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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1257454
審判番号 不服2009-26052  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2012-05-21 
事件の表示 特願2005-211757「弾性表面波装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 1日出願公開、特開2007- 28538〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成17年7月21日の特許出願であって、平成21年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月18日付けで手続補正書が提出され、同年7月10日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年9月28日付けで拒絶査定され、これに対して同年12月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。



2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年6月18日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「単結晶圧電基板と、この圧電基板の表面に設けたアルミニウムを主成分とする材料により形成された交差指状電極とを備えた弾性表面波装置であって、
前記交差指状電極の厚さhを当該交差指状電極の電極間隔λで規格化した規格化膜厚h/λが7?11%であり、
前記単結晶圧電基板は、タンタル酸リチウム基板であり、添加物として鉄を含むことにより3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cmの範囲内の体積抵抗率を有し、かつ、X軸を中心にY軸からZ軸方向に46°±0.3°の範囲の角度で回転させた方位を有する
ことを特徴とする弾性表面波装置。」



3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-167936号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、好ましい実施例について詳細に説明する。図7(A)は、本発明の第1実施例によるラダー型弾性表面波フィルタの構成を示す平面図、図7(B)はその等価回路図である。
【0024】図7(A)を参照するに、弾性表面波フィルタはLiTaO_(3)またはLiNbO_(3)単結晶の回転Y板上に形成され、入力側電極が入力端子INに接続された第1の櫛形電極R_(1)と、入力側電極が前記櫛形電極R_(1)の出力側電極に接続され、さらに出力側電極が出力端子OUTに接続された第2の櫛形電極R_(1)’と、入力側電極を櫛形電極R_(1)’の入力側電極に接続され、出力側電極を接地された第3の櫛形電極R_(2)と、入力側電極を櫛形電極R_(1)の出力側電極に接続され、出力側電極を接地された第4の櫛形電極R_(2)’と、入力側電極を櫛形電極R_(1)’の出力側電極に接続され、出力側電極を接地された第4の櫛形電極R_(2)”とを含む。
【0025】各々の櫛形電極R_(1) ,R_(1)’,R_(2),R_(2)’,R_(2)”において、入力側電極iは、通常の通り、X軸方向に伝搬する弾性表面波の経路と交差する第1の方向に互いに平行に延在する第1群の電極指を含み、また出力側電極oも、通常の通り、前記第1の方向とは反対の第2の方向に平行に延在する第2群の電極指を含み、第1群の電極指と第2群の電極指とは、交互に配設されている。さらに、各々の櫛形電極R_(1),R_(1)’,R_(2),R_(2)’,R_(2)”には、X軸方向上の両側に、複数の平行な電極指を両端で短絡させた構成の反射器R_(1)が形成されている。本実施例では、櫛形電極R_(1),R_(1)’,R_(2),R_(2)’,R_(2)”はAl-1%Cu合金より形成され、フィルタの通過帯域波長の10%に相当する約0.4μmの厚さに形成されている。
【0026】図7(B)は図6(A)のフィルタの等価回路図を示す。図7(B)を参照するに、櫛形電極R_(1)およびR_(1)’は直列接続され、さらに櫛形電極R_(2),R_(2)’およびR_(2)”が並列接続されている。図8は図7(A),(B)の弾性表面波フィルタについて実験的に得られた最小挿入損失を、LiTaO_(3)単結晶基板11の様々なカット角θについて示す。最小挿入損失は、表面波の伝搬損失とフィルタの整合損失の双方の効果を含むが、基板のカット角θは整合損失には実質的に寄与しない。」

(イ)「【0034】図12は、図7(A),(B)のフィルタにおいて、様々なカット角で形成されたLiTaO_(3)のY回転-X伝搬基板11上に形成された櫛形電極の厚さを変化させた場合の伝搬損失を計算した結果を示す。図12の計算においても、先の計算と同様に、Kovacs 他の結晶定数を使った。
【0035】図12よりわかるように、カット角が38°以下の場合、損失は電極厚の増大とともに指数関数的に単調に増加するが、カット角が40°を越えると損失が電極の厚さと共に減少を始め、特性曲線に極小点が現れるのがわかる。極小点をを過ぎると損失は再び増大に転じる。特に、基板11のカット角を、先に説明した好ましい角度である40°から46°の範囲に設定した場合、このような極小点は、波長に対する電極の厚さが3%以上のところに出現する。換言すると、本実施例のフィルタにおいて、電極を、波長で規格化した厚さが3%以上になるように形成するのが好ましい。一方、電極の厚さが過大になると、電極のエッチングによるパターニングが困難になったり、基板中の音速が電極の膜厚により敏感に変化するようになるため、電極は、厚さが波長に対して15%以内になるように形成するのが好ましい。図12より、AlあるいはAl-1%Cu合金を使った電極の場合、電極の厚さが波長の15%を越えると、いずれのカット角においても伝搬損失が急増することがわかるが、これは電極からのバルク波の放射が優勢になることを示している。特にカット角が40?46°の範囲では、電極の厚さは0.07?0.15の範囲が、またカット角が40から44°の範囲では、電極の厚さは0.05?0.10の範囲であるのが好ましい。」

