】 エラストマーがポリイソブチレン、アクリル系重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体から選ばれる一種である請求項1記載の経皮投薬用テープ製剤。」

(2-c)「【請求項3】 吸湿性物質がカルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の経皮投薬用テープ製剤。」

(2-d)「皮膚面から薬物を経皮吸収によって体内に投与する方法としては、軟膏剤やクリーム剤、スプレー剤などを用いる方法が古くから採用されているが、近年は粘着剤中に薬物を含有させた、所謂粘着テープ形状の製剤が種々提案されており、数種類の製剤が上市されている。このような粘着テープ状の製剤は使用の簡便さや薬効の持続性、副作用の発現の少なさ、肝臓での一次代謝がないことなど数々の利点を有するものである。
しかしながら、通常は長時間にわたって皮膚面に貼付するので、発汗や入浴時に水分が浸透して皮膚接着力の低下を招き、使用中に剥がれることがある。従って、適度に皮膚接着力を強くする必要があるが、接着力を強くしすぎると製剤を皮膚面から剥離する際に角質層が剥離したり、角質層に損傷を与えて皮膚刺激の原因となりやすく、実用的には皮膚接着力の調整は極めて難しいものである。」(第2頁第1欄第25?40行)

(2-e)「本発明は上記従来の粘着テープ状製剤の問題点を解決すべくなされたものであって、貼着後の水分の浸入に対しても皮膚面へ良好に接着して、しかも皮膚面からの剥離時には角質層の剥離や損傷などの皮膚刺激を与えることなく簡単に剥離除去できる経皮投薬用テープ製剤を提供することを目的とするものである。」(第2頁第1欄第42?48行)

(2-f)「本発明者らは上記目的を達成するために検討を重ねた結果、薬物を含有する粘着剤層を少なくとも特定量のエラストマーと、特定量の吸湿性物質から形成し、吸湿性物質を貼着中に吸湿させて皮膚面からの製剤の剥離時に、吸湿した吸湿性物質の一部を皮膚面上に残留させることによって、皮膚接着性と剥離時の低皮膚刺激性の両特性に優れたテープ製剤が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明はシート状支持体、薬物含有粘着剤層、セパレータからなる経皮投薬用テープ製剤であって、薬物含有粘着剤層は上記テープ製剤を適用面から剥離除去する際に、含有する吸湿性物質の一部が適用面上に残留するように、一種もしくは二種以上のエラストマー50?95重量%以上と、吸湿性物質5?50重量%と、経皮吸収用薬物とを含む均質分散状態からなることを特徴とする経皮投薬用テープ製剤を提供するものである。」(第2頁第1欄第50行?第2頁第2欄第16行)

(2-g)「このようなエラストマーとしては、・・・を用いることができる。これらのうち純度や熱可塑性、経済性(コスト)の点から、ポリイソブチレン、アクリル系重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体をエラストマー成分として用いることが好ましい。」(第3頁第4欄第22?33行)

(2-h)「このような吸湿性物質としては水分を吸収して溶解する物質だけでなく、吸湿して所謂ゼリー状となるものや、吸水性高分子と呼ばれている物質を用いることができ、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、ローカスロビーンガム、キサンタンガム、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、コラーゲン、ポリビニルピロリドンなどを一種もしくは二種以上用いることができる。これらのうちゲル形成性や吸湿性の点から、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、ペクチン、ゼラチンを用いることが好ましい。」(第3頁第4欄第43行?第4頁第5欄第5行)

(2-i)「なお、本発明のテープ製剤では上記吸湿性物質を含有させて貼付中に湿分を適度に吸収する作用を有するが、吸水率は吸水前の粘着剤層重量の50%以下、好ましくは3?30%の範囲となるようにその種類や配合量を調製することが好ましい。吸水率が3%にも満たないようなほとんど吸水しない場合には、テープ製剤を皮膚面から剥離除去する際に、貼着部位の角質層が剥離したり損傷したりする可能性が極めて高く、本発明における所望の効果を発揮できないものである。また、吸水率が50%を超えると、テープ製剤を剥離除去する際に皮膚面上に粘着剤層が多量に残存する凝集破壊現象が起こる可能性が高まるので、望ましくない。」(第4頁第5欄第6?17行)

さらに、平成23年5月25日付け当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平7-330602号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。)。

