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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1257215
審判番号 不服2010-26029  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-17 
確定日 2012-05-17 
事件の表示 特願2009- 17010「無線基地局及び通信制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日出願公開、特開2010-177913〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年1月28日の出願であって、平成22年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


2.平成22年11月17日付け手続補正書による補正について
平成22年11月17日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項3及び4を削除するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定される「請求項の削除」を目的とするものである。


3.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
下り帯域が、複数の第1周波数帯に分割され、前記第1周波数帯のそれぞれが複数の第2周波数帯に分割されている無線通信システムに構成される無線基地局であって、
前記第1周波数帯毎に、前記第1周波数帯における前記複数の第2周波数帯の通信品質のうち、最高の通信品質を示す第1品質レベルを無線端末から受信する受信部と、
前記第1周波数帯毎に、前記第1品質レベルに対応しない第2周波数帯の通信品質を示す第2品質レベルを補間する補間部と
を備え、
前記補間部は、前記第2品質レベルを前記第1品質レベル以下とする無線基地局。」


4.刊行物
刊行物1.3GPP TS 36.213 V8.4.0 (2008-09), “3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical layer procedures (Release 8)”
刊行物2.国際公開第2008/044529号

以下で刊行物を摘記する際、切り上げ記号(天井関数記号)及び切り捨て記号(床関数記号)を、それぞれ「ceil()」及び「floor()」で表す。例えば、xの切り上げを表すには、「ceil(x)」と表記する。

4-1.刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(ア)第6頁下から数えて第6行目から下から数えて第5行目
For the purposes of the present document, the following symbols apply:
N_(RB)^(DL) Downlink bandwidth configration, expressed in units of N_(sc)^(RB) as defined in [3]

〈当審訳〉
本書の目的のために、以下の記号を適用する:
N_(RB)^(DL) [3]で定義されるN_(sc)^(RB)を単位とした下り帯域幅設定

(イ)第7頁「3.2 Abbreviations」(略語)の第19項目
PUCCH Physical Uplink Control Channel

〈当審訳〉
PUCCH 上り物理コントロールチャネル

(ウ)第30頁7.2節の最初の段落の第1文
The time and frequency resources that can be used by the UE to report CQI, PMI, and RI are controlled by the eNB.

〈当審訳〉
UEがCQI、PMI及びRIを報告するために用いることが可能な時間及び周波数資源は、eNBによって制御される。

(エ)第36頁第1行から第17行
7.2.2 Periodic CQI/PMI/RI Reporting using PUCCH
A UE is semi-statically configured by higher layers to periodically feed back different CQI, PMI, and RI on the PUCCH using the reporting modes given in Table 7.2.2-1 and described below.

For the UE-selected subband CQI, a CQI report in a certain subframe describes the channel quality in a particular part or in particular parts of the bandwidth described subsequently as bandwidth part (BP) or parts. The subbands shall be indexed in the order of increasing frequency and non-increasing sizes starting at the lowest frequency. The bandwidth parts shall also be indexed in the order of increasing frequency and non-increasing sizes starting at the lowest frequency.

● There are a total of N subbands for a system bandwidth given by N_(RB)^(DL) where floor(N_(RB)^(DL)/k) subbands are of size k. If ceil(N_(RB)^(DL)/k)-floor(N_(RB)^(DL)/k)>0 then one of the subbands is of size N_(RB)^(DL) - k・floor(N_(RB)^(DL)/k).
● A bandwidth part j is frequency-consecutive and consists of N_(j) subbands where J bandwidth parts span S or N_(RB)^(DL) as given in Table 7.2.2-2. If J=1 then N_(j) is ceil(N_(RB)^(DL)/k/J). If J>1 then N_(j) is either ceil(N_(RB)^(DL)/k/J) or ceil(N_(RB)^(DL)/k/J)-1, depending on N_(RB)^(DL), k and J.
● Each bandwidth part j is scanned in sequential order according to increasing frequency as defined by the equation j = mod(N_(SF),J) , where N_(SF) is a counter that a UE increments after each subband report transmission for the bandwidth part.
● For UE selected subband feedback a single subband out of N_(j) subbands of a bandwidth part is selected along with a corresponding L-bit label where L=ceil(log_(2)ceil(N_(RB)^(DL)/k/J)).

