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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1257325
審判番号 不服2009-26020  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2012-05-24 
事件の表示 特願2008- 99151「コンテンツ提供装置およびコンテンツ提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 2日出願公開、特開2008-234672〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年3月24日に出願した特願2004-86676号の一部を平成20年4月7日に新たな特許出願としたものであって、平成21年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成24年1月16日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対し、同年2月15日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成24年2月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数の音楽データ、及び、各音楽データについて1つ以上定義される検索情報であって、各音楽データに関連する属性の種類を表す大グループと各音楽データについての当該属性の値を表す小グループとからなる検索情報を格納する記憶手段と、
選定された検索情報に応じて前記複数の音楽データから選択される音楽データを再生する再生手段と、
前記再生手段により第1の音楽データが再生されている状態において、第1の操作入力が検出されたときに、検出された前記第1の操作入力により選択指定された大グループを有する検索情報を新たに選定し、当該新たな検索情報に応じて選択される第2の音楽データを前記再生手段に再生させる大グループ変更手段と、
前記再生手段により前記第2の音楽データが再生されている状態において、第2の操作入力が検出されたときに、前記新たな検索情報の大グループと当該大グループに属す前記新たな検索情報の小グループ以外の小グループとからなる他の検索情報に応じて選択される第3の音楽データを前記再生手段に再生させる小グループ変更手段と、
を備え、
前記属性の種類は、ジャンル、アーティスト、アルバム及び作曲者のうち2つ以上を含む、
音楽再生装置。」

2.引用文献
これに対して、当審において平成24年1月16日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2004-39113号公報(以下、「引用文献1」という。)、及び特表2004-505367号公報(以下、「引用文献2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用文献1)
A.「【0002】
【従来の技術】
近年、安価な大容量のハードディスク(HDD)が普及してきている。また、ATRAC(Adaptive Transform Acoustic Coding)方式やMP3(MPEG AudioLayer III)方式などによりオーディオデータを圧縮して記録することも広く普及している。
そして、これに伴って、CD(Compact Disc)に記録されているオーディオデータを圧縮したうえでハードディスクに記録して保存する、いわゆるリッピングを行うことが広く普及している。このようなリッピングは、例えばパーソナルコンピュータによって行われる。また、例えばCDを再生可能なディスクドライブと、HDDとを備えたオーディオ機器を構成して提供することで、このようなオーディオ機器によってリッピングを行うことも可能である。
【0003】
例えば、このようにしてリッピングにより、多数の楽曲などのオーディオデータをハードディスクに記憶させておくようにすれば、ユーザは、逐一自分が聴きたいアルバムのCDを交換して再生するような煩わしさから開放されることになり、これまでよりも充実した音楽リスニング環境を得ることができる。」

