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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1257220
審判番号 不服2011-381  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-07 
確定日 2012-05-16 
事件の表示 特願2007-514274号「冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月8日国際公開、WO2005/115177号、平成20年 1月10日国内公表、特表2008-500508号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、2005年5月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年5月25日、トルコ国)を国際出願日とする出願であって、平成22年9月8日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月10日)、これに対し、平成23年1月7日に拒絶査定不服の審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年1月7日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月7日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「冷却し且つ(又は)冷凍すべくその内部に食料品が配置される1つ又はより多くの室(2)と、圧縮することにより冷凍サイクル中にて冷媒を循環させるため使用されるコンプレッサ(3)と、冷媒と環境との間の熱伝導を実現するための蒸発器(4)と、蒸発器(4)により冷却された空気を室(2)内に移送し且つ室(2)内にて暖められた空気を吹き出して蒸発器(4)内に戻すため使用されるファン(5)と、高電圧発生器及び該高電圧発生器に接続された少なくとも1つの電極(7)を備えるイオン発生器(6)であって、高電圧発生器により前記した電極(7)に印加された高電圧の結果として、電極(7)の回りの空気をイオン化することにより、マイナスイオンの量を増大させるために利用される前記イオン発生器(6)とを備え、空気中の微生物は、前記マイナスイオンにより取り囲まれているため死滅するようにされた、冷却装置(1)において、イオン発生器(6)の作動に関してユーザがデータを入力することを可能にする1つ又は1つ以上のキーを有した入力装置(8)を備え、ユーザが、より頻繁に又はより少ない頻度にて、又は、より長い期間又はより短い期間にてイオン発生器(6)を作動させられる、又は、加減することでイオン発生器(6)の動力を変化させられるように、製造メーカが決定した条件以外で、入力装置(8)を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器(6)を制御することを特徴とする、冷却装置(1)。」とあったものを「冷却し且つ(又は)冷凍すべくその内部に食料品が配置される1つ又はより多くの室(2)と、圧縮することにより冷凍サイクル中にて冷媒を循環させるため使用されるコンプレッサ(3)と、冷媒と環境との間の熱伝導を実現するための蒸発器(4)と、蒸発器(4)により冷却された空気を室(2)内に移送し且つ室(2)内にて暖められた空気を吹き出して蒸発器(4)内に戻すため使用されるファン(5)と、高電圧発生器及び該高電圧発生器に接続された少なくとも1つの電極(7)を備えるイオン発生器(6)であって、高電圧発生器により前記した電極(7)に印加された高電圧の結果として、電極(7)の回りの空気をイオン化することにより、マイナスイオンの量を増大させるために利用される前記イオン発生器(6)とを備え、空気中の微生物は、前記マイナスイオンにより取り囲まれているため死滅するようにされた、冷却装置(1)において、イオン発生器(6)の作動に関してユーザがデータを入力することを可能にする1つ又は1つ以上のキーを有した入力装置(8)を備え、ユーザが、より頻繁に又はより少ない頻度にて、又は、より長い期間又はより短い期間にてイオン発生器(6)を作動させられる、又は、加減することでイオン発生器(6)の動力を変化させられるように、製造メーカが決定した条件以外で、入力装置(8)を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器(6)を制御し、製造メーカが決定した条件以外による前記イオン発生器(6)の作動の前記期間が満了すると、前記イオン発生器(6)は、通常の作動サイクルに戻ることにより作動し続けることを特徴とする、冷却装置(1)。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、イオン発生器の制御について、「製造メーカが決定した条件以外による前記イオン発生器(6)の作動の前記期間が満了すると、前記イオン発生器(6)は、通常の作動サイクルに戻ることにより作動し続ける」と限定することを含むものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2004-44950号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「勿論、庫内にもプラスイオンとマイナスイオンを発生する手段を付設する構成が好適である。この場合、庫外用の第1のイオン発生手段と庫内用の第2のイオン発生手段とを別個に設けた冷蔵庫と、1個のイオン発生手段で庫外と庫内の両方にイオン化空気を放出する冷蔵庫とを提供することができる。