(3-a)「【請求項1】 薬物含有粘着剤層を支持体の一方の面に形成した経皮吸収型製剤であって、該粘着剤層が薬物としてのピロカルピンフリー塩基と、1種または2種以上の吸湿性物質とを含有する経皮吸収型製剤。」

(3-b)「通常の粘着テープ製剤の場合、発汗により粘着剤の皮膚接着力が低下しテープが直ちに剥離するという問題がある。」(第2頁第2欄第38?40行)

(3-c)「本発明の目的は、ピロカルピンの皮膚透過性に優れ、かつピロカルピンの副作用により生じる発汗に対しても剥離することがなく、長時間の皮膚面への貼付が可能なピロカルピンの経皮吸収型製剤を提供することにある。」(第2頁第2欄第46?49行)

(3-d)「本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ピロカルピンの皮膚透過性を高めるためにピロカルピンフリー塩基を用い、またピロカルピンを含有する粘着剤層に吸湿性物質を配合することにより、上記目的が達成されることを見出した。すなわち、該吸湿性物質がピロカルピンの作用により生じる汗の水分を吸収する結果、薬物含有粘着剤層の接着性およびピロカルピンの皮膚透過性を損なうことなく、発汗に対する剥離が防止され、長時間貼付可能な経皮吸収型ピロカルピン製剤が提供されることを見出し本発明を完成した。」(第3頁第3欄第1?10行)

(3-e)「粘着剤層に適度な凝集力による粘着性と保形性を付与するために、粘着剤層にエラストマーを含有させることができる。エラストマーは、通常、粘着剤層重量の30?90重量%、好ましくは50?70重量%の範囲で配合される。このようなエラストマーとしては、・・・を用いることができる。これらのうち、純度、熱可塑性および経済性(コスト)の点からポリイソブチレン、アクリル系重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体をエラストマー成分として用いることが好ましい。」(第3頁第4欄第5?22行)

(3-f)「このような吸湿性物質としては、水分を吸収して溶解する物質だけでなく、吸湿して所謂ゼリー状となるものや、吸水性高分子と呼ばれている物質を用いることができる。水分を吸収して溶解する吸湿性物質としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、グアーゴム、ロウカストビーンゴム、カラヤゴム、キサンタンゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、ポリビニルピロリドン、デキストリンなどが挙げられる。吸湿してゼリー状となる吸湿性物質としては、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ゼラチン、コラーゲン、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。吸水性高分子としては、例えば商品名スミカゲルSP-520(住友化学工業株式会社)、商品名アクアキープ4SH(住友精化株式会社)、商品名アラソープ800F(荒川化学工業株式会社)、商品名アラソープS-100F(荒川化学工業株式会社)、商品名サンウェット1M-300MPS(三洋化成株式会社)、商品名サンウェット1M-1000MPS(三洋化成株式会社)などの市販品が挙げられる。これらの吸湿性物質は1種または2種以上を用いることができる。これらのうち、ゲル形成性や吸湿性の点でカルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、ゼラチンを用いることが好ましい。」(第3頁第4欄第47行?第4頁第5欄第19行)

(3-g)「本発明の経皮吸収型製剤では、上記吸湿性物質を含有させて貼付中に湿分を適度に吸収する作用を有するが、吸水率は吸水前の粘着剤層重量の50%以下、好ましくは3?30%の範囲となるようにその種類や配合量を調製することが好ましい。吸水率が3%より少ない場合は水分がほとんど吸収されず、貼付中に剥離する可能性が高く、本発明における所望の効果が発揮できない。また、吸水率が50%を越えると、製剤を剥離した際に皮膚面上に粘着剤が多量に残存する凝集破壊現象が起こる可能性が高まるので望ましくない。」(第4頁第5欄第20?29行)

(3-h)「本発明の経皮吸収型製剤は、通常、粘着剤層を保護するために貼付面を剥離ライナーで被覆する。剥離ライナーとしては、シリコーン樹脂処理やフッ素樹脂処理をした剥離紙、金属箔、アルミニウム箔、プラスチックフィルム等が挙げられる。」(第5頁第7欄第21?25行)

