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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1257199
審判番号 不服2010-18570  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-18 
確定日 2012-05-16 
事件の表示 特願2005-190415号「拡張された人工関節とその関連方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月19日出願公開、特開2006- 15153号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年6月29日の出願(パリ条約による優先権主張2004年6月30日、アメリカ合衆国)であって、平成22年6月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成22年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

「股関節プロテーゼに使用する寛骨臼シェルであって、
前記シェルが、内周面と凸形状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定し、
前記外周面が、半球を画定する第一の部分と、前記第一の部分の赤道(equator)から収束する方向に延びる第二の部分と、を有し、
前記第二の部分は前記赤道に相対するリムを形成し、
前記中空部は前記リムの内側に配置されており、
前記シェルの前記内周面は第一の部分および第二の部分を有し、前記内周面の前記第一の部分は略半球状であり、前記内周面の第二の部分は、前記中空部の開口を画定し、前記中空部の該開口から前記内周面の前記第一の部分に向けて先細になる切頭円錐形状を有しており、該切頭円錐形状は20度以下の開先角度を有しており、前記切頭円錐形状の開先角度αααとし、前記内周面の第二の部分の摩擦係数をμとした場合、 tan(ααα/2)≦μを満たす、寛骨臼シェル。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。)

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「内周面の第二の部分」について、「内周面の第一の部分から外側へ伸びる形状を有している」との特定事項を「中空部の開口から内周面の第一の部分に向けて先細になる切頭円錐形状を有しており、該切頭円錐形状は20度以下の開先角度を有しており」との限定事項に減縮するとともに、新たに
「切頭円錐形状の開先角度αααとし、内周面の第二の部分の摩擦係数をμとした場合、
tan(ααα/2)≦μ
を満たす」との限定事項を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用刊行物の記載事項
(刊行物1)
当審において新たに引用する刊行物であり、本願優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2002/0031675号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(括弧内は当審による仮訳である。)
(ア)「The above-mentioned component is advantageously a hip joint prosthesis head, an insert for an acetabular cup, a tibial plate, a femoral component for a knee prosthesis, an inter-vertebral disc, or a tooth prosthesis component.(上記部品は、股関節プロテーゼの骨頭、寛骨臼カップのインサート、脛骨高平部、膝関節プロテーゼの大腿骨部品、椎間板、義歯用部品として有利に使用できる。)」(明細書段落[0026])

(イ)「Concurrently, an acetabular cup 13 having a YZTP zirconia ceramic socket insert 14 which is taper locked in a metal backing 17 is fitted into the pelvic bone 15. Lastly, the YZTP zirconia ceramic head 5 is positioned in the zirconia ceramic socket insert 14 of the acetabular cup 13 to form the hip joint.(同時に、金属製サポート17内にテーパーにより固定されたYTZPジルコニアセラミックス製ソケットインサート14を有する寛骨臼カップ13は、骨盤15内に適合する。最後に、YTZPジルコニアセラミックス製の骨頭5を寛骨臼カップ13のジルコニアセラミックス製ソケットインサート14内に位置させて股関節を形成する。)」(明細書段落[0049])

(ウ)「Therefore, in accordance with the present invention, there is provided an acetabular cup for receiving a hip joint prosthesis head having an substantially spherical convex outer surface, the cup comprising:
a) a YTZP ceramic component of the present invention having a substantially spherical socket surface shaped to rotatably receive the spherical outer surface of the hip joint head, and
b) a metal backing in which the ceramic component is received, preferably press-fit or interference fit, wherein the ceramic component is fit either i) directly within the metal backing, or ii) within a plastic insert, the plastic insert itself being interference fit within the metal backing.
(したがって、本発明によれば、実質的に球形の凸状外面をもつ股関節プロテーゼの骨頭を受容する寛骨臼カップが提供され、このカップは、
a) 股関節の骨頭の球形の外面を回転可能に受容するように、実質的に球形のソケット表面を有する本発明のYTZPセラミックス製部品と、
b) 内部に該セラミックス製部品が、好ましくは圧入または締まり嵌めによって固定される金属製サポートと、
を含む。その際、該セラミックス製部品は、i)金属製サポートの内部に直接に固定されてもよく、ii)金属製サポート内に締まり嵌めによって固定されたプラスチック材料製インサート内に固定されてもよい。)」(明細書段落[0058]?[0060])

