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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1257188
審判番号 不服2010-8577  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-22 
確定日 2012-05-16 
事件の表示 特願2004-538284「グループ通信ネットワークにおいてマルチメディアを提供するための通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 1日国際公開、WO2004/028113、平成18年 1月 5日国内公表、特表2006-500828〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成15年9月19日(優先権主張 2002年9月20日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年2月6日付けで拒絶の理由が通知され,同年7月10日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,同月29日付けで拒絶の理由が通知され,同年11月4日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,同年12月9日付けで拒絶の査定がされ,平成22年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正却下の決定

[結論]
平成22年4月22日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成22年4月22日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件補正の前の請求項1(平成21年11月4日付け手続補正による。)の記載
「 【請求項1】
グループ通信ネットワークにおいて管理している通信マネージャ(CM)とマルチメディアを通信するための通信装置(CD)における方法であって、該方法は下記を具備する:
該CMに該CDでのメディアのタイプを提供すること、該タイプは、該CDが通信することができるメディアを表示する;
該CDの該タイプに基づいて該メディアを選択的に通信すること;及び
メディア・トラフィックは、ペイロードの内の、メディア・ペイロード・フォーマット・デスクリプタを含む、情報を表しているデータ・フレームをグループ分けすることによってカプセル化され、そして該CDが1つの選択されたグループに参加することを許可されていることを確認した時、および該選択されたグループに参加するための要請要求に応答して、シグナリング・パラメータおよびメディア・トラフィックの説明が埋め込まれ、該CDに提供される。」

「 【請求項1】
グループ通信ネットワークにおいて管理している通信マネージャ(CM)とマルチメディアを通信するための通信装置(CD)における方法であって、該方法は下記を具備する:
該CMに該CDでのメディアのタイプを半二重通信方式モードによって提供すること、該タイプは、該CDが通信することができるメディアを表示する;
該CDの該タイプに基づいて該メディアを選択的に半二重通信方式モードによって通信すること;及び
メディア・トラフィックは、ペイロードの内の、メディア・ペイロード・フォーマット・デスクリプタを含む、情報を表しているデータ・フレームをグループ分けすることによってカプセル化され、そして該CDが1つの選択されたグループに参加することを許可されていることを確認した時、および該選択されたグループに参加するための要請要求に応答して、シグナリング・パラメータおよびメディア・トラフィックの説明が埋め込まれ、該CDに提供される。」(当審注 下線は請求人が付したもの。)
と補正する事項を含むものである。

2.本件補正に対する当審の判断
本件補正の前の「該CMに該CDでのメディアのタイプを提供すること」を「該CMに該CDでのメディアのタイプを半二重通信方式モードによって提供すること」と補正することは,CDでのメディアのタイプの提供の通信方式を「半二重通信方式モード」に限定するものと一応いえる。

ここで,上記限定が,本願の願書に最初に添付された外国語書面の翻訳文の明細書,特許請求の範囲若しくは図面(以下「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか(本件補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するか)について以下に確認する(当審注 誤訳訂正書による補正はなされていない。)。

(1)
【背景技術】
【0002】
点-対-多点通信システムは、一般に、中央位置とシステムの複数のユーザとの間の通信を提供する。例えば、地上移動無線機(Land Mobile Radios)(LMR)を使用しているディスパッチ(dispatch)システムは、中央ディスパッチ・センタと1若しくはそれより多くの対応する保有車両との間のスケジューリング情報を通信するために、トラック、タクシー、バス、及びその他の自動車で使用されてきている。通信は、車両群中の特定の自動車へ、若しくは全ての自動車へ同時に向けられることがある。
【0003】
迅速で効率的な、1-対-1又は1-対-複数(グループ)通信を目的とした1つのワイアレス・サービスのクラスは、同時に順方向リンク又は逆方向リンクを使用して、半二重方式通信で動作する。ユーザは、グループ通信を始めるために電話機/無線機上の“プッシュ-ツー-トーク”(PTT)ボタンを押す。フロアを認可されるならば、ユーザは、短い時間の期間の間メディアを提供する。ユーザがPTTボタンを放した後で、他のユーザは、フロアを要求できる。これらのサービスは、一人の人間、“ディスパッチャ”、が、現場勤務の従業員又はタクシー運転手のような、グループの人々と通信する必要がある場合のアプリケーションにおいて従来は使用されてきている。同様のサービスは、インターネット上で提供されてきており、“ボイス・チャット”として一般に知られている。
【0004】
これらのサービスの鍵となる特徴は、通信が迅速で瞬間的であり、通常はPTTボタンを単に押すことにより始まり、典型的なダイアルをすること及びベルを鳴らすシーケンスを経由しないことである。このサービスのタイプの通信は、概して、個々のメディアの“スパーツ(spurts)”が一般に数秒のオーダーであり、“通信”がおそらく1分以下しか継続しない、非常に短時間である。ユーザがフロアを有しメディアを提供し始めることができることを示している、ユーザがフロアを要求した時と、ユーザが通信マネージャから肯定的な又は否定的な確認を受信した時との間の時間遅延は、PTT待ち時間として知られている。
【0005】
PTT半二重方式通信は、多くの利点を提供する、例えば、改善されたバンド幅効率、待ち時間に対する感度の減少、及び単純化されたエコー取り消しである。
【0006】
それゆえ、PTTグループ通信の利点を提供する、半二重通信方式モードで、マルチメディア、例えば、オーディオ、ビデオ、画像及び/又はデータ、の同時通信に対する必要性がある。

(2)
【0015】
一般的な全体像
グループ通信サービスを提供するためのシステム及び方法の1実施形態が、図2に機能的ブロック図のフォーマットで図示される。描かれたものは、グループ通信システム200であり、プッシュ-ツー-トーク・システム、グループ同報通信システム、ディスパッチ・システム、点対多点通信システム、又はテレビ会議サービスをサポートする。そのような通信システムの決定的な特性は、一般に、ただ一人のユーザが、半二重通信モードで、任意の所与の時間に他のユーザへ情報を送信することである。グループ通信システム200において、個人個人がグループ構成員として知られる、通信装置ユーザのグループは、各グループ構成員に割り当てられた通信装置を使用して互いに通信する。

