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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1257195
審判番号 不服2010-12351  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-08 
確定日 2012-05-17 
事件の表示 特願2004-232397「カルテ入力装置、カルテ入力プログラム、およびカルテ入力方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月16日出願公開、特開2006- 48598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成16年8月9日の出願であって、平成21年4月15日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月18日付けで意見書が提出され、同年8月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月9日付けで手続補正(以下、「第1補正」と呼ぶ。)がなされ、平成22年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「第2補正」と呼ぶ。)がなされたものである。

第2 第2補正(平成22年6月8日付けの手続補正)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

第2補正(平成22年6月8日付けの手続補正)を却下する。

[理由]

1.補正内容

平成22年6月8日付けの手続補正は、第2補正前の特許請求の範囲の請求項1を、第2補正後の特許請求の範囲の請求項1のとおりに補正する補正事項を含むものである。

<第2補正前の特許請求の範囲の請求項1>

「【請求項1】
受診患者に対する診療行為を指示するオーダ情報を含むカルテ情報の入力を受け付けるカルテ入力装置において、
受診患者に対する過去に指示された診療行為を表す過去のオーダ情報を記憶しておくオーダ情報記憶部と、
種類分けされた複数種類のオーダ情報の入力をそれぞれ分担する複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部と、
前記複数種類の入力ツールの中からユーザにより所望の入力ツールが選択されたことを受けて、その選択された入力ツールに抽出条件がリンクしていた場合にそのリンクした抽出条件に従って、過去のオーダ情報の中からその抽出条件に合致したオーダ情報を抽出して表示するブラウザ表示部とを備えたことを特徴とするカルテ入力装置。」

<第2補正後の特許請求の範囲の請求項1>

「【請求項1】
受診患者に対する診療行為を指示するオーダ情報を含むカルテ情報の入力を受付けるカルテ入力装置において、
受信患者に対する過去に指示された該療行為を表す過去のオーダ情報と、複数の入力ツールのうち該過去のオーダ情報を入力する際に用いられた入力ツールの識別情報とを対応付けて記憶するオーダ情報記憶部と、
前記複数の入力ツールのうちの第一の入力ツールの第一の識別情報と、該複数の入力ツールのうちの該第一の入力ツールとは異なる第二の入力ツールの第二の識別情報とを対応付けた抽出条件を、前記入力を行なう利用者に応じて記憶する抽出条件記憶部と、
前記利用者から、前記複数の入力ツールのうちの前記第一の入力ツールの選択を受付けた場合に、前記抽出条件記憶部を参照し、該利用者に応じた前記抽出条件において、該第一の識別条件に対応する前記第二の識別情報を取得するとともに、前記オーダ情報記憶部を参照し、該第二の識別情報に対応する前記過去のオーダ情報を抽出して表示するブラウザ表示部と
を備えることを特徴とするカルテ入力装置。」

2.新規事項の追加について

第2補正後の特許請求の範囲の請求項1は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」と呼ぶ。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでもある。したがって、第2補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するという理由によっても、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

以下説明する。

上記「1.」の項に転記した第2補正後の請求項1には、「前記複数の入力ツールのうちの第一の入力ツールの第一の識別情報と、該複数の入力ツールのうちの該第一の入力ツールとは異なる第二の入力ツールの第二の識別情報とを対応付けた抽出条件を、前記入力を行なう利用者に応じて記憶する抽出条件記憶部と、」なる記載があるが、該記載により規定される、「複数の入力ツールのうちの第一の入力ツールの第一の識別情報と、該複数の入力ツールのうちの該第一の入力ツールとは異なる第二の入力ツールの第二の識別情報とを対応付けた抽出条件を、前記入力を行なう利用者に応じて記憶する」という技術的事項(以下、「技術的事項A」と呼ぶ。)は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項ではない。

なぜならば、当初明細書等には、利用者に応じて記憶される第一の入力ツールとリンクした抽出条件に関しては、

「【0040】
抽出条件記憶部130は、上記複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておくものである。」

「【0060】
図3に示すように、このデータベース300は、カルテ情報を紙のカルテのイメージで記憶するシート情報ファイル310、カルテ情報のうちの、例えば検査オーダ、処方オーダ、放射線オーダなど患者に対する診療行為を指示するオーダ情報が記憶されるオーダ情報ファイル320、医師などの利用者に関する基本情報や後述のブラウザ抽出条件が記憶される利用者マスタ200、後述の入力ツールプログラムが記憶される設定マスタ330、“処方オーダ”、“ 検体検査オーダ”、“ 細菌検査オーダ”などの入力ツールプログラムが記憶される入力ツールファイル340、およびブラウザ表示条件設定ウインドウ画面をデフォルト条件で起動するための情報が記憶されるブラウザプレ表示情報ファイル350などからなる。各ファイルの詳細については後述する。」