(エ)「Also in accordance with the present invention, there is provided a YTZP ceramic acetabular cup insert of the present invention for receiving a hip joint prosthesis head having a substantially spherical convex outer surface, the insert comprising:
a) a substantially spherical socket surface shaped to rotatably receive the spherical convex outer surface of the hip joint head, and
b) a back surface shaped (preferably, frustoconically shaped) to be received in a metal backing.
(また、本発明によれば、実質的に球形の凸状外面をもつ股関節プロテーゼの骨頭を受容する本発明の寛骨臼カップのYTZPセラミックス製インサートが提供され、このインサートは、
a) 股関節の骨頭の球形の凸状外面を回転可能に受容し得る、実質的に球形のソケット表面と、
b) 金属製サポート内に受容され得る形状(好ましくは、円錐台形状)の後面と、
を含む。)」(明細書段落[0061]?[0063])

(オ)上記記載事項(イ)?(エ)に関連して、FIG. 2には「金属製サポート17が、内周面と凸状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定」する点、「金属製サポート17の内周面は(FIG. 2において湾曲線で示される)第一の部分および(FIG. 2において2本の直線で示される)第二の部分を有」する点、及び「内周面の第二の部分は、中空部の開口を画定し、中空部の開口から内周面の第一の部分に向けて先細になる円錐台形状を有している」点がそれぞれ示されている。

(カ)上記記載事項に「内周面の第一の部分」の形状は明記されていないが、技術常識(下記「相違点1について」欄に記載の周知慣用の例も参照)を参酌しつつ、FIG. 2を参照すると、「内周面の第一の部分が略半球状である」点は、刊行物1に記載されているに等しい事項といえる。

以上の記載事項及び図示内容から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「股関節プロテーゼに使用する寛骨臼カップ13の金属製サポート17であって、
金属製サポート17が、内周面と凸状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定し、
金属製サポート17の内周面は第一の部分および第二の部分を有し、内周面の第一の部分が略半球状であり、内周面の第二の部分は、中空部の開口を画定し、中空部の開口から内周面の第一の部分に向けて先細になる円錐台形状を有している、
寛骨臼カップ13の金属製サポート17。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、構造又は機能からみて、引用発明の「寛骨臼カップ13の金属製サポート17」は、本願補正発明の「寛骨臼シェル」に相当し、以下同様に、「凸状の」は「凸形状の」に、「円錐台形状」は「切頭円錐形状」に、それぞれ相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「股関節プロテーゼに使用する寛骨臼シェルであって、
シェルが、内周面と凸形状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定し、
シェルの内周面は第一の部分および第二の部分を有し、内周面の第一の部分は略半球状であり、内周面の第二の部分は、中空部の開口を画定し、中空部の開口から内周面の第一の部分に向けて先細になる切頭円錐形状を有している、
寛骨臼シェル。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明では、シェルの外周面が「半球を画定する第一の部分と、第一の部分の赤道(equator)から収束する方向に延びる第二の部分と、を有し、第二の部分は赤道に相対するリムを形成し、中空部はリムの内側に配置されて」いるのに対し、引用発明ではそのような限定がなされていない点。

(相違点2)
本願補正発明では、切頭円錐形状が「20度以下の開先角度」を有しているのに対し、引用発明ではそのような限定がなされていない点。

(相違点3)
本願補正発明では、「切頭円錐形状の開先角度αααとし、内周面の第二の部分の摩擦係数をμとした場合、
tan(ααα/2)≦μ
を満たす」のに対し、引用発明ではそのような明示がない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
股関節プロテーゼに使用する寛骨臼シェルの技術分野において、「シェルの外周面が、半球を画定する第一の部分と、第一の部分の赤道(equator)から収束する方向に延びる第二の部分と、を有し、第二の部分は赤道に相対するリムを形成し、中空部がリムの内側に配置されて」いる技術事項は、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第02/00141号(特に、2頁33行?3頁20行、Fig. 1を参照)や米国特許第5725587号明細書(特に、3欄1行?27行、Fig. 2を参照)、また特開昭53-56895号公報(特に、4頁右上欄17行?右下欄8行、第4図を参照)等に示されているように、周知慣用であり、引用発明において、上記周知慣用の技術事項を採用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることに格別の困難性はない。

