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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16J |
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管理番号 | 1257502 |
審判番号 | 不服2011-10850 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-05-24 |
確定日 | 2012-05-23 |
事件の表示 | 特願2001-51362号「三面合わせ部用ガスケット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月11日出願公開、特開2002-257241号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成13年2月27日の出願であって、平成23年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に明細書についての手続補正がなされたものである。 II.平成23年5月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年5月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「第1部材,該第1部材に固体状ガスケットを介在して対向した第2部材,及び前記第1部材と前記第2部材との端面に対向した第3部材の突き合わせによって構成される三面合わせ部を備えたエンジン用構造品に適用される三面合わせ部用ガスケットにおいて, 前記エンジン用構造品から成る前記三面合わせ部に充填された液状ガスケットは,前記三面合わせ部に位置する前記固体状ガスケットの端縁部に塗布された接着剤を介して前記固体状ガスケットに接着されており,前記接着剤は,前記エンジン用構造品に前記固体状ガスケットを組み付けるのに先立って前記固体状ガスケットの露出した前記端縁部に予め塗布されていることを特徴とする三面合わせ部用ガスケット。」(なお、下線部は補正箇所を示す。) 上記補正は、新規事項を追加するものではなく、補正前の請求項1(平成22年7月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載された発明を特定するために必要な事項である「三面合わせ部を備えた構造品」について、「構造品」を「エンジン用構造品」と限定し、また「接着剤」が「塗布され」る「前記固体状ガスケットの前記端縁部」について、「前記端縁部」を「露出した前記端縁部」と限定したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.刊行物の記載事項 (1)特開2000-73859号公報 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-73859号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「内燃機関におけるシール装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関において、シリンダブロック及びシリンダヘッドの側面と、その側面に対して取付けられるタイミングカバーとの間におけるシール装置に関するものである。」 イ.「【0013】そして、前記ヘッドガスケット4における一端面4aを、前記シリンダブロック1及びシリンダヘッド2の側面1b,2bから適宜寸法Sだけ凹ませる一方、この一端面4aのうち前記タイミングカバー3における左右両側が密接する二箇所の部分に、液状シール材6を、当該ヘッドガスケット4をシリンダブロック1とシリンダヘッド2との間に組み込む前に予め塗布する。」 ウ.「【0015】この構成において、シリンダブロック1とシリンダヘッド2とをその間にヘッドガスケットを挟んで締結したのち、このシリンダブロック1及びシリンダヘッド2の側面1b,2bに対してタイミングカバー3を締結することにより、このタイミングカバー3と、前記ヘッドガスケット4との間の隙間を、図3に示すように、ヘッドガスケット4における一端面4aに予め塗布した液状シール材6にて完全に詰めることができるから、前記ヘッドガスケットとタイミングカバーとの間のシール性を確保できるのである。」 エ.図2の記載から、部材の組み付けの際に、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、タイミングカバー3の左右両側の突き合わせにより「三面合わせ部」が形成されることが看取される。 オ.「シリンダブロック1」、「シリンダヘッド2」、「タイミングカバー3」が「エンジン用構造品」であることは明らかである。 これら記載事項(及び図示内容)を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「シリンダブロック1、該シリンダブロック1にヘッドガスケット4を介在して対向したシリンダヘッド2、及び前記シリンダブロック1と前記シリンダヘッド2との端面に対向したタイミングカバー3の左右両側の突き合わせによって構成される三面合わせ部を備えたエンジン構造品に適用されるヘッドガスケット4及び液状シール材6において、 前記エンジン用構造品から成る前記三面合わせ部に充填された液状シール材6は、前記三面合わせ部に位置するヘッドガスケット4の一端面に予め塗布されるヘッドガスケット4及び液状シール材6。」 3.対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「シリンダブロック1」は、その意味又は機能などからみて、前者の「第1部材」に相当し、以下同様に、「ヘッドガスケット4」は「固体状ガスケット」に、「シリンダヘッド2」は「第2部材」に、「タイミングカバー3の左右両側」は「第3部材」に、「液状シール材6」は「液状ガスケット」にそれぞれ相当し、また、引用発明の「ヘッドガスケット4及び液状シール材6」は、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、タイミングカバー3の左右両側の突き合わせにより形成される三面合わせ部に適用されるものであるから、「ヘッドガスケット4及び液状シール材6」は「三面合わせ部用ガスケット」に相当し、また引用発明の「一端面」と本願補正発明の「露出された端縁部」とは、「端部」である点で共通するものであるから、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は、 [一致点] 「第1部材,該第1部材に固体状ガスケットを介在して対向した第2部材,及び前記第1部材と前記第2部材との端面に対向した第3部材の突き合わせによって構成される三面合わせ部を備えたエンジン用構造品に適用される三面合わせ部用ガスケットにおいて, 前記エンジン用構造品から成る前記三面合わせ部に充填された液状ガスケットは,前記エンジン用構造品に前記固体状ガスケットを組み付けるのに先立って前記固体状ガスケットの端部に予め塗布されている三面合わせ部用ガスケット。