4.対比

引用例1の請求項1における「炭素数が4?12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基を分子内に有する単量体から得られる共重合体」は、「炭素数が4?12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル」を主成分単量体として50重量%以上配合し、「カルボキシル基を分子内に有する単量体」を0.5?20重量%の範囲で配合して得られる共重合体であり(上記(1-a)、(1-d)、(1-e)を参照)、前記「炭素数が4?12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル」の詳細は「炭素数が4?12のアルキル基(シクロヘキシル基の如き環状アルキル基も含む)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種類もしくは2種類以上」であり、「カルボキシル基を分子内に有する単量体」の詳細は「(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸のようなカルボキシル基を分子内に有する単量体を1種類以上」である(上記(1-d)および(1-e)を参照)。
そして、引用例1の請求項1における「塩基性物質」の詳細は「カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアやエタノールアミンなどの4級アミンを有する化合物の如き塩基性物質」である(上記(1-b)および(1-f)を参照)。
よって、引用例1には、「フリー塩基構造の塩基性薬物を粘着剤中に含有してなる薬物含有粘着剤層を、柔軟な支持体上に積層してなるテープ製剤であって、粘着剤が、炭素数が4?12のアルキル基(シクロヘキシル基の如き環状アルキル基も含む)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種類もしくは2種類以上を主成分単量体として50重量%以上、(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸のようなカルボキシル基を分子内に有する単量体を1種類以上0.5?20重量%の範囲で配合して得られる共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部を、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物の如き塩基性物質によって不活性化してなる共重合体であることを特徴とする、疾患治療用テープ製剤。」 の発明(以下、「引用例1発明」という。)が、記載されている。

そこで、本願請求項1に係る発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明における「疾患治療用テープ製剤」、「フリー塩基構造の塩基性薬物」、「薬物含有粘着剤層」、「柔軟な支持体」、「炭素数が4?12のアルキル基(シクロヘキシル基の如き環状アルキル基も含む)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル」、「(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸のようなカルボキシル基を分子内に有する単量体」は、本願発明における「経皮治療システム」、「塩基性薬学的作用剤」、「作用物質含有感圧接着剤マトリックス」、「非接着性の裏当て層(backing layer)」、「アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸またはメタクリル酸のエステル誘導体からなる群から選択されるモノマー単位」、および「非エステル化アクリル酸と非エステル化メタクリル酸からなる群から選択されるモノマー」に、それぞれ相当する。
また、引用例1発明において、「カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物」もしくは「カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物」の如き「塩基性物質によって不活化してなる」とは、技術常識からみて、カルボキシル基の一部もしくは全部が「塩基性物質」との中和反応により「アルカリ塩またはアルカリ土類塩の形態」で存在している、と言い換えることができる。
そして、本願発明における「アルカリ金属水酸化物」、「アルカリ土類金属水酸化物」、「アルカリアルコラート」および「アルカリ土類金属アルコラート」はいずれも「塩基性物質」であるから、本願発明における「ポリアクリレートポリマー」と引用例1発明における「塩基性物質によって不活化してなる共重合体」とは、カルボキシル基の一部もしくは全部が「アルカリ金属水酸化物」もしくは「アルカリ土類金属水酸化物」の如き「塩基性物質」との中和反応により「アルカリ塩またはアルカリ土類塩の形態」で存在している点で、共通すると言える。

よって、本願発明と引用例1発明とは、
「非接着性の裏当て層(backing layer)、作用物質含有感圧接着剤マトリックスを含むマトリックスシステムである経皮治療システムであって、
前記マトリックスは、塩基性薬学的作用剤と、ポリアクリレートポリマーを含む感圧接着剤とを含み、
前記ポリアクリレートポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸またはメタクリル酸のエステル誘導体からなる群から選択されるモノマー単位を含むポリアクリレート骨格を有し、
前記モノマー単位は、前記ポリアクリレートポリマーの平均ポリマー質量に対して少なくとも50%(w/w)を占め、
非エステル化アクリル酸と非エステル化メタクリル酸からなる群から選択されるモノマーの前記全量は、前記ポリアクリレートポリマーの平均ポリマー質量に対して0.5?10.0%(w/w)であり、
前記非エステル化アクリル酸と非エステル化メタクリル酸のカルボキシル基の一部もしくは全部が、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物との中和反応によりアルカリ塩またはアルカリ土類塩の形態で存在しているポリアクリレートポリマーである、経皮治療システム。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、中和反応の際にアルカリ金属水酸化物の「アルコール溶液」もしくはアルカリ土類金属水酸化物の「アルコール溶液」を用いるのに対し、引用例1発明には、前記「アルコール溶液」を用いることについて記載されていない点。

