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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1257461
審判番号 不服2010-11159  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-25 
確定日 2012-05-22 
事件の表示 特願2004-503294「二輪車両用のタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月20日国際公開、WO03/95242、平成17年8月25日国内公表、特表2005-525264〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成15年5月9日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成14年5月10日、フランス)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし10に係る発明は、平成21年5月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】周方向と65°と90°との間の角度を形成する補強要素で形成され、基部がリムシートに装着されるようになっているビードに両側で固定されている少なくとも1つのカーカス型補強構造体を備えており、Ht/Wt比が0.15より大きいトレッドと外側に向かって半径方向に合流している側壁部により各ビードが外側に向かって半径方向に延長されており、前記カーカス補強体は、少なくともトレッドの帯域において、周方向補強要素の少なくとも1つの層で形成されたクラウン補強体が半径方向に載置されている二輪付き自動車両用のタイヤにおいて、前記周方向補強要素は、可変のピッチで横方向に分布されており、前記ピッチは、トレッドの中央(クラウン)のところで前記層の縁部のところより小さく、横方向におけるピッチの値は、前記層の軸方向幅の少なくとも一部にわたって、式U(n)=U_(0)+nrの算術数列に従い、この式において、U_(0)は0.4mmと2.5mmとの間であり、rは数列の連続項の差であり、この差は0.001と0.1との間であるか、或いは、式U(n)=U_(0)xr^(n)の等比数列に従い、この式において、U_(0)は0.4mmと2.5mmとの間であり、rは数列の連続項の差であり、この差は1.001と1.025との間であることを特徴とする二輪付き自動車両用のタイヤ。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日(以下、「優先日」という。)前に頒布された刊行物である実願昭61-41954号(実開昭62-153102号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
a「カーカスはタイヤ周方向に対し90?60°の角度を有し、ベルト層はタイヤ周方向に対し実質上平行に配置されたコードよりなるラジアル又はセミラジアル二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層の幅はトレッド幅と実質上同等の幅を有し、ベルト層の繊維のタイヤトレッド中央区域の打込み数が、両側区域の打込み数よりも大きく、ベルト層の打込み数がタイヤ中央区域から両側域にかけて暫減している事を特徴とする二輪車用空気入り、ラジアル又はセミラジアルタイヤ。」(実用新案登録請求の範囲)
b「従来の自動二輪車用ラジアルタイヤの欠点を改良する為、種々の検討を重ねた結果、周方向ベルトの剛性をタイヤ中央域と両側域で変化させることにより中央域の剛性を高く、両側域を低くさせ、直進時の走行安定性と旋回時の操安性を同時に向上させるベルト構造を見い出した。……二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層の幅はトレッド幅と実質上同等の幅を有し、ベルト層の繊維のタイヤトレッド中央区域の打込み数が、両側区域の打込み数よりも大きく、ベルト層の打込み数がタイヤ中央区域から両側域にかけて暫減している事により問題点を解決した。」(明細書3頁15行ないし4頁10行)
c「周方向ベルトの剛性はトレッド中央域から両側域にかけて暫時減少していくようにすることがより好ましい。」(同5頁2行ないし4行)
d「(考案の効果)前記従来タイヤと本考案のタイヤにつき、直進時の安定性と旋回時の安定性を実車テストにより評価実施した。……本考案のタイヤはショルダー部の打込みが減った分だけ接地面積が大きくなり、結果としてキャンバースラストが10%向上し、実車テストでの旋回時の安定性が著しく向上した。……センター部の打込み数が増し、高速時にせり出しが小さくなった事により高速耐久性能が1?2ステップ向上した。」(同5頁下から2行ないし6頁14行)
以上の記載並びに第1図及び第2図によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「カーカスはタイヤ周方向に対し90?60°の角度を有し、カーカスに載置された周方向ベルト層はタイヤ周方向に対し実質上平行に配置されたコードよりなるラジアル又はセミラジアル二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、周方向ベルト層の幅はトレッド幅と実質上同等の幅を有し、周方向ベルト層の繊維のタイヤトレッド中央区域の打込み数が、両側区域の打込み数よりも大きく、ベルト層の打込み数がタイヤトレッド中央区域から両側区域にかけて暫減している二輪車用空気入り、ラジアル又はセミラジアルタイヤ。」

