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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1257336 |
審判番号 | 不服2010-12528 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-06-09 |
確定日 | 2012-05-24 |
事件の表示 | 特願2005- 92334「携帯電話機、電圧切替制御方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-279275〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年3月28日の出願であって、平成21年12月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年2月12日付けで手続補正がなされたが、同年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成22年6月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年6月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 平成22年6月9日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、 「送信信号を増幅する増幅手段と、 前記増幅手段に第1電圧と、第1電圧より低い第2電圧とを供給する供給手段と、 自機から所望の送信電力レベルの送信信号が出力されるように、前記増幅手段の利得を制御する利得制御手段と、 前記利得制御手段によって、一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得が制御された時点で、前記供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ、前記利得制御手段によって、送信電力レベルが前記閾値を超えるように増幅手段の利得が制御された時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第2電圧から第1電圧に切り替えさせる電圧切替制御手段とを備える ことを特徴とする携帯電話機。」 から、 「送信信号を増幅する増幅手段と、 前記増幅手段に第1電圧と、第1電圧より低い第2電圧とを供給する供給手段と、 自機から所望の送信電力レベルの送信信号が出力されるように、前記増幅手段の利得を制御する利得制御手段と、 前記利得制御手段によって、一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が継続した時点で、前記供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ、前記利得制御手段によって、送信電力レベルが前記閾値を超えるように増幅手段の利得が制御された時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第2電圧から第1電圧に切り替えさせる電圧切替制御手段とを備える ことを特徴とする携帯電話機。」 に補正することを含むものである。 上記補正は、補正前の請求項1における「・・・一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得が制御された時点」を「・・・一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が継続した時点」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-48797号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開昭61-19232号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【0002】 従来の技術の一例としてCDMA(符号分割多元接続)方式携帯電話を挙げて説明する。 ここではCDMA方式の代表的な規格として米国のTIA IS-95を考える。送信機の構成の一例を図7に示す。変調信号は送信周波数帯に周波数変換された後、可変増幅手段1、電力増幅手段2、アンテナ共用器3を介してアンテナ4より送出される。ここで、可変増幅手段1はアンテナ4における所望の送信電力値となるよう制御手段6によって利得を調節される。IS-95では基地局の受信電力を一定にするため開ループおよび閉と呼ばれる電力制御を行う。開ループ制御は受信手段5によって検出された受信電界強度情報によって一義的に送信電力値を決定するもので精度はあまり要求されない(±9.5dB)。一方、閉ループ制御は基地局より送られてくる利得の増減情報に基づきより細かい制御を行う(1dBステップ)。送信機は始めに開ループ制御を行った後に閉ループ制御に移行し、基地局が要求する所望の送信電力値に収束する。 【0003】 上記のように送信機の送信電力値を可変増幅手段1を制御することによって行っているが、消費電流低減を目的として電力増幅手段2のバイアス条件を送信電力値に応じて制御する方法が一般に考えられている(例えば、特許文献1参照)。 この場合の制御を図8を用いて説明する。 