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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1257242
審判番号 不服2011-20157  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-16 
確定日 2012-05-17 
事件の表示 特願2006-118022号「清浄度区分方法及び清浄度区分システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月14日出願公開、特開2006-337013号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年4月21日(優先権主張平成17年5月2日)の出願であって、平成23年7月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月2日)、これに対し、同年9月16日に拒絶査定不服の審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成23年9月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年9月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「出入り口を介して横方向に行き来することが可能な第1区域及び該第1区域より空気清浄度を高くすべき第2区域にて、前記第1区域及び第2区域の清浄度を区分する清浄度区分方法において、配設位置で吸気して浄化成分を含む気体を吐出する浄化装置により、前記出入り口の前記第1区域側の上方から前記第1区域側に鋭角をなす方向へ向けて前記出入り口から離れるように、浄化成分を含む下降流を発生させることを特徴とする清浄度区分方法。」とあったものを「出入り口を介して横方向に行き来することが可能な第1区域及び該第1区域より空気清浄度を高くすべき第2区域にて、前記第1区域及び第2区域の清浄度を区分する清浄度区分方法において、配設位置で吸気して浄化成分として正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を含む気体を吐出する浄化装置により、前記出入り口の前記第1区域側の上方から前記第1区域側に鋭角をなす方向へ向けて前記出入り口から離れるように、浄化成分を含む下降流を発生させることを特徴とする清浄度区分方法。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、浄化成分を含む気体について、「浄化成分として正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を含む」ことを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平11-94324号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】所定の閉止した空間の出入口に設置されるエアシャワ装置において、当該装置の本体ケース部を少なくとも床面上に設置される下側ユニットを含む複数のユニットに分割可能な構造とし、空気循環手段と循環空気の流路を下側ユニットを除いた前記本体ケース部内部に設け、前記下側ユニットを前記空間内で使用される液体の跳ね返る高さよりも高く設定すると共に、前記下側ユニットの側壁表面を、その前記液体の跳ね返る高さまで耐腐食性の表面としたことを特徴とするエアシャワ装置。」(【特許請求の範囲】。下線は当審にて付与。以下同様。)
イ 「【発明の属する技術分野】本発明は、医薬品や食品等の製造を行う作業室等、所定の仕切られた空間の出入口に設置されて入退出者に高速のエアジェット気流を吹き付けて衣類や頭髪の不着物を吹き落とすエアシャワ装置に関する。
【従来の技術】従来、医薬品や食品分野における作業室の出入口には、所定の仕切られた空間である作業室の内部に出来る限り塵埃や菌を持ち込まず、あるいは、当該作業室においてその衣服などに付着した匂いなどを除去回収するため、入退出者に高速のエアジェット気流を吹き付けて衣類や頭髪等の不着物を吹き落とすエアシャワ装置が設置されている。」(段落【0001】?【0002】。)