[相違点2]
本願発明では「前記マトリックスが、乾燥状態で前記マトリックスに分散されている水吸収性固形剤を含有し、前記固形剤が、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩もしくはカリウム塩、架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩、およびカルボキシメチルデンプンのナトリウム塩もしくはカリウム塩からなる群から選択され、前記水吸収性固形剤の量が、前記作用物質含有感圧接着剤マトリックスの全重量に対して0.1?5重量%の範囲である」のに対し、引用例1発明には、当該マトリックスが水吸収性固形剤を含有することについて記載されていない点。

[相違点3]
本願発明では、ポリアクリレートポリマーのカルボキシル基が「化学量論的に5?100%の割合」でアルカリ塩またはアルカリ土類塩の形態で存在しているのに対し、引用例1発明には、当該ポリマーのカルボキシル基の「一部もしくは全部」がアルカリ塩またはアルカリ土類塩の形態で存在していると記載されているが、具体的に「化学量論的に5?100%の割合」で存在しているとは記載されていない点。

[相違点4]
本願発明は「剥離可能な非接着性(dehesive)保護層」を含むのに対し、引用例1発明には、保護層について記載されていない点。

5.判断

(1)相違点1について

本願出願当初明細書の段落【0025】?【0026】には「上述の目的は、通常使用されている水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液の代わりに、少量の水を任意で含むこれらのアルコール溶液、好ましくはメタノール溶液またはエタノール溶液を使用することによって達成可能であった。これらの条件によれば、上記酸ポリアクリレート感圧接着剤が上記溶液から析出せず、かつ生成物が安定して溶解している状態で、上記反応が起こり得る。
さらに、例えば、ナトリウムエタノラート(sodium ethanolate)またはカリウムエタノラート(potassium ethanolate)といったアルカリアルコラート(alkali alcoholates)を使用することも可能である。これらのアルカリ性試薬によれば、中和反応における水の使用を完全に不要になり、さらに生成物として水が形成されることもない。」と記載されている(なお、下線は当審で付加した。)。
上記の記載は、中和反応の際にアルカリ金属水酸化物の「アルコール溶液」もしくはアルカリ土類金属水酸化物の「アルコール溶液」(以下、これらを「特定のアルカリ性試薬」という。)を用いた場合、得られた「アルカリ塩またはアルカリ土類塩」が上記溶液から析出せず、中和反応における水の使用が完全に不要になり、生成物として水が形成されることもないことを開示する記載であるが、前記「特定のアルカリ性試薬」を用いて得られた「アルカリ塩またはアルカリ土類塩」が、引用例1発明において得られた「アルカリ塩またはアルカリ土類塩」と比較して化学構造上の差異を有することを開示する記載ではない。
そして、本願出願当初明細書の段落【0021】に「上述の目的は、酸ポリアクリレート感圧接着剤中に含有されるカルボキシル基を、アルカリ塩またはアルカリ土類塩へと変換し、部分的または完全に中和する本発明によって達成される。試薬としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物、好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムといったそれらの水酸化物を使用する。」との記載(なお、下線は当審で付加した。)があるところ、引用例1の実施例1では、本願出願当初明細書において好ましい試薬として記載されている「水酸化ナトリウム」を用い、粘着剤(ポリアクリレートポリマー)の酢酸エチル溶液に水酸化ナトリウムを配合してカルボキシル基を不活性化して得られた粘着剤溶液に、さらにチモロール(塩基性薬学的作用剤)を配合しているのであるから(上記(1-i)を参照)、当該実施例における中和反応では水を使用しておらず、生成物として水が形成されておらず、得られた「アルカリ塩またはアルカリ土類塩」が溶液から析出していない、と解される。
してみると、本願発明、引用例1発明のそれぞれにおいて得られた「アルカリ塩またはアルカリ土類塩」との間に化学構造上の差異があるとする根拠となる記載は、本願出願当初明細書および引用例1のいずれにも認められないので、両者の化学構造は同一であると解すべきである。
よって、上記相違点1は、実質的な差異ではない。