「【0092】
条件変更ボタン409aは、オーダ情報を自動抽出するための抽出条件を変更するためのボタンであり、例えば“抽出条件1”のタブ上で右クリックした後、条件変更ボタン409aを右クリックすると、過去のオーダ情報を自動抽出するための抽出条件を設定するためのブラウザ表示条件設定ウインドウ画面(図11参照)が表示されその画面を用いて抽出条件の設定を変更することができる。」

「【0094】
新規条件追加ボタン409cは、新たに抽出条件を追加するためのボタンである。抽出条件の追加は、条件変更と同様ブラウザ表示条件設定ウインドウ画面(図11参照)により行われる。」

「【0096】
図11は、本実施形態に用いられるブラウザ表示条件設定ウインドウ画面を示す図である。
【0097】
図11に示すように、このブラウザ表示条件設定ウインドウ画面210には、「タイトル」210_1、「抽出区分」210_2、「抽出対象」210_3、「抽出期間」210_4、「表示順」210_5、「初期表示件数」210_6、「人外区分」210_7、「診療科」210_8、「病棟」210_9、「条件保存」210_10、「ツール連動」210_11、「連動ツール」210_12、「抽出条件表示」210_13などの項目が設けられており、利用者によってこれらの各項目が設定できるようになっている。なお、上記の「抽出条件表示」210_13は、本発明にいう抽出条件表示フラグに相当するものである。」

「【0101】
「抽出対象」210_3には、「全オーダ」、「検査オーダ」、「処方オーダ」、…などの各項目が設けられており、この例では上記各項目のうち「検査オーダ」が選択された状態が示されている。」

「【0110】
「連動ツール」210_12には、ツール連動するツール名が記憶されるようになっており、この例では「検体検査オーダ」が記憶された状態が示されている。」

といった程度の記載があるのみであり、上記記載事項中には、「抽出条件」として、「複数の入力ツールのうちの第一の入力ツールの第一の識別情報と、該複数の入力ツールのうちの該第一の入力ツールとは異なる第二の入力ツールの第二の識別情報とを対応付けた」ものを記憶するという記載はもとより、それを示唆する記載もないからである。

また、当初明細書等の他の箇所を精査しても、技術的事項Aに対応する記載や技術的事項Aが記載されているのと同然であると解し得るような記載は見当たらない。

ここで、審判請求人は、平成24年1月27日付けの回答書(以下、「審尋回答書」という。)において、段落【0092】、【0097】、【0101】、【0110】の記載から、「抽出対象とされているのは、診療行為の種類であり、診療行為の種類は、その診療行為に使われる入力ツールの識別情報と同義です。」と主張している。

しかしながら、
ア.抽出条件に設定される「抽出対象」には「全オーダ」、「検査オーダ」、「処方オーダ」、・・・などの各項目が設けられている(段落【0101】)としか記載されておらず、一方各ツールには、段落【0082】や図8の入力ツール選択メニュー画面からも明らかなように「処方オーダ」、「検体検査オーダ」、「細菌検査オーダ」、「病理検査オーダ」、「放射線オーダ」、「輸血オーダ」、「テンプレート」、「シェーマ」、「その他」の各ツールは存在するものの、「全オーダ」、「検査オーダ」は、ツールとして存在するものではないし、
イ.抽出対象として設定される「全オーダ」や「検査オーダ」は段落【0060】に記載されるデータベース内に存在するカルテ情報のうちの、検査オーダ、処方オーダ、放射線オーダなど患者に対する診療行為を指示するオーダ情報を抽出するための抽出条件として機能する条件であるとは言い得るものの、上記に記載したとおり、「全オーダ」や「検査オーダ」と一対一に対応した入力ツールの識別情報を表し得るものではない。
ウ.また、過去のオーダ情報を抽出する際、第2の入力ツールの識別子を用いなければ該当するオーダ情報が抽出できないわけではないから、第2の入力ツールの識別子を過去のオーダ情報と対応づけて記憶させる必然性もない。
よって、上記ア.?ウ.の記載からは、「診療行為の種類が直ちに入力ツールの識別情報と同義である」ということはできず、審判請求人の上記主張は採用できない。

