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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1257474
審判番号 不服2011-36  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-04 
確定日 2012-05-21 
事件の表示 特願2001-506379「ピストンポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月 4日国際公開,WO01/00990,平成15年 1月28日国内公表,特表2003-503630〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,2000年5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年6月24日,独国)を国際出願日とする出願であって,平成22年8月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。



2.本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。


[理由]

(1)補正後の本願の発明

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,

「ピストンポンプであって,ポンプ孔を有するポンプケーシング(14)と,該ポンプケーシング(14)に設けられたポンプ孔(12)内に挿入されたブシュ(26)とを有しており,該ブシュ(26)内ではピストン(16)が,軸方向で往復行程運動を行うように軸方向で摺動可能に駆動可能であり,ピストンポンプ(10)が閉鎖部分(68)を有していて,該閉鎖部分(68)は,ポンプ孔(12)をブシュ(26)の,該閉鎖部分(68)に面した端面側に形成されたブシュ底部(64)側で圧力密に閉鎖するようにポンプ孔(12)に装着されており,ピストンポンプ(10)が流出通路(94)と,ピストンポンプ(10)に組み込まれた絞り(100)とを有している形式のものにおいて,
前記流出通路(94)が,閉鎖部分(68)又はブシュ(26)に設けられた1つの溝によって形成されていて,該溝が,閉鎖部分(68)の,ブシュ底部(64)に接する面(92)又はブシュ(64)の,閉鎖部分(68)に接する面(90)に設けられており,
閉鎖部分(68)の外周へと通じている流出通路(94)が,ピストンポンプ(10)の絞り(100)を形成する減径個所を有していることを特徴とするピストンポンプ。」

と補正された。

上記補正は,実質的に,補正前の請求項1を削除し,補正前の請求項1を引用する請求項2を新たに請求項1とした補正であり,かつ,補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「溝」という事項について「1つの」という限定を付加し,さらに,補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「流出通路」という事項について「閉鎖部分の外周へと通じている」という限定を付加する補正であるので,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除及び同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(2)引用例

(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された,独国特許出願公開第19732791号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。なお,和訳は,引用例1に係る特表2001-501279号公報による。また,ドイツ語のウムラウトは,後に「e」を付けることにより表記し(例えば,aウムラウトは,「ae」と表記する。),エスツェットは,「ss」と表記する。

・「Die Erfindung betrifft eine Kolbenpumpe nach der Galtung des Hauptanspruchs, die insbesondere fuer eine Fahrzeugbremsanlage vorgeschen ist.」(2頁左欄3行?5行)
(和訳:本発明は,特に自動車ブレーキ装置のための,独立請求項の上位概念によるピストンポンプに関する。(4頁4行?5行))

・「Die erfindungsgemaesse, insgesamt mit 10 bezeichnete, in Fig. 1 dargestellte, bevorzugt ausgewaehlte Kolbenpumpe ist in eine gestufte Zylinderbohrung 12 eingesetzt, welche in einem Hydraulikblock angebracht ist, der ein Pumpengehaeuse 14 bildet. Der Hydraulikblock, von dem in der Zeichnung nur ein die Kolbenpumpe 10 umgebendes Bruchstuck dargestellt ist, ist Bestandteil einer schlupfgeregelten, im uebrigen nicht dargestellten, hydraulischen Fahrzeugbremsanlage. In ihn sind ausser der Kolbenpumpe 10 weitere hydraulische Bauteile wie Magnetventile oder Druckspeicher eingesetzt und hydraulisch miteinander und mit der erfindungsgemaessen Kolbenpumpe 10 verschaltet.
Die Kolbenpumpe 10 weist einen Kolben 16 auf, dessen eines, einem Verdraengungsraum 18 abgewandtes Ende mit einem Fuehrungsring 20 im Pumpengehaeuse 14 gefuehrt und mit einem Dichtring 22 abgedichtet ist. Ein anderes, dem Verdraengungsraum 18 zugewandtes Ende des Kolbens 16 ist mit einem Fuehrungsring 24 in einer Laufbuchse 26 der Kolbenpumpe 10 gefuehrt und mit einem Dichtring 28 abgedichtet. Die Laufbuchse 26 ist mit einer Presspassung in die Zylinderbohrung 12 des Pumpengehaeuses 14 eingesetzt. Die Presspassung bewirkt eine Abdichtung zwischen Ein- und Auslassseite, d. h. zwischen Nieder- und Hochdruckseite der Kolbenpumpe 10.」(3頁左欄40行?63行)
(和訳:本発明による,全体を10で表した,図1に示した,有利に選ばれたピストンポンプは,段を付けられたシリンダ孔12内に挿入されており,このシリンダ孔は,ポンプケーシング14を形成する液力ブロック内に形成されている。液力ブロックは,図面においては単にピストンポンプ10を取り囲んでいるほんの一部分だけが示されているが,この液力ブロックは,スリップ制御される,そのほかは示されていない液力式の自動車ブレーキ装置の構成部分である。この液力ブロック内では,ピストンポンプ10のほかに,磁石弁又は圧力貯蔵器のような別の液力構成部分が挿入されていて,互いにかつ本発明によるピストンポンプと液力接続されている。
ピストンポンプ10はピストン16を有しており,このピストンの一方の,押し出し室18とは逆の側の端部は案内リング20によってポンプケーシング14内で案内されており,かつシールリング22によってシールされている。ピストン16の他方の,押し出し室18に向いた端部は,案内リング24によってピストンポンプ10のシリンダブッシュ26内で案内されており,かつシールリング28によってシールされている。シリンダブッシュ26はポンプケーシング14のシリンダ孔12内にかん合せしめられて挿入されている。かん合によってピストンポンプ10の入口側と出口側との間,つまり低圧側と高圧側との間がシールされる。(7頁25行?8頁15行))