(3)
【0057】
グループ・メディア通信
図5は、1実施形態にしたがった、メディア通信の各種のモードを説明する図である。他の構成は、当然可能である。図5に示されたモードが、いずれかのタイプのCDに対して適用できることが、理解されるはずである。
【0058】
CD202,204,206,208及び210は、予め規定された(チャット-ルーム)若しくはリアル-タイムで規定された(アド-ホック)グループの構成員であることができる。オーディオ通信に対するフロアを有する、CD202は、オーディオ信号をデータ・パケットに変換し、それらを、例えば、逆方向トラフィック・チャネルを介して半二重通信方式通信方法で、CM218へ送る。CM218は、CD202からオーディオ情報を受け取り、設定されたグループにより規定されたように、目的のCDへ受信されたオーディオ情報を送る。例えば、CM218は、順方向トラフィック・チャネルを介して半二重通信方式通信方法で、CD204,206,208,及び210へオーディオを送る。
【0059】
オーディオ・フロアとは別のビデオ通信に対するビデオ・フロアを有する、CD206は、ビデオ信号をデータ・パケットに変換し、それらを、例えば、逆方向トラフィック・チャネルを介して半二重通信方式通信方法で、CM218へ送る。CM218は、CD206からビデオ情報を受け取り、順方向トラフィック・チャネルを介して半二重通信方式通信方法で、設定されたグループにより規定されたように、目的のCDへ受信されたビデオ情報を選択的に送る。例えば、CM218は、CD202及び204へ受信されたビデオを送る。CD202及び204は、ビデオ能力を有し、それらのそれぞれのユーザは、ビデオを受信することを選択されている。CM218は、CD208及び210へビデオを送らない。CD208及び210は、どちらもビデオ能力を持たず、それらのユーザは、ビデオを受信することを選択されていない。CM218は、CD210へ1若しくはそれより多くの静止画像を送る。CD210は、画面だけを有する可能性があり、そうでなければ、そのユーザは、ビデオ全体を受信することのコストを節約するために、ビデオ全体よりはむしろ、静止画像を受信することを選択している。静止画像は、予め記憶された画像である可能性があり、若しくはグループ内で通信されるリアル-タイム・ビデオから取り込まれることができる。都合の良いことに、オーディオ・フロアを有するユーザは、
ビデオ・フロアを有するユーザと情報交換できる。例えば、どのように動作させ、的を絞り、及び/又はビデオを撮影するかの指示を与える。
【0060】
ユーザが、同じCDを経由して同時にビデオを受信し、オーディオを送っている場合に、各メディアは、半二重通信方式モードで送信される、例えば、CDは、順方向リンク上でビデオを受信するが、逆方向リンク上でオーディオを送る。しかしながら、ユーザが、同じCDを経由してビデオ及びオーディオの両者を同時に受信する又は送信する場合に、ビデオ及びオーディオの両者は、同じリンク上で半二重通信方式モードで送信される。例えば、CDは、順方向リンク上でオーディオ及びビデオの両者を受信する、若しくはCDは、逆方向リンク上でオーディオ及びビデオの両者を送信する。

(4)
【0090】
CD202は、しかも、“私的な通話”?通話者がプッシュ-ツー-トーク・ボタンを押すことによって始められた半二重通信方式点-対-点通話?のコンセプトをサポートできる。プッシュ-ツー-トーク・ボタンを押すことは、旧来の全二重通信方式点-対-点通話で生じるように、目的のCDのベルを鳴らすことなく受け入れられる。

(当審注 上記(1)?(4)において下線は当審が付与。)

上記の記載によれば,本件当初明細書等には,半二重通信方式モードで,オーディオ信号,ビデオ信号等メディアの提供することは記載されているが,メディアのタイプを提供することの記載はない。
そうすると,本件補正の請求項1に記載された発明は,半二重通信方式モードで,オーディオ信号,ビデオ信号等メディアを提供すること,に加えて,新たに,メディアのタイプを提供しようとする技術的事項を導入しようとするものであるといえる。
よって,「該CMに該CDでのメディアのタイプを半二重通信方式モードによって提供すること」は,本件当初明細書等に記載されたものではなく,本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項の関係において,新たな技術的事項を導入しないものでない。
(当審注 請求人は,平成23年8月31日付け回答書の1.進歩性についての(5)に,「メディアのタイプを半二重通信方式モードによって提供すること」が明細書に記載されていないとの指摘は,そのとおりである,と記載している。)

3.まとめ
したがって,本件補正(平成22年4月22日付け手続補正)は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

上記のとおり,平成22年4月22日付け手続補正は却下された。
したがって,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
グループ通信ネットワークにおいて管理している通信マネージャ(CM)とマルチメディアを通信するための通信装置(CD)における方法であって、該方法は下記を具備する:
該CMに該CDでのメディアのタイプを提供すること、該タイプは、該CDが通信することができるメディアを表示する;
該CDの該タイプに基づいて該メディアを選択的に通信すること;及び
メディア・トラフィックは、ペイロードの内の、メディア・ペイロード・フォーマット・デスクリプタを含む、情報を表しているデータ・フレームをグループ分けすることによってカプセル化され、そして該CDが1つの選択されたグループに参加することを許可されていることを確認した時、および該選択されたグループに参加するための要請要求に応答して、シグナリング・パラメータおよびメディア・トラフィックの説明が埋め込まれ、該CDに提供される。


第4 引用発明

1.引用刊行物1記載発明
原査定の理由に引用された国際公開第01/67675号(2001年9月13日国際公開。以下「引用刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注 当審訳として,引用刊行物1に対応する日本語公報である特表2003-526276号公報(平成15年9月2日公表。以下「対応日本語公報」という。)を参考する。)

(1)
I.Field of the Invention

The system and method for providing group communication services relates generally to point-to-multipoint communication systems and more particularly to a method and apparatus for providing group communication services.

II.Description of the Related Art

Point-to-multipoint communication systems have been used for many years to provide communications generally between a central location and multiple users of the system. For example, dispatch systems using Land Mobile Radios (LMRs) have been used in trucks, taxis, buses, and other vehicles in order to communicate scheduling information between a central dispatch center and one or more corresponding fleet vehicles. Communications may be directed at a specific vehicle in the fleet or to all vehicles simultaneously.
Another example of a point-to-multipoint communication system is a wireless push-to-talk system. Such a system allows a group of individuals, each having a wireless telephone, to communicate with other members of the group. Typically, a push-to-talk system relies on a single frequency, or dedicated channel, over which communications are received by the wireless telephones. In most systems, only one member may transmit information to the other members at a time. However, all members can listen to the dedicated broadcast channel to receive communications from the single member who is transmitting. Members desiring to transmit to other members of the system typically send an access request by depressing a push-to-talk button on a respective communication device which allows sole access to the dedicated transmission channel.
Push-to-talk systems are typically used in outdoor settings where a group of geographically diverse people, or simply members, require communications with each other in a ”point-to-multipoint” fashion. Examples of push-to-talk system uses include workgroup communications, security communications, construction site communication, and localized military communications. The group of people requiring communications with each other is commonly known as a ”net,” each member of the net sometimes referred to as a ”net member.”
(国際公開公報第1ページ第6行?第2ページ第3行)
(当審訳
I.発明の属する技術分野
グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法は一般的にポイントツーマルチポイント通信システムに関し、特にグループ通信サービスを提供する方法および装置に関する。