(ウ)上記(イ)には、カット角について「LiTaO_(3)のY回転-X伝搬基板」においてカット角を40?46°の範囲とすることが記載されているので、引用例に記載された「LiTaO_(3)単結晶基板」は、「X軸を中心にY軸からZ軸方向に40?46°の範囲の角度で回転させた方位を有する」ものといえる。


よって、上記(ア)?(ウ)及び関連図面から、引用例には、

「LiTaO_(3)単結晶基板と、前記LiTaO_(3)単結晶基板の表面に設けたAl-1%Cu合金により形成された櫛形電極とを備えた弾性表面波フィルタであって、
波長で規格化した前記櫛形電極の厚さが7?15%であり、
前記LiTaO_(3)単結晶基板は、X軸を中心にY軸からZ軸方向に40?46°の範囲の角度で回転させた方位を有する弾性表面波フィルタ。」

の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。



4.対比
(1)本願発明と引用発明との対応関係について
(あ)引用発明の「LiTaO_(3)単結晶基板」は、本願発明の「単結晶圧電基板」及び「タンタル酸リチウム基板」に相当している。

(い)引用発明の「櫛形電極」については、引用例の段落【0025】に、
「各々の櫛形電極R_(1) ,R_(1)’,R_(2),R_(2)’,R_(2)”において、入力側電極iは、通常の通り、X軸方向に伝搬する弾性表面波の経路と交差する第1の方向に互いに平行に延在する第1群の電極指を含み、また出力側電極oも、通常の通り、前記第1の方向とは反対の第2の方向に平行に延在する第2群の電極指を含み、第1群の電極指と第2群の電極指とは、交互に配設されている。」
と記載されているので、引用発明の「櫛形電極」は、本願発明の「交差指状電極」に相当している。

(う)引用発明の櫛形電極は、「Al-1%Cu合金」により形成されているので、「アルミニウムを主成分とする材料により形成」されているといい得るものである。

(え)本願明細書の段落【0002】には、「弾性表面波装置」がフィルタとして利用されていることが記載されているので、引用発明の「弾性表面波フィルタ」は、弾性表面波装置と呼び得るものである。

(お)弾性表面波フィルタでは、一方の電極の電極指と他方の電極の電極指とは交互に配設され、隣り合った一方の電極の電極指と他方の電極の電極指との間隔は半波長に設定されるものであることを考慮すれば、引用発明の一方の電極の電極指間隔は1波長であると認められる。
よって、引用発明の「波長で規格化した前記櫛形電極の厚さ」は、電極指の間隔で規格化した櫛形電極の厚さであるともいえるので、本願発明の「交差指状電極の厚さhを当該交差指状電極の電極間隔λで規格化した規格化膜厚h/λ」に相当している。

(か)引用発明と本願発明は、規格化膜厚が、「7?11%を含む範囲」である点で共通している。

(き)引用発明と本願発明は、X軸を中心にY軸からZ軸方向に回転する角度が、「46°を含む範囲」である点で共通している。


(2)本願発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、

「単結晶圧電基板と、この圧電基板の表面に設けたアルミニウムを主成分とする材料により形成された交差指状電極とを備えた弾性表面波装置であって、
前記交差指状電極の厚さhを当該交差指状電極の電極間隔λで規格化した規格化膜厚h/λが7?11%を含む範囲であり、
前記単結晶圧電基板は、タンタル酸リチウム基板であり、X軸を中心にY軸からZ軸方向に46°を含む範囲の角度で回転させた方位を有する
ことを特徴とする弾性表面波装置。」

の点で一致している。


(3)本願発明と引用発明の相違点について
本願発明と引用発明とは、下記の点で相違する。

(相違点1)
規格化膜厚について、本願発明は「7?11%」の範囲としているのに対し、引用発明は「7?15%」の範囲としている点。

(相違点2)
単結晶圧電基板について、本願発明は「添加物として鉄を含むことにより3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cmの範囲内の体積抵抗率を有し」ているのに対し、引用発明は添加物を含んでおらず、3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cmの範囲内の体積抵抗率を有していない点。