・「Auf der Verdraengungsraumseite, unmittelbar stirnseitig an den Laufbuchsenboden 64 angrenzend, ist ein Verschlussteil 68, das die Form eines zylindrischen Stopfens aufweist, in die Zylinderbohrung 12, eingesetzt und durch eine Verstemmung 70 des Pumpengehaeuses 14 in der Zylinderbohrung 12 befestigt und fluiddicht abgedichtet. Das Verschlusselement 68 haelt zugleich die Laufbuchse 26 in der Zylinderbohrung 12.」(3頁右欄40行?47行)
(和訳:押し出し室側において,シリンダブッシュ底64の端面に直接に接して,円柱状のプラグの形を有することができる閉鎖部分68がシリンダ孔12内に挿入されていて,ポンプケーシング14のかしめ部70によってシリンダ孔12内で固定されて液密にシールされている。この閉鎖エレメント68は同時にシリンダブッシュ26をシリンダ孔12内で保持している。(9頁14行?18行))

・「Als Auslass weist die in Fig. 1 dargestellte Kolbenpumpe 10 in einander zugewandten Stirnseiten des Laufbuchsenbodens 64 und des Verschlussteils 68 angebrachte Nuten auf, die vom jeweils anderen Teil, also vom Verschlussteil 68 bzw. vom Laufbuchsenboden 64 zu Auslasskanaelen abgedeckt sind: Die Auslasskanaele gehoeren zu einem zwischen dem Verschlussteil 68 und dem Laufbuchsenboden 64 der Laufbuchse 26 sich erstreckenden Durchstroemkanal, der sich beim bevorzugt ausgewaehlten Ausfuehrungsbeispiel aus mehreren Kanalabschnitten zusammensetzt. Im Laufbuchsenboden 64 ist eine kurze, radial verlaufende Nut 90 angebracht, die vom Ventilsitz 84 des Auslassventils 82 bis ungefaehr in die Mitte zwischen dem Ventilsitz 84 und einem Aussenrand des Laufbuchsenbodens 64 verlaeuft (Fig. 2 bis 4). Ein Nutgrund 92 geht in den Ventilsitz 84 ueber, d. h. die den Auslasskanal bildende Nut 90 hat nur geringen Abstand in axialer Richtung vom Ventilsitz 84. Eine derart dichte Anordnung des Auslaskanals am Ventilsitz 84 verringert eine Gerauschbildung beim Durchstromen des Auslassventils 82. Es ist nur eine einzige Nut 90 im Laufbuchsenboden 64 vorgesehen, wodurch bei durchstroemtem, geoeffnetem Auslassventil 82 ein Schlagen der umstroemten Ventilkugel 86 gegen eine Umfangswand des Sacklochs 80 vermieden wird. Die von der Ausstroemung vom Ventilsitz 84 abgehobene Ventilkugel 86 legt sich auf der Seite der Nut 90 an die Umfangswand des Sacklochs 80 an. Dadurch wird ebenfalls einer Geraeuschbildung entgegengewirkt.
Die den Auslasskanal bildende Nut 90 im Laufbuchsenboden 64 ist flach und breit. Im dargestellten Ausfuehrungsbeispiel hat sie eine Breite von 2,2 mm bei einer Hoehe von 0,5 mm, d. h. einem Abstroemquerschnitt von 1,1 mm^(2). Zum Vergleich: Die Ventilkugel 86 hat einen Durchmesser von 3,5 mm. Das heisst die Nut 90 hat ein Tiefen- zu Breite-Verhaeltnis von etwa 0,23, wobei die Breite der Nut 90 etwa das 0,63-fache des Durchmessers der Ventilkugel 86 betraegt.