II.関連技術の説明
ポイントツーマルチポイント通信システムは長年の間、一般的に中央位置とシステムの多数のユーザとの間に通信を提供するために使用されてきた。例えば、地上移動無線(LMR)を使用するディスパッチシステムが中央ディスパッチセンタと1つ以上の対応する全車両との間でスケジュール情報を通信するために、トラック、タクシー、バス、他の車両で使用されている。通信は、全車両の中の特定の車両に、あるいは全車両に同時に向けられている。
ポイントツーマルチポイント通信システムの他の例は、ワイヤレスプッシュトークシステムである。このようなシステムはそれぞれワイヤレス電話機を持つ個人のグループがグループの他のメンバーと通信できるようにする。一般的に、プッシュトークシステムは単一周波数、すなわち専用チャネルに依存し、これを通して通信がワイヤレス電話機により受信される。多くのシステムでは、一度にただ1人のメンバーが情報を他のメンバーに送信する。しかしながら、すべてのメンバーが専用ブロードキャストチャネルを聞いて、送信している単一メンバーからの通信を受信することができる。システムの他のメンバーに送信しようとしているメンバーは、各通信装置上のプッシュトークボタンを押下することによりアクセス要求を一般的に送信し、これは専用送信チャネルに対する唯一のアクセスを可能にする。
プッシュトークシステムは一般的にアウトドアセッティングで使用され、この場合には、地理的にさまざまな人々のグループ、すなわち単なるメンバーが“ポイントツーマルチポイント”方式で相互に通信するようことを要求する。プッシュトークシステム使用の例には、ワークグループ通信、セキュリティ通信、建設サイト通信、局所的軍事通信が含まれる。相互に通信を要求する人々のグループは通常“ネット”として知られており、ネットの各メンバーは“ネットメンバー”として呼ばれることがある。
(対応日本語公報【0001】?【0004】,第8?9ページ))

(2)
SUMMARY OF THE INVENTION
In one embodiment, the system and method for providing group communication services is implemented within an existing CDMA wireless communication system.
Point-to-multipoint communications are enabled in one embodiment of the system and method for providing group communication services by converting real-time audio, video, and data (collectively referred to herein as media), into data packets in a communication device (CD). The data packets may be produced in accordance with data protocols, for instance, the well-known TCP/IP Internet protocol. The media is transmitted using an air interface, or by other means, depending on what type of communication device is used, to a data network, typically the Internet.
A communications manager (CM) enables data packets from the data network to be distributed to various net members of each defined net. Thus, the addition of the CM to a standard communication system quickly enables group communications. The CM is a device which acts as a configurable switch, connecting communications from one user to one or more other users defined as a net. The CM is a data device, meaning that it sends and receives data packets, as defined by the particular data network to which it is connected. In one embodiment, the CM is connected directly to the Internet, allowing data packets to be routed between the CM and, ultimately, the CDs.
The CM allows users other than those in the wireless communication system to participate in group communications. For example, an audio-capable desktop computer located in an office or home could participate in group communications with one or more users of a terrestrial wireless communication system. Alternatively, or in addition, users of a satellite communication system can participate in group calls with members of the terrestrial wireless system, desktop users, or both. Information between these various communication devices, i.e. wireless phones, wireline phones, satellite telephones, paging devices, portable or desktop computers, digital cameras, video cameras, etc., is transmitted among net members over the data network, coordinated by the CM.
(国際公開公報第2ページ第33行?第3ページ第28行)
(当審訳
発明の概要
1つの実施形態では、グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法は既存のCDMAワイヤレス通信システム内で実現される。
ポイントツーマルチポイント通信は、通信装置(CD)中でリアルタイムオーディオ、ビデオおよびデータ(ここでは集合的にメディアと呼ぶ)をデータパケットに変換することによりグループ通信サービスを提供するシステムおよび方法の1つの実施形態で可能になる。データパケットは、データプロトコル例えばよく知られたTCP/IPインターネットプロトコルにしたがって生成される。メディアは、どのタイプの通信装置が使用されるかに依存して、エアインターフェースを使用して、あるいは他の手段によりデータネットワークに典型的にはインターネットに送信される。
通信マネージャー(CM)はデータネットワークからのデータパケットを各規定ネットのさまざまなネットメンバーに配信できるようにする。したがって、標準通信システムに対するCMの追加はグループ通信をすぐに可能にする。CMは構成可能なスイッチとして機能する装置であり、1人のユーザからの通信をネットとして規定される1人以上の他のユーザに接続する。CMはデータ装置であり、これは、CMが接続されている特定のデータネットワークにより規定されるデータパケットを送受信することを意味する。1つの実施形態では、CMはインターネットに直接接続され、データパケットをCMと最終的にCDとの間でルーティングできるようにする。
CMはワイヤレス通信システム中のユーザ以外のユーザがグループ通信に参加できるようにする。例えば、オフィスまたは家庭に位置するオーディオ可能なデスクトップコンピュータは、地上ワイヤレス通信システムの1人以上のユーザとのグループ通信に参加することができる。代わりに、あるいは付加的に、衛星通信システムのユーザは、地上ワイヤレスシステム、デスクトップユーザ、あるいはその双方のメンバーとのグループ通話に参加することができる。例えばワイヤレス電話機、ワイヤライン電話機、衛星電話機、ページング装置、ポータブルまたはデスクトップコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラなどのこれらのさまざまな通信装置間の情報は、CMにより調整されるデータネットワークを通してネットメンバー間に送信される。
(対応日本語公報【0009】?【0012】,第10?11ページ))

(3)
DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS
The system and method for providing group communication services uses a communication device (CD) capable of generating data packets suitable for transmission over a data network such as the Internet. The data packets are transmitted to a data network, and are then provided to a communications manager (CM) connected to the data network. The CM processes data packets from a first CD and distributes the data packets in real-time to at least one other CD who is a member of the same predefined net as the first CD. The CM acts as a configurable switch able to route communications from any net member to other net members defined by the net.
Although the teachings of the system and method for providing group communication services are described with respect to a wireless CDMA communication system, it should be understood that the system and method for providing group communication services can be used with any wireless communication system including GSM systems, AMPS systems, TDMA systems, and satellite communication systems, as well as other communications systems. In addition, the system and method for providing group communication services is not limited to wireless communication systems. It can be used with wireline telephones, paging devices, portable or desktop computers, digital cameras, video cameras, etc. Furthermore, it should be understood that the system and method for providing group communication services is applicable to both real-time data, such as audio and video data (including voice data), and time-independent data, such as computer files, email, and so on.
(国際公開公報第5ページ第8?32行)
(当審訳
好ましい実施態様の詳細な説明
グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法は、インターネットのようなデータネットワークを通して送信するのに適したデータパケットを発生させることができる通信装置(CD)を使用する。データパケットはデータネットワークに送信され、データネットワークに接続されている通信マネージャー(CM)に提供される。CMは第1のCDからのデータパケットを処理し、リアルタイムでデータパケットを少なくとも1つの他のCDに配信し、このCDは第1のCDと同じ予め定められたネットのメンバーである。CMは構成可能なスイッチとして機能し、任意のネットメンバーからネットにより規定される他のネットメンバーに通信をルーティングすることができる。
グループ通信サービスを提供するシステムおよび装置の教示はワイヤレスCDMA通信システムに関して説明するが、グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法は、GSMシステム、AMPSシステム、TDMAシステムおよび衛星通信システムを含む任意のワイヤレス通信システムとともに、他の通信システムと使用することができることを理解すべきである。さらに、グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法はワイヤレス通信システムに限定されない。グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法は、ワイヤライン電話機、ページング装置、ポータブルまたはデスクトップコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラなどと使用することができる。さらに、グループ通信サービスを提供するシステムおよび方法は、(音声データを含む)オーディオおよびビデオデータのようなリアルタイムデータと、コンピュータファイル、eメールなどのような時間独立データの両方に適用可能であることを理解すべきである。
(対応日本語公報【0015】?【0016】,第11?12ページ))