【0004】 電力増幅手段2に例えばディプレッション型GaAsFETを用いた場合、ゲートに印加するバイアスを変化させると出力電力と消費電流の関係が変化する(図8の破線)。ゲート電圧を下げれば(バイアス設定値=B1)、消費電流が減るが最大出力電力は低下する。逆にゲート電圧を上げれば(バイアス設定値=B2)、最大出力電力は向上するが消費電流が増加する。この特性を利用して電力増幅手段2のバイアス条件を任意の出力電力の設定値で切換えると、低い出力電力においての消費電流低減が可能となる(図8の実線)。具体的には可変増幅手段1に対する制御信号をレベル判定手段9によって判別し、任意のしきい値を境に電力増幅手段2のバイアスを切換える。」 ここで、引用例1の上記段落【0004】に記載の「可変増幅手段1に対する制御信号をレベル判定手段9によって判別し、任意のしきい値を境に電力増幅手段2のバイアスを切換える」という動作は、具体的には、次のような動作が行われるものと解される。すなわち、制御手段によって、(1)送信電力値が所定のしきい値以下となるように可変増幅手段の利得が調節された時点で、バイアス印加手段に対して、電力増幅手段に供給するバイアス電圧をバイアス電圧B2からバイアス電圧B1に切換えさせ、(2)送信電力値が前記しきい値を超えるように可変増幅手段の利得が調節された時点で、バイアス印加手段に対して、電力増幅手段に供給する電圧をバイアス電圧B1からバイアス電圧B2に切換えさせる動作が行われるものと解される。 よって、上記A.の記載及び図7,8を参照すると、引用例1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「送信信号を増幅する可変増幅手段及び電力増幅手段よりなる増幅手段と、 前記電力増幅手段にバイアス電圧B2と、バイアス電圧B2より低いバイアス電圧B1とを印加するバイアス印加手段と、 自機から所望の送信電力値の送信信号が出力されるように、前記可変増幅手段の利得を調節する制御手段と、 前記制御手段によって、送信電力値が所定のしきい値以下となるように可変増幅手段の利得が調節された時点で、前記バイアス印加手段に対して、電力増幅手段に印加するバイアス電圧をバイアス電圧B2からバイアス電圧B1に切換えさせ、前記制御手段によって、送信電力値が前記しきい値を超えるように可変増幅手段の利得が調節された時点で、バイアス印加手段に対して、電力増幅手段に印加するバイアス電圧をバイアス電圧B1からバイアス電圧B2に切換えさせるバイアス切換手段とを備える 携帯電話。」 (引用例2) B.「 産業上の利用分野 本発明は、可搬型無線機の送信出力電力を2段階に切換える送信出力電力制御装置の改良に関するものである。 従来の技術 一般に、可搬型無線機は内蔵された電池を電源としているため、できるだけ低消費電力で動作し運用可能時間が長いことが望まれる。この為に従来の可搬型無線機においては、送信出力電力を高出力或は低出力に切換えることができるように構成されている。しかしながら、従来のこの種無線機は、無線機に設けられた送信出力電力切換スイッチを高出力側或は低出力側に手動で切換えなければ送信出力電力を高,低出力に切換えることができなかった。 発明が解決しようとする問題点 本発明はこのような従来の問題点を改善したもので、その目的は、送信出力電力を自動的に高出力或は低出力に切換えることができる可搬型無線機における自動送信出力電力制御装置を提供することにある。 問題点を解決するための手段 本発明は上記問題点を解決する為に、可搬型無線機の送信出力電力を2段階に切換える送信出力電力制御装置を、マイクロフォンからの音声入力信号レベルが所定値より大きいか否かを検出する比較回路と、該比較回路により音声入力信号レベルが所定値より大きいとき無線機の送信出力電力を高出力に切換え、逆に小さいとき送信出力電力を低出力に切換える送信出力電力制御部とで構成している。」(第1頁左下欄第15行?第2頁左上欄第5行) C.「 実施例 第1図は本発明の自動送信出力電力制御装置を有する可搬型FM無線機の要部ブロック図である。 同図において、1はマイクロフォンで、その出力である音声入力信号は前置音声増幅部2に入力される。マイクロフォン1にはプレストークスイッチ3が設けられ、このプレストークスイッチ3のオン,オフ信号により当該可搬型無線機が受信状態,送信状態に切換えられる。即ち、・・・(中略)・・・プレストークスイッチ3がオンすると、アンテナ12が送信部側に切換えられると共にスイッチ14がオンされて電圧増幅部10,電力増幅部11へ電源が供給され送信状態となる。前置音声増幅部2に入力された音声入力信号はここで増幅され、IDC(瞬時振幅制限制御回路)4と自動送信出力電力制御装置5の音声増幅回路5aに印加される。IDC4およびローパスフィルタ部6を通過した音声入力信号は周波数変調部7で第1局部発振部8からの局部発振信号と混合される。周波数変調部7の出力は逓倍増幅部9で逓倍増幅されて電圧増幅部10に入力される。電圧増幅部10および電力増幅部11は、それぞれ逓倍増幅部9の出力を電圧増幅,電力増幅するものであり、その動作電圧は自動送信出力電力制御装置5から供給され、この供給される電圧の大きさに応じた送信出力電力値が得られるように動作する。周波数変調された送信波はアンテナ12より出射される。 