上記いずれの場合も、上記侵入経路以外で発生した浮遊菌、例えば貯蔵食品の表面に付着している微生物が、その出し入れの際の衝撃やドア開閉による振動等で空中に離脱した場合や、その出し入れの際に衣服に付着している微生物が脱離した場合など、前述した庫外から庫内へ侵入する以外の二次的な要因により庫内を浮遊する微生物に対し、庫内用のイオン発生装置が殺菌効果を与え、より衛生的な庫内環境を日常生活において実現することができる。」(段落【0011】?【0012】)
b)「<第1実施形態>
図1、図2、図3は本発明の第1の実施形態における冷蔵庫を示す、右側面断面図、正面図、及び左側面断面図である。冷蔵庫本体1は、上方に冷蔵室2が設けられ、その下に製氷室3、冷凍室4と野菜室5が左右に配置され、これらは断熱仕切り部7a?7cにより仕切られている。冷蔵室2の下部には隔離室6が設けられ、前後方向に移動可能なケース8が収納されている。また、冷蔵室2には食品等を載置する載置棚9a?9dが設けられ、載置棚9dにより隔離室6の天井が形成されている。冷蔵室2は、前面に枢支された冷蔵室扉16により開閉可能となっている。冷蔵室扉16の背面側にはドアポケット10a?10dが設けられている。
製氷室3は、前面に枢支された製氷室扉17により開閉可能で、製氷ケース11は製氷室扉17に着脱自在に取り付けられており、製氷室扉17と一体に引き出されるようになっている。製氷ケース11の上側の断熱仕切り部7aに自動製氷機12が取り付けられている。
冷凍室4は、前面に枢支された冷凍室扉18により開閉可能で、前後に移動可能な冷凍ケース13a?13cが収納されている。野菜室5は、前面に枢支された野菜室扉19により開閉可能で、前後に移動可能な野菜ケース15a、15b、15cが収納されている。野菜室扉19の背面側には縦置き収納可能なドアポケット14が設けられている。
冷凍室4の後方には冷気通路22が設けられ、この冷気通路22内には圧縮機21の駆動により冷気を生成する冷却器20が配されている。冷却器20の下方には冷却器20の除霜を行なうヒーター23が配されている。ヒーター23の除霜による除霜水はドレンパイプ24を通って、圧縮機上方に配された蒸発皿25に回収されるようになっている。冷却器20の上方には冷気を、冷蔵室2、製氷室3、冷凍室4及び隔離室6に送出する送風機26が配されている。
送風機26の吐出側には圧力室28が設けられ、この圧力室28に連通したダクト29に設けられる吐出口29aからは製氷室3内に冷気が吐出され、別の吐出口29b、29c、29dからは冷凍室4内に冷気が吐出される。そして、冷凍室4内の冷気は戻り口30を介して冷気通路22内の冷却器20に戻るようになっている。また、圧力室22の上部には冷気分配室31がダンパーを介して配されている。」(段落【0026】?【0030】。下線は当審にて付与。以下同様。)
c)「図1において、冷蔵室2の冷気通路32内の上方部に、ユニット化されたプラスイオン/マイナスイオン発生装置42が設けられている。このイオン発生装置42は、電源部42bから電極部42a両端に放電開始電圧以上の正負の高電圧を与えると、放電現象が起こり強力な電界を形成するため、水分を含んだ空気の絶縁破壊が生じ、プラスイオンとマイナスイオンが生成される。
このとき、送風機26及び27により冷気通路32に送られた冷気の一部は、イオン発生装置42の放電電極42a表面を通過するが、表面付近を通過した冷気は前述の通りプラスイオンとマイナスイオンにイオン化され、冷蔵室2後方の吐出口34及び冷蔵室前側天面部の吐出口34aより冷蔵室2内にイオン化した冷気を吐出する。このプラスイオンとマイナスイオンと化したイオン化冷気に含まれる浮遊微生物や、イオン化冷気にさらされる微生物は次のような殺菌作用を受け死滅する。
出力電圧が正電圧の場合は、主としてH^(+)(H_(2)O)_(n)から成るプラスイオンが生成され、負電圧の場合は、主としてO_(2)^(-)(H_(2)O)_(m)から成るマイナスイオンが生成される。H^(+)(H_(2)O)_(n)及びO_(2)^(-)(H_(2)O)_(m)は微生物の表面で凝集し、空気中の微生物等の浮遊菌を取り囲む。そして、式(1)?(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH_(2)O_(2)(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝縮生成して浮遊菌の殺菌を行う。」(段落【0033】?【0035】)