3 対比
本願発明1と引用例記載の発明とを対比する。
引用例記載の発明の「カーカス」、「周方向ベルト層」及び「周方向ベルト層の繊維」が、それぞれ本願発明1の「カーカス補強体」、「クラウン補強体」及び「周方向補強要素」に相当することは、当業者にとって明らかである。
引用例には、カーカスについて詳細に記載されていないが、第1図にも示されているように、カーカスの基部がリムシートに装着されるようになっているビードに両側で固定されていることは、技術常識であり、また、引用例記載の発明の「カーカスはタイヤ周方向に対し90?60°の角度を有し」は、カーカスを形成する補強要素がタイヤ周方向に対し90?60°の角度をなしていることを意味することも、当業者にとって明らかである。
さらに、引用例記載の発明において、周方向ベルト層の幅はトレッド幅と実質上同等の幅を有していることから、周方向ベルト層は、トレッドの帯域において、カーカスに半径方向に載置されているといえる。
そして、引用例記載の発明における「周方向ベルト層の繊維のタイヤトレッド中央区域の打込み数が、両側区域の打込み数よりも大きく、ベルト層の打込み数がタイヤトレッド中央区域から両側区域にかけて暫減(「漸減」の誤記と認められる。)している」は、打込まれた繊維の間隔が、タイヤトレッド中央区域では両側区域より小さく、両側区域すなわち周方向ベルト層の横方向(軸方向)の縁部に向かって次第に順を追って大きくなっていることを意味していると解され、上記「打込まれた繊維の間隔」は、本願発明1の「横方向におけるピッチ」に相当するといえる。
そうすると、本願発明1と引用例記載の発明とは、
「周方向と65°と90°との間の角度を形成する補強要素で形成され、基部がリムシートに装着されるようになっているビードに両側で固定されている少なくとも1つのカーカス型補強構造体を備えており、トレッドと外側に向かって半径方向に合流している側壁部により各ビードが外側に向かって半径方向に延長されており、前記カーカス補強体は、少なくともトレッドの帯域において、周方向補強要素の少なくとも1つの層で形成されたクラウン補強体が半径方向に載置されている二輪付き自動車両用のタイヤにおいて、前記周方向補強要素は、可変のピッチで横方向に分布されており、前記ピッチは、トレッドの中央(クラウン)のところで前記層の縁部のところより小さい二輪付き自動車両用のタイヤ」
である点で一致し、次の点で相違する。
《相違点1》
本願発明1では、トレッドのHt/Wt比が0.15より大きいのに対して、引用例記載の発明では、トレッドのHt/Wt比が特定されていない点。
《相違点2》
本願発明1では、周方向補強要素の横方向におけるピッチの値は、前記層の軸方向幅の少なくとも一部にわたって、式U(n)=U_(0)+nrの算術数列に従い、この式において、U_(0)は0.4mmと2.5mmとの間であり、rは数列の連続項の差であり、この差は0.001と0.1との間であるか、或いは、式U(n)=U_(0)xr^(n)の等比数列に従い、この式において、U_(0)は0.4mmと2.5mmとの間であり、rは数列の連続項の差であり、この差は1.001と1.025との間であるのに対して、引用例記載の発明では、周方向補強要素の横方向におけるピッチの値は、前記層の横方向の縁部に向かって次第に順を追って大きくなっている点。

4 相違点の検討
そこで、上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
引用例記載の発明では、トレッドのHt/Wt比が特定されていないが、二輪付き自動車両用のタイヤにおいて、トレッドのHt/Wtを0.15より大きくすることは、本願の優先日前に周知の技術的事項であるから、引用例記載の発明において、トレッドのHt/Wt比を本願発明1のように特定することは、当業者が適宜なし得たことである。

《相違点2について》
引用例記載の発明では、周方向補強要素の横方向におけるピッチの値は、周方向補強要素の層の横方向の縁部に向かって次第に順を追って大きくなっている。
「次第に順を追って大きくなっている」構成としては、「直前のものより一定数大きくなっている」構成や、「直前のものより一定割合大きくなっている」構成が、最も普通に想定される構成であるところ、「直前のものより一定数大きくなっている」構成は、算術数列(等差数列)に従うものであり、「直前のものより一定割合大きくなっている」構成は、等比数列に従うものであることが明らかである。
そうすると、引用例記載の発明において、「次第に順を追って大きくなっている」周方向補強要素の横方向におけるピッチの値として、算術数列(等差数列)又は等比数列に従う構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そしてその際に、初項(U_(0))や公差(r)又は公比(r)をどの程度とするかは、求められるクラウン補強体の強度等に応じて当業者が適宜決め得た設計的事項にすぎない。
しかも、本願発明1において特定されている算術数列又は等比数列に従って、周方向補強要素の横方向におけるピッチの値を大きくなるようにしたことにより奏される効果を検討しても、「周方向補強要素間のピッチの変化の結果…横方向における周方向補強要素の密度が変化し、従って、横方向における周方向剛性が変化する。」(段落【0013】)、「算術数列または等比数列によるピッチの変化は、特に、直線位置とコーナリング時の位置、すなわち、キャンバーにあるときの位置との間の漸進性の向上をもたらす」(段落【0015】)というものであって、引用例記載の発明が奏する効果(上記記載c、d参照。)と比較して格別顕著なものとはいえない。
そうしてみると、引用例記載の発明において、周方向補強要素の横方向におけるピッチの値を、算術数列又は等比数列に従って大きくなるようにして相違点2に係る本願発明1の事項とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

そして、全体として本願発明1が奏する効果も、引用例記載の発明及び周知の技術的事項から当業者が予測できたものであり、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用例記載の発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-16 
結審通知日 2011-12-19 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2004-503294(P2004-503294)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 亀田 貴志
熊倉 強
発明の名称 二輪車両用のタイヤ  
代理人 井野 砂里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 大塚 文昭  
代理人 井野 砂里  

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