Der Ventilsitz 84 ist versenkt im Laufbuchsenboden 64 angebracht. Dies verhindert eine mechanische Beschaedigung des Ventilsitzes 84 vor dem Verbinden der Laufbuchse 26 mit dem Verschlussteil 68 und vermindert somit unerwuenschten Ausschuss der als Schuettgut transportierten Laufbuchse 26 bzw. der gesamten Kolbenpumpe 10.
Im Bereich eines radial aeusseren Endes der Nut 90 im Laufbuchsenboden 64 ist in der dem Laufbuchsenboden 64 zugewandten Stirnseite des Verschlussteils 68 eine konzentrische Ringnut 94 angebracht, von der sternfoermig drei Radialnuten 96 zum Umfaeng des Verschlussteils 68 verlaufen (Fig. 5). Durch die Ringnut 94 und die Radialnuten 96 kommuniziert die Nut 90 im Laufbuchsenboden 64 mit einem Ringkanal 98, in den eine Auslassbohrung 100 des Pumpengehaeuses 14 muendet. Die Ringnut 94 im Verschlussteil 68 stellt sicher, dass die Nut 90 im Laufbuchsenboden 64 unabhaengig von einer Winkelstellung, in der das Verschlussteil 68 an der Laufbuchse 26 angebracht ist, kommuniziert. Dies gestattet eine winkelunabhaengige Befestigung des Verschlussteils 68 an der Laufbuchse 26.」(4頁左欄4行?59行)
(和訳:出口として,図1に示したピストンポンプ10は,シリンダブッシュ底64と閉鎖部分68との互いに向き合った端面に形成された溝を有しており,これらの溝はその都度他方の部分,つまり閉鎖部分68若しくはシリンダブッシュ底64によって覆われて,出口通路にされている。これらの出口通路は,閉鎖部分68とシリンダブッシュ26のシリンダブッシュ底64との間で延びている貫流通路に属しており,この貫流通路は,この有利に選ばれた実施例では複数の通路区分から組み合わされている。シリンダブッシュ底64には,短い半径方向に延びる溝90が形成されており,この溝は,出口弁82の弁座84から弁座84とシリンダブッシュ底64の外縁との間のほぼ中央にまで延びている(図2?4)。溝底92が弁座84に移行しており,換言すれば出口通路を形成している溝90は軸方向で弁座84から単にわずかな間隔しか有していない。出口通路をこのように弁座84と密接させて配置することは,出口弁82の貫流の際の騒音の発生を減少させる。単にただ1つの溝90がシリンダブッシュ底64に形成されており,これによって,出口弁が貫流され開かれている場合に,その回りに沿って液体が流れる弁球86が袋孔80の円周壁に打ち当たることが回避される。液体の流出によって弁座84から持ち上げられる弁球86は溝90の側で袋孔80の円周壁に接触する。これによってやはり騒音発生が抑制される。
シリンダブッシュ底64の,出口通路を形成する溝90は浅く,幅広い。図示の実施例では溝は高さが0.5mmで幅が2.2mmであり,換言すれば流動横断面は1.1mm^(2)である。比較のために:弁球86は3.5mmの直径を有している。換言すれば深さと幅との比はほぼ0.23であり,その際溝90の幅は弁球86の直径のほぼ0.63倍である。
弁座84はシリンダブッシュ底64に沈めて形成されている。このことは,シリンダブッシュ26を閉鎖部分68と結合する前の弁座84の機械的な損傷を防止し,これによってばら部分として搬送されるシリンダブッシュ26若しくはピストンポンプ10全体の不良品の割合を減少させる。
シリンダブッシュ底64の溝90の半径方向で外方の端部の範囲において,閉鎖部分68の,シリンダブッシュ底64に向いた端面に同心的な環状溝94が形成されており,この環状溝から放射状に3つの半径方向溝96が閉鎖部分68の外周に向かって延びている(図5)。環状溝94及び半径方向溝96によって,シリンダブッシュ底64の溝90は環状通路98に連通しており,この環状通路には,ポンプケーシング14の出口孔100が開口している。閉鎖部分68の環状溝94は,閉鎖部分68がシリンダブッシュ26に取り付けられる角度位置に無関係に,シリンダブッシュ底64の溝90が連通することを保証する。このことは,閉鎖部分68を角度に無関係にシリンダブッシュ26に固定することを可能にする。(10頁7行?11頁16行))