なお、請求人は原審拒絶理由通知に対する平成20年3月10日付け意見書の「(a)理由Dについて」において、「その結果、これらの中和されたポリマーは、水に対してより高い結合能力を有します(出願時明細書の第0022段落参照)。」と主張している。
しかし、本願出願当初明細書の段落【0022】における「得られたポリマー塩は、全てのイオン帯電(ionically charged)分子または分子部(molecule parts)がそうであるように、水和カバーの形態で水に対して高い結合能(binding capacity)を有する。特に、対イオンのナトリウムおよびカリウム塩は、この要領で多量の水に結合できる。」との記載からみて(なお、下線部は当審で付加した。)、請求人が主張する「水に対してより高い結合能力を有する」という性質は、カルボキシル基を中和してポリマー塩の形態にしたことに伴って生じる一般的な性質であって、前記「特定のアルカリ性試薬」を用いて中和して得られたポリマー塩が特異的に有する性質ではない。

(2)相違点2について

引用例1における「塩基性物質はその配合量を変化させることによって薬物の初期放出量を多くして速効性を付与することもでき、薬物の放出性を自在に変化させることができる。また、塩基性物質を配合すると粘着剤の凝集性が高まると共に親水性も向上するので、皮膚面への糊残りが防止でき、また皮膚面からの汗分の吸収も良好となり、皮膚接着性の向上や皮膚刺激の低減に効果的である。」との記載は(上記(1-g)を参照)、引用例1発明において、薬物(「塩基性薬学的作用剤」)の放出性を自由に変化させるために塩基性物質(「カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物」もしくは「カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物」)の配合量を変化させた場合、作用物質含有感圧接着剤マトリックスの親水性が変動すること、その親水性の変動により皮膚接着性や皮膚刺激において悪影響が生じ得ること、を開示する記載である。
すなわち、引用例1に直接の記載はないものの、引用例1発明には、作用物質含有感圧接着剤マトリックスの親水性の変動に起因して生じ得る、皮膚接着性や皮膚刺激における悪影響を防止する必要があるという「潜在的課題」が存在するものと解される。
ここで、引用例2および引用例3には、薬学的作用物質を含有する感圧接着剤マトリックスを有する経皮治療システムにおいて、貼着後の水分の侵入や貼付中の汗などの湿気により、皮膚接着性や皮膚刺激における悪影響が生じ得ることが記載されており(上記(2-d)、(3-b)および(3-c)を参照)、貼着後の水分の侵入や貼付中の汗などの湿気により感圧接着剤マトリックスの親水性が変動することは技術常識からみて自明であるので、引用例1発明における前記「潜在的課題」は、本願優先日前に周知の課題であると言える。
そして、前記周知の課題を解決する手段として、引用例1発明と同様にアクリル系共重合体を含有する感圧接着剤マトリックスに水吸収性固形剤を乾燥状態で分散させ、当該マトリックスの吸水率が適切な範囲になるように考慮して水吸収性固形剤の含有量を適宜決定することは、引用例2および引用例3に記載のように周知技術である(上記(2-a)?(2-i)、(3-a)?(3-h)を参照)。
(なお、引用例2および引用例3における「薬物含有粘着剤層」、「吸湿性物質」が、本願発明および引用例1発明における「作用物質含有感圧接着剤マトリックス」、本願発明における「水吸収性固形剤」にそれぞれ相当すること、さらに引用例2および引用例3における「吸湿性物質」が感圧接着剤マトリックスに「乾燥状態」で分散されていることは、技術常識からみて自明である。)
してみると、引用例1発明における前記「潜在的課題」を解決する手段として、引用例2および引用例3に記載のような周知技術を適用し、作用物質含有感圧接着剤マトリックス中に水吸収性固形剤率を乾燥状態で分散させ、当該マトリックスの適切な吸水率を考慮して、水吸収性固形剤の含有量を当該マトリックスの全重量に対して0.1?5重量%の範囲にすることは、単なる周知技術の適用の域を出ず、当業者に格別の創意工夫を要したものではない。