(4)
Net members communicate with each other using an assigned communication device,shown as communication devices(CD)202,204,206,208,and 210. In the present example,CDs 202,204,and 206 are terrestrial wireless telephones,CD 208 is a wireline telephone equipped with push-to-talk capability, and CD 210 is a satellite telephone also equipped with push-to-talk functionality. In other embodiments, the various CDs may comprise wireless video cameras, still cameras, audio devices such as music recorders or players, laptop or desktop computers, or paging devices. In another embodiment, at least one CD comprises a combination of the just-described embodiments. For example,CD 202 could comprise a wireless terrestrial telephone equipped with a video camera and display. Furthermore,each CD may be able to send and receive information in either a secure mode,or a non-secure (clear) mode. Throughout the following discussion,reference to an individual CD may be expressed as CD 202. However, it should be understood that reference to CD 202 is not intended to limit the discussion to a terrestrial wireless telephone. In general, discussions pertaining to CD 202 will apply equally to other types of CDs as well.
(国際公開公報第7ページ第8?24行)
(当審訳
ネットメンバーは、通信装置(CD)202、204、206、208および210として示されている割り当てられた通信装置を使用して相互に通信する。この例では、CD202、204および206は地上ワイヤレス電話機であり、CD208はプッシュトーク能力を備えたワイヤライン電話機であり、CD210はプッシュトーク機能を備えた衛星電話機である。他の実施形態では、さまざまなCDはワイヤレスビデオカメラ、スチルカメラ、音楽レコーダまたはプレーヤーのようなオーディオ装置、ラットップまたはデスクトップコンピュータ、あるいはページング装置を含んでいてもよい。他の実施形態では、少なくとも1つのCDは直前に説明した実施形態の組み合わせを含む。例えば、CD202はビデオカメラおよびディスプレイを備えたワイヤレス地上電話機を含むことができる。さらに、各CDは安全モード、非安全(クリア)モードのいずれかで情報を送受信できてもよい。以下の説明全体を通して、個々のCDに対する参照はCD202として表現されるかもしれない。しかしながら、CD202に対する参照は地上ワイヤレス電話機に対する議論に限定することを意図していないことを理解すべきである。一般的に、CD202に関する説明は他のタイプのCDにも等しく適用される。
(対応日本語公報【0022】,第14ページ))

(5)
In one embodiment, CM 218 maintains one or more databases for managing information pertaining to individual net members as well as to each defined net. For example, for each net member, one database may comprise a user name, an account number, a telephone number, or a dial number, associated with the member’s CD, a Mobile Identification Number assigned to the CD, the current member’s status in the net, such as whether the member is actively participating in the net, a priority code for determining how the transmission privilege is assigned, a data telephone number associated with the CD, an IP address associated with the CD, and an indication of which nets the member is authorized to communicate. Other related types of information may also be stored by the database with respect to each net member.
(国際公開公報第10ページ第8?18行)
(当審訳
1つの実施形態では、CM218は個々のネットメンバーとともに各規定ネットに関係する情報を管理するために1つ以上のデータベースを維持する。例えば、各ネットメンバーに対して、1つのデータベースは、ユーザ名、アカウント番号、メンバーのCDに関係する電話番号またはダイヤル番号、CDに割り当てられた移動識別番号、メンバーがアクティブにネットに参加しているか否かのような、ネットにおける現在のメンバーステータス、どのように送信特権が割り当てられるかを決定する優先コード、CDに関係するデータ電話番号、CDに関係するIPアドレス、どのネットに対してメンバーが通信することを認証されたかの表示を含んでいてもよい。他の関連タイプの情報も各ネットメンバーに関してデータベースにより記憶されてもよい。
(対応日本語公報【0033】,第18ページ))

(6)
Normally, the destination SIP user-agent server confirms that CD 202 is authorized to participate in the selected net and responds to the invitation, embedding a description of the media traffic and signaling parameters to use to participate in the net in the content of its response. CM 218 may also reply with an error if it is unable to confirm CD 202 as a legitimate member of the net or if some other error condition arises, such as a failure which precludes normal net operation. If the invitation is accepted, CD 202 acknowledges the response via the SIP ”ACK” command. Note that other transient response codes which indicate call progress may also be received by CD 202 while the invitation is being processed.
CD 202 is responsible for updating its group-list to the set of the nets in which it may participate. The user may command CD 202 to query CM 218, even when no net-address is selected, for the purpose of receiving updates to its group-list. If CD 202 determines that it has been added or removed from a net, it will briefly display an appropriate message to the user (for example: ”Added to group WELDERS”) and /or possibly prompt for user interaction. If CD 202 determines that is not a member of any net, it will similarly inform the user. CD 202 may automatically incorporate new net addresses into its group-list but may prompt the user before deleting addresses of nets in which it has lost membership from the group-list.
At any given time, no more than one net in a CD’s group-list may be selected. A default net may be initially selected or the user may select a net from the group-list.
CM 218’s SIP user-agent server’s response to an INVITE request to join a net includes, as embedded content, the net’s media and real-time media signaling destination addresses, as well as other net parameters (such as media payload format descriptors). Once confirmed, CD 202 briefly displays feedback to the user, indicates whether the user has listen-only privileges, and enables group service functions. If CM 218 determines that CD 202 is not a member of the selected net, or an error or other exceptional condition occurs, CM 218 responds with a corresponding error response. When such a registration is rejected, CD 202 briefly displays a corresponding error message and group service functions remain idle.
(国際公開公報第17ページ第12行?第18ページ第6行)
(当審訳
通常、宛先SIPユーザエージェントサーバは、CD202が選択されたネットへ参加することが認証されたことを確認し、勧誘に応答する。この応答には、ネットに参加するために用いられる、メディアトラフィックとシグナリングパラメータの記述が埋め込まれている。CD202をネットの正規メンバーとして確認できなかった場合、または通常のネット動作ができなくなってしまう障害のような他の何らかのエラー状態が生じた場合には、CM218はエラーで返事をしてもよい。勧誘が受け入れられた場合、CD202はSIP“ACK”コマンドを通じて応答確認をなす。なお、勧誘が処理されている間に、通話進行を示す他の一時的な応答コードもCD202によって受信することができる。
CD202は、参加可能なネットのセットに対して自己のグループリストを更新する役割を果たす。ネットアドレスが選択されていない場合であっても、CD202のグループリストへの更新を受信するために、ユーザはCD202にCM218への問い合わせをさせることができる。CD202がネットに加えられているか、あるいはネットから削除されているとCD202が判断した場合、CD202は適当なメッセージを短い間ユーザに表示し(例えば、“グループ「ウェルダー」(WELDERS)に追加されました”)、および/またはおそらくユーザ対話を促す。どのネットのメンバーでもないとCD202が判断した場合には、CD202は同様の通知をユーザに伝える。CD202は、自己のグループリストに自動的に新規ネットアドレスを取り込んでもよいが、ユーザに促してから、メンバーシップを喪失したネットのアドレスをグループリストから削除してもよい。
任意の所定の時間において、CDのグループリストの1つのネットだけを選択することができる。当初デフォルトのネットが選択されていてもよいが、ユーザがグループリストからネットを選択してもよい。
ネットに加わるための勧誘要求に対するCM218のSIPユーザエージェントサーバによる応答には、埋め込まれるコンテンツとして、他のネットパラメータ(例えば、メディアペイロードフォーマットディスクリプタ)と同様に、ネットのメディアおよびリアルタイムメディアのシグナリング宛先アドレスが含まれる。いったん確認すると、CD202はフィードバックをユーザに対して短い時間表示する。このフィードバックは、ユーザが聴取のみの特権を有しているかどうかを示し、グループサービス機能を可能にする。CD202が選択されたネットのメンバーではないとCM218が判断するか、あるいはエラーや他の例外的な状況が生じた場合には、CM218は対応するエラー応答を返信する。そのような登録が拒否されると、CD202は、対応するエラーメッセージを短い時間表示し、グループサービス機能は待機状態のままである。(対応日本語公報【0061】?【0064】,第28?30ページ))