・上記各記載及びFig. 1より,シリンダブッシュ26内でピストン16が,軸方向で往復行程運動を行うように軸方向で摺動可能に駆動可能であることが看て取れる。

・上記各記載及びFig. 1より,シリンダブッシュ底64は,シリンダブッシュ26の閉鎖部分68に面した端面側に形成されていることが看て取れる。

・上記各記載及びFig. 1より,溝90,環状溝94及び半径方向溝96は,閉鎖部分68の外周へと通じていることが看て取れる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の事項からなる発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ピストンポンプ10であって,シリンダ孔12を形成したポンプケーシング14と,該ポンプケーシング14に形成されたシリンダ孔12内に挿入されたシリンダブッシュ26とを有しており,該シリンダブッシュ26内ではピストン16が,軸方向で往復行程運動を行うように軸方向で摺動可能に駆動可能であり,ピストンポンプ10が閉鎖部分68を有していて,該閉鎖部分68は,シリンダ孔12をシリンダブッシュ26の,該閉鎖部分68に面した端面側に形成されたシリンダブッシュ底64の端面に直接に接して液密にシールするようにシリンダ孔12に挿入されており,ピストンポンプ10が溝90,環状溝94及び半径方向溝96を有しているものにおいて,
前記溝90,環状溝94及び半径方向溝96が,閉鎖部分68又はシリンダブッシュ26に形成されていて,該各溝が,閉鎖部分68の,シリンダブッシュ底64に向いた端面又はシリンダブッシュ底64の,閉鎖部分68に向いた端面に形成されており,
閉鎖部分68の外周へと通じている溝90,環状溝94及び半径方向溝96を有しているピストンポンプ。」

(2-2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許第5123819号明細書(以下,「引用例2」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。なお,和訳は,引用例2に係る特開平4-219477号公報による。

・「The pressure fluid pumping device 10 shown in FIG. 1 has a reciprocating piston pump 11. The reciprocating piston pump 11 has a pump piston 12 that is guided, longitudinally displaceably, in a pump cylinder 13 having a positive displacement chamber 14. The pump piston 12 is drivable by an eccentric 15 counter to the force of a compression spring 16 disposed in the positive displacement chamber 14. Cooperating with the pump piston 12 is an inlet valve 17 disposed in the positive displacement chamber 14. A longitudinally extending intake conduit 18, which communicates with an inlet conduit 19 for pressure fluid, is located in the pump piston 12.
An outflow bore 22 extends coaxially with the pump cylinder 13, originating at the positive displacement chamber 14, and ends in an annular valve seat 23 of an outlet valve 24. Cooperating with the valve seat 23 as a valve closing body is a ball 25. The ball 25 is received in a hollow space 26 of circular-cylindrical cross section, which extends in the pump cylinder 13 coaxially with the longitudinal pump axis, beginning at the valve seat 23. On the side of the pump cylinder 13 remote from the eccentric 15, the hollow space 26 is continued coaxially in a cylinder head 27 joined to the pump cylinder 13. On the side remote from the valve seat 23, a closing spring 28, which urges the ball 25 toward the valve seat 23, is received in the hollow space 26. From the hollow space 26, an outlet bore 30 that communicates with an outlet conduit 29 for pressure fluid branches laterally downstream of the valve 23.
The pressure fluid pumping device 10 is part of a hydraulic motor vehicle brake system, not shown, having an anti-lock system and/or traction control system.
The mode of operation of the pressure fluid pumping device 10 is essentially as follows:
In the downward stroke of the pump piston 12, the inlet valve 17 opens, and pressure fluid is received in the positive displacement chamber 14 through the inlet conduit 19 and the intake conduit 18. During this intake stroke, the outlet valve 24 is closed. Upon the upward stroke (working stroke) of the pump piston 12, contrarily, the inlet valve 17 is closed, and pressure fluid is expelled from the positive displacement chamber 14 through the outflow bore 22, overcoming the outlet valve 24, through the outlet bore 30 into the outlet conduit 29. In this process the opening characteristic of the outlet valve 24 is influenced by the provisions described below:」(4頁右欄42行?5頁左欄24行)
(和訳:【0015】図1に示した第1実施例による圧力媒体搬送装置10はプランジャポンプ11を有している。プランジャポンプ11はポンププランジャ12を有しており,このポンププランジャは押しのけ室14を備えたポンプシリンダ13内を長手方向摺動可能に案内されている。ポンププランジャ12は偏心体15によって,押しのけ室14に配置された圧縮ばね16のばね力に抗して駆動可能である。ポンププランジャ12は押しのけ室14に配置された入口弁17と協働する。ポンププランジャ12には,長手方向に延びる吸込通路18が設けられており,この吸込通路は圧力媒体のための入口通路19と接続されている。
【0016】押しのけ室14からは,流出孔22がポンプシリンダ13に対して同軸的に延びており,この流出孔は出口弁24に設けられた環状の弁座23で終っている。この弁座23は弁閉鎖体としての球体25と協働する。球体25は円筒状の横断面の中空室26に収容されており,この中空室はポンプ長手方向軸線に対して同軸的に弁座23から出発してポンプシリンダ13に設けられている。中空室26はポンプシリンダ13の前記偏心体15とは反対の側で,このポンプシリンダに接合されたシリンダヘッド27に同軸的にさらに続いて設けられている。中空室26には,弁座23とは反対の側で閉鎖ばね28が収容されており,この閉鎖ばねは球体25を弁座23に向かって負荷している。弁座23の下流側では,圧力媒体のための出口通路29と接続された出口孔30が中空室26から側方に分岐している。
【0017】圧力媒体搬送装置10とは,スキッドコントロールシステムおよび/またはトラクションコントロールシステムを備えたハイドロリック式の自動車ブレーキ装置(図示しない)の一部である。
【0018】この圧力媒体搬送装置10は主として次のような作用形式を有している。
【0019】ポンププランジャ12の下方行程時に入口弁17が開いて,圧力媒体が入口通路19と吸込通路18とを通って押しのけ室14に収容される。この吸込行程の間,出口弁24は閉鎖されている。それに対してポンププランジャ12の上方行程(作業行程)時では,入口弁17が閉鎖されていて,圧力媒体は押しのけ室14から流出孔22を通って,出口弁24を通過してから出口孔30を通って出口通路29に押し出される。この場合に出口弁24の開放特性は以下に説明する手段によって影響を与えられる。)