(相違点2について)
本願明細書では、切頭円錐形状の開先角度に関して、段落【0053】に「第二部分234は、通常、先細りの形、または切頭円錐状である。第二または先細り部分234は、たとえば約0度から20度の開先角度αααを定める。角度αααは、ライナー244が寛骨臼シェル210に自ら固定されるテーパーすなわちセルフロック・テーパー(self-locking taper)となるように選ばれることが好ましい。」と記載され、段落【0054】に「セルフロック・テーパーを供給するため、αααの角度は、以下の式によって算出される。 tan(ααα/2)≦μ 但し、ααα=テーパーの開先角度 μ=テーパー表面の摩擦係数」と記載されているのみであり、相違点2にかかる「20度以下」という数値範囲の内外で作用効果にどのような違いが生じるのかが明らかにされていないから、当該数値範囲に臨界的意義があるものと理解することはできない。よって、引用発明において、切頭円錐形状の開先角度について、相違点2にかかる「20度以下」という数値範囲とすることは、当業者が技術の具体化に際して適宜なし得る数値範囲の好適化にすぎない。

(相違点3について)
上記記載事項(イ)?(エ)に記載されているとおり、引用発明の「寛骨臼シェル(金属製サポート17)」は、その内部に、切頭円錐形状(円錐台形状)の後面を有するYTZPセラミック製インサート14(以下、「インサート」という。)を圧入または締まり嵌めによって固定するものである。
ここで、切頭円錐形状の開先角度αααとし、寛骨臼シェルの内周面の第二の部分の摩擦係数をμとし、圧入または締まり嵌めの結果、インサートが寛骨臼シェルに対して加える該インサートの切頭円錐形状の径方向外側に向かう力をFとすると、圧入または締まり嵌めによって固定が実現されるためには、寛骨臼シェルとインサートとの間の摩擦力に関し、
Fsin(ααα/2)≦μFcos(ααα/2)
すなわち、
tan(ααα/2)≦μ
の関係が満たされる必要がある。してみると、相違点3は実質的な相違点とはいえない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知慣用の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知慣用の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成22年3月9日付けの手続補正書により補正された、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「股関節プロテーゼに使用する寛骨臼シェルであって、
前記シェルが、内周面と凸形状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定し、
前記外周面が、半球を画定する第一の部分と、前記第一の部分の赤道(equator)から収束する方向に延びる第二の部分と、を有し、
前記第二の部分は前記赤道に相対するリムを形成し、
前記中空部は前記リムの内側に配置されており、
前記シェルの前記内周面は第一の部分および第二の部分を有し、前記内周面の前記第一の部分は略半球状であり、前記内周面の第二の部分は、前記中空部の開口を画定し、前記内周面の前記第一の部分から外側へ伸びる形状を有している、寛骨臼シェル。」

IV.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第02/00141号(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(括弧内は当審による仮訳である。)
(キ)「La presente invention concerne une prothese articulee.(本発明は、関節プロテーゼに関連している。)」(明細書1頁4行)

(ク)「La prothese illustree a la figure 1 comprend egalement un element fixe 12, destine a tre solidarise au cotyle non represente de l'epaule. Cet element fixe 12 possede une surface exterieure spherique, ainsi qu'une surface interieure spherique, de diametre D. Cette surface interieure s'etend sur un secteur angulaire superieur a 180 , de sorte que la dimension transversale L, correspondant au debouche 14 du volume interieur 16 de l'element 12, est inferieure au diametre D precite.(図1に示すように、プロテーゼはまた図示されていない肩の関節窩に固定されるように適合された固定要素12を含んでいる。この固定要素12は、球状の外面と直径Dの球状の内面を有している。この内面は、要素12の内部容積16の出口14に対応する横断寸法Lが上記直径Dよりも小さくなるように、180°よりも大きい角度領域にわたって広がっている。)」(明細書2頁33行?3頁3行)

(ケ)「7. Prothese articulee selon l'une quelconque des revendications precedentes, caracterisee en ce qu'elle forme une prothese d'epaule ou de hanche, l'element fixe (12) etant destine a tre rendu solidaire du cotyle de l'epaule ou de la hanche, alors que l'element mobile (4) comporte une tige (6) apte a tre introduite dans le canal medullaire de l'humerus ou du femur, ainsi qu'une tte (8) prolongeant cette tige et apte a tre introduite dans ledit volume interieur (28) de l'element intermediaire (20).(7.肩の関節窩または股関節の寛骨臼に固定されるように適合されている固定要素(12)と、上腕骨または大腿骨の髄管に挿入されるように適合されているロッド(6)及び中間要素(20)の内部容積(28)内に導入されるよう適合されている該ロッドの拡張ヘッド(8)を含む可動要素(4)により肩または股関節を形成することを特徴とする上記いずれか一項の記載の関節プロテーゼ。)」(請求項7)

