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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1257332
審判番号 不服2010-6732  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-31 
確定日 2012-05-24 
事件の表示 特願2001-182446「アンテナ取付具」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月26日出願公開、特開2002-374109〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年6月15日の出願であって、平成21年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「ベランダ等の起立部を跨ぐフレームと、
前記フレームを前記起立部に固定する固定部材と、
アンテナを前記起立部の上端より下方の位置に取り付ける取付部材と、を備え、
前記取付部材を、前記フレームを下に延長して前記フレームと一体に形成した、
ことを特徴とするアンテナ取付具。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「ベランダ等の起立部を跨ぐ逆U字状のフレームと、
前記フレームを前記起立部に固定する固定部材と、
アンテナを前記起立部の上端より下方の位置に取り付ける取付部材と、を備え、
前記取付部材を、前記フレームにおける前記起立部の外側部分を下方に延長して形成し、
前記フレームと取付部材とが一体に繋がる逆J字状とした、
ことを特徴とするアンテナ取付具。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「フレーム」及び「取付部材」の構成をそれぞれ「逆U字状のフレーム」及び「前記取付部材を、前記フレームにおける前記起立部の外側部分を下方に延長して形成し、前記フレームと取付部材とが一体に繋がる逆J字状とした」構成に限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開平11-168312号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 第1のアンテナを取付ける上ポールと第2のアンテナを取付ける下ポールとを嵌合させ軸方向に摺動自在に設け、上ポールと下ポールとの伸長状態あるいは収縮状態を固定する固定手段を備え、上ポールと下ポールとを伸長状態として両ポールに上記第1及び第2のアンテナを取付け、上ポールと下ポールとを収縮状態として第1又は第2のアンテナのいずれかを取付けるようにしたアンテナ取付具。」(2頁1欄、請求項1)

ロ.「【0006】
【発明の実施の態様】本発明を添付する図面に示す具体的実施例に基づいて、以下詳細に説明する。図1において、筒状の上ポール1の下側に上ポール1より小径の下ポール2を嵌合させ軸方向に摺動自在に設ける。この上ポール1の下端部からは連結棒3を突出させ、取付板4と連結固着させ、取付板4と押え具5とによりベランダの笠木6を挟ませ、取付ボルト7およびナット8とにより螺締し固定する。」(2頁1?2欄、段落6)

ハ.「【0009】下ポール2にパラボラアンテナ10を取付ける際、パラボラアンテナ10が脱落するのを防止するため、下ポール2の下端に下ポール2より大径のストッパー15を設けて、万一パラボラアンテナ10が脱落する際の落下防止の役目を果たさせる。図3では、上ポール1に固着した取付部材21と、直角状の押え部材22とによりベランダの壁面23を挟持させ、取付ボルト24で固定する。」(2頁2欄、段落9)

ニ.「【0014】上記の実施例においては、上ポールより下ポールの直径を小さく形成し、下ポールを上ポール内に収容した例について述べたが、本発明はこれに限られるものでなく、上ポールより下ポールの直径を大きく形成し、上ポールを下ポール内に収納できるように形成することもできる。また、ポールは円筒だけでなく四角筒その他の筒状断面のものであってもよい。」(3頁3欄、段落14)

上記引用例の特に「上ポールより下ポールの直径を大きく形成し、上ポールを下ポール内に収納できるように形成する」実施例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記「アンテナ取付具」は「ベランダの笠木6又は壁面23」、すなわち、「ベランダ等の起立部」を挟持するための下ポール2(上ポール1は下ポール2内に収納されている)に固着した「取付部材21」と、直角状の「押え部材22」からなるいわゆる「挟持部材」を備え、前記「挟持部材」は【図3】から明らかなように、その挟持態様は前記「ベランダ等の起立部」を跨ぐ逆U字状である。
また、上記「取付ボルト24」は前記挟持部材を「前記起立部に固定する固定部材」である。
また、上ポール1を収納した前記「下ポール2」は【図3】の記載から明らかなように、「アンテナを前記起立部の上端より下方の位置に取り付ける部材」を構成しており、該下ポール2は何らかの手段により前記取付部材21に固着され、前記挟持部材と併せて全体として逆J字状を呈するものである。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「ベランダ等の起立部を跨ぐ逆U字状の取付部材と押え部材からなる挟持部材と、
前記挟持部材を前記起立部に固定する固定部材と、
アンテナを前記起立部の上端より下方の位置に取り付けるポールと、を備え、
前記ポールを、前記挟持部材における前記起立部の外側に固着し逆J字状とした、
アンテナ取付具。」