B.「【0020】
1.記録再生装置の構成
図1のブロック図は、本実施の形態の記録再生装置1の構成例を示している。CPU(Central Processing Unit)11は、起動されたプログラムに基づいて記録再生装置1の全体の制御、演算処理を行う。例えばネットワークを介した通信動作、ユーザーに対する入出力動作、CDの再生やリッピング、HDD21へのコンテンツ記憶やそのための管理などを行う。
CPU11はバス12を介して各回路部との間で制御信号やデータのやりとりを行う。
【0021】
メモリ部13はCPU11が処理に用いるRAM、ROM、フラッシュメモリ(不揮発性メモリ)などを包括的に示している。
メモリ部13におけるROMには、CPU11が実行すべき動作プログラム、プログラムローダー等が記憶される。また、メモリ部13におけるフラッシュメモリには、各種演算係数、プログラムで用いるパラメータ等が記憶される。メモリ部13におけるRAMには、プログラムを実行する上でのデータ領域、タスク領域が一時的に確保される。
【0022】
操作入力部15は、記録再生装置1の筐体に設けられた操作キーやジョグダイヤル、タッチパネルなどの各種操作子などから成る部位である。なお、GUI(Graphical User Interface)操作のためのキーボードやマウスが操作入力部15として設けられてもよい。
操作入力部15で入力された情報は入力処理部14において所定の処理が施され、CPU11に対して操作コマンドとして伝送される。CPU11は入力された操作コマンドに応答した機器としての動作が得られるように、所要の演算や制御を行う。
【0023】
ディスプレイモニタ17としては、例えば液晶ディスプレイなどの表示デバイスが接続され、各種情報表示が行われる。
CPU11が各種動作状態や入力状態、通信状態に応じて表示情報を表示処理部16に供給すると、表示処理部16は供給された表示データに基づいてディスプレイモニタ17に表示動作を実行させる。
例えば本実施の形態の場合であれば、リッピングされたオーディオファイルを再生管理するプログラムに従っては、オーディオファイルを管理、再生するためのGUI画面が表示される。
【0024】
CDドライブ19は、光学ヘッド、スピンドルモータ、再生信号処理部、サーボ回路等を備え、CDに対する再生動作を行う。CDドライブ制御部18は、CDドライブ19におけるCDに対する再生動作、アクセス動作等を制御する。例えばユーザーが入力部15からCD再生操作を行った場合は、CPU11はCDドライブ制御部18にCD再生を指示する。するとCDドライブ制御部18は、CDドライブ19に対して再生/アクセスを実行させる制御を行う。
CDドライブ19では、CDから読み出した信号に対してデコードを行い、再生データをCDドライブ制御部18を介してバス12に送出する。
この再生データはオーディオデータ処理部24においてイコライジング等の音場処理や音量調整、D/A変換、増幅等の処理が施され、スピーカ部25から出力される。
【0025】
またCDドライブ19で再生されたデータは、CPU11の処理によって所要のファイルエンコード処理を施されてHDD21にオーディオファイルとして蓄積することもできる。つまり、いわゆるリッピングにより得たオーディオファイルを記憶させることができる。
なお、このオーディオファイルの形式としては、CDフォーマットにおけるサンプリング周波数44.1KHzで16ビット量子化のデジタルオーディオデータとされてもよいし、HDD21の容量を節約するために、所定方式にしたがって圧縮処理が施された形式の圧縮オーディオデータとされてもよい。また、圧縮方式としても限定されるものではないが、ATRAC(Adaptive Transform Acoustic Coding)方式やMP3(MPEG Audio Layer III)方式などを採用することができる。」

C.「【0030】
2.本実施の形態のオーディオファイルの基本的管理形態
続いては、HDD21に記憶されるオーディオファイルについての基本的な管理形態について述べておく。
本実施の形態におけるオーディオファイルの管理としては、先に図11に示したのと同様でよい。本実施の形態としては、このような管理形態とした上で、後述する再生管理の構成を採ることで、オーディオファイル再生について、従来よりも優れた操作性、快適性が得られるようにされる。
【0031】
図11に示す管理形態であるということは、即ち、図示するようにして、例えばオーディオファイルが記憶されたHDDをルートとしてみなした上で、このルート下において、分類項目ごとに区分されるようにして分岐される。
図11では、分類項目として「アルバム」「アーティスト」の少なくとも2つが示されているが、本実施の形態としては、後述するようにして、「アルバム」「アーティスト」の他にも、「ジャンル」、「レーベル」、「キーワード」の分類項目が設定されている。つまり、本実施の形態としては、全部で5つの分類項目が設定されている。もちろんのこと、これ以上の分類項目が設定されていてもよいものである。
【0032】
そして、例えばアルバムの分類項目の下では、アルバムA,アルバムB・・・のようにしてアルバムごとによるグループ分けが行われる。そのうえで、各アルバムに対応するオーディオファイル群が属するようにして管理される。なお、ここでも、アルバムとしての概念は、アルバムとしてのCDの記録内容に対応しているものとされる。そしてまた、各アルバムごとに含まれるオーディオファイル群は、原則としてそのアルバム内容に対応した再生順となるように管理される。なお、ユーザが後から自分の好みなどに応じて変更可能に設定できるようにされてもよい。
【0033】
同様にして、アーティストの部類項目の下でも、アーティストA,B・・・のようにして、アーティストごとによるグループ分けが行われたうえで、各アーティストに対応するオーディオファイル群が属するようにして管理される。また、この場合にも、アーティストごとのグループ内では、例えばユーザが指定した再生順であったり、リッピングした順序であったり、或いは曲名タイトルのアルファベット順、アイウエオ順などの所定規則に従って再生順が設定され、管理されている。
そして、この図には示されていないが、残る「ジャンル」、「レーベル」、「キーワード」の各分類項目の下でも、それぞれ、ジャンル、レーベル、キーワードごとにグループ分けが行われ、さらに、各グループに対応したオーディオファイル群が属するようにして管理されている。」