(7)
CD202 may also support the concept of a ”private call” - a half-duplex point-to-point call instigated by the caller pressing the push-to-talk button which is accepted without ringing the callee phone, as occurs in a traditional full-duplex point-to-point call.
(国際公開公報第29ページ第13?16行)
(当審訳
CD202は、“プライベート通話”の概念もまたサポートすることができる。これは、半二重ポイントツーポイント通話であり、プッシュトークボタンを発呼者が押すことによってなされる。これは、従来の全二重ポイントツーポイント通話で生じるような呼び出し電話を鳴らすことなく受け入れられる。
(対応日本語公報【0114】,第47ページ))

(8)
MEDIA TRAFFIC (VOICE)
Voice traffic from CD 202 is encapsulated by grouping one or more data frames representing voice information within an RTP/UDP or UDP payload. In one embodiment, the data frames comprise frames generated by a vocoder inside CD 202. The use of RTP with CRTP enabled is recommended to minimize end-to-end media latency and provide interoperability with future IP telephony applications and services. In either case, CD 202 dynamically selects the UDP port on which it expects to receive media traffic and communicates the port number to CM 218 as part of the SIP invitation it delivers when attempting to join a net.
CM 218 describes the net’s vocoder and transport encapsulation protocol, as well as its media traffic destination address (including the UDP port number), in the session description response to a successful SIP invitation request. Like a net’s media signaling addresses, the media traffic destination addresses are net specific and may change between instances of CD 202 joining a net.
Normally, voice traffic is encapsulated at CD 202 using RTP, which segments each UDP datagram into a RTP header and payload. Voice traffic may optionally be encapsulated purely using UDP, with no RTP encapsulation, typically when CRTP header compression is unavailable or unsupported by a net member. The structure of the UDP payload follows the definition given for a corresponding RTP payload, without the RTP header fields.
The decision to encapsulate media directly into UDP is generally configured by the net’s administrator and advertised by the net’s session announcement.
MEDIA TRAFFIC (DATA)
In addition to voice media, nets may also support arbitrary data broadcasts, such as secure net rekey, email, data files, etc.. If a net supports a data broadcast channel, CM 218 will advertise the media type in the net’s SIP session description when CD 202 formally joins the net. Like traditional media broadcasts, generic data broadcasts operate over RLP in one embodiment (or a corresponding physical layer) but are considered unreliable transports.
In one embodiment, CD 202 includes the capability to resolve Internet domain names into Internet addresses using the Domain Name Service (DNS) protocol, as defined in RFC 1034. Alternatively, CD 202 operates only as a DNS client or resolver, as described in RFC 1035.
In order for CD 202 to resolve DNS hostnames, CD 202 is preprogrammed with the IP network address of a DNS server. The DNS address should also be configurable by CD 202 service provider and, optionally, by the user.
CM 218 may optionally be configured to act as a DNS server, as described in RFC 1035. Although it may respond to DNS requests from foreign entities using TCP as the transport protocol, CM 218 also encapsulates DNS messages using UDP.
(国際公開公報第31ページ第23行?第32ページ第32行)
(当審訳
メディアトラフィック(音声)
CD202からの音声トラフィックは、音声情報を表す1つ以上のデータフレームをグループ分けすることによって、RTP/UDPまたはUDPペイロード内にカプセル化される。1つの実施形態では、データフレームは、CD202に存するボコーダにより生成されたフレームを有する。CRTPイネーブルされたRTPの使用は、エンドツーエンドメディアレイテンシーを短縮させ、将来のIP電話アプリケーションおよびサービスに相互運用性を提供するために推奨される。どの場合にも、CD202は、UDPポートをダイナミックに選択する。このUDPポートで、CD202はメディアトラフィックを受信することを予測し、ネットへの参加を試行する際にCD202が配信するSIP勧誘の一部分として、ポート番号をCM218に通信する。
CM218は、自己のメディアトラフィク宛先アドレス(UDPポート番号を含む)と同様に、正常なSIP勧誘要求に対するセッション記述応答で、ネットのボコーダと伝送カプセル化プロトコルを記述する。ネットのメディアシグナリングアドレスのように、メディアトラフィック宛先アドレスはネット特有であり、ネットに参加するCD202のインスタンスの間で変わることがある。
通常、音声トラフィックはCD202でRTPを用いてカプセル化される。RTPは、各UDPデータグラムをRTPヘッダおよびペイロードに区分する。音声トラフィックは、一般的にCRTPヘッダ圧縮が利用できず、あるいはネットメンバーによってサポートされていないときには、RTPカプセル化をすることなく、単にUDPを用いてオプション的にカプセル化されてもよい。UDPペイロードの構造は、RTPヘッダフィールドなしで、対応するRTPペイロード用に与えられた規定にしたがう。
メディアをUDPに直接カプセル化するという決定は、一般的にネットのアドミニストレータによって構成され、ネットのセッションアナウンスメントによって広告される。
メディアトラフィック(データ)
音声メディアに加えて、ネットは任意のデータブロードキャストもサポートすることができる。例えば、秘密のネットのリキー、eメール、データファイルなどである。ネットがデータブロードキャストチャネルをサポートしている場合には、CM218は、CD202がネットに公式に参加する際に、メディアタイプをネットのSIPセッション記述で広告する。従来的なメディアブロードキャストのように、1つの実施形態では、一般的なデータブロードキャストはRLP(あるいは対応する物理レイヤ)を通して動作するが、信頼性の低い伝送とみなされる。
1つの実施形態では、CD202には、インターネットドメイン名を、RFC1034で規定されているドメイン名サービス(DNS)プロトコルを用いてインターネットアドレスに変換する機能が含まれる。代わりに、CD202は、RFC1035で説明されているDNSクライアントまたは変換器としてのみ動作する。
CD202がDNSホスト名を変換するために、CD202は予め、DNSサーバのIPネットワークアドレスでプログラムされている。DNSアドレスも、CD202サービスプロバイダによって、および、オプションとしてはユーザによって構成されなければならない。
CM218は、RFC1035で説明されるように、オプション的にDNSサーバとしてはたらくよう構成されてもよい。DNSサーバは、外部のエンティティからのDNS要求に、転送プロトコルとしてTCPを用いて応答することができるが、CM218もまたDNSメッセージをUDPを用いてカプセル化する。(対応日本語公報【0128】?【0135】,第50?52ページ))

(当審注 上記(1)?(8)において下線は当審が付与。)