したがって、「前記複数の入力ツールのうちの第一の入力ツールの第一の識別情報と、該複数の入力ツールのうちの該第一の入力ツールとは異なる第二の入力ツールの第二の識別情報とを対応付けた抽出条件を、前記入力を行なう利用者に応じて記憶する抽出条件記憶部と、」なる記載において、前記技術的事項Aを含むようにすることを含む第2補正後の特許請求の範囲の請求項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3.むすび

以上のとおりであるから、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 上記補正却下の決定を踏まえた検討

1.本願発明

上記のとおり、第2補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成21年11月9日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の項に第2補正前のものとして転記したとおりのものである。

「【請求項1】
受診患者に対する診療行為を指示するオーダ情報を含むカルテ情報の入力を受け付けるカルテ入力装置において、
受診患者に対する過去に指示された診療行為を表す過去のオーダ情報を記憶しておくオーダ情報記憶部と、
種類分けされた複数種類のオーダ情報の入力をそれぞれ分担する複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部と、
前記複数種類の入力ツールの中からユーザにより所望の入力ツールが選択されたことを受けて、その選択された入力ツールに抽出条件がリンクしていた場合にそのリンクした抽出条件に従って、過去のオーダ情報の中からその抽出条件に合致したオーダ情報を抽出して表示するブラウザ表示部とを備えたことを特徴とするカルテ入力装置。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-334153号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

あ.「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、医療用のカルテを電子的に管理するシステムに関し、診療の簡略化とオーダの輻輳防止に関するものである。」

い.「【0011】また、前記の電子カルテシステムにおいて、診療表示手段は、治療計画表示手段と治療指示表示手段の表示の面積比が1対1の比率を構成するものであることを特徴とする。この構成によってコンピュータ画面上に擬似的に厚生省の定める2号紙イメージを表現することが可能になる。そしてこれは、画面上において、診療行為、検査行為などの指示入力選択手段と治療計画入力手段とオーダ管理入力手段を保持することを特徴とする。さらに、該診療表示手段は、あらかじめ入力手段により入力された情報を合成することによって画面表示を構成することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明においては、前記真正性の確保、見読性の確保、保存性の確保の3つの要件を満たした診療情報を「カルテ履歴」と定義し管理・運用を行う。この「カルテ履歴」では、全ての患者に対する診療行為を作成の所存を明確にした上で、診療過程として捉えることが可能である。ここで、図1は本発明で用いるシステム構成図を示している。ここで、1はオーダサーバで最新医療情報を扱うDBと診療記録のスプールを行うためのDB3を備えており、LAN4を通じて、カルテサーバ5に接続されている。このカルテサーバ5は、カルテ履歴DB6に接続されており、一定時間毎にスプールDB3より差分データを追記し、保存される。さらにこれらのサーバは、LAN4を通じて、端末7に接続されており、各端末は、医師のデスク、ナースステーション、レントゲンを始めとする検査室、及び会計システムなどに接続されている。これらのサーバや端末、DBなどは周知の技術が活用されており、特定のソフトウェアに依存することは無いが、使用環境により実装の難易は存在する。
【0013】ここで、各種のサーバの動きをまとめる。
1)オーダサーバ
患者単位の診療情報を管理する。本サーバで管理する診療情報は、1つの診療行為に対する過程は管理せず、現時点での最新状態のみを管理する。また、個々の診療行為を「カルテ履歴用スプールデータ」として管理する。このスプールデータは後ほどカルテサーバに記録保存される。
2)カルテサーバ
オーダサーバで管理している「カルテ履歴用スプールデータ」をもとに、全ての患者に対する診療行為を診療過程として捕らえることが可能な『カルテ履歴』を管理する。これは時系列のデータが保存されており、各種の検索などが可能になる。
3)端末
医師を中心とした医療活動である診療情報の入力を行う。本端末で入力した診療情報は、オーダサーバに蓄積される。」