D.「【0034】
3.分類項目の切り換え操作
先に図1に示した本実施の形態の記録再生装置1では、HDD21に記憶されたオーディオファイルを、例えば音声として再生出力することが可能とされる。また、上記図11に示す基本管理を行っているということは、或る1つのオーディオファイルが再生される場合には、そのオーディオファイルは、現在選択されている分類項目の下での1つのグループのリスト内に属するものとして扱われていることになる。つまり、ユーザがオーディオファイルを再生するのにあたっては、先ず、再生対象とするグループが属する分類項目を指定することが必要となる。
【0035】
そこで、続いては、本実施の形態においてオーディオファイル再生を行っている場合における、分類項目の切り換え操作例について、図3を参照して説明することとする。特に、本実施の形態としては、例えば或る1つのオーディオファイルを再生出力中である場合におけるユーザインターフェイスに特徴を有するので、ここではこの点について説明する。
【0036】
図2は、ディスプレイモニタ17の表示画面に表示される、グループ選択のためのGUI(Graphical User Interface)の表示態様例を示している。
ここで、例えば現在、アルバムの分類項目における或る特定のグループを選択し、このグループにおいて再生順が6曲目であるとして管理されているオーディオファイルを再生しているとする。
これに応じて、ディスプレイモニタ17の表示画面には、図2(a)に示すようにして、アルバムリスト画像A1が表示される。このアルバムリスト画像A1には、現在、再生対象として選択しているアルバムのグループに属するオーディオファイルが再生リストとして表示される。
【0037】
このアルバムリスト画像A1においては、図示するようにして、先ず、画像枠内の一番上の領域に、タイトルエリアA11が配置される。ここには、そのグループをユーザが認識できるように、そのグループのタイトル名が文字表示により示される。この場合には、アルバムのグループであるから、アルバムタイトル名が示される。
その下には、トラックリストエリアA12が配置される。このトラックリストエリアA12においては、再生順に相当するトラックナンバとしての数字が、1曲目から昇順によって示される。そして、各トラックナンバごとに対応して、オーディオファイルのファイル名(楽曲タイトル名)が示される。
そして、この場合には、上述もしたように、このアルバムリストとして示されるグループにおいて、6曲目が再生出力中であるとしている。これに応じて、トラックリストエリアA12においては、図示するようにして、トラックナンバ6の行が、再生ファイル指示表示A13として強調表示される。これにより、ユーザは、図2(a)に表示されているアルバムのグループを再生対象とした上で、現在は、このグループにおける6曲目を再生しているのだということを、視覚的に認識することができる。
【0038】
そして、この状態において、ユーザは、現在再生中のオーディオファイルが属するグループの分類項目について、現在のアルバム以外のものに変更を行いたいと思ったとする。
この場合、このような分類項目の変更操作は、或る特定の1つの操作子(若しくは画面上に表示される分類項目変更ボタンでもよい)を用いたトグル操作であることとする。つまり、操作子を1回操作するごとに、1つずつ分類項目が変更される。本実施の形態の場合は、先にも述べたように、「アルバム」「アーティスト」、「ジャンル」、「レーベル」、「キーワード」の5つの分類項目があるから、操作子を1回操作するごとに、これらの分類項目が切り換わるようにされる。そして、このような分類項目の切り換えが循環するようにして行われるものである。
なお、もちろんのこと、分類項目の変更操作は、上記したトグル操作には限定されない。例えば、予め分類項目ごとに割り当てられた操作子やGUI画面上のボタンなどを操作することで、目的とする分類項目を直接的に指定できるようにしてもよいものである。
【0039】
そして、図2(a)に示す状態から、ユーザが分類項目変更のための操作を1回行ったとすると、例えば図2(b)に示すようにして表示される分類項目のリスト画像が切り換わる。この場合には、アルバムの次はアーティストの分類項目に切り換わることとなっており、これに対応して、図2(b)には、アーティストリスト画像A2が表示されることになる。
例えばアーティストとしての分類項目の下には、複数のアーティストのグループが作られるのであるが、この場合には、これら複数のアーティストのグループのうちから、現在再生中のオーディオファイルを含むアーティストのグループに対応するアーティストリスト画像A2を自動的に選択して表示させるようにしている。