ウ 「そこで、本発明では、上記の従来技術における問題点に鑑みて、すなわち、比較的安価に製造することが可能で、かつ、上記した医薬品や食品等の加工を行う作業室環境においても使用することが可能なエアシャワ装置を提供することをその目的とする。
さらに、本発明では、上述のように、特に薬品や食品等の加工を行う作業室等の環境において使用する場合に問題となる、エアシャワ室内での特有の臭いの滞留やその内部での菌の繁殖をも防止することが可能な、すなわち、脱臭機能や減菌機能を有し、さらには、より快適なエアシャワ室を提供することの可能なエアシャワ装置を提供することをもその目的とする。」(段落【0009】?【0010】)
エ 「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1には、本発明の第1の実施の形態になるエアシャワ装置1が示されている。すなわち、エアシャワ装置1は、外形略ゲート形状の本体ケース2を形成する上側ユニット3、3と、その下部にそれぞれ設けられた、上側ユニット3、3に対して分割又は着脱可能な一対の下側ユニット4、4とから構成されている。このエアシャワ装置1は、薬品や食品等の加工を行う作業室を仕切る仕切壁Pの一部に、例えば作業員がその内部に入出可能なように設けられる。そして、このエアシャワ装置1の上記ゲート形状の本体ケース2には、その内側面、及び/又は、天井側面に、内側に向かって複数のエアシャワノズル22、22…が取り付けられている。
また、図中の符号25は、上記エアシャワ装置1を設置した床面F上に設けられたステップであるが、しかしながら、このステップ25は必ず設けられるものではない。また、この図示のエアシャワ装置1では、扉は設けられていないが、この扉は、当該エアシャワ装置1の入出口の前後に、あるいは、その一方に設けることも可能である。」(段落【0022】?【0024】)
オ 「次に、図3には、上記エアシャワ装置1の内部構造が示されており、図にも示すように、エアシャワ装置1の本体ケース2の上側ユニット3、3の内側壁面には、エアシャワ室内の空気を吸入する吸気口31と共に、上記の複数のエアシャワノズル22、22…が取り付けられており、また、その内部には、エアジェットを発生するためのエアジェットファン32、エアフィルター33そして発生したエアジェットを各ノズル22、22…に導くための流路34,34…が形成されている。
なお、かかるエアシャワ装置1の内部構造によれば、エアシャワ室内の空気は吸気口31から吸入され、エアジェットファン32により加圧されてエアフィルター33を通過し、流路34,34…を介して各ノズル22、22…からエアシャワ室内へ吹き付けられて循環する。」(段落【0031】?【0032】)
カ 「また、さらに、図6には、本発明の更に他の実施の形態になるエアシャワ装置1の内部構造が示されており、ここでも、エアシャワ装置1の本体ケース2を少なくとも床面上に設置される下側ユニット4を含む複数のユニットに分割可能な構造とすると共に、しかしながら、エアシャワ装置1内部のエア流路34内を通過する循環空気流路の途中には、上記の脱臭手段6に代えて、殺菌手段7として、例えばオゾン殺菌手段7を設けた場合を示している。尚、このオゾン等による殺菌手段7は、同時に、脱臭を行う効果をも併せ持ち、この殺菌手段7は、当然ながら、脱臭と殺菌とを兼用して双方の機能を合わせもってもよい。
かかる上記の本発明の、他の実施の形態になるエアシャワ装置、及び、更に他の実施の形態になるエアシャワ装置によれば、エアシャワ装置1のエアシャワ室内に滞留する匂いを消し、あるいは、そこで繁殖する細菌を殺菌すことが可能となることから、特に、室内での特有の臭いを発生する薬品や食品等の加工を行う作業室等の環境において最適である。
このように本実施の形態になるエアシャワ装置によれば、従来技術に対し耐蝕性と搬入据付性を考慮した、安価なエアシャワ装置とすることができると共に悪臭のこもりを除去すると共に菌の繁殖を防止する減菌機能を備えた理想的なエアシャワ装置を提供することが可能となる。」(段落【0036】?【0038】)
キ 上記イ、エ、カの記載事項及び【図1】、【図2】、【図6】の図示内容によると、作業室の滅菌度を高くして、作業室および作業室に隣接する室にて、作業室と作業室に隣接する室との減菌度を区分する滅菌度区分方法について記載されている。
ク 上記オ、カの記載事項及び【図3】、【図6】の図示内容によると、エアシャワ装置1は、出入口の作業室に隣接する室側に、上方から下方へ、殺菌機能をもつオゾンを含む空気を吹き付けることが示されている。