う.「【0015】・・・オーダデータと称し、患者に対する診療行為における、処置・実施行為の情報,例えば処方・検査・注射・画像/生理情報をさす。・・・。
【0016】次に、実際の診療からどのようにデータが入力されているのか図を用いて説明する。図3は外来患者診察時におけるフローチャートである。S10において診療が開始されると、診療の操作者すなわち医師の情報がDBから拾われる(S11)。S12において患者の予約情報が表示される。次にS13において患者番号の特定を行うと、図7のような表示画面が表れる。これは向かって左側が治療計画表示手段71として使用され、右側が治療指示表示手段72となる。この方式は、厚生省指定の2号紙カルテイメージになっており、医師にとっては直感的に情報がつかめる。また、73には各種機能ボタンが具備されており、問診所見を入力する場合には74を押し、72に表示する各種治療指示は75?80の機能ボタンを用いて指示の入力がなされる。
【0017】そして続けて、S14において患者の基本情報をDBから呼び出す。このとき図4の31における診察ヘッダデータが使用され、診察構成データ32が呼び出される。S15において当日の問診をDBから拾うが、この時はあらかじめ問診データを入力した図4の33が呼び出される。前述した図7の表示手段は、図8のようになっていて、日付タブ87の下部にある治療計画表示手段85(問診・所見)と治療指示表示手段86はそれぞれテンプレートになっていて、逐次入力(74?80機能を用いた各種指示)の後、この表示エリアにはめ込まれることになる。
【0018】例えば図3に戻り、S16において問診所見の情報を開くと、図9のような画面が表示され、問診(主訴)90、問診(随伴)91、所見・バイタル92・シェーマ93が表示され、これらは定型句によってまとめられ、簡単に問診所見の登録を可能にしている。図9において93のシェーマボタンを入力するとシェーマ編集画面94が表示され問診所見情報が入力される。これらのデータベースはあらかじめ33、34、35、36,37、38、39、40に保持されていて必要に応じてその他検査結果を表示することが可能である。S17において問診所見が入力されると図7の問診所見欄には具体的な書きこみがなされ、S18に移行する。S18においては例えば、処方薬の指示や注射の指示などが行われる。治療指示を表示する際にDO領域の情報を拾うことにより前回の治療の指示の情報を表示し、必要に応じて、変更点の指示を行う(S19)。またこれも必要に応じてS20において、患者情報(問題点)を表示し、(41)医師が判断の後終了する(S21)。なお、42にはフリー記述欄が用意されており定型句では記述不可能な事項も記録される。
【0019】さらに、治療計画指示について説明する、図3のS18において治療指示が開始される(図10・S30)と、図5の51において共通グループデータが、52において共通ヘッダデータが作成される。共通ヘッダデータ52においてはオーダ日の情報が登録され、共通グループデータ51においては実施日が登録される(S32、S33)。その後S34において処方、画像、検査、食事、注射の指示が出されると、S35においてそれぞれのオーダヘッダデータ図5の53,56,59,62,65、オーダグループデータ54,57,60,63,66、オーダ明細データ55、58、61、64、67が記録される。ここでは主に、オーダヘッダデータにおいては、オーダにおける日数など時間に関する管理を、オーダグループデータ、オーダ明細データにおいては、実施に当たっての用法、詳細事項が格納されている。図10において、S32よりS37に移行するのは、文書作成データ70の作成を表し、S33より、S36に至るプロセスは汎用オーダグループデータ68、及び汎用オーダ明細データ69を作成するプロセスを表している。S35,S37,S38が完了すると、このオーダのプロセスは終了する。」

また、上記記載事項を関連する図面と技術常識に照らせば以下のことがいえる。

(a)引用例でいう「端末」は、医師がその画面に表示されるカルテイメージに、各種機能ボタンを用いて、問診所見や各種治療指示を入力するものであるから、「カルテ入力装置」とも言い得る。
(b)引用例の「端末」は、処方薬の指示や注射の指示を行う際に用いられ、治療指示を表示する際に前回の治療の指示の情報を表示する(段落【0018】参照)ものであるから、「ブラウザ表示部」と言い得るものを当然に備えている。
(c)引用例でいう「治療指示」は、診療過程の診療行為、検査行為などの指示であるから「診療行為の指示」とも言い得る。
(d)引用例でいう「オーダヘッダデータ」、「オーダグループデータ」、「オーダ明細データ」は、処方、画像、検査、食事、注射の指示が、機能ボタンを用いて入力され(段落【0016】)、記録されるものであり、内容として処方、画像、検査、食事、注射の指示における日数などの管理、実施に当たっての用法、詳細事項を表すもの(段落【0019】)であるから、「オーダ情報」とも言い得る。
(e)引用例でいう「前回の診療の指示の情報」は、「過去のオーダ情報」とも言い得る。