このアーティストリスト画像A2の表示内容としても、タイトルエリアA11においてアーティスト名を示し、また、トラックリストエリアA12において、トラックナンバ(再生順)に対応させて、そのグループに属するオーディオファイルのファイル名(楽曲タイトル名)を表示させている。そして、この場合にも、トラックリストエリアA12において、現在再生中にあるとされるオーディオファイルが表示される行には、再生ファイル指示表示A13としての強調表示が行われる。この場合には、このグループにおけるトラックナンバ13(13曲目)のオーディオファイルが再生中であることが分かる。
【0040】
ここで、本実施の形態としては、分類項目の切り換え操作が行われたとしても、例えば特にユーザによる停止や再生ファイル変更操作が無い限り、再生中のオーディオファイルはその再生を継続するようにされる。従って、図示もしているように、再生ファイル指示表示A13により、図2(a)において再生中であるとして示されていたトラックナンバ6と、図2(b)において再生中であるとして示されるトラックナンバ13のオーディオファイルは、同じオーディオファイルであることになる。
そして、図2(b)に示す表示状態のもとで、例えばユーザが分類項目選択の決定操作を行ったとすると、再生対象の分類項目は、この図2(b)に示すアーティストリストのグループに切り換わったものとして設定される。
ただし、この場合には、この切り換え後のアーティストリストのトラックナンバ1から改めて再生が開始されることはなく、これまでに再生中であったオーディオファイルの再生が終了することなくそのまま継続されている。ただし、切り換え後においては、このオーディオファイルは、図2(a)に示すアルバムリストのグループに属するのではなく、新たに再生対象として設定された図2(b)に示すアーティストリストのグループに属するものとして扱われる。従って、このオーディオファイルの再生が終了すると、次に再生されるオーディオファイルは、図2(b)示すアーティストリストにおいて、トラックナンバ14(14曲目)とされるオーディオファイルとなるものである。
【0041】
なお、例えば図2(b)に示すアーティストリスト画像A2が表示されているときに決定操作を行わずに、さらに分類項目を切り換えるための操作を行っていったとする。この場合には、例えば図2(c)→(d)→(e)の遷移として示すようにして、順次、レーベルリスト画像A3→ジャンルリスト画像A4→キーワードリスト画像A5の表示に切り換わっていく。
これらレーベルリスト画像A3、ジャンルリスト画像A4、キーワードリスト画像A5の表示内容としても、図2(a)(b)に示した各リスト画像に準じている。つまり、タイトルエリアA11には、レーベル名、ジャンル、キーワードが表示されることで、そのグループが何であるのかを視覚的に認識できるようになっている。また、トラックリストエリアA12には、トラックナンバ(再生順)に対応させてオーディオファイルのファイル名(楽曲タイトル名)が表示される。さらに、同様にして、現在再生中にあるとされるオーディオファイルが再生ファイル指示表示A13により示される。
【0042】
このようにして本実施の形態では、分類項目選択のためのGUIとして、分類項目の変更に応じて切り換え表示されるグループのリスト画像内に、現在再生中にあるとされるオーディオファイルを必ず含むようにされる。
つまり、HDD21に記憶されているオーディオファイル(単位情報)を基とする情報出力としては、リスト画像表示により、そのリスト(分類項目下のグループ)内に属するトラックを再生順に表示しているものである。そのうえで、リスト画像が切り換えられたとしても、再生出力中にあるオーディオファイルについての再生ファイル指示表示A13による強調表示は継続されるものである。
【0043】
また、分類項目の選択決定が行われたときにも、切り換え前に再生されていたオーディオファイルの再生が継続されることになる。
つまり、本実施の形態としてはある1つのオーディオファイルを再生している状態で分類項目を変更したとしても、そのオーディオファイルは継続して再生出力されるようになっている。これによって、例えばユーザとしては、その曲をはじめから聴き直すことなく続けて聴くことができる。つまり、オーディオファイルの再生に関してよりユーザの感覚に適合することとなって、使用感が高まることとなる。
また、このための操作手順としても、本実施の形態では、非常にシンプルなものとなる。つまり、本実施の形態では、分類項目を切り換えるための操作に応じては、その分類項目の下で、再生中のオーディオファイルを含むグループが選択され、そのグループのリスト画像が直ぐに表示される。つまり、ここでは、分類項目でのグループ選択操作は省略されている。そして、所望の分類項目を選択した上で決定操作を行えば、その分類項目において、再生中のオーディオファイルを含むグループが再生対象として設定され、さらに上記もしているように、その再生中であるオーディオファイルは継続して再生出力される。これによっても、例えばユーザは、わざわざ、グループを選択決定した後に、分類項目変更前に再生していたのと同じオーディオファイルをさらに選択するという操作が省略されているということがいえるものである。」