以上の記載事項及び図示内容から、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「股関節を形成する関節プロテーゼに含まれる股関節の寛骨臼に固定されるように適合されている固定要素12であって、
固定要素12が、直径Dの球状の内面と球状の外面と内部容積16を有し、
内面は、要素12の内部容積16の出口14に対応する横断寸法Lが上記直径Dよりも小さくなるように、180°よりも大きい角度領域にわたって広がっている、
股関節の寛骨臼に固定されるように適合されている固定要素12。」

V.対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比すると、その意味、構造又は機能からみて、引用発明2の「股関節を形成する関節プロテーゼ」は、本願発明の「股関節プロテーゼ」に相当し、以下同様に、「に含まれる」は「に使用する」に、「股関節の寛骨臼に固定されるように適合されている固定要素12」は「寛骨臼シェル」に、「内面」は「内周面」に、「外面」は「外周面」に、「内部容積16」は「中空部」に、「出口14」は「開口」に、それぞれ相当する。してみると、引用発明2の「固定要素12が、直径Dの球状の内面と球状の外面と内部容積16を有し」は、本願発明の「シェルが、内周面と凸形状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定し」に相当することとなる。
引用発明2では、「固定要素12が、直径Dの球状の内面と球状の外面と内部容積16を有し、内面は、要素12の内部容積16の出口14に対応する横断寸法Lが上記直径Dよりも小さくなるように、180°よりも大きい角度領域にわたって広がっている」ことから、引用発明2と本願発明は、「外周面が、半球を画定する第一の部分と、第一の部分の赤道(equator)から収束する方向に延びる第二の部分と、を有し、第二の部分は赤道に相対するリムを形成し、中空部はリムの内側に配置されて」いる点、及び「シェルの内周面は第一の部分および第二の部分を有し、内周面の第一の部分は略半球状であり、内周面の第二の部分は、中空部の開口を画定」する点で共通している。
また、本願発明の「内周面の第二の部分は・・・内周面の第一の部分から外側へ伸びる形状を有している」点の意味について、本願明細書の段落【0036】に「図1に示すとおり、・・・内周面16の第一部分32から外に向かってのびる第二部分34を含んでもよい。第二部分34は、概して円筒状、または、ライナーまたはベアリングを受入れることができるいかなる形状、もしくは、ヘッドまたはボールを受け入れることができるいかなる形状であってもよい。」と記載され、段落【0036】で引用する図1には、第二部分34が赤道に対して第一部分32と反対側に第一部分32から開口まで延びている点が開示されていることを参酌すると、本願発明の「内周面の第一の部分から外側へ伸びる形状」とは、内周面の第二部分34が赤道に対して第一部分32と反対側に第一部分32から開口まで延びている形状を指すものと解釈できる。
上述のとおり、引用発明2では、「固定要素12が、直径Dの球状の内面と球状の外面と内部容積16を有し、内面は、要素12の内部容積16の出口14に対応する横断寸法Lが上記直径Dよりも小さくなるように、180°よりも大きい角度領域にわたって広がっている」ところ、引用発明2と本願発明は、内周面の第二の部分が「赤道に対して第一の部分と反対側に第一の部分から開口まで延びている形状」、すなわち「内周面の第一の部分から外側へ伸びる形状」を有している点で共通しているといえる。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「股関節プロテーゼに使用する寛骨臼シェルであって、
シェルが、内周面と凸形状の外周面とを有する本体を備え、中空部を画定し、
外周面が、半球を画定する第一の部分と、第一の部分の赤道(equator)から
収束する方向に延びる第二の部分と、を有し、
第二の部分は赤道に相対するリムを形成し、
中空部はリムの内側に配置されており、
シェルの内周面は第一の部分および第二の部分を有し、内周面の第一
の部分は略半球状であり、内周面の第二の部分は、中空部の開口を画定し、
内周面の第一の部分から外側へ伸びる形状を有している、寛骨臼シェル。」

したがって、引用発明2と本願発明とは一致し、両者に相違する点はないから、本願発明は引用発明2である。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができないものである以上、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-16 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2005-190415(P2005-190415)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61F)
P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 113- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮部 愛子  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 関谷 一夫
高田 元樹
発明の名称 拡張された人工関節とその関連方法  
代理人 加藤 公延  

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