上記の記載によれば,引用刊行物1には次の発明(以下「引用刊行物1記載発明」という。)が記載されている。

グループ通信サービスを提供する方法に関し,
ポイントツーマルチポイント通信は,通信装置(CD)中でリアルタイムオーディオ,ビデオおよびデータ(ここでは集合的にメディアと呼ぶ)をデータパケットに変換することによりグループ通信サービスを提供する方法で可能になり,
通信マネージャー(CM)はデータネットワークからのデータパケットを各規定ネットのさまざまなネットメンバーに配信できるようにし,
グループ通信サービスを提供する方法は,ワイヤライン電話機,ページング装置,ポータブルまたはデスクトップコンピュータ,デジタルカメラ,ビデオカメラなどと使用することができ,さらに,(音声データを含む)オーディオおよびビデオデータのようなリアルタイムデータと,コンピュータファイル,eメールなどのようなデータの両方に適用可能であり,
宛先SIPユーザエージェントサーバは,CD202が選択されたネットへ参加することが認証されたことを確認し,勧誘に応答し,この応答には,ネットに参加するために用いられ,メディアトラフィックとシグナリングパラメータの記述が埋め込まれ,
ネットに加わるための勧誘要求に対するCM218のSIPユーザエージェントサーバによる応答には,埋め込まれるコンテンツとして,他のネットパラメータ,例えば,メディアペイロードフォーマットディスクリプタと同様に,ネットのメディアおよびリアルタイムメディアのシグナリング宛先アドレスが含まれ,いったん確認すると,CD202はフィードバックをユーザに対して短い時間表示し,
CD202からの音声トラフィックは,音声情報を表す1つ以上のデータフレームをグループ分けすることによって,RTP/UDPまたはUDPペイロード内にカプセル化される
グループ通信サービスを提供する方法。

2.引用刊行物2記載発明
原査定の理由に引用された特開平9-36917号公報(平成9年2月7日公開。以下「引用刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

(1)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気通信交換、より詳細には、マルチメディア会議呼出に関する。
【0002】
【従来の技術】マルチメディア会議呼出の進歩と共に、全ての会議参加者がマルチメディア会議呼の全ての媒体通信タイプの使用を希望しない、あるいは全部を使用できない場合の対処の仕方が問題となるようになってきた。加えて、二人あるいはそれ以上の会議参加者がときおり追加の媒体タイプの使用を希望することが考えられる。従来の技術によるマルチメディア会議システムは、これら問題を解決することが不可能であり、全ての会議参加者が同一のマルチメディア通信タイプを使用することを必要とする。このようなシステムが合衆国特許第5,195,086号において開示されている。例えば、会議参加者がマルチメディア会議呼出が開始されたとき、彼らのマルチメディア通信端末に到達できなかったために、その参加者が彼らの無線電話機を使用してそのマルチメディア会議呼出に参加し、その後、その端末に到達した時点で、彼らのマルチメディア通信端末に切り替えるようなことは不可能であった。その会議呼出が音声呼のみを使用する場合は、現代の業務用電気通信交換システムは、会議参加者がこのような状況に対処することを可能にする。業務用電気通信交換システムが、統合型サービスとして無線サービスを提供する機会が増大するにつれてこの問題が一般化することが予想される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】マルチメディア会議を遂行している装置が業務用電気通信交換システムの一部分でない場合は、その電気通信交換システムは、音声呼を切断し、会議装置にマルチメディア呼出を設定することが要求される。これは、通常、会議参加者が、電気通信交換システムと会議装置の両方に会議情報を入力することを要求する。
【0004】加えて、マルチメディア会議呼出は、多量の通信帯域幅を使用する。会議呼出の様々なことなる時間において、会議参加者は、会議呼出を聞くことのみ、あるいはデータ部分を見ることのみ、を希望することも考えられる。従来の技術によるマルチメディア会議システムは、このような活動を会議参加者の手動による介在なしに実現することは不可能である。さらに、マルチメディア会議システムの導入の初期の段階においては、マルチメディア会議に参加することを希望する多くの人が、マルチメディア端末を所有できないことが考えられる。マルチメディア端末を所有しない人が参加できるようにするためのメカニズムなしには、マルチメディア会議システムの広い普及は期待できない。
【0005】
【課題を解決するための手段】あるマルチメディア会議呼出上の通信端末のタイプを変換するための通信タイプ変換(コンバージョン)を有するマルチメディア会議呼出を提供する装置および方法によって技術上の進歩が達成される。加えて、通信端末のユーザは、マルチメディア会議呼出の最中に通信のタイプを変更することが可能である。さらに、セットのユーザが、セットのユーザ間の通信を向上させるために、現在マルチメディア会議呼出によって使用されてない追加の通信タイプを使用することも可能である。
【0006】
【実施例】図1には、複数のスイッチノード101-104が示されるが、これらは、複数のプライマリレートインタフェース(PRI)リンク111-117によって接続される。さらに、通信端末106、107、および108が示されるが、これらは、フルマルチメディア呼をサポートする能力を持つ。加えて、無線端末123が示されるが、これは、無線リンクを介して基地局122に相互接続され、ここから、ベーシックレートインタフェース(BRI)リンク124を介してスイッチノード104に相互接続される。無線端末123と通信端末107は、スイッチノード104上に共有ラインアピアランス(設備)を持つ。共有ライン設備は当分野において周知である。無線端末123が電気通信呼上でアクティブである場合、この活動は通信端末107上に表示される。通信端末107のユーザは、その呼上でアクティブとなることができるが;ここで、無線端末123が呼を切った場合でも、その呼は引き続いて通信端末107上に終端(接続)される。
【0007】図1のシステムの動作を理解するために、以下の例を考える。通信端末106が通信端末107および108とのマルチメディア会議を設定するものと想定する。この会議に関する全てのメッセージは、これら通信端末から端末マネジメントアプリケーション(TMA)128に送られる。この会議の全体としての制御は、会議マネジメントアプリケーション(CMA)127によって制御される。通信端末106がこのマルチメディア会議呼出を設定するとき、これは、通信端末108との通信を設定し、次に、通信端末107との通信を設定することを試みる。この時点で、通信端末107のユーザが、この端末の所に存在せず、無線端末123を持ち歩いているものと想定する。この場合、このユーザは、このマルチメディア会議呼出に、無線端末123を利用して応答する。無線端末123は、音声機能のみを有する。スイッチノード104内の無線端末123を制御しているTMAは、通信端末106に、無線端末123をその会議呼出に接続する会議(レッグ)に対して、通信タイプを音声のみに変更することを要求するトランスポートメッセージを送る。TMA128は、このトランスポートメッセージに応答して、トランスポート要求を確認し、トランスポートコンプリートメッセージを送り返す。これに応答して、スイッチノード102、103、および104が、無線端末123をスイッチノード101上の会議に接続するこの会議レッグ(片足)に対して利用されている帯域幅を、音声機能のみに対して要求される帯域幅に削減する。TMA128は、トランスポートメッセージの情報をCMA127に運ぶ。CMA127は、次に、スイッチノード101の内部交換ネットワークを無線端末123が、音声のみを利用して会議に参加し;一方、通信端末108および106が、その会議の全マルチメディア機能を使用するように制御する。
【0008】この会議呼出のある時点で、無線端末123のユーザが通信端末107に戻り、通信端末107をその会議呼出の一部分として加わるようにする。次に、ユーザは、無線端末123を会議呼出から切断する。通信端末107のユーザが、ここで、その会議呼出のマルチメディア機能の全てを利用することを希望する場合、ユーザは、通信端末107を操作して、通信端末107を制御するスイッチノード104内のTMAに、帯域幅を増加することを要求する信号を送る。スイッチノード104内のTMAは、その会議呼出の全マルチメディア機能を要求するトランスポートメッセージを送る。このトランスポートメッセージは、通信端末106に向けられる。TMA128は、このメッセージに応答して、トランスポートコンプリートを送り返す。このトランスポートコンプリート(メッセージ)に応答して、スイッチノード102、103、および104は、帯域幅を、これらマルチメディア機能を供給するために必要とされる量だけ増加させる。加えて、TMA128は、通信端末107が現在全マルチメディア機能を利用していることを通告する情報をCMA126に送る。CMA126は、必要なテーブルを更新し、次に、接続マネージャ129(CM)に、物理接続を設定するように要求する。CMは、スイッチノード101の内部ネットワークを制御し、通信端末107を、全マルチメディア機能を使用してそのマルチメディア会議に参加するようにする。この例においては、呼が無線端末123あるいは通信端末127のどちらにも接続されない期間は存在しなかった。つまり、このマルチメディア会議呼出のレッグが、スイッチノード101、102、および103を通じて、無線端末123あるいは127のいずれかに対して設定されたままにとどまった。この会議呼出レッグは、また、スイッチノード104上でも、このレッグは無線端末123から通信端末107にスイッチされたが、アクティブのままにとどまった。
(公報第6ページ第9欄?第7ページ第12欄)