したがって、引用例には実質的に次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「受信患者に対する診療行為を指示するオーダ情報を含むカルテ情報の入力を受け付けるカルテ入力装置において、
過去のオーダ情報を表示するブラウザ表示部を備えたことを特徴とするカルテ入力装置。」

3.本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比すると、両者の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「受信患者に対する診療行為を指示するオーダ情報を含むカルテ情報の入力を受け付けるカルテ入力装置において、
過去のオーダ情報を表示するブラウザ表示部を備えたことを特徴とするカルテ入力装置。」

(相違点1)
本願発明は、「カルテ入力装置」が「オーダ情報記憶部」を有しているのに対し、引用発明は、「カルテ入力装置」が「オーダ情報記憶部」を有するものではない点。

(相違点2)
本願発明は、「種類分けされた複数種類のオーダ情報の入力をそれぞれ分担する複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部」を有し、「ブラウザ表示部」が「前記複数種類の入力ツールの中からユーザにより所望の入力ツールが選択されたことを受けて、その選択された入力ツールに抽出条件がリンクしていた場合にそのリンクした抽出条件に従って、過去のオーダ情報の中からその抽出条件に合致したオーダ情報を抽出して表示する」ものであるのに対し、引用発明は、「種類分けされた複数種類のオーダ情報の入力をそれぞれ分担する複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部」を有しておらず、「ブラウザ表示部」が「前記複数種類の入力ツールの中からユーザにより所望の入力ツールが選択されたことを受けて、その選択された入力ツールに抽出条件がリンクしていた場合にそのリンクした抽出条件に従って、過去のオーダ情報の中からその抽出条件に合致したオーダ情報を抽出して表示する」ものではない点。

4.判断

(1)上記相違点について

(相違点1)について
以下の事情を勘案すると、引用発明において、「カルテ入力装置」が「オーダ情報記憶部」を有する様に構成することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.引用例の「カルテサーバ」が備える「カルテ履歴DB」は、全ての患者に対する診療行為を診療過程として捕らえることが可能な情報を記憶する部分であり、診療過程を捕らえることが可能な情報にはオーダデータと称される患者に対する診療行為における、処置・実施行為の情報、例えば処方・検査・注射・画像/生理情報が含まれる(段落【0013】、【0015】参照)ことから、本願発明の「オーダ情報記憶部」とも言い得るものである。そして、「カルテ入力装置」は「カルテサーバ」が備える「カルテ履歴DB(オーダ情報記憶部)」から患者に対する「過去のオーダ情報」を取得し「ブラウザ表示部」を介して医師に「過去のオーダ情報」を提示するものである。
イ.ところで、コンピュータシステムを扱う分野において、データを格納し、当該データを利用するようなシステムでは、データを記憶する記憶部をサーバに設置しサーバ上で管理する構成や、端末上にデータを記憶し、同端末を用いてデータに対する処理及び管理を行う構成は、いずれも当該分野において周知の構成である。
ウ.これらの構成のうち、どの様な構成を採用するかは、端末やサーバ等のシステムを構成する各コンピュータにかかる処理の負荷やデータ量、データの同時使用可能性、コスト等を考慮して当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
エ.そして、引用発明においても、上記「ウ.」に記載したようにシステムにおける処理負荷やデータ量、データの同時使用可能性、コスト等の事情を考慮し、これらの処理負荷やデータ量が小さい場合や同時使用可能性が低い場合には、「カルテ入力装置」(端末)にデータを記憶する記憶部を備える構成とするのが望ましい場合があることは自明であるし、このような構成を採用できない理由はない。
オ.以上のことは、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味している。