上記A.?D.の記載及び関連する図面を参照すると、引用文献1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)
「複数のオーディオファイル、及び、各オーディオファイルについて1つ以上定義される検索情報であって、各オーディオファイルに関連する属性の種類を表す分類項目と各オーディオファイルについての当該属性の値を表すグループとからなる検索情報を格納するメモリ部と、
選定された検索情報に応じて前記複数のオーディオファイルから選択されるオーディオファイルを再生するオーディオデータ処理部と、
前記オーディオデータ処理部により或る1つのオーディオファイルが再生されている状態において、或る特定の1つの操作子による操作入力が検出されたときに、検出された前記操作入力により選択指定された分類項目を有する検索情報を新たに選定するとともに、前記或る1つのオーディオファイルをそのまま前記オーディオデータ処理部に再生させる分類項目変更手段と、
を備え、
前記属性の種類は、アルバム、アーティスト、ジャンル、レーベル及びキーワードのうち2つ以上を含む、
記録再生装置。」

(引用文献2)
E.「【0001】
[発明の属する技術分野]
本発明は、情報単位のコレクションをブラウジングするシステムに係り、このシステムは、少なくとも1つの上記情報単位を提示する提示手段と、各情報単位を属性値に関連付ける属性手段とを含む。
【0002】
本発明は更に、情報単位のコレクションをブラウジングする方法に係り、この方法は、上記コレクションから情報単位を提示する段階と、各情報単位を、少なくとも1つの第1の属性に対する属性値に関連付ける段階とを含む。」

F.「【0010】
本発明のシステムの有利な実施例では、属性手段は一対の属性値の間の距離を決定するよう適応され、ランダム選択手段は前に選択される単位の属性値に対し比較的大きい距離を有する属性値を有する単位から、単位を選択可能であることを特徴とする。従って、システムにより提案される単位は、少なくとも明らかに前に選択される提案から可能な限り異なることが達成される。このようにして、ユーザは、コレクション内の様々な種類の単位の概要を、長い一連の同様の単位にぶつかる可能性が小さくなることが達成される。従って、コレクションの検索はより一層意外性にとみ且つ魅力的となる。」

G.「【0024】
別の実施例では、ボタン303の動作方法は、様々な属性に直接接続される。例えば、
-1回押すことにより、現在選択されるアルバムから別の曲が選択される。
【0025】
-2回押すことにより、同一のアーティストの別のアルバムから任意の曲が選択される。
【0026】
-3回押すことにより、現在選択されるスタイルの異なるアーティストの任意のアルバムから任意の曲が選択される。
【0027】
-1秒間ほど押すことにより現在のジャンルにおける任意の曲が選択される。
【0028】
-2秒間以上押すことにより任意のジャンルにおける任意の曲が選択される。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「オーディオファイル」、「分類項目」、「グループ」、「メモリ部」、「オーディオデータ処理部」、「或る1つのオーディオファイル」、「或る特定の1つの操作子による操作入力」、「分類項目変更手段」、「記録再生装置」は、それぞれ、本願発明における「音楽データ」、「大グループ」、「小グループ」、「記憶手段」、「再生手段」、「第1の音楽データ」、「第1の操作入力」、「大グループ変更手段」、「音楽再生装置」に相当するから、両者は、
「複数の音楽データ、及び、各音楽データについて1つ以上定義される検索情報であって、各音楽データに関連する属性の種類を表す大グループと各音楽データについての当該属性の値を表す小グループとからなる検索情報を格納する記憶手段と、
選定された検索情報に応じて前記複数の音楽データから選択される音楽データを再生する再生手段と、
前記再生手段により第1の音楽データが再生されている状態において、第1の操作入力が検出されたときに、検出された前記第1の操作入力により選択指定された大グループを有する検索情報を新たに選定する大グループ変更手段と、
を備え、
前記属性の種類は、ジャンル、アーティスト、アルバム及びその他のうち2つ以上を含む、
音楽再生装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:「大グループ変更手段(分類項目変更手段)」が、本願発明においては、「当該新たな検索情報に応じて選択される第2の音楽データを再生手段に再生させる」ようにしているのに対し、引用発明においては、「或る1つのオーディオファイルをそのままオーディオデータ処理部に再生させる」ようにしている点。