d)「図4及び図5に断熱仕切り部7aの前面に配すコントロールパネル本体43の上面図及び正面図を示す。コントロールパネル本体43は、正面から向かって左側に、庫外にプラスイオンとマイナスイオンを放出するイオン発生装置42A、送風機45、イオン化空気送風路46、空気吸入口47、空気吸入口防塵フィルター47a、及びイオン化空気放出口48によって構成されたケーシングユニット本体44が配され、中央部には冷蔵庫の運転状態などをモニターして表示する表示部49が設けられ、さらに、右側にはイオン発生装置42、42AのON/OFFや、イオン発生バランスの切替え設定のほか、冷蔵庫の各種設定が行なえる操作ボタンを設けた操作パネル部50が設けられている。」(段落【0037】)
e)「尚、図6においては、イオン発生装置42の駆動電源57が交流電源となっているが、回路構成を変更して直流電源としてもよい。ただし、直流電源とした場合は、交流電源の場合に比べ出力が上がりにくいため、負荷の大きい電極を使用する場合は回路上で2段階の昇圧手段を講じるなどの対応が必要である。」(段落【0042】)
f)「また、イオン発生装置42Aは、操作パネル部50の操作により、イオンバランスを可変させてマイナスイオンを選択的に多く放出させ、身体へのリラクゼーション効果をもたらすことができる。特に、マイナスイオンを選択的に多く発生させる場合には、イオン化空気をルーバー48aの操作により炊事場等の定位置で時間を費やす空間へ向けることで、効率良く身体へのリラクゼーション効果をもたらすことができる。」(段落【0049】)

上記a?fの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「冷蔵室2と冷凍室4、圧縮機21と、圧縮機21の駆動により冷気を生成する冷却器20と、冷気を、冷蔵室2や、冷凍室4に送出する送風機26と、
電源部42bと、両端に放電開始電圧以上の正負の高電圧を電源部42bから与えられる電極部42aを有するプラスイオン/マイナスイオン発生装置42であって、電源部42bから電極部42a両端に放電開始電圧以上の正負の高電圧を与えると、放電電極42a表面付近を通過した冷気の一部をプラスイオンとマイナスイオンにイオン化するプラスイオン/マイナスイオン発生装置42とを設け、プラスイオンとマイナスイオンと化したイオン化冷気に含まれる浮遊微生物や、イオン化冷気にさらされる微生物は取り囲まれ殺菌作用を受け死滅させられる冷蔵庫本体1において、
コントロールパネル本体43に、操作ボタンを設けた操作パネル部50を設け、操作ボタンを操作することによりイオン発生装置42のON/OFFや、イオン発生バランスの切替え設定を行う冷蔵庫本体1。」

3.対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「冷蔵室2と冷凍室4」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「冷却し且つ冷凍すべくその内部に食料品が配置される1つ又はより多くの室(2)」に相当し、以下同様に、
「圧縮機21」は、「圧縮することにより冷凍サイクル中にて冷媒を循環させるため使用されるコンプレッサ(3)」に、
「圧縮機21の駆動により冷気を生成する冷却器20」は、「冷媒と環境との間の熱伝導を実現するための蒸発器(4)」に、
「冷気を冷蔵室2や、冷凍室4に送出する送風機26」は、冷蔵室2や、冷凍室4に送出された冷気は、送風機26により循環され、冷却器に戻されるものであるから、「蒸発器(4)により冷却された空気を室(2)内に移送し且つ室(2)内にて暖められた空気を吹き出して蒸発器(4)内に戻すため使用されるファン(5)」に、
「電源部42b」は、放電開始電圧以上の正負の高電圧を与えるものであるから、「高電圧発生器」に、
「両端に放電開始電圧以上の正負の高電圧を電源部42bから与えられる電極部42a」は、「高電圧発生器に接続された少なくとも1つの電極(7)」に、
「プラスイオン/マイナスイオン発生装置42」は、「イオン発生器(6)」に、
「電源部42bから電極部42a両端に放電開始電圧以上の正負の高電圧を与えると、放電電極42a表面付近を通過した冷気の一部をプラスイオンとマイナスイオンにイオン化する」ことは、「高電圧発生器により前記した電極(7)に印加された高電圧の結果として、電極(7)の回りの空気をイオン化することにより、マイナスイオンの量を増大させるために利用される」ことに、
「プラスイオンとマイナスイオンと化したイオン化冷気に含まれる浮遊微生物や、イオン化冷気にさらされる微生物は取り囲まれ殺菌作用を受け死滅させられる」ことは、「空気中の微生物は、マイナスイオンにより取り囲まれているため死滅するようにされ」ることに、
「冷蔵庫本体1」は、「冷却装置(1)」に、
「コントロールパネル本体43に、操作ボタンを設けた操作パネル部50を設け」ることは、操作ボタンを操作することにより、イオン発生装置42の作動に関する、イオン発生装置42のON/OFFや、イオン発生バランスの切替え設定を行うことから、「イオン発生器(6)の作動に関してユーザがデータを入力することを可能にする1つ又は1つ以上のキーを有した入力装置(8)を備え」ることに、