なお、請求人は当審拒絶理由通知に対する平成23年9月14日付け意見書の「4.理由1について (i)請求項1について」の項目において、
「刊行物Bは(粘着性を向上させるよりむしろ)粘着性の低下のための粘着剤を教示しているため、当業者であれば、本願明細書に記載の問題に対して、刊行物Bの教示は確実に考慮しないでしょう。さらに、当業者であれば、この教示を避けるでしょう。というのも「皮膚上に残る吸湿性材料の一部」が患者またはユーザーにとって明らかに不利だからです。
刊行物Cは、特定の作用物質、ピロカルピンを運搬するのに特に適合させた、経皮製剤に関します。この作用物質は、副作用として、過剰な発汗を生じることが知られています(刊行物Cの第0001段落)。ピロカルピン含有経皮製剤で処理される患者は、過剰な汗を生じることが予想されるので、刊行物Cは、粘着剤層中に吸湿性物質を添加することを提案しています。ゆえに、刊行物Cに提供された情報からは、吸湿性物質を添加することは、作用物質としてピロカルピンを用いることに結びつけられ、かつ限定されていることは明らかです。従って、当業者は、この教示はむしろ特定な単独のケースに関するものであるため、考慮しないでしょう。」と主張している。
しかし、刊行物B(当審決における引用例2)には「貼着後の水分の浸入に対しても皮膚面へ良好に接着して、」および「吸湿性物質を貼着中に吸湿させて皮膚面からの製剤の剥離時に、吸湿した吸湿性物質の一部を皮膚面上に残留させることによって、皮膚接着性と剥離時の低皮膚刺激性の両特性に優れた」と記載されており(上記(2-e)および(2-f)を参照)、請求人による、引用例2が「粘着性の低下のための粘着剤を教示している」との主張、「「皮膚上に残る吸湿性材料の一部」が患者またはユーザーにとって明らかに不利だ」との主張は、引用例2の記載を誤認しているので誤りである。
また、刊行物C(当審決における引用例3)には「通常の粘着テープ製剤の場合、発汗により粘着剤の皮膚接着力が低下しテープが直ちに剥離するという問題がある。」と記載されており(上記(3-b)を参照)、発汗は作用物質に起因するものだけでなく、気象や室内環境等(例えば高温多湿)に起因する発汗もあることを勘案すれば、請求人による「刊行物Cに提供された情報からは、吸湿性物質を添加することは、作用物質としてピロカルピンを用いることに結びつけられ、かつ限定されている」との主張は、引用例3の記載を誤認しているので誤りである。
以上のように、請求人の主張は誤りであるので認められず、引用例1発明において引用例2および引用例3に記載のような周知技術を適用するにあたり、何らかの支障となる特段の事情はない。

(3)相違点3について

引用例1における「塩基性物質はその配合量を変化させることによって薬物の初期放出量を多くして速効性を付与することもでき、薬物の放出性を自在に変化させることができる。」との記載からみて(上記(1-g)を参照)、引用例1発明における「一部もしくは全部」の具体的な数値範囲を「化学量論的に5?100%の割合」にする点は、当業者が、薬物の放出性を考慮して適宜調整し得た事項にすぎず、格別の困難性は認められない。

(4)相違点4について

引用例2における「セパレータ」および引用例3における「剥離ライナー」(上記(2-a)および(2-f)、(3-h)を参照)は、本願発明における「剥離可能な非接着性(dehesive)保護層」に相当する。
そして、経皮治療システムの技術分野において、作用物質含有感圧接着剤マトリックスを保護する必要があることは自明であるから、引用例1発明において、引用例2および引用例3に記載のような保護層を設けることは自明の事項である。
よって、上記相違点4は、実質的な差異ではない。

(5)本願発明の構成をとることにより得られる効果について

本願出願当初明細書には「塩基性の薬学的作用物質と中和された酸ポリアクリレート感圧接着剤とを組み合わせて使用することにより、薬学的作用剤の放出率が、一部では極めて顕著に、増加することがわかった。」(段落【0042】)、「塩基性薬学的作用剤の放出率は、酸ポリアクリレート感圧接着剤の中和度により制御可能であることがわかった。」(段落【0043】)と記載されている。
また、請求人は平成23年2月21日付け回答書において、本発明者は中和されたアクリレートコポリマーを含有するシステムが、感湿性が高すぎて望ましくなく、皮膚の発汗による影響を受けやすくなることを見出したこと、そして、この問題は、強力な吸水性添加剤を混合することにより解決できることを見出したことを主張しており、これらは、本願出願当初明細書の段落【0057】?【0059】にも記載されている事項である。
しかし、これらの効果は引用例1?3の記載からみて(上記(1-c)、(1-g)、(1-h)、(2-e)、(2-f)、(3-d)を参照)、いずれも当業者が容易に予測し得た範囲を超えるものはなく、格別顕著な効果ではない。

(6)小括

以上(1)?(5)のとおりであるから、本願発明は、その優先日前に頒
布された刊行物である引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-09 
結審通知日 2011-12-13 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2000-613409(P2000-613409)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 景輔大宅 郁治  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 平井 裕彰
前田 佳与子
発明の名称 中和されたアクリル性粘着パッチを備えた経皮治療システム  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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