相違点2:本願発明は、「再生手段により第2の音楽データが再生されている状態において、第2の操作入力が検出されたときに、新たな検索情報の大グループと当該大グループに属す前記新たな検索情報の小グループ以外の小グループとからなる他の検索情報に応じて選択される第3の音楽データを前記再生手段に再生させる小グループ変更手段」を備えるの対し、引用発明は、そのような手段を備えていない点。

相違点3:「属性の種類」の「ジャンル」、「アーティスト」、「アルバム」以外の「その他」のものが、本願発明においては、「作曲者」であるのに対し、引用発明においては、「レーベル」及び「キーワード」である点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。

(相違点1について)
引用発明において、分類項目の切り換え操作を行ったときに「或る1つのオーディオファイルをそのままオーディオデータ処理部に再生させる」ようにしているのは、引用発明が、現在聴いている曲はそのままで、次に聴く曲を新たな分類項目に沿ったものとしたいというユーザのニーズに応えようとするものであるからである。
一方、曲を聴くユーザのニーズとしては、引用文献2の上記F.の、「ランダム選択手段」により「システムにより提案される単位」を「前に選択される提案から可能な限り異なる」ものとすることによって「コレクションの検索」を「より一層意外性にとみ且つ魅力的」とする旨の記載に見られるように、現在聴いている曲とは異なる曲をランダムに選んで気分を変えたいというニーズも存在するといえる。
してみれば、引用発明において、そのようなニーズに応えるべく、「当該新たな検索情報に応じて選択される第2の音楽データを再生手段に再生させる」ようにすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。

(相違点2について)
上記「相違点1について」で検討したように、曲を聴くユーザのニーズとしては、現在聴いている曲とは異なる曲をランダムに選んで気分を変えたいというニーズも存在するといえる。
そして、引用文献2の上記G.の段落【0028】に、「-2秒間以上押すことにより任意のジャンルにおける任意の曲が選択される。」と記載されているように、現在聴いている曲とは異なる曲をランダムに選ぶ態様として、「ジャンル」という大グループに属する「或る1つのジャンル」という小グループ以外の別の「任意のジャンル」という小グループの任意の曲を選択するようにすることも、公知の技術にすぎない。
してみれば、「当該新たな検索情報に応じて選択される第2の音楽データを再生手段に再生させる」ようにした後、その「第2の音楽データ」が気に入らない場合、新たに別の「第3の音楽データ」を再生させるようにすべく、「再生手段により第2の音楽データが再生されている状態において、第2の操作入力が検出されたときに、新たな検索情報の大グループと当該大グループに属す前記新たな検索情報の小グループ以外の小グループとからなる他の検索情報に応じて選択される第3の音楽データを前記再生手段に再生させる小グループ変更手段」を設けるようにすることは、引用文献2の上記記載を参酌することにより、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点3について)
引用発明において、オーディオファイル(音楽データ)に関連する属性の種類として、「作曲者」は、ごく普通に考えられる属性の種類の一つにすぎない。
よって、引用発明において、「ジャンル」、「アーティスト」、「アルバム」以外の「その他」の属性の種類として、「作曲者」を採用することは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び上記引用文献2の記載事項から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(平成24年2月15日付けの意見書における請求人の主張について)
請求人は、上記意見書において、引用文献1及び2に記載された発明を組み合わせる動機づけがない旨の主張をしているので、その点について検討する。
請求人は、上記意見書の「3-2.引用文献1に記載された発明との対比」の「(3)」において、「本件出願人は、引用発明と本願発明との間のこれら相違点1及び2の認定には同意します。これらに加えて、引用発明と本願発明との間には、課題に関する次の第3の相違点が存在します。」と主張し、
「-相違点3:本願発明は上述したように、利用者の「どれでもよいけれど、これはいやで、この曲ならいいな」といったような検索の要求を、上記構成(c)に係る「大グループ変更手段」及び上記構成(d)に係る「小グループ変更手段」を備えることで充足しようとしているのに対し、引用発明は、そのような要求に対処しようとしているのではなく、むしろ引用文献1の段落0040の「ここで、本実施の形態としては、分類項目の切り換え操作が行われたとしても、例えば特にユーザによる停止や再生ファイル変更操作が無い限り、再生中のオーディオファイルはその再生を継続するようにされる。」、同段落0042の「このようにして本実施の形態では、分類項目選択のためのGUIとして、分類項目の変更に応じて切り換え表示されるグループのリスト画像内に、現在再生中にあるとされるオーディオファイルを必ず含むようにされる。」などの記載において繰り返し強調して示されているように、あくまでも再生中の曲を固定した上で再生順の観点(分類項目)を新たな観点に切り替えるためのユーザインタフェースを提供しようとしている点。」
を掲げ、「相違点3をあえて簡潔に言い換えれば、本願発明は再生中の曲とは異なる種類の曲を選択する際の柔軟性を可能な限り高めようとしているのに対し、引用発明は再生中の曲の再生をあくまで維持しようとしており、これら発明の課題は相反していると言えます。」と述べている。
しかしながら、引用文献1の上記段落0040の摘記箇所において、「再生中のオーディオファイルはその再生を継続するようにされる。」との記載の前に、「・・・再生ファイル変更操作が無い限り」との断り書きが記載されており、このことは、「再生ファイル変更操作」を行った場合には、再生中のオーディオファイルの再生は継続されないことを意味し、とりもなおさず「再生ファイル」を「変更」するニーズに応えることもできることを示唆しているといえる。
してみれば、「『再生ファイル』を『変更』するニーズ」の一つとしての「現在聴いている曲とは異なる曲をランダムに選んで気分を変えたいというニーズ」に応えるべく、引用文献2に記載されている事項を採用する動機づけは、十分に存在するといえる。
よって、請求人の、引用文献1及び2に記載された発明を組み合わせる動機づけがない旨の主張を採用することはできない。