上記ア?カの記載事項、上記キ?クの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「出入口により作業員が入出可能なように設けられる、作業室の滅菌度を高くして、作業室および作業室に隣接する室にて、作業室と作業室に隣接する室との減菌度を区分する滅菌度区分方法にて、設置位置において空気を吸入し、殺菌機能をもつオゾンを含む空気を吹き付けるエアシャワ装置1により、出入口の作業室に隣接する室側に、上方から下方へ、殺菌機能をもつオゾンを含む空気を吹き付ける減菌度区分方法。」

3 対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「出入口により作業員が入出可能なように設けられる、作業室の滅菌度を高くして、作業室および作業室に隣接する室にて、作業室と作業室に隣接する室との減菌度を区分する滅菌度区分方法」は、作業室は、滅菌により作業室に隣接する室より清浄度が高くされることから、本件補正発明の「出入り口を介して横方向に行き来することが可能な第1区域及び該第1区域より空気清浄度を高くすべき第2区域にて、前記第1区域及び第2区域の清浄度を区分する清浄度区分方法」に相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「設置位置において空気を吸入し、殺菌機能をもつオゾンを含む空気を吹き付けるエアシャワ装置1」と、本件補正発明の「配設位置で吸気して浄化成分として正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を含む気体を吐出する浄化装置」とは、「配設位置で吸気して浄化成分を含む気体を吐出する浄化装置」である点で共通し、同様に、
刊行物に記載された発明の「出入口の作業室に隣接する室側に、上方から下方へ、殺菌機能をもつオゾンを含む空気を吹き付ける」ことと、本件補正発明の「出入り口の第1区域側の上方から第1区域側に鋭角をなす方向へ向けて出入り口から離れるように、浄化成分を含む下降流を発生させること」とは、「出入り口の第1区域側の上方から、浄化成分を含む下降流を発生させること」で共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「出入り口を介して横方向に行き来することが可能な第1区域及び該第1区域より空気清浄度を高くすべき第2区域にて、前記第1区域及び第2区域の清浄度を区分する清浄度区分方法において、配設位置で吸気して浄化成分を含む気体を吐出する浄化装置により、前記出入り口の前記第1区域側の上方から、浄化成分を含む下降流を発生させる清浄度区分方法。」

[相違点1]
浄化成分が、本件補正発明では、正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を含む気体であるのに対して、刊行物に記載された発明では、オゾンである点。

[相違点2]
下降流が、本件補正発明では、出入り口の第1区域側の上方から第1区域側に鋭角をなす方向へ向けて出入り口から離れるように発生さられるのに対して、刊行物に記載された発明では、上方から下方へ吹き付けられる点。

4 当審の判断
(1)上記相違点1について
浄化装置の技術分野において、浄化成分として、オゾンに加えて正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を含む気体を吐出させることは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、特開2004-606号公報や、特開2003-153995号公報を参照。以下「周知の技術事項1」という。)。
したがって、刊行物に記載された発明において、上記周知の技術事項1に倣って、浄化成分として、オゾンに加えて、正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を用いることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
出入り口に設けるエアカーテンの技術分野において、異物の侵入を防ぐために、出入り口の外側(本件補正発明の「第1区域側」に相当する。)上方から外側に、鋭角をなす方向へ向けて出入り口から離れるように下降流を発生させることは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(特開平10-225255号公報の段落【0028】、【図1】、【図3】や、特開2003-214678号公報の段落【0008】、【0017】、【図1】を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
そして、刊行物には、エアシャワ装置1が、「作業室の内部に出来る限り」異物である「塵埃や菌を持ち込ま」ないようにするものであると記載されている(前記2 イを参照。)。
してみると、刊行物に記載された発明において、作業室の内部に異物を持ち込まないようにすることを目的として、上記周知の技術事項2に倣って、空気を出入口の外側上方から外側に鋭角をなす方向へ向けて出入口から離れるように、下方へ発生さることは、当業者が容易になし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「出入り口を介して横方向に行き来することが可能な第1区域及び該第1区域より空気清浄度を高くすべき第2区域にて、前記第1区域及び第2区域の清浄度を区分する清浄度区分方法において、配設位置で吸気して浄化成分を含む気体を吐出する浄化装置により、前記出入り口の前記第1区域側の上方から前記第1区域側に鋭角をなす方向へ向けて前記出入り口から離れるように、浄化成分を含む下降流を発生させることを特徴とする清浄度区分方法。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2[理由]2 刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明において、浄化成分を含む気体について、「浄化成分として正イオンH_(3)O^(+) (H_(2)O)_(n) 及び負イオンO_(2)^(-)(H_(2) O)_(m)を含む」との限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3 対比、及び、4 当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2006-118022(P2006-118022)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
青木 良憲
発明の名称 清浄度区分方法及び清浄度区分システム  
代理人 河野 登夫  

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