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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1257583
審判番号 不服2011-2862  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-08 
確定日 2012-06-15 
事件の表示 特願2004- 96849「半導体研磨用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-286047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、平成16年3月29日の特許出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、次のとおりである。

「ヒュームドシリカの水分散液であって、粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数が60万個/ml以下であり、かつ粒径1μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数が6000個/ml以下であることを特徴とする半導体研磨用組成物。」

第2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-277106号公報(以下「刊行物1」という。)及び特開2001-271058号公報(以下「刊行物2」という。)の記載内容はそれぞれ以下のとおりである。

1 刊行物1
(1)刊行物1記載の事項
刊行物1には以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、研磨剤として砥粒分散液を使用した新規な研磨方法及び研磨装置に関する。詳しくは、砥粒分散液を使用した研磨方法において、高い研磨速度で且つスクラッチを極めて効果的に防止することが可能な方法及び研磨装置である。」

「【0014】
【発明の実施の形態】本発明に使用する砥粒分散液は、公知のものが特に制限なく使用される。例えば、砥粒としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化マンガン、窒化ケイ素、炭化珪素、ダイヤモンド、樹脂微粒子等が挙げられる。
【0015】そのうち、半導体デバイスの研磨においては、シリカ、アルミナ、セリア等の砥粒が用いられる。上記シリカの中でも、特にヒュームドシリカを用いた砥粒分散液は、層間絶縁膜用や金属膜用砥粒分散液として使用されることが多い。また、シリコンウェハの研磨においては、コロイダルシリカが多用されている。
【0016】また、本発明の砥粒分散液は、上記の砥粒を溶媒に分散させ、更に研磨を促進するための各種の添加剤を配合した組成が一般に使用される。
【0017】上記溶媒としては、水が一般的である。
【0018】また、砥粒の濃度は、従来から研磨において採用される濃度を特に制限なく採用することができる。砥粒分散液中の砥粒の代表的な濃度としては、0.1?20重量%が一般的である。」

「【0057】
【実施例】以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0058】以下の方法によって、砥粒分散液を分析、評価した。
【0059】1.平均粒子径
平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布計(ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて測定した。ここでは、体積基準の平均粒子径を採用した。
【0060】2.粗粒子濃度
凝集粒子濃度は、パーティクルカウンター方式の粒度解析装置(パーティクルサイジングシステムズ社製、アキュサイザー770)を用いて測定した。凝集粒子濃度は、シリカ濃度1.5重量%に純水で希釈した砥粒分散液50μl中に含まれる0.5μm以上の凝集粒子の個数と定義した。
【0061】3.pHの測定
砥粒分散液のpHは、pHメーター(堀場製作所製、F-22)を用いて、25℃で測定した。
【0062】4.粘度の測定
砥粒分散液の粘度は、B型粘度計(トキメック製、BL型)を用いて、25℃で測定した。
【0063】5.光散乱指数(n)の測定
砥粒分散液のスペクトルは、分光光度計(日本分光製、Ubest-35型)を用いて測定した。まず、光路長10mmのセルを用い、参照セルと試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、全波長範囲にわたってゼロ点校正を行った。次に、シリカ分散液の濃度が1.5重量%になるように砥粒分散液をイオン交換水で希釈し、試料セルに該希釈液を入れて波長(λ)460?700nmの範囲の吸光度(τ)を1nm毎に241個測定した。log(λ)とlog(τ)をプロットし、前述した式(2)を用いて直線の傾き(-n)を最小二乗法で求めた。この時のnを光散乱指数とした。
【0064】6.研磨試験(研磨速度)
絶縁膜用の研磨用試料には、厚さ約1μmの熱酸化膜(SiO_(2)膜)付きの4インチのシリコンウェハを用いた。研磨装置にはエンギス社製、EJ-380IN-Sを用い、荷重500g/cm^(2)、定盤の回転速度40rpm、砥粒分散液の供給速度80ml/minの条件で研磨試験を行った。研磨パッドにはロデ-ル製のIC1000/Suba400を用いた。研磨速度は、エリプソメーターを用いて研磨前後のSiO_(2)膜の厚み変化を測定することによって求めた。」

「【0068】実施例1
比表面積が90m^(2)/gのヒュームドシリカを固形分濃度が13重量%になるように純水と混合すると共に、pHが11になるようにアンモニア水を加えて