次に、請求人は、上記意見書の「3-5.有利な効果の参酌」の項において、「例えば引用文献2の段落0010の「コレクションの検索はより一層意外性にとみ且つ魅力的となる」との記載に基づいて当業者が引用文献1及び2に記載された発明を組合せようとする動機付けを得た」としても、「その場合、引用文献1に記載された発明における属性の種類のフラットな管理と、引用文献2に記載された発明における属性の種類の階層的な管理とのいずれを当業者が採用するのか、という問題があります。ここで、引用文献2の段落0023?0029において開示されているユーザインタフェースは明らかに属性の種類の階層的な管理を前提としているのであるから、当業者が引用文献2の段落0010の記載から上記動機付けを得たのであれば、当業者は属性の種類の階層的な管理と一体のものとして段落0023?0029において開示されているユーザインタフェースを採用する、と判断するのが自然です。これに対し、本願発明は、属性の種類のフラットな管理をあえて維持しつつ上記構成(c)に係る「大グループ変更手段」及び上記構成(d)に係る「小グループ変更手段」とを備えるという工夫をなすことにより、例えばアルバムやアーティストが必ずしも異ならなくてもジャンルが再生中の曲とは異なる曲を手軽に再生すること、ジャンルやアーティストが必ずしも異ならなくてもアルバムが再生中の曲とは異なる曲を手軽に再生すること、アルバムやジャンルが必ずしも異ならなくてもアーティストが再生中の曲とは異なる曲を手軽に再生することなどを、同時に実現しています。このような利便性は、引用文献2に記載された発明のユーザインタフェースを単に採用するだけでは得られません。」と主張しているので、その点について検討する。
引用文献1に記載のものにおける「『再生ファイル』を『変更』するニーズ」の一つとしての「現在聴いている曲とは異なる曲をランダムに選んで気分を変えたいというニーズ」に応えるべく、引用文献2に記載されている事項を採用した場合、引用文献1に記載されているような、属性の種類のフラットな管理の中でランダムな曲の変更をすることができない理由はなく、むしろ、そのようにすることは、ごく自然なことである。
よって、請求人の上記主張を採用することもできない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-22 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-09 
出願番号 特願2008-99151(P2008-99151)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 加内 慎也
小曳 満昭
発明の名称 コンテンツ提供装置およびコンテンツ提供システム  
代理人 亀谷 美明  

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