(相違点2)について
以下の事情を勘案すると、引用発明を「種類分けされた複数種類のオーダ情報の入力をそれぞれ分担する複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部」を有するものとし、「ブラウザ表示部」を「前記複数種類の入力ツールの中からユーザにより所望の入力ツールが選択されたことを受けて、その選択された入力ツールに抽出条件がリンクしていた場合にそのリンクした抽出条件に従って、過去のオーダ情報の中からその抽出条件に合致したオーダ情報を抽出して表示する」ものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.原査定の拒絶の理由に引用された「豊田 修一、”指示データの集約化・視覚化による診療支援システムの開発”、電子情報通信学会論文誌、日本、社団法人電子情報通信学会、2003年7月1日、第J86-D-II巻 第7号、p.1111-1122」(以下、「引用例2」という。)には以下の記載(ア)?(エ)がある。
(ア)「図7に示すように、本診療支援システムのデータ表示領域では、指示種別ごとの指示データ作成画面である投薬指示データ作成画面や検査指示データ作成画面と検査結果表示画面などを切り換えて表示している。コントロール領域は、画面切換機能と指示種別ごとのデータ作成状況表示の機能を有する。各指示データ作成画面では、過去の指示履歴を表示するMA-Viewer windowと、作成中の指示データを表示する当日指示データwindowを同一画面に共存させることで、過去の指示と当日の指示を連続的に思考できる環境を実現している。」(p.1116左欄 4.2 診療支援システムの画面構成)
(イ)「図8は、検査指示データ作成画面の表示例である。画面上部右側のコントロール領域には各種画面に対応するアイコンが表示されている。画面中央部の左が当日指示データwindow、中央がMA-Viewerの基本指示内容表示部、右が指示経過表示部である。画面下部には操作ボタンが表示されている。」(p.1116右欄 4.3 指示データ作成画面)
(ウ)「投薬指示用MA-Viewerの例を図9に示す。この例は、内科(東京太郎医師)と泌尿器科(大阪次郎医師)を受診している患者の投薬状況を表している。指示経過表示部からは、基本指示内容[1]([1]は○の中に1が表示されることを表す。以下同様。)と[3]が継続的に実施されていることがわかる。」(p.1117左欄)
(エ)「集約化したデータを表示するMA-Viewerでは、データの表示期間は医師の設定項目になっている。」(p.1119右欄)
イ.そして上記「ア.」の「(ア)?(エ)」によれば、引用例2には「コントロール領域の画面切換機能を用いて、投薬指示データ作成画面や検査指示データ作成画面(各入力ツールに相当)が切り換え可能であり、該画面切換機能によって指示データ作成画面が切り換えられることにより、切り換えられた該指示データ作成画面に関連した過去の指示履歴、例えば該投薬指示データ作成画面に切り換えられたのであれば過去の投薬に関する指示履歴が、該検査指示データ作成画面に切り換えられたのであれば過去の検査指示履歴が、医師が設定する表示期間分MAーViewer(ブラウザ表示部に相当)を介して表示される」機能を有するシステムであって、「該指示データ作成画面には、関連する指示履歴を抽出するための抽出条件がリンクしている」ものが開示されていると認められる。
ウ.上記引用例2は、医師が指示データを作成する際に用いる指示データ作成画面において、過去の指示データが表示され、過去の指示データを医師が確認しながら、新たな指示データの作成を行う機能を提供するものであるという点において、引用発明と共通する技術分野に属するものであり、上記引用例2に示される「画面切換機能によって指示データ作成画面が切り換えられることにより、医師の設定した表示期間(抽出条件の期間に相当)の指示データ作成画面に関連した過去の指示履歴がMA-Viewerを介して表示される」機能によって、「重複指示や禁忌指示を回避するために必要となる過去の一定期間の指示履歴を正確に把握する」ことが、引用発明の「カルテ入力装置」においても有用であることは当業者にとって自明であるし、また、引用発明にそのような機能を採用できない理由はない。
エ.また、上記引用例2は「抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部」をどの装置が有しているのか明確ではないが、該「抽出条件記憶部」を「カルテ入力装置」上に設けるか、外部のサーバ上に設けるかは、使用する機器構成等を考慮し当業者が適宜決定し得る事項である。
オ.以上のことは、引用発明を「種類分けされた複数種類のオーダ情報の入力をそれぞれ分担する複数種類の入力ツールのうちのいずれかの入力ツールとリンクした抽出条件を記憶しておく抽出条件記憶部」を有するものとし、「ブラウザ表示部」を「前記複数種類の入力ツールの中からユーザにより所望の入力ツールが選択されたことを受けて、その選択された入力ツールに抽出条件がリンクしていた場合にそのリンクした抽出条件に従って、過去のオーダ情報の中からその抽出条件に合致したオーダ情報を抽出して表示する」ものとすることが当業者にとって容易であったことを意味している。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2の記載事項並びに上記周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別のものではない。

5.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用例2の記載事項並びに上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-16 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2004-232397(P2004-232397)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 潤  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 飯田 清司
本郷 彰
発明の名称 カルテ入力装置、カルテ入力プログラム、およびカルテ入力方法  
代理人 山田 正紀  
代理人 三上 結  

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