・「Because of the asymmetrical disposition of the opening 37 of the single outlet bore 30, with respect to the longitudinal pump axis, the ball 25 executes an opening motion in the working stroke of the pump piston 12, in the course of which the ball, beginning in the region of the outlet bore 30, lifts up from the valve seat 23 and forms an opening gap 39 that is not uniform with respect to the valve seat circumference, but remains supported on the region of the valve seat 23 remote from the opening 37 of the outlet bore 30. The ball 25 assumes an opening position shown in dot-dash lines in this process. Since the outlet bore 30 forms a throttle restriction for the pressure fluid, the crosssectional area of this bore being matched to the smallest radial width of the gap 35 and/or to the pressure fluid holding volume of the hollow space 26, the tilting motion of the ball 25 into its opening position is damped. The motion damping is especially effective if the gap 35 and/or the pressure fluid holding volume of the hollow space 26 is very small. A very narrow gap 35 and/or a very small pressure fluid holding volume allow a large cross section of the outlet bore 30. Conversely, the reduced damping action of a wider gap 35 and/or of a hollow space 26 having a larger pressure fluid holding volume, can be compensated for by an outlet bore 30 of smaller cross section. The motion damping of the ball 25 in the opening process has the result that the flow of pressure fluid through the outlet bore 30 increases relatively slowly, resulting in a slowed force variation speed in the drive train of the reciprocating piston pump 11. Structure-borne sound thus occurs to a reduced extent.」(5頁左欄67行?右欄29行)
(和訳:【0022】唯一つの出口孔30の開口37がポンプ長手方向軸線に対して非対称的に配置されていることに基づき,ポンププランジャ12の作業行程時に球体25は次のような開放運動を実施する。すなわち,この開放運動時に前記球体は出口孔30の範囲から出発して弁座23から持ち上がって,弁座円周に関して不均一な開放ギャップ39を形成するが,しかし前記球体は出口孔30の開口37とは反対の側の弁座23の範囲には支持されたままとなる。この場合に球体25は一点鎖線で示した開放位置をとる。出口孔30が圧力媒体のための絞り部を形成して,この絞り部の横断面積がギャップ35の半径方向の最小幅かつ/または中空室26の圧力媒体収容容積に適合されているので,開放位置への球体25の旋回運動は減衰される。このような運動減衰は,ギャップ35および/または中空室26の圧力媒体収容容積が極めて小さく形成されていると特に有効となる。極めて小幅のギャップ35および/または小さな圧力媒体収容容積は出口孔30の大きな横断面積を許す。逆に,広幅のギャップ35および/または比較的大きな圧力媒体収容容積を有する中空室26の減少した減衰作用は小さな横断面積の出口孔30によって補償され得る。開放過程における球体25の運動減衰に基づき,出口孔30を通る圧力媒体流は比較的ゆっくりと増大するようになり,このことはプランジャポンプ11のパワートレーンに減速された力変化速度を生ぜしめる結果となる。したがって,固体伝搬音発生は極めて僅かしか生じない。)

(2-3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許第5609182号明細書(以下,「引用例3」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。なお,和訳は,引用例3に係る特表平8-503759号公報による。