それぞれ相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「操作ボタンを操作することによりイオン発生装置42のON/OFFや、イオン発生バランスの切替え設定を行う」ことと、本件補正発明の「ユーザが、より頻繁に又はより少ない頻度にて、又は、より長い期間又はより短い期間にてイオン発生器(6)を作動させられる、又は、加減することでイオン発生器(6)の動力を変化させられるように、製造メーカが決定した条件以外で、入力装置(8)を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器(6)を制御」することとは、前者では、操作ボタンを操作することにより設定された内容により、イオン発生装置42を制御するものであるから、両者は、「ユーザが、入力装置を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器を制御」することで共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「冷却し且つ冷凍すべくその内部に食料品が配置される1つ又はより多くの室と、圧縮することにより冷凍サイクル中にて冷媒を循環させるため使用されるコンプレッサと、冷媒と環境との間の熱伝導を実現するための蒸発器と、蒸発器により冷却された空気を室内に移送し且つ室内にて暖められた空気を吹き出して蒸発器内に戻すため使用されるファンと、高電圧発生器及び該高電圧発生器に接続された少なくとも1つの電極を備えるイオン発生器であって、高電圧発生器により前記した電極に印加された高電圧の結果として、電極の回りの空気をイオン化することにより、マイナスイオンの量を増大させるために利用される前記イオン発生器とを備え、空気中の微生物は、前記マイナスイオンにより取り囲まれているため死滅するようにされた、冷却装置において、イオン発生器の作動に関してユーザがデータを入力することを可能にする1つ又は1つ以上のキーを有した入力装置を備え、ユーザが、入力装置を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器を制御する冷却装置。」

[相違点]
ユーザが、入力装置を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器を制御することが、本件補正発明では、ユーザが、より頻繁に又はより少ない頻度にて、又は、より長い期間又はより短い期間にてイオン発生器(6)を作動させられる、又は、加減することでイオン発生器(6)の動力を変化させられるように、製造メーカが決定した条件以外で、入力装置(8)を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器(6)を制御し、製造メーカが決定した条件以外によるイオン発生器(6)の作動の期間が満了すると、イオン発生器(6)は、通常の作動サイクルに戻ることにより作動し続けるのに対して、刊行物に記載された発明では、操作ボタンを操作することによりイオン発生装置42のON/OFFや、イオン発生バランスの切替え設定を行う点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
イオン発生器を具備した装置の技術分野において、ユーザが、任意のより長い期間又はより短い期間にてイオン発生器を作動させること、及び、ユーザが、任意に加減することにより電極への印加電圧や、送風機への駆動電圧であるでイオン発生器の動力を変化させることは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、特開2003-161494号公報の段落【0026】、【0029】、【0040】、【図3】には、空気調和システムに具備されるイオン発生器20において、イオンを発生する電極の稼働時間、及び、電極への印加電圧をそれぞれ制御することにより、希望する値に調整した正イオン濃度及び負イオン濃度のイオンを発生させることが記載され、特開2003-287266号公報の段落【0071】、【0073】、【0104】、【図6】?【図7】には、空気調和システムに具備されるイオン発生器20において、ユーザが望む環境データとなるように、イオン濃度の調節をイオン発生器のON-OFF間隔などの印加(通電)時間、及び、電極への印加電圧、電極部への送風量を制御することが記載され、特開2000-102596号公報の【請求項1】、段落【0020】?【0023】、【図1】、【図4】、【図8】には、光触媒脱臭装置に具備されるマイナスイオン発生器15において、マイナスイオンボタン54を押すたびに、マイナスイオンの発生を「切」→「入」→「切」の順に切り換えること、及び、運転ボタン52を押すたびに、風量を「弱」→「中」→「強」→「弱」の順に切り換えることが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。