自動送信出力電力制御装置5は、音声入力信号を適当な増幅率で電圧増幅する音声増幅回路5aと、その出力レベル好ましくはその出力レベルを平滑化したレベルと所定のレベルとを比較する電圧比較回路5bと、電圧比較回路5bの出力にヒステリシス特性を付加するヒステリシス制御回路5cと、その出力に応じて電圧増幅部10および電力増幅部11へ供給する電源電圧を制御する電圧制御用回路5dと、この制御出力を無効とする電源バイパススイッチ5eとから成る。電圧比較回路5bの閾値レベルは、通常の音声で送話した際の音声増幅回路5aの出力値より若干大きく設定されており、音声増幅回路5bの出力がその閾値を越えない期間は電圧制御用回路5dの出力つまり電圧,電力増幅部10,11への供給電圧は低く(例えば最大許容送信出力電力の50%相当電圧)設定され、音声増幅回路5bの出力が閾値を越えると電圧制御用回路5dから高い電圧(例えば最大許容送信出力電力相当電圧)が電圧,電力増幅部10,11へ供給されるように構成されている。また、ヒステリシス制御回路5cは、音声の振幅値の変化量が必すしも一定値とはならないことや、音声レベルの瞬時断による送信出力電力の変動を防止する為に電圧比較回路5bの判定結果にヒステリシス特性を持たせる為のものである。」(第2頁左上欄第17行?右下欄第12行) D.「第2図(a),(b)は自動送信出力電力制御装置5の動作説明用線図であり、同図(a)は送話の音声レベルが通常よりも更に大きくした場合の送話音声レベル,プレストークスイッチのオン,オフ状態,送信出力電力の各状態を示し、同図(b)は通常の音声レベル又は無変調状懸におけるそれらの状態を示す。 プレストークスイッチ3がオフのときは当該無線機は受信状態にあり、送信出力電力は零である。プレストークスイッチ3をオンすると、前述したようにスイッチ14がオンとなり、電圧増幅部10,電力増幅部11に動作電圧が印加され、またアンテナ12が送信部側に切換えられて送信状態となる。プレストークスインチ3をオンしただけで送話しない無声状態では、音声増幅回路5aの出力レベルが所定レベルより小さいことから電圧制御用回路5eは低電圧な動作電圧を電圧,電力増幅部10,11へ供給しており、従って、送信出力電力は低出力になっている。次に、第2図(a)に示すように通常の音声より大きな声(大声)で送話すると、音声増幅回路5aの出力レベルが閾値を越え、電圧増幅用回路5dは高電圧な動作電圧を電圧,電力増幅部10,11に供給する。この為、大音声状態においては送信出力電力は高出力となる。大音声が途絶えて音声増幅回路5aの出力レベルが閾値より小さくなってもヒステリシス制御回路5cの働きにより直ちには低出力とならず、例えば数百msec後に送信出力電力が低出力となる。そして再び大音声状態になると、送信出力電力が高出力に切換えられ、無声状態になると所定時間後に低出力となり、プレストークスイッチ3がオフされると受信状態に復帰する。一方、第2図(b)に示すように、送信状態において通常の音声で送話した場合、音声増幅回路5aの出力レベルが閾値を越えないために送信出力電力は低出力のままであり、この低出力状態は大音声状態が出現しない限りプレストークスイッチ3がオフになるまで続けられる。」(第2頁右下欄第13行?第3頁右上欄第10行) 上記B.?D.の記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。) 「送信信号を増幅する電圧,電力増幅部と、 前記電圧,電力増幅部に高電圧な動作電圧と、高電圧な動作電圧より低い低電圧な動作電圧とを供給する電圧制御用回路と、 大音声状態で高電圧な動作電圧が前記電圧,電力増幅部に供給されている状態において大音声が途絶えて音声増幅回路の出力レベルが閾値より小さくなってから例えば数百msec後に送信出力電力を低出力とすべく前記電圧,電力増幅部に供給する電圧を高電圧な動作電圧から低電圧な動作電圧に切換えさせるとともに、無声状態で低電圧な動作電圧が前記電圧,電力増幅部に供給されている状態から大音声状態となり音声増幅回路の出力レベルが閾値より大きくなった時に送信出力電力を高出力とすべく前記電圧,電力増幅部に供給する電圧を低電圧な動作電圧から高電圧な動作電圧に切換えさせるヒステリシス制御回路とを備える 可搬型無線機。」 (3)対比 本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。 (あ)引用例1記載の発明における「可変増幅手段及び電力増幅手段よりなる増幅手段」は、本願補正発明における「増幅手段」に相当する。 (い)引用例1記載の発明における「バイアス電圧B2」、「バイアス電圧B1」、「印加」、「バイアス印加手段」は、それぞれ、本願補正発明における「第1電圧」、「第2電圧」、「供給」、「供給手段」に相当する。 そして、引用例1記載の発明において、「電力増幅手段」は「増幅手段」の一部であるから、「電力増幅手段」にバイアス電圧を供給するという事項は、「増幅手段」にバイアス電圧を供給するという事項に含まれる概念であるといえる。 よって、引用例1記載の発明における「電力増幅手段にバイアス電圧B2と、バイアス電圧B2より低いバイアス電圧B1とを印加するバイアス印加手段」は、本願補正発明における「増幅手段に第1電圧と、第1電圧より低い第2電圧とを供給する供給手段」に相当する。 (う)引用例1記載の発明における「送信電力値」、「調節」、「制御手段」は、それぞれ、本願補正発明における「送信電力レベル」、「制御」、「利得制御手段」に相当する。 そして、引用例1記載の発明において、「可変増幅手段」は「増幅手段」の一部であるから、「可変増幅手段」の利得を調節するという事項は、「増幅手段」の利得を調節するという事項に含まれる概念であるといえる。 