・「The present invention relates to valves and more particularly relates to valves for radial piston pumps.」(4頁左欄3行?4行)
(和訳:本発明は構成部品点数が少なく,特にラジアルピストンポンプ用の圧力弁として開発された構成の簡単なポンプに関する。(4頁4行?5行))

・「FIG. 1 shows a section of a housing 1 which can be the housing of a high-pressure radial piston pump, as shown e.g. in DE-OS 40 27 794.
The housing is provided with a stepped bore presenting a first section 3, a second section 4 and a third section 5. Further bore sections can follow, which e.g. accommodate the piston of the radial piston pump. The stepped bore 2 accommodates a valve seat 6 which is of integral design with annular valve projection 7. A valve member 8 is pressed against the valve seat 6 by means of a spring 9 bearing against a cover 10 at the opposite end. The interior of the valve member 6 and the cover 10 delimit a valve chamber 11 which is connected with a housing outlet 13 by a passage 12 and the interior of the second bore section 2. The pressure fluid delivered by the pump and being under pressure can be drawn from housing outlet 13.」(4頁右欄35行?50行)
(和訳:第1図はハウジング1の一部を示し,例えば,DE-OS 40 27 794号に開示された高圧ラジアルピストンポンプとなり得るハウジングの断面を示す。上記ハウジングは,第1のセクション3,第2のセクション4及び第3のセクション5を形成する段付きボアが設けられている。さらにボア部は以下の通りであり,例えばラジアルピストンポンプのピストンを収容する。上記段付きボア2は,環状の弁突出部7が一体に形成された弁座6を収容する。弁部材8は,その反対側端部がカバー10に支持されているスプリング9によって弁座6に押付けられている。弁部材6とカバー10の内側部は弁チャンバ11を区画形成し,該チャンバは通路12及び第2のボアセクション2の内側部によってハウジング出口13と接続する。圧力流体はポンプによって輸送され,圧力下においてはハウジング出口13から流出する。(6頁16行?26行))

・「While in the embodiments according to FIGS. 1 and 2, four components are sufficient for the valve, i.e. valve seat 6, valve member 8, spring 9 and cover 10, the embodiment according to FIG. 3 allows omitting a further component. For this reason the valve seat 6 and the cover 10 according to FIG. 2 are, contrary to FIG. 2, designed integrally in order to form a cover element 22, in which the valve seat is inserted. The cover member is inserted in the housing 1 by means of cold extrusion, Just like the unit consisting of valve seat 6 and annular projection 7 according to FIG. 1. Instead of a separate cover, as in FIG. 1 against which the spring 9 abuts, in the embodiment according to FIG. 3 the cover is formed in one piece with the annular projection and the valve member. The surface of the second bore section 4 of the stepped bore 2 serves as an abutment for spring 9. This means that the position of the valve seat compared with the embodiments according to FIGS. 1 and 2, is rotated by 90.degree. so that the valve chamber 11 now extends in radial direction.
According to the construction of the grooves 18, 19 in FIG. 3, the material of the cover member must be harder than that of housing 1. One could imagine, however, also the opposite constellation, i.e. the grooves are executed in appropriate shoulders, e.g. at the points 23, 24 of housing 1, and the softer material of the cover member 22 runs into the grooves of the housing.
In order to ensure that the mounting position of valve body 22 in the housing 1 is independent from the rotating angle, the valve member 22 is equipped with a circumferential groove 23 into which the valve chamber 11, formed as a radial bore, ends. The circumferential groove 23 is connected with the housing outlet 13. By means of appropriate channels the valve chamber 11 is connected with the interior of housing 1, e.g. a fourth section 25 of the stepped bore 2.
FIG. 4 shows a modification of the design according to FIG. 3, where only the differences of the embodiment according to FIG. 4 relative to the embodiment of FIG. 3 are described. The fundamental difference is that in addition a second stepped bore 26 and a third stepped bore 27 which are arranged at an angle to each other and intersect. The second bore section 28 of the second stepped bore 27 provides space for the accommodation of a filter, while the second bore section 29 of the second stepped bore 27 serves as restrictor for the noise damping. This way the chamber formed by the second bore section 28 in connection with the valve chamber 11 is involved in the silencing in connection with the restrictor-type second bore section 29. The accumulating effect of the first bore section 30 of the third stepped bore 27 in connection with the chamber created by the circumferential groove 23 contributes thus to a noise reduction.
In order that the pressure fluid flows from the valve chamber 11 across the second and third stepped bore 26, 27 and the circumferential groove to the housing outlet which is not indicated in the drawing, a sealed plug 30 is foreseen which seals the valve chamber 11 in radial direction and on which the spring 9 abuts.」(5頁右欄21行?6頁左欄10行)
(和訳:第1図及び第2図による実施例においては,弁装置として,4つの構成部材,即ち弁座6,弁部材8,スプリング9及びカバー10で十分であるが,一方,第3図による実施例においては,さらに構成部材を省略することが可能である。そのために,第2図における弁座6及びカバー10はカバー部材22を形成するために一体になっており,そこに弁座が挿入されている。上記カバー部材は,第1図における弁座6と環状突出部7からなるユニットのごとく,ハウジング1内に冷間押出によって挿入される。第1図においてスプリングが当接するカバーの代わりに,第3図の実施例においてはカバーが環状突出部と弁部材とが1つの部材で形成されている。段付きボア2の第2ボアセクション面が,スプリング9の当接部となる。これは第1図及び第2図の実施例に対応する弁座位置が90゜回動し,弁チャンバ11は径方向に延出形成されている。
第3図における溝18,19の構造によれば,カバー部材の材料は,ハウジング1の材料よりも硬くなければならない。しかしながら又その逆も想定可能であり,即ち各溝が適切なショルダー,例えばハウジング1の23,24のポイントに設けられ,カバー部材22のより柔らかい材料がハウジングの溝内に入り込む。
ハウジング1における弁体22の取付け位置は,その回転角度から独立することを確保するために,弁部材22は円周方向の溝23が設けられており,その溝内に,径方向ボアとして形成されている弁チャンバ11の端部が,位置している。上記円周方向の溝23はハウジングの出口13に接続している。適切な通路手段によって,弁チャンバ11はハウジング1の内部,例えば段付きボア2の第4のセクション25に接続される。
第4図は第3図の構造の変形例であり,第3図の実施例に対する第4図により実施例の相違のみが示されている。その基本的な相違は,第2の段付きボア26と第3の段付きボア27が付加されていることであり,これらは互いに交差する角度をもって配置されている。第2の段付きボア26の第2のボアセクション28はフィルタを収容する空間を備えると共に,第3の段付きボア27第3のボアセクション29は騒音を減衰させるためのリストリクターとして機能する。これによって,弁チャンバ11に接続する第2のボアセクション28により形成されるチャンバ全体は,上記リストリクター型の第3ボアセクション29との関係において消音効果を奏する。円周方向の溝23によって形成されるチャンバと関連して,第3段付きボア27の第1ボアセクションにおける蓄圧効果は騒音の減衰に寄与する。
圧力流体が弁チャンバ11から第2及び第3の段付きボア26及び27を横切り円周方向の溝を介して,図示されていないハウジング出口に流すために,プラグ30がもうけられており,該プラグは弁チャンバ11を径方向にシールすると共スプリング9を支持している。(9頁8行?10頁17行))