(相違点3)
X軸を中心にY軸からZ軸方向に回転する角度について、本願発明は「46°±0.3°の範囲」としているのに対し、引用発明は「40?46°の範囲」としている点。



5.当審の判断
(1)相違点1について
本願発明の「規格化膜厚」について、本願明細書の段落【0015】には、
「IDTの厚さhを当該IDTの電極間隔λで規格化した値である規格化膜厚h/λが略7?11%(h/λ≒0.07?0.11)となるよう構成する。」
と記載され、本願図面の図3乃至図5には、規格化膜厚h/λを7%、9%、11%とした場合の各特性は記載されているものの、他の規格化膜厚とした場合の特性は記載されていないことから、本願明細書及び図面には、規格化膜厚を7%?11%の範囲とすることは明記されているものの、当該範囲が好ましいとする根拠は記載されていない。

一方、電極の膜厚の決定について、引用例の段落【0035】には、
「カット角が38°以下の場合、損失は電極厚の増大とともに指数関数的に単調に増加するが、カット角が40°を越えると損失が電極の厚さと共に減少を始め、特性曲線に極小点が現れるのがわかる。極小点をを過ぎると損失は再び増大に転じる。特に、基板11のカット角を、先に説明した好ましい角度である40°から46°の範囲に設定した場合、このような極小点は、波長に対する電極の厚さが3%以上のところに出現する。換言すると、本実施例のフィルタにおいて、電極を、波長で規格化した厚さが3%以上になるように形成するのが好ましい。一方、電極の厚さが過大になると、電極のエッチングによるパターニングが困難になったり、基板中の音速が電極の膜厚により敏感に変化するようになるため、電極は、厚さが波長に対して15%以内になるように形成するのが好ましい。」
と記載されているように、電極の薄い方の膜厚については損失の極小点が現れる厚さで決定され、電極の厚い方の膜厚についてはパターニングの困難性等の理由から決定されるものであることが開示されている。

してみると、規格化膜厚が「7?15%」の範囲とする引用発明において、パターンニングを容易にするために上限の範囲を11%までとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

よって、引用発明において、規格化膜厚を「7?11%」の範囲とすることは、当業者が適宜容易になし得たものである。


(2)相違点2について
本願発明の「体積抵抗率」について、本願明細書の段落【0012】には、
「Feを上記添加物として使用する場合にはその添加物の添加率を、1.24wt%以下とすることが望ましい。この場合、3.6×10^(10)Ω・cm以上の体積抵抗率を有する圧電基板が得られる。Feの添加率が1.24wt%を超えると圧電基板の体積抵抗率が低減しすぎることで、基板に電気が流れやすくなり、IDT12の電極指同士が短絡し、電気特性が劣化する。」
と記載され、また、段落【0020】には、
「Feの添加量を調整することによって上記LT基板11の体積抵抗率が3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cmの範囲内になるようにすることが望ましい。体積抵抗率を1.5×10^(14)Ω・cm以下とすることによりLT基板11への電荷の蓄積を防ぎ、放電によって電極12がダメージを受けたり静電破壊が生じることを防止する一方、体積抵抗率を3.6×10^(10)Ω・cm以上とすることによりIDT12の電極指同士が短絡することを防ぐためである。」
と記載されているものの、本願明細書及び図面には、「体積抵抗率」が3.6×10^(10)Ω・cmより大きくした場合、該値より小さい場合に比べて短絡がどの程度防げるのか、また、「体積抵抗率」が1.5×10^(14)Ω・cmより小さくした場合、該値より大きい場合に比べて静電破壊がどの程度防げるのかは記載されていない。

また、平成21年12月28日付け審判請求書の【請求の理由】3.B.には、体積抵抗率を3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cmに限定した点について、
「体積抵抗率を1.5×10^(14)Ω・cm以下とすることによってLT基板への電荷の蓄積を防ぎ、放電によってIDTがダメージを受けたり静電破壊が生じることを防止すると共に、体積抵抗率を3.6×10^(10)Ω・cm以上とすることによりIDTの電極指同士が短絡することを防ぐために過ぎず、当該範囲に体積抵抗率を設定することによって格別な電気特性(共振・反共振特性)を実現しようとするものではない。」
と記載されている。