〈当審訳〉
7.2.2 PUCCHを用いた定期的なCQI/PMI/RI報告
UEは、異なるCQI、PMI及びRIをPUCCH上で表7.2.2-1及び後述で与えられるレポーティングモードを用いて定期的にフィードバックするように、高位レイヤによって凖静的に設定される。

UEによって選択されたサブバンドCQIに対して、あるサブフレーム中のCQIレポートは、1つ又は複数の帯域幅部分(BP)として後に記述される該帯域幅中の1つ又は複数の特定の部分中のチャネル品質を記述する。該サブバンドには、最低の周波数から周波数の昇順でありサイズについては昇順ではない順番で、索引が付けられる。該帯域幅部分も、最低の周波数から周波数の昇順でありサイズについては昇順ではない順番で、索引が付けられる。
● N_(RB)^(DL)で与えられるシステム帯域幅に対して合計でN個のサブバンドがあり、floor(N_(RB)^(DL)/k)個のサブバンドは、サイズがkである。もし、ceil(N_(RB)^(DL)/k)-floor(N_(RB)^(DL)/k)>0であるならば、サブバンドの1つは、サイズがN_(RB)^(DL) - k・floor(N_(RB)^(DL)/k)である。
● 帯域幅部分jは、周波数が連続しており、かつ、N_(j)個のサブバンドから成っており、J個の帯域幅部分は、S又は表7.2.2-2で与えられるN_(RB)^(DL)に渡っている。もし、J=1ならば、N_(j)は、ceil(N_(RB)^(DL)/k/J)である。もしJ>1ならば、N_(j)は、N_(RB)^(DL)、k及びJに依存して、ceil(N_(RB)^(DL)/k/J)であるか、又は、ceil(N_(RB)^(DL)/k/J)-1である。
● 各帯域幅部分jは、数式j = mod(N_(SF),J)によって定義される周波数が増える順にスキャンされ、N_(SF)はカウンターであり、該カウンターは、UEが該帯域幅部分に対する各サブバンドレポートの伝送後に増やされる。
● UEが選択したサブバンドのフィードバックのために、1つの帯域幅部分の中のN_(j)個のサブバンド中の単一のサブバンドが、対応するLビットのラベルと共に選ばれ、ここで、L=ceil(log_(2)ceil(N_(RB)^(DL)/k/J))である。

(オ)第39頁第3行から第22行
● UE Selected subband feedback
○ Mode 2-0 description:
■ In the subframe where RI is reported (only for open-loop spatial multiplexing):
● A UE shall determine a RI assuming transmission on set S subbands.
● The UE shall report a type 3 report consisting of one RI.
■ In the subframe where wideband CQI is reported:
● The UE shall report a type 4 report on each respective successive reporting opportunity consisting of one wideband CQI value conditioned on the last reported RI.
■ In the subframe where CQI for the selected subbands is reported:
● The UE shall select the preferred subband within the set of N_(j) subbands in each of the J bandwidth parts where J is given in Table 7.2.2-2. For open-loop spatial multiplexing, the selection is conditioned on the last reported RI.
● The UE shall report a type 1 report consisting of one CQI value reflecting transmission only over the selected subband of a bandwidth part determined in the previous step along with the corresponding best subband L-bit label. A type 1 report for each bandwidth part will in turn be reported in respective successive reporting opportunities. The CQI represents channel quality across all layers irrespective of the computed or reported RI. For open-loop spatial multiplexing, the selection is conditioned on the last reported RI