(3)対比
本件補正発明と引用発明とを比較すると,その機能・作用からみて,後者における「シリンダ孔12」は前者の「ポンプ孔」に相当し,以下同様に,「形成した」という態様は「有する」という態様に,「形成された」という態様は「設けられた」という態様に,「シリンダブッシュ26」は「ブシュ」に,それぞれ相当する。
また,後者における「シリンダブッシュ底64」は前者の「ブシュ底部」に,後者における「液密にシールするように」という態様は前者の「圧力密に閉鎖するように」という態様に,それぞれ相当し,よって,後者における「シリンダブッシュ底64の端面に直接に接して液密にシールするように」という態様は,前者の「ブシュ底部側で圧力密に閉鎖するように」という態様に相当する。
さらに,後者における「挿入されており」という態様は前者の「装着されており」という態様に,後者における「有しているものにおいて」という態様は前者の「有している形式のものにおいて」という態様に,それぞれ相当する。
そして,後者における「溝90,環状溝94及び半径方向溝96」と前者の「流出通路」とは,「流出する通路」という概念で共通し,同様に,後者における「溝90,環状溝94及び半径方向溝96が,閉鎖部分68又はシリンダブッシュ26に形成されていて」という態様と前者の「流出通路(94)が,閉鎖部分(68)又はブシュ(26)に設けられた1つの溝によって形成されていて」という態様は,「流出する通路が,閉鎖部分又はブシュに設けられた溝によって形成されていて」という概念で共通し,さらに,後者における「閉鎖部分68の,シリンダブッシュ底64に向いた端面」は前者の「閉鎖部分の,ブシュ底部に接する面」に相当し,以下同様に,「シリンダブッシュ底64の,閉鎖部分68に向いた端面」は「ブシュの,閉鎖部分に接する面」に,「形成されており」という態様は「設けられており」という態様に,それぞれ相当する。