よって、引用例1記載の発明における「自機から所望の送信電力値の送信信号が出力されるように、可変増幅手段の利得を調節する制御手段」は、本願補正発明における「自機から所望の送信電力レベルの送信信号が出力されるように、増幅手段の利得を制御する利得制御手段」に相当する。 (え)引用例1記載の発明における「バイアス切換手段」が行う動作のうちの「制御手段によって、送信電力値が所定のしきい値以下となるように可変増幅手段の利得が調節された時点で、バイアス印加手段に対して、電力増幅手段に印加するバイアス電圧をバイアス電圧B2からバイアス電圧B1に切換えさせ」る動作と、本願補正発明における「電圧切替制御手段」が行う動作のうちの「利得制御手段によって、一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が継続した時点で、前記供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ」る動作とは、「利得制御手段によって、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が行われる際に、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ」る動作である点で、共通するものである。 また、引用例1記載の発明における「バイアス切換手段」が行う動作のうちの「制御手段によって、送信電力値がしきい値を超えるように可変増幅手段の利得が調節された時点で、バイアス印加手段に対して、電力増幅手段に印加するバイアス電圧をバイアス電圧B1からバイアス電圧B2に切換えさせる」動作は、本願補正発明における「電圧切替制御手段」が行う動作のうちの「利得制御手段によって、送信電力レベルが閾値を超えるように増幅手段の利得が制御された時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第2電圧から第1電圧に切り替えさせる」動作に相当する。 (お)引用例1記載の発明における「携帯電話」は、本願補正発明における「携帯電話機」に相当する。 上記(あ)?(お)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、 「送信信号を増幅する増幅手段と、 前記増幅手段に第1電圧と、第1電圧より低い第2電圧とを供給する供給手段と、 自機から所望の送信電力レベルの送信信号が出力されるように、前記増幅手段の利得を制御する利得制御手段と、 前記利得制御手段によって、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が行われる際に、前記供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ、前記利得制御手段によって、送信電力レベルが前記閾値を超えるように増幅手段の利得が制御された時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第2電圧から第1電圧に切り替えさせる電圧切替制御手段とを備える 携帯電話機。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点:「電圧切替制御手段」が「利得制御手段によって、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が行われる際に」行う動作が、本願補正発明においては、「利得制御手段によって、一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が継続した時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ」る動作であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「制御手段(利得制御手段)によって、送信電力値(送信電力レベル)が所定のしきい値(閾値)以下となるように可変増幅手段(増幅手段)の利得が調節(制御)された時点で、バイアス印加手段(供給手段)に対して、電力増幅手段(増幅手段)に印加(供給)するバイアス電圧(電圧)をバイアス電圧B2(第1電圧)からバイアス電圧B1(第2電圧)に切換え(切り替え)させ」る動作である点。 (4)判断 そこで、上記相違点について検討する。 上記引用例2には、増幅部に供給する動作電圧を出力レベルの大小に応じて高電圧と低電圧との間で切換えるタイプの可搬型無線機において、出力レベルが大きな値から小さな値に変化した際に、すぐに増幅部に供給する動作電圧を高電圧から低電圧に切換えるのではなく、数百msec後に高電圧から低電圧に切換えるようにする技術が記載されている。 ここで、上記のような切換えを行う理由は、上記引用例2の第2頁右下欄第7?12行に、「また、ヒステリシス制御回路5cは、音声の振幅値の変化量が必すしも一定値とはならないことや、音声レベルの瞬時断による送信出力電力の変動を防止する為に電圧比較回路5bの判定結果にヒステリシス特性を持たせる為のものである。」と記載されているように、「音声レベルの瞬時断」のような場合にすぐに増幅部に供給する動作電圧を高電圧から低電圧に切換えてしまうと、「音声レベルの瞬時断」が回復した場合にまたすぐに増幅部に供給する動作電圧が低電圧から高電圧に切換わることになり、切換えのばたつきが生じて不都合であるからであると解される。 