上記(オ)においての「set S subbands」との記載は、「set S of subbands」の誤記と認める。

〈当審訳〉
● UEが選択したサブバンドのフィードバック
○ モード2-0の説明:
■ (開ループ空間多重のためにのみ)RIが報告されるサブフレームにおいて:
● UEは、サブバンドのセットS上で伝送すると仮定して、RIを決定する。
● UEは、1つのRIから成るタイプ3レポート1つを報告する。
■ 広帯域CQIが報告されるサブフレームにおいて:
● UEは、各々の次の報告の機会にタイプ4レポートを報告し、該機会は1つの広帯域CQI値から成り、該広帯域CQI値は、直近に報告されたRIを条件としている。
■ 選択されたサブバンドのためのCQIが報告されるサブフレームにおいて:
● UEは、J個、Jは表7.2.2-2で与えられる、の帯域幅部分の各々の中のN_(j)個のサブバンドの集合のうちの望ましいサブバンドを選択する。開ループ空間多重のために、該選択は直近に報告されたRIを条件とする。
● UEは、前のステップで決定された帯域幅部分中の該選択されたサブバンドを介しての伝送のみを反映した1つのCQI値から成るタイプ1レポートを、対応する最良のサブバンドのLビットのラベルと共に報告する。各帯域幅部分のためのタイプ1レポートは、同様に、各々の次の報告の機会に報告されるだろう。該CQIは、計算された又は報告されたRIに関わりなく全レイヤにわたるチャネル品質を表す。開ループ空間多重のために、該選択は直近に報告されたRIを条件とする。

以上の刊行物1の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「定期的なCQI/PMI/RI報告であって、
UEは、異なるCQI、PMI及びRIをPUCCH上でレポーティングモードを用いて定期的にフィードバックするように、高位レイヤによって凖静的に設定され、
UEによって選択されたサブバンドCQIに対して、あるサブフレーム中のCQIレポートは、1つ又は複数の帯域幅部分(BP)中のチャネル品質を記述し、
N_(RB)^(DL)は、下り帯域幅設定を表し、
N_(RB)^(DL)で与えられるシステム帯域幅に対して合計でN個のサブバンドがあり、floor(N_(RB)^(DL)/k)個のサブバンドは、サイズがkであり、ceil(N_(RB)^(DL)/k)-floor(N_(RB)^(DL)/k)>0であるならば、サブバンドの1つは、サイズがN_(RB)^(DL) - k・floor(N_(RB)^(DL)/k)であり、
帯域幅部分jは、周波数が連続しており、かつ、N_(j)個のサブバンドから成っており、J個の帯域幅部分は、N_(RB)^(DL)に渡っており、
UEが選択したサブバンドのフィードバックのために、1つの帯域幅部分の中のN_(j)個のサブバンド中の単一のサブバンドが、対応するLビットのラベルと共に選ばれ、ここで、L=ceil(log_(2)ceil(N_(RB)^(DL)/k/J))であり、
UEが選択したサブバンドのフィードバックのモード2-0において、
選択されたサブバンドのためのCQIが報告されるサブフレームにおいて、
UEは、J個の帯域幅部分の各々の中のN_(j)個のサブバンドの集合のうちの望ましいサブバンドを選択し、
UEは、前のステップで決定された帯域幅部分中の該選択されたサブバンドを介しての伝送のみを反映した1つのCQI値から成るタイプ1レポートを、対応する最良のサブバンドのLビットのラベルと共に報告し、該CQIは、計算された又は報告されたRIに関わりなく全レイヤにわたるチャネル品質を表す、定期的なCQI/PMI/RI報告。」