一方、原査定の拒絶理由に引用された特開2004-254114号公報には、弾性表面波フィルタを構成するタンタル酸リチウム基板に鉄を添加物として含ませることで、焦電性による表面電荷を自己中和し除去させることが段落【0018】に記載されている。
そして、圧電基板の表面の抵抗値について、焦電効果による帯電を防止するために圧電基板の抵抗率を1.0×10^(10)?1.0×10^(12)Ω・cm程度の範囲とすることは、特開2005-20423号公報の段落【0030】、特開2004-356951号公報の段落【0012】に記載されているように周知技術である。さらに、圧電基板上に形成された保護膜の抵抗値について、抵抗値の上限が圧電基板に帯電した電荷をどの程度中和されるかを決定するものであり、抵抗値の下限が電極指間のショートをどの程度防止するかを決定するものであることも、特開平10-303681号公報の段落【0012】及び特開平11-136081号公報の段落【0035】に記載されているように周知技術である。

してみると、焦電性を有することが明らかである引用発明のLiTaO_(3)単結晶基板に対して、静電破壊を防止するために鉄を添加物として含ませることは、当業者が適宜なし得たものにすぎず、鉄を添加物として含ませた場合の圧電基板の体積抵抗率を、焦電性による電荷の中和作用を有し、かつ、電極指間のショートを防止できる「3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cm」の範囲とすることは、当業者が適宜設定する設計的事項にすぎない。

よって、引用発明の単結晶圧電基板を、「添加物として鉄を含むことにより3.6×10^(10)?1.5×10^(14)Ω・cmの範囲内の体積抵抗率を有し」ているようなものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。


(3)相違点3について
弾性表面波フィルタの分野では、カット角等の諸要素を特定するために、多種のサンプルを作成して挿入損失やインピーダンス比等の測定を行い、測定結果から当該諸要素を特定することが一般に行われている。

また、引用例には、最良の実験結果となるカット角が42°であることが段落【0029】に記載されているものの、この実験結果は引用例の図7に記載された特定のラダー型弾性表面波フィルタの結果であることが同段落に記載されており、また、フィルタとして実用できるカット角は40?46°の範囲であることが段落【0035】に記載され、さらに、カット角が46°の場合にフィルタを構成することを阻害する要因があることは何ら記載されていない。

してみると、カット角が40?46°の範囲とされた引用発明において、LiTaO_(3)単結晶基板に添加物として鉄を含めた場合に、当該カット角の範囲において作成された複数のカット角のサンプル基板の測定を行い、弾性表面波フィルタとして利用できるカット角として46°を特定することは、当業者が適宜設定する設計的事項にすぎない。

よって、引用発明の単結晶圧電基板について、X軸を中心にY軸からZ軸方向に回転する角度を、「46°±0.3°の範囲」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。


(4)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果も、引用発明、引用例の記載、公知技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。



6.附記
審判請求書の【請求の理由】には、3.A.において、
「ここで、審査において引用された刊行物に基づいて当業者が焦電性を改善した弾性表面波装置を構成することを考えると、上記刊行物3と刊行物1に接した当業者は、これらの刊行物に基づいて焦電性を改善した弾性表面波装置を構成する場合、カット角46°のLT基板を使用することは通常なく、42°または40°?44°のカット角のLT基板を使用するのが自然である。
なぜなら、刊行物3の前記記載(段落0029)から明らかなように、カット角40°?44°、特に42°の基板が最も電気特性に優れるとされ、これらより電気特性が劣るカット角46°のLT基板をあえて使用する必然性がないからである。特に、刊行物3は焦電性改善や添加物の添加とは全く無関係なもので、本願発明の中心的な技術思想である「添加物の有無によって基板の最適なカット角が異なる」という知見、ならびに「添加物を加える場合には添加物を加えない通常のLT基板よりも基板のカット角を高角度にすることが電気特性上有利である」という知見が全く存在しない。このため、LT基板に添加物を加える場合にも、通常の(添加物のない)基板にとって最適なカット角(刊行物3の場合、42°あるいは40°?44°)を採用するのが当業者として当然である。」
と主張している。

しかしながら、上記5.(3)に記載したように、刊行物3とされる引用例において、電気特性が最も優れるとされたカット角の42°は、引用例の図7に記載された特定のラダー型弾性表面波フィルタの構成を前提としたものであり、弾性表面波フィルタの分野では、カット角等の諸要素を特定するために、多種のサンプルを作成して測定を行い、良い結果を示した数値範囲から当該諸要素を特定することが一般に行われていることを鑑みれば、刊行物3とされる引用例に接した当業者は、単純に引用例に記載された42°を採用するわけではなく、適用する使用条件等に基づく測定を実施して適宜カット角を特定するものと認められるので、上記請求人の主張は採用することができない。



7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例の記載、公知技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-19 
結審通知日 2012-03-22 
審決日 2012-04-04 
出願番号 特願2005-211757(P2005-211757)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 行武 哲太郎  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 甲斐 哲雄
飯田 清司
発明の名称 弾性表面波装置  
代理人 増子 尚道  

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