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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1257370 |
審判番号 | 不服2011-23145 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-27 |
確定日 | 2012-05-24 |
事件の表示 | 特願2000-230933号「冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月14日出願公開、特開2001-248922号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯、本願発明 本願は、平成12年7月31日(優先権主張 平成11年12月28日)の出願であって、平成23年7月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年10月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成22年7月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「冷媒回路に冷媒としてR32の単独冷媒あるいはR32とR125との混合冷媒を循環させて冷凍サイクルを実行する冷凍装置であって、 上記冷媒回路に圧縮機(23)と、凝縮器として働く第1熱交換器(22)と、膨張手段(26)と、蒸発器として働く第2熱交換器(2)とを備え、 上記第1熱交換器(22)の内容積(Vout)と第2熱交換器(2)の内容積(Vin)との比mが、 0.7≦m≦1.5 の範囲内に設定されていることを特徴とする冷凍装置。」 第2 引用例の記載事項 1.原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-247576号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は当審で付与、以下同様。) ア 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、性能を低下させることなく室内熱交換器及び室外熱交換器の小型化を図った空気調和装置に関する。」 イ 「【0022】図1において、1は空気調和装置の圧縮機,3は室内熱交換器,5は絞り装置,7は室外熱交換器をそれぞれ示しており、室内熱交換器3は室内ユニット9内に配置されている。室外熱交換器7は室外ユニット11内に配置され、四方弁13の切換操作により、冷房モード、暖房モードがそれぞれ得られるようになっている。即ち、冷房モード時にあっては、圧縮機1から吐出された冷媒は、実線で示す如く室内熱交換器3→絞り装置5→室外熱交換器7を通り、再び圧縮機1に戻るサイクルを繰返すようになる。また、暖房モード時にあっては、圧縮機1から吐出された冷媒は、破線で示す如く室外熱交換器7→絞り装置5→室内熱交換器3を通り再び圧縮機1に戻るサイクルを繰返すようになっている。 【0023】冷媒には、R32とR125の合成組成が80%以上の混合冷媒を用いている。この場合、組成が50%以上のR32の冷媒を用いてもよい。」 上記記載事項について検討する。 記載事項イの冷房モード時、暖房モード時の冷媒のサイクルは冷凍サイクルということができ、また、その冷凍サイクルを構成する回路は冷媒回路ということができる。 また、空気調和装置において冷房時は室内熱交換器が蒸発器として機能し、暖房時は室内熱交換器が凝縮器として機能するものであることは明らかであるから、上記記載事項イの冷房モード時、暖房モード時についての記載は、それぞれ暖房モード時、冷房モード時の誤記と認められる。 上記記載事項から暖房モード時の空気調和装置について、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「冷媒回路の冷媒としてR32とR125の合成組成が80%以上の混合冷媒を循環させて冷凍サイクルを実行する空気調和装置であって、 上記冷媒回路に圧縮機1と、凝縮器として働く室内熱交換器3と、絞り装置5と、蒸発器として働く室外熱交換器7とを備えた空気調和装置。」 2.原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-101517号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫,家庭用エアコン,自動車用エアコン等の冷凍システムの能力向上および効率向上に関するものである。」 イ 「【0017】以下、本発明の実施の形態について、図1から図3を用いて説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の冷凍システムの回路図である。図1において、6は冷凍システム、7は圧縮機、8は凝縮器、9は冷媒の減圧手段であるキャピラリチューブ、10は蒸発器である。圧縮機7は低圧タイプであり、内容積は約3000mLである。凝縮器8の内容積は約200mL、蒸発器10の内容積は約200mLである。従って、運転中の高圧側の容積は約200mL、低圧側の容積は約3200mLとなる。 【0018】冷媒として1,1,1,2-テトラフルオロエタンが約120g使用されており、凝縮温度15?50℃、蒸発温度-20?-40℃で運転される。そして、前記冷媒とともに、不凝縮性ガスとして二酸化炭素ガスが高圧側容積の5倍である約1000mL封入されている。」 ウ 「【0027】(実施の形態2)図2は本発明の冷凍システムの回路図である。図2において、11は冷凍システム、12は圧縮機、13は凝縮器、14は冷媒の減圧手段であるキャピラリチューブ、15は蒸発器である。圧縮機12は低圧タイプであり、内容積は約3000mLである。凝縮器13の内容積は約80mL、蒸発器15の内容積は約100mLである。従って、運転中の高圧側の容積は約80mL、低圧側の容積は約3100mLとなる。 【0028】冷媒としてイソブタンが約50g使用されており、凝縮温度15?50℃、蒸発温度-20?-40℃で運転される。そして、前記冷媒とともに、不凝縮性ガスとしてメタンガスが高圧側容積の5倍である約400mL封入されている。」 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「R32とR125の合成組成が80%以上の混合冷媒」は本願発明の「R32とR125との混合冷媒」に相当し、以下同様に、 「空気調和装置」は「冷凍装置」に、 「圧縮機1」は「圧縮機(23)」に、 「室内熱交換器3」は「第1熱交換器(22)」に、 「絞り装置5」は「膨張手段(26)」に、 「室外熱交換器7」は「第2熱交換器(2)」に、それぞれ相当する。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「冷媒回路に冷媒としてR32とR125との混合冷媒を循環させて冷凍サイクルを実行する冷凍装置であって、 上記冷媒回路に圧縮機と、凝縮器として働く第1熱交換器と、膨張手段と、蒸発器として働く第2熱交換器とを備えた冷凍装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点) 本願発明は第1熱交換器(22)の内容積(Vout)と第2熱交換器(2)の内容積(Vin)との比mが、0.7≦m≦1.5 の範囲内に設定されているのに対し、引用発明は室内熱交換器3の内容積と室外熱交換器7の内容積の比が明らかでない点。 第4 相違点の判断 冷凍サイクルを切り替えて、暖房運転、冷房運転を行う空気調和装置において、凝縮器と蒸発器の熱交換器容積が異なると冷媒量のアンマッチが起こることは周知の事項(特開平7-332770号公報(段落【0004】)、特開平10-170081号公報(段落【0021】)であり、そのために液タンクなどが必要となることも周知の事項(特開平11-264619号公報(段落【0005】)、特開平7-332770号公報(段落【0004】))である。 してみると、冷凍サイクルを切り替えて使う引用発明のような装置において、凝縮器と蒸発器の熱交換器容積を等しくすれば、アンマッチについては解決されることは明らかであるから、この点で第1熱交換器の内容積と第2熱交換器の内容積との比を1近くに設定することは当業者において格別困難なことではなく、また、第1熱交換器の内容積と第2熱交換器の内容積との比を1近くに設定した冷凍システムも引用例2に示されているように特別な冷凍システムではない以上、第1熱交換器の内容積と第2熱交換器の内容積との比にある程度の許容範囲を設定して、相違点のように設定することは周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことといわざるをえない。 そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-21 |
結審通知日 | 2012-03-27 |
審決日 | 2012-04-09 |
出願番号 | 特願2000-230933(P2000-230933) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新井 浩士 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 松下 聡 |
発明の名称 | 冷凍装置 |
代理人 | 山崎 宏 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 仲倉 幸典 |