してみると、上記引用例2に記載のものにおいて、「音声レベルの瞬時断」によって出力レベルが大きな値から小さな値に変化した際に、その後「音声レベルの瞬時断」が回復したにもかかわらず、一瞬の「音声レベルの瞬時断」を検出した数百msec後には必ず増幅部に供給する動作電圧を高電圧から低電圧に切換えるようにすることは不合理であり、「音声レベルの瞬時断」が回復した場合には、出力レベルが大きな値であることを検出することによって、増幅部に供給する動作電圧は高電圧に保たれると解される。 よって、上記引用例2記載の発明における「大音声状態で高電圧な動作電圧が電圧,電力増幅部に供給されている状態において大音声が途絶えて音声増幅回路の出力レベルが閾値より小さくなってから例えば数百msec後に送信出力電力を低出力とすべく前記電圧,電力増幅部に供給する電圧を高電圧な動作電圧から低電圧な動作電圧に切換えさせる」動作は、例えば数百msecという「一定期間」、音声増幅回路の出力レベルが閾値より小さくなるという状態が「継続」した時点で、電圧,電力増幅部に供給する電圧を高電圧な動作電圧から低電圧な動作電圧に切換えさせる動作であると解される。 そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明とは、増幅部に供給する電圧を、出力レベルの大小に応じて高電圧と低電圧との間で切換えるという点においては、共通する技術分野に属するものであるから、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の発明を適用し、「電圧切替制御手段」が「利得制御手段によって、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が行われる際に」行う動作を、「利得制御手段によって、一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が継続した時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ」る動作とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (本願補正発明の作用効果について) そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2記載の発明から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1,2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成22年6月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年2月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「送信信号を増幅する増幅手段と、 前記増幅手段に第1電圧と、第1電圧より低い第2電圧とを供給する供給手段と、 自機から所望の送信電力レベルの送信信号が出力されるように、前記増幅手段の利得を制御する利得制御手段と、 前記利得制御手段によって、一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得が制御された時点で、前記供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第1電圧から第2電圧に切り替えさせ、前記利得制御手段によって、送信電力レベルが前記閾値を超えるように増幅手段の利得が制御された時点で、供給手段に対して、増幅手段に供給する電圧を第2電圧から第1電圧に切り替えさせる電圧切替制御手段とを備える ことを特徴とする携帯電話機。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「・・・一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得の制御が継続した時点」の限定を省き「・・・一定期間、送信電力レベルが所定の閾値以下となるように増幅手段の利得が制御された時点」とするものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1,2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、同様に、引用例1,2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1,2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-22 |
結審通知日 | 2012-03-27 |
審決日 | 2012-04-09 |
出願番号 | 特願2005-92334(P2005-92334) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石田 昌敏 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
甲斐 哲雄 小曳 満昭 |
発明の名称 | 携帯電話機、電圧切替制御方法、プログラム |
代理人 | 小林 国人 |
代理人 | 川畑 孝二 |
代理人 | 中島 司朗 |
代理人 | 木村 公一 |