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は、「液状ガスケットは,前記三面合わせ部に位置する前記固体状ガスケットの端縁部に塗布された接着剤を介して前記固体状ガスケットに接着されており,前記接着剤は,前記エンジン用構造品に前記固体状ガスケットを組み付けるのに先立って前記固体状ガスケットの露出した前記端縁部に予め塗布されている」のに対し、引用発明は、接着剤を介さず、液状シール材6が、三面合わせ部に位置するヘッドガスケット4の一端面に予め塗布される点。 4.判断 上記相違点について検討する。 液体ガスケットとしてシリコン材を用いることは、実願昭59-13115号(実開昭60-126757号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)の第6ページ第4?11行にあるように周知であり、そのシリコン材の接着性が比較的に劣ることは、当業者に広く知られた技術事項であり、本願明細書の段落【0007】にも、「しかしながら,従来,構造品における三面合わせ部に充填される液状ガスケットとしては,シリコン系材料が使用されていることが多いが,この種の液状ガスケットは元来接着性を備えていないものであり,また,接着性を備えていたとしても,その接着性・密着性は極めて弱く,シール性能を十分に発揮できないのが現状である。」と記載されている。また、液体シール材の接着に接着剤を用いることは、特開2000-351524号公報(以下、「刊行物3」という。)の段落【0002】、【0003】、特開2000-320683号公報(以下、「刊行物4」という。)の段落【0013】に記載されるように周知である。 引用発明は液状ガスケットとしてどのような部材を用いるかは特定されてはいないものの、液状ガスケットとしてシリコン材を用いることが周知であること、そのシリコン材が比較的に接着性に劣ることが技術常識であることを鑑みれば、より確実に液状ガスケットを接着するために、上記の周知技術のように接着剤を適用することに格別の困難性を見いだし得ず、引用発明のヘッドガスケット4と液状シール剤6の接着に接着剤を用いることは、当業者が容易に想到し得たものであり、接着剤を塗布する箇所、範囲をどのように設定するかは、要求される接着力、ヘッドガスケットの端部の形状等を考慮して適宜決定すべき設計事項にすぎない。 そして、本願補正発明の奏する効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 なお、審判請求人は、審尋に対する平成23年12月14日付けの回答書において、「しかしながら,審査官の上記認定は,上記のようなエンジンが熱膨張/収縮の繰り返しの熱負荷や振動により液状ガスケットと固定状ガスケットが剥離し易いというエンジン特有の現象を全く無視し,上記の技術的思想が全く記載も示唆もされていない引用文献1(審決注:「刊行物1」を意味する。),2(審決注:「刊行物3」を意味する。)及び周知例(引用文献3(審決注:「刊行物4」を意味する。),4)から上記のような認定をすることは,全くの誤認であり,審査官自身が研究して推論したに過ぎない事項であり,刊行物に開示された技術的思想ではないことは明らかであります。」([1](5)の項を参照。)と主張する。 しかしながら、エンジンの燃焼室近傍の部材が、熱膨張/収縮による熱負荷、振動にさらされることは、当業者が普通に知り得る技術事項であり、そのような使用環境に応じた部材間の接着力を得るために必要に応じて接着剤を用いることに、格別の困難性を見いだし得ない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成22年7月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「第1部材,該第1部材に固体状ガスケットを介在して対向した第2部材,及び前記第1部材と前記第2部材との端面に対向した第3部材の突き合わせによって構成される三面合わせ部を備えた構造品に適用される三面合わせ部用ガスケットにおいて, 前記三面合わせ部に充填された液状ガスケットは,前記三面合わせ部に位置する前記固体状ガスケットの端縁部に塗布された接着剤を介して前記固体状ガスケットに接着されており,前記接着剤は,前記構造品に前記固体状ガスケットを組み付けるのに先立って前記固体状ガスケットの前記端縁部に予め塗布されていることを特徴とする三面合わせ部用ガスケット。」 2.刊行物の記載事項 刊行物1の記載事項並びに引用発明は、前記II.2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本願補正発明における「エンジン用構造品」を「構造品」に拡張し、また「接着剤」が「塗布され」る「前記固体状ガスケットの前記端縁部」について、「露出した前記端縁部」を「前記端縁部」に拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3.及び4.に記載したとおり、引用発明及び刊行物2ないし4に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び刊行物2ないし4に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び刊行物2ないし4に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-30 |
結審通知日 | 2012-02-21 |
審決日 | 2012-03-16 |
出願番号 | 特願2001-51362(P2001-51362) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16J)
P 1 8・ 575- Z (F16J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小野田 達志 |
特許庁審判長 |
山岸 利治 |
特許庁審判官 |
所村 陽一 常盤 務 |
発明の名称 | 三面合わせ部用ガスケット |
代理人 | 尾仲 一宗 |
代理人 | 尾仲 一宗 |