B.例えば本願出願の10年以上も前に公開された実願昭60-37142号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭61-154900号参照、以下、「周知例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ホ.「本考案は、その欠点を除くために考案されたもので、これを図面について説明すれば(1)角パイプを上分コの字形にしベランダ手摺に(4)固定ネジで(1)取付軸を付け(2)(3)で三面鏡を取付する。」(明細書1頁14?17行)

例えば上記周知例に開示されているように、
「ベランダ用の逆U字状固定部及び物品取付部を連続する1本のパイプで逆J字状に構成し、前記固定部を固定ネジで固定する物品取付具」
の構造は周知である。

(3)対比
補正後の発明と引用発明を対比すると、補正後の発明の「フレーム」と引用発明の「取付部材と押え部材からなる挟持部材」はいずれも「固定部」である点で一致している。
また補正後の発明のアンテナを取り付ける「取付部材」と引用発明の「ポール」の間に実質的な差異はない。
また補正後の発明の「起立部の外側部分を下方に延長して形成し、前記フレームと取付部材とが一体に繋がる」構成と引用発明の「起立部の外側に固着した」構成はいずれも「起立部の外側に固着した」構成の点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「ベランダ等の起立部を跨ぐ逆U字状の固定部と、
前記固定部を前記起立部に固定する固定部材と、
アンテナを前記起立部の上端より下方の位置に取り付ける取付部材と、を備え、
前記取付部材を、前記固定部における前記起立部の外側に固着し逆J字状とした、
アンテナ取付具。」

(相違点1)「固定部」に関し、補正後の発明は「フレーム」であるのに対し、引用発明は「取付部材と押え部材からなる挟持部材」である点。
(相違点2)「起立部の外側に固着した」構成に関し、補正後の発明は「前記起立部の外側部分を下方に延長して形成し、前記フレームと取付部材とが一体に繋がる」構成であるのに対し、引用発明は単に「起立部の外側に固着した」構成である点。

(4)判断
上記相違点1の「固定部」、及び、上記相違点2の『補正後の発明は「前記取付部材を、前記フレームにおける前記起立部の外側部分を下方に延長して形成し、前記フレームと取付部材とが一体に繋がる」構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点』についてまとめて検討する。
例えば上記周知例に開示されているように「ベランダ用の逆U字状固定部及び物品取付部を連続する1本のパイプで逆J字状に構成し、前記固定部を固定ネジで固定する物品取付具」の構造は周知であり、当該周知の構造を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知の構造に基づいて、引用発明の固定部である「取付部材と押え部材からなる挟持部材」を1本の連続するパイプで構成するとともに、前記アンテナ取付部材としてのポールをもこれに一体化することにより、引用発明の「取付部材と押え部材からなる挟持部材」を補正後の発明のような一体の「フレーム」とする(相違点1)とともに、引用発明の「起立部の外側に固着した」ポールの構成を、補正後の発明のような「前記起立部の外側部分を下方に延長して形成し、前記フレームと(アンテナ)取付部材とが一体に繋がる」構成とする(相違点2)程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明及び周知の構成から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知の構造に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知の構造に基いて容易に発明をすることができたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の構造に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-22 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-09 
出願番号 特願2001-182446(P2001-182446)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康西脇 博志  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 矢島 伸一
宮田 繁仁
発明の名称 アンテナ取付具  
代理人 石田 喜樹  

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