そして、製造メーカで決定された初期設定を備えた装置について、ユーザが手動により、この設定を変更した際に、一定の作動時間後に、再び製造メーカで決定された初期設定に戻すことは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、特開2000-179909号公報の【請求項1】、段落【0037】には、手動ボタン13による手動運転開始後に所定時間経過した後は、第1の制御手段による(設定された)駆動プログラムによる運転に復帰することが記載され、特開2004-141618号公報の【請求項18】、段落【0102】?【0103】、【図9】には、操作部404により、手動により脱臭運転及び芳香運転を制御した後、一定時間経過すると自動運転に復帰することが記載され、特開平5-69727号公報の【請求項1】、段落【0011】、【図1】?【図3】には、マニュアルスイッチ16により、マニュアルスイッチ設定時には所定時間経過後に自動的にオートエアコンに復帰させることが記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。
してみると、刊行物に記載された発明において、ユーザが、操作ボタンにより行う設定内容として、ユーザにより設定が行われる上記周知の技術事項1を採用して、より頻繁に又はより少ない頻度にて、又は、より長い期間又はより短い期間にてイオン発生装置42を作動させること、又は、加減することでイオン発生装置42の動力を変化させることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、その際に、上記周知の技術事項2に倣って、製造メーカが決定した条件でイオン発生装置42を制御することを基本としつつも、ユーザが手動により、製造メーカが決定した条件と異なる条件を設定した際に、ユーザが設定した条件による一定の作動時間の運転後に、再び製造メーカが決定した条件に戻すように制御する程度のことは、当業者が必要に応じてなし得たものである。

(2)小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「冷却し且つ(又は)冷凍すべくその内部に食料品が配置される1つ又はより多くの室(2)と、圧縮することにより冷凍サイクル中にて冷媒を循環させるため使用されるコンプレッサ(3)と、冷媒と環境との間の熱伝導を実現するための蒸発器(4)と、蒸発器(4)により冷却された空気を室(2)内に移送し且つ室(2)内にて暖められた空気を吹き出して蒸発器(4)内に戻すため使用されるファン(5)と、高電圧発生器及び該高電圧発生器に接続された少なくとも1つの電極(7)を備えるイオン発生器(6)であって、高電圧発生器により前記した電極(7)に印加された高電圧の結果として、電極(7)の回りの空気をイオン化することにより、マイナスイオンの量を増大させるために利用される前記イオン発生器(6)とを備え、空気中の微生物は、前記マイナスイオンにより取り囲まれているため死滅するようにされた、冷却装置(1)において、イオン発生器(6)の作動に関してユーザがデータを入力することを可能にする1つ又は1つ以上のキーを有した入力装置(8)を備え、ユーザが、より頻繁に又はより少ない頻度にて、又は、より長い期間又はより短い期間にてイオン発生器(6)を作動させられる、又は、加減することでイオン発生器(6)の動力を変化させられるように、製造メーカが決定した条件以外で、入力装置(8)を通して入力されたデータに対して作動するようにイオン発生器(6)を制御することを特徴とする、冷却装置(1)。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、イオン発生器の制御について、「製造メーカが決定した条件以外による前記イオン発生器(6)の作動の前記期間が満了すると、前記イオン発生器(6)は、通常の作動サイクルに戻ることにより作動し続ける」との限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比、及び、4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-16 
結審通知日 2011-12-19 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2007-514274(P2007-514274)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25D)
P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 松下 聡
長崎 洋一
発明の名称 冷却装置  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 阿久津 勝久  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  

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