4-2.刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(カ)第0002段落直前から第0005段落
背景技術
[0002] 下りリンクの共有データチャネルにおいて、受信チャネル品質(CQI)を考慮する周波数スケジューリングを適用する場合に、ユーザ端末から基地局に通知されるCQI情報を用いる。3GPPにより規格化されたHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)では、CQIの通知に専用物理制御チャネルを用いていた。
[0003] 現在、HSDPAよりもさらに高速・大容量の移動通信として、LTE(Long Term Evolution)の標準化が進められている。LTEのネットワーク構成(evolved UTRAN)では、上りリンクでのCQIの通知に、共有制御チャネルを用いることになっている。
[0004] この場合、基地局側でCQIフィードバック用の上りリンク無線リソースの割り当て制御が、必須になる。無線リソースの効率的な利用とシステムスループットの増大のためには、上りリンクで通知されるCQI情報のビット数をできるだけ減らしつつ、周波数スケジューリングの効果を十分に得る必要がある。
[0005] 上りリンクのCQIフィードバックでビット数を減らす方法として、各リソースブロックでのパイロットチャネルの測定結果を、0/1ビットシーケンスで表わす方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。この方法では、リソースブロック(RB)ごとの測定結果(CQI)を基地局に通知する際に、まずすべてのリソースブロックの平均値を通知し、平均値に達するリソースブロックにはビット“1”を、それ以外のリソースブロックにはビット“0”をマップして、通知する。基地局では、“1”がマップされたRBは、報告どおりのCQI平均値を有すると認識し、“0”がマップされたRBは、平均値よりも数dB(xdB)低い値を有すると認識して、スケジューリングを行う。


5.対比
本願発明と刊行物1記載発明とを以下で対比する。

刊行物1は、E-UTRAといわれる携帯電話システムに関する規格であるから、刊行物1記載発明は明らかに無線通信システムに関するものである。

刊行物1記載発明では、「N_(RB)^(DL)は、下り帯域幅設定を表し」、「帯域幅部分jは、周波数が連続しており、かつ、N_(j)個のサブバンドから成っており、J個の帯域幅部分は、N_(RB)^(DL)に渡って」いるのであるから、刊行物1記載発明の下り帯域幅である「N_(RB)^(DL)」は、本願発明の「下り帯域」に相当し、刊行物1記載発明の「帯域幅部分」及び「サブバンド」は、それぞれ本願発明の「第1周波数帯」及び「第2周波数帯」に相当する。

刊行物1記載発明では、「UEは、異なるCQI、PMI及びRIをPUCCH上でレポーティングモードを用いて定期的にフィードバックするように、高位レイヤによって凖静的に設定され」いる。
ここで、PUCCHはE-UTRAにおいて上り物理コントロールチャネル(Physical Uplink Control Channel)のことを指す(上記摘記事項(イ)を参照)。一般に、携帯電話システムにおける上りチャンネルは、移動局から基地局へ伝送するためのものであるから、PUCCHがUEからeNodeB(eNB)と呼ばれる無線基地局への伝送チャネルであることは、明らかである(上記摘記事項(ウ)を参照)。
してみると、刊行物1記載発明は、PUCCHを介してCQI等をUEから受信する無線基地局を有していることが明らかである。
よって、本願発明と刊行物1記載発明とは、「下り帯域が、複数の第1周波数帯に分割され、前記第1周波数帯のそれぞれが複数の第2周波数帯に分割されている無線通信システムに構成される無線基地局」を有する点で一致する。