したがって,本件補正発明と引用発明とは,

「ピストンポンプであって,ポンプ孔を有するポンプケーシングと,該ポンプケーシングに設けられたポンプ孔内に挿入されたブシュとを有しており,該ブシュ内ではピストンが,軸方向で往復行程運動を行うように軸方向で摺動可能に駆動可能であり,ピストンポンプが閉鎖部分を有していて,該閉鎖部分は,ポンプ孔をブシュの,該閉鎖部分に面した端面側に形成されたブシュ底部側で圧力密に閉鎖するようにポンプ孔に装着されており,ピストンポンプが流出する通路を有している形式のものにおいて,
前記流出する通路が,閉鎖部分又はブシュに設けられた溝によって形成されていて,該溝が,閉鎖部分の,ブシュ底部に接する面又はブシュの,閉鎖部分に接する面に設けられており,
閉鎖部分の外周へと通じている流出する通路を有しているピストンポンプ。」

の点で一致し,以下の点で相違している。


[相違点1]
本件補正発明は,「ピストンポンプに組み込まれた絞り」を有しており,当該「絞り」が減径個所として流出通路に形成されているのに対し,引用発明はそのような絞りを有していない点。

[相違点2]
流出する通路に関し,本件補正発明は,1つの溝によって形成されているのに対し,引用発明は複数の溝によって形成されている点。


(4)判断

上記相違点について,以下に検討する。

・相違点1について
上記引用例2及び引用例3に記載されたとおり,ピストンポンプにおいて,騒音の発生を減少させるために,流出通路(引用例2における「the outlet conduit 29」(出口通路29),引用例3における「the second and third stepped bore 26,27」(第2及び第3の段付きボア26及び27)が,それぞれ相当する。)に減径個所として絞り(引用例2における「the outlet bore 30」(出口孔30),引用例3における「the second bore section 29」(第3のボアセクション29)が,それぞれ相当する。)を設け,ピストンポンプに絞りを組み込むことは,周知技術である。
そして,引用発明も騒音の発生を減少させるという課題が示唆されているので,上記周知技術を適用することは,当業者が容易に想到し得ることである。

よって,引用発明において,上記周知技術を適用して,上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。


・相違点2について
本件補正発明において,流出通路を1つの溝によって形成したことによる技術的意義は,本願の明細書等に記載も示唆もされていない。
そして,引用例1には,溝を複数とすることの技術的意義は何等記載されておらず,引用発明において,当業者にとって極めて自明な課題である加工の容易性等を考慮して,溝を1つとすることは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であり,それにより格別な効果を奏するものでもない。

よって,引用発明において,上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得ることである。


そして,本件補正発明の全体構成によって奏される効果も,引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。


したがって,本件補正発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(5)むすび

以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



3.本願の発明について

本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年7月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載によれば,以下のとおりのものと認められる。

「ピストンポンプであって,ポンプ孔を有するポンプケーシング(14)と,該ポンプケーシング(14)に設けられたポンプ孔(12)内に挿入されたブシュ(26)とを有しており,該ブシュ(26)内ではピストン(16)が,軸方向で往復行程運動を行うように軸方向で摺動可能に駆動可能であり,ピストンポンプ(10)が閉鎖部分(68)を有していて,該閉鎖部分(68)は,ポンプ孔(12)をブシュ(26)の端面側で圧力密に閉鎖するようにポンプ孔(12)に装着されており,ピストンポンプ(10)が流出通路(94)と,ピストンポンプ(10)に組み込まれた絞り(100)とを有しており,前記流出通路(94)が,閉鎖部分(68)及び/又はブシュ(26)に設けられた溝によって形成されている形式のものにおいて,
流出通路(94)が,ピストンポンプ(10)の絞り(100)を形成する減径個所を
有していることを特徴とするピストンポンプ。」


(1)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。


(2)対比・判断

本願発明は,前記「2.(1)」で検討した本件補正発明から「ブシュ底部」という技術的特徴を省き,かつ,「溝」について「1つの」及び「閉鎖部分の,ブシュ底部に接する面又はブシュの,閉鎖部分に接する面に設けられており」という限定を省き,さらに「流出通路」について「閉鎖部分の外周へと通じている」という限定を省いたものである。
これは,前記「2.(3)」で記載した各相違点の内,相違点2に係る本件補正発明の構成が省かれたものであり,前記相違点2は,本願発明においては相違点とならない。
そうすると,本願発明と引用発明とは,前記「2.(3)」に記載した相違点1の点でのみ相違する。そして,前記相違点1についての判断は,前記「2.(4)」に記載したとおりであり,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得ることである。
したがって,本願発明も同様の理由により,引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび

以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-19 
結審通知日 2011-12-22 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2001-506379(P2001-506379)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
P 1 8・ 575- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明吉田 昌弘田合 弘幸  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 倉橋 紀夫
田村 嘉章
発明の名称 ピストンポンプ  
代理人 星 公弘  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 高橋 佳大  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
代理人 篠 良一  

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