(2)
【0014】トランスポートメッセージの処理において、これらスイッチノードは、互いに、トランスポートアクノレッジ(TRANS_ACKメッセージ)を使用して協議する能力を持つ。この能力の説明するために、以下の例を取り上げる。通信端末106が通信端末107との論理呼に音響、ビデオおよび高速データ機能を追加することを希望するものとする。通信端末106は、スイッチノード101にこれら機能を追加することを要求する。この要求に応答して、スイッチノード101は、スイッチノード102に、これら3つのタイプの帯域幅を呼に追加することを要求するトランスポートメッセージを送信する。スイッチノード102は、この機能を提供する資源を持ち、このことを通信端末106にアクノレッジメッセージを送信することによって知らせる。スイッチノード102は、次に、スイッチノード103に、トランスポートメッセージを送信する。スイッチノード103は、音響帯域幅およびビデオ帯域幅をサポートする資源を持つのみであり、この事実を、トランスポートアクノレッジメッセージにて(に入れて)、スイッチ102に知らせる。スイッチノード102は、この条件を受容する。スイッチノード103は、次に、音響およびビデオ機能をその呼に追加することを要求するトランスポートメッセージをスイッチノード104に送る。スイッチノード104は、音響帯域幅を提供する資源を持つのみである。スイッチノード104は、エンドポイントであるために、これは、スイッチノード103に、トランスポートコンプリートメッセージを送り返す。ここで、このトランスポートコンプリートメッセージは、この呼に対して、音響帯域幅のみが提供されるべきであることを指定する。このトランスポートコンプリートメッセージを受信すると、各スイッチノードは、呼に対する帯域幅機能を、音響のみに変更する。
(公報第8ページ第14欄?第9ページ第15欄)

(3)
【0080】図16には、通信端末106、107、あるいは108として使用するのに適当な通信端末が示される。ビデオスクリーン1607および1608は、ディスプレイ1310が、マルチメディア会議の各メンバーが別個に表示できるように分割されるところを示す。当分野において周知のように、図16には2つのみが示されるが、それ以上のビデオスクリーンも可能である。呼状態1609は、マルチメディア会議呼出の様々な状態および条件をテキストあるいはグラフィック形式にて表示するために使用される。
(公報第21ページ第40欄)

(当審注 上記(1)?(3)において,下線は当審が付与。)

上記の記載によれば,引用刊行物2には次の発明(以下「引用刊行物2記載発明」という。)が記載されている。

マルチメディア会議呼出に関し,
通信端末106、107、および108は、フルマルチメディア呼をサポートする能力を持ち,
通信端末106がこのマルチメディア会議呼出を設定するとき,
通信端末107のユーザが,この端末の所に存在せず,無線端末123を持ち歩いている場合,このユーザは,このマルチメディア会議呼出に,無線端末123を利用して応答し,無線端末123は,音声機能のみを有し,スイッチノード104内の無線端末123を制御しているTMAは,通信端末106に,無線端末123をその会議呼出に接続する会議(レッグ)に対して,通信タイプを音声のみに変更することを要求するトランスポートメッセージを送る。


第5 当審の判断

1.対比
本願発明と引用刊行物1記載発明を比較する。

・引用刊行物1記載発明において,「通信装置(CD)」は,該通信装置中でリアルタイムオーディオ,ビデオおよびデータをデータパケットに変換することによりグループ通信サービスを提供することを可能とし,「通信マネージャー(CM)」はデータパケットをネットメンバーに配信できるようにするのであり,また,該「通信マネージャー(CM)」がグループ通信ネットワークを管理していることは,明らかである。
そして,引用刊行物1記載発明は,リアルタイムオーディオ,ビデオおよびデータを「メディア」と呼ぶのであるから,複数の該メディア,すなわちマルチメディアを通信するものであるといえる。
そうすると,引用刊行物1記載発明が「グループ通信ネットワークにおいて管理している通信マネージャ(CM)とマルチメディアを通信するための通信装置(CD)における方法」を開示していることは明白である。

・引用刊行物1記載発明において,CD202からの「音声トラフィック」が「メディアトラフィック」であることは明らかであるから,引用刊行物1記載発明が「メディア・トラフィックは、ペイロードの内の,情報を表しているデータ・フレームをグループ分けすることによってカプセル化され」る構成を備えていること,さらに「メディアトラフィック」は「音声トラフィック」に加えて「任意のデータブロードキャスト」もサポートすることができるから,音声又はデータといったメディアタイプを区別するためネットパラメータ,すなわち「メディアペイロードフォーマットデスクリプタ」をメディアトラフィックが含むこと,は明らかである。
また,引用刊行物1記載発明において,宛先SIPユーザエージェントサーバが,認証されたことを確認するCD202が選択された「ネット」に参加することが,本願発明の許可されていることを確認したCDが1つの選択された「グループ」に参加することと同意であることは明らかである。
そして,引用刊行物1記載発明では,「認証されたことを確認し,勧誘に応答し,この応答には,ネットに参加するために用いられ,メディアトラフィックとシグナリングパラメータの記述が埋め込まれ」るのである。ここにおいて,「勧誘」が「ネット」に加わるための要請要求であり,CD(「通信装置」)に提供されることは明らかであり,また引用刊行物1記載発明の「メディアトラフィックとシグナリングパラメータの記述」は本願発明の「シグナリング・パラメータおよびメディア・トラフィックの説明」に相当する。
そうすると,引用刊行物1記載発明が「メディア・トラフィックは、ペイロードの内の、メディア・ペイロード・フォーマット・デスクリプタを含む、情報を表しているデータ・フレームをグループ分けすることによってカプセル化され、そして該CDが1つの選択されたグループに参加することを許可されていることを確認した時、および該選択されたグループに参加するための要請要求に応答して、シグナリング・パラメータおよびメディア・トラフィックの説明が埋め込まれ、該CDに提供される」構成を開示していることは明白である。