刊行物1記載発明の「CQI」は、本願発明の「品質レベル」に相当する。
刊行物1記載発明では、「選択されたサブバンドのためのCQIが報告されるサブフレームにおいて」、「UEは、J個の帯域幅部分の各々の中のN_(j)個のサブバンドの集合のうちの望ましいサブバンドを選択し」、「UEは、前のステップで決定された帯域幅部分中の該選択されたサブバンドを介しての伝送のみを反映した1つのCQI値から成るタイプ1レポートを、対応する最良のサブバンドのLビットのラベルと共に報告」する。
ここで、「Lビットのラベル」について、刊行物1記載発明は、「UEが選択したサブバンドのフィードバックのために、1つの帯域幅部分の中のN_(j)個のサブバンド中の単一のサブバンドが、対応するLビットのラベルと共に選ばれ、ここで、L=ceil(log_(2)ceil(N_(RB)^(DL)/k/J))」としており、「Lビット」とは、ある帯域幅部分を構成するそれぞれのサブバンドを一意に特定するために必要なビット数のことであると認められる。そして、「Lビットのラベル」は、フィードバックのために選んだサブバンドと共に「対応するLビットのラベル」として選ばれたものであるから、選択されたサブバンドを識別するためのラベルであると認められる。
上記に鑑みると、「UEは、前のステップで決定された帯域幅部分中の該選択されたサブバンドを介しての伝送のみを反映した1つのCQI値から成るタイプ1レポートを、対応する最良のサブバンドのLビットのラベルと共に報告」するという部分の「対応する最良のサブバンドのLビットのラベル」も、「前のステップで決定された帯域幅部分中の該選択されたサブバンド」に対応する識別子であり、該「選択されたサブバンド」は、「最良」のものとして選択されたものであると認められる。
そして、「前のステップ」が「UEは、J個の帯域幅部分の各々の中のN_(j)個のサブバンドの集合のうちの望ましいサブバンドを選択」することを指していると認められるから、上記「選択されたサブバンド」は、「望ましく」かつ「最良」のサブバンドであると認められる。
そして、上記「選択されたサブバンド」は、「選択されたサブバンドのためのCQIが報告されるサブフレームにおいて」「該選択されたサブバンドを介しての伝送のみを反映した1つのCQI値から成るタイプ1レポート」を報告するために選択されたのであるから、上記「選択されたサブバンド」が「望ましく」かつ「最良」であるということは、該サブバンドのCQI値が最も高いことを意味していると認められる。
よって、本願発明と刊行物1記載発明とは、「前記第1周波数帯毎に、前記第1周波数帯における前記複数の第2周波数帯の通信品質のうち、最高の通信品質を示す第1品質レベルを無線端末から受信する受信部」を備える無線基地局を有する点で一致する。

すると、本願発明と刊行物1記載発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「下り帯域が、複数の第1周波数帯に分割され、前記第1周波数帯のそれぞれが複数の第2周波数帯に分割されている無線通信システムに構成される無線基地局であって、
前記第1周波数帯毎に、前記第1周波数帯における前記複数の第2周波数帯の通信品質のうち、最高の通信品質を示す第1品質レベルを無線端末から受信する受信部
を備える無線基地局。」である点。

〈相違点〉
本願発明では、無線基地局が「前記第1周波数帯毎に、前記第1品質レベルに対応しない第2周波数帯の通信品質を示す第2品質レベルを補間する補間部」を備えており、「前記補間部は、前記第2品質レベルを前記第1品質レベル以下とする」のに対し、刊行物1記載発明では、無線基地局がそのような補間部を備えておらず、第2品質レベルも規定されていない点。


6.判断

6-1.相違点について
E-UTRAシステムにおいて、CQIは基地局においてサブバンドのスケジューリングに用いられるものであるから、本来、基地局は全てのサブバンドについてCQIを知る必要があると認められる。
しかしながら、刊行物1記載発明においては、CQIは1つの帯域幅部分中の最良のサブバンドについてのみしか報告されない。
そして、未知の値を、その近隣の値から類推して補う、いわゆる補間技術は、工学の分野で一般的に用いられている常套手段であるから、刊行物1記載発明において、報告されていないサブバンドのCQIを得るために、補間技術を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
そして、報告されているCQIはその帯域幅部分で最良のCQIなのであるから、補間して得られる他のサブバンドのCQIは、報告されたCQI以下とすることが必然である。

加えて、刊行物2に開示されているように、E-UTRAシステムにおいて、CQIの平均値を報告し、平均に達しているRBには1を、平均に達していないRBには0を割り当てて報告し、基地局では、1が割り当てられたRBは報告されたCQIであるとし、0が割り当てられたRBは報告されたCQIよりも数dB低い値であるとしてスケジューリングを行うことは、周知である(上記摘記事項(カ)を参照)。
これは、報告されたCQIを用いて、報告されていない部分のCQIを、報告されたCQI以下の値に補間する技術である。
このような補間技術を、最良のCQIが報告される刊行物1のE-UTRAシステムに適用することは、当業者が容易になし得ることである。

6-2.効果について
また、本願発明の構成によって生じる効果も、本願発明が補間方法について格別の限定をしていない以上、上記刊行物1記載発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のもので格別顕著であるとはいえない。


7.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2009-17010(P2009-17010)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 稲葉 和生
丸山 高政
発明の名称 無線基地局及び通信制御方法  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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