以上から,本願発明と引用刊行物1記載発明は次の点で一致・相違する。

<一致点>
グループ通信ネットワークにおいて管理している通信マネージャ(CM)とマルチメディアを通信するための通信装置(CD)における方法であって、該方法は下記を具備する:
メディア・トラフィックは、ペイロードの内の、メディア・ペイロード・フォーマット・デスクリプタを含む、情報を表しているデータ・フレームをグループ分けすることによってカプセル化され、そして該CDが1つの選択されたグループに参加することを許可されていることを確認した時、および該選択されたグループに参加するための要請要求に応答して、シグナリング・パラメータおよびメディア・トラフィックの説明が埋め込まれ、該CDに提供される。

<相違点1>
本願発明は「CMにCDでのメディアのタイプを提供すること、該タイプは、該CDが通信することができるメディアを表示する」構成を備えているのに対して,引用刊行物1記載発明には「CMにCDでのメディアのタイプを提供する」構成についても,そして「該タイプは、該CDが通信することができるメディアを表示する」構成についても記載がない点。

<相違点2>
本願発明は「CDのタイプに基づいてメディアを選択的に通信する」構成を備えているのに対して,引用刊行物1記載発明にはそのような構成の記載がない点。

2.検討
(1)引用刊行物2記載発明について
・引用刊行物2記載発明において,マルチメディア会議呼出がメンバーによるグループ通信ネットワークにおいて行われることは明らかである。

・引用刊行物2記載発明の「スイッチングノード」が,「TMA(「端末マネジメントアプリケーション」)」,「会議マネジメントアプリケーション(CMA)」,及び「接続マネージャ(CM)」により,マルチメディア会議呼出を管理していることは明らかである。
そして,引用刊行物2記載発明において,無線端末123を持ち歩いているユーザが,マルチメディア会議呼出に,音声機能のみを有する無線端末123を利用して応答し,スイッチノード104内の無線端末123を制御しているTMAは,通信端末106に,無線端末123をその会議呼出に接続する会議(レッグ)に対して,通信タイプを音声のみに変更することを要求する。
そうすると,音声機能のみを有する無線端末123を利用して応答することは,スイッチングノードに無線端末123でのメディアのタイプを提供しているといえ,当該タイプは,無線端末123が通信することができるメディアを表示していることは当然である。
そしてまた,引用刊行物2記載発明のマルチメディア会議呼出においては,音声機能のみを有する無線端末に対し,音声を選択し通信する。

以上によれば,引用刊行物2記載発明は,次の事項を開示しているといえる。

グループ通信ネットワークにおいて管理している通信マネージャ(CM)とマルチメディアを通信するための通信装置(CD)において,
該CMに該CDでのメディアのタイプを提供し,該タイプは,該CDが通信することができるメディアを表示し,
該CDの該タイプに基づいて該メディアを選択的に通信すること。

(2)<相違点1>及び<相違点2>について
引用刊行物1記載発明の通信装置(CD)として,地上ワイヤレス電話機(202,204,206),プッシュトーク能力を備えたワイヤライン電話機(208),プッシュトーク機能を備えた衛星電話機(210),他では,ワイヤレスビデオカメラ,スチルカメラ,音楽レコーダまたはプレーヤーのようなオーディオ装置,ラットップまたはデスクトップコンピュータ,あるいはページング装置を含んでいてもよく,これらをネットメンバーは使用する。
そうすると,引用刊行物1記載発明において,音声のみ,ビデオのみ,オーディオのみ,或いは特定のメディアを有する通信装置をネットメンバーが使用することを予定しているということはできる。
したがって,引用刊行物1記載発明に対し,ネットメンバーが,音声のみ,ビデオのみ,オーディオのみ,或いは特定のメディアのみの通信装置を使用するために,引用刊行物2記載発明を適用し,<相違点1>及び<相違点2>のように構成することは,当業者が容易になし得たと認められる。

そして,本願発明のように構成したことによる効果も引用刊行物1記載発明及び引用刊行物2記載発明から,予測できる程度のものである。
したがって,本願発明(平成21年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は,引用刊行物1記載発明及び引用刊行物2記載発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

3.平成22年4月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明に対する補足的判断

平成22年4月22日付け手続補正(「本件補正」)は,上記第2に記載のとおり,却下された。
ここにおいては,本件補正による「該CMに該CDでのメディアのタイプを半二重通信方式モードによって提供すること」が,自明であると仮定する。そうすると,本件補正による請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は,本願発明を特定する事項に限定を付したものであると一応いえるので,本願補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるかについて,以下に補足的判断をする。

(1)引用発明
引用刊行物1及び引用刊行物2の記載事項,そして,引用刊行物1記載発明及び引用刊行物2記載発明については,上記「第4 引用発明」に記載のとおりである。

(2)本願補正発明に対する当審の判断
本願補正発明は,本願発明において「該CMに該CDでのメディアのタイプを提供すること」,及び「該CDの該タイプに基づいて該メディアを選択的に通信すること」,それぞれに対し「半二重通信方式モードによって」との限定を付したものである。
そして,本願補正発明から限定を省いたものである本願発明に対する当審の判断は,上記の「1.対比」及び「2.検討」に記載したとおりであるので,ここにおいては,上記付された限定の事項について検討する。

引用刊行物1記載発明の通信装置は,プッシュトーク機能を備えており,該プッシュトークが半二重通信方式により行われる通信であることは,引用例を提示するまでもなく周知(引用刊行物1にも示唆されている(摘記事項(7)参照。)。)であり,引用刊行物1記載発明に引用刊行物2記載発明を適用し,「CMにCDでのメディアのタイプを提供すること」,及び「CDのタイプに基づいてメディアを選択的に通信すること」,それぞれを「半二重通信方式モードによって」提供,通信するようにすることは,当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

そして,本願補正発明のように構成したことによる効果も,引用刊行物1記載発明,引用刊行物2記載発明及び周知技術から,予測できる程度のものである。
したがって,本願補正発明は,引用刊行物1記載発明,引用刊行物2記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

以上のとおりであるから,ここにおける仮定によっても,本件補正(平成22年4月22日付け手続補正)は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第6 むすび

以上のとおりであるから,本願発明(平成21年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,他の請求項について,論及するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。

したがって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2011-12-19 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2004-538284(P2004-538284)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
稲葉 和生
発明の名称 グループ通信ネットワークにおいてマルチメディアを提供するための通信装置  
代理人 河野 直樹  
代理人 白根 俊郎  
代理人 竹内 将訓  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 砂川 克  
代理人 村松 貞男  
代理人 市原 卓三  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 峰 隆司  
代理人 堀内 美保子  
代理人 福原 淑弘  
代理人 山下 元  
代理人 中村 誠  
代理人 野河 信久  
代理人 岡田 貴志  
代理人 河野 哲  
代理人 佐藤 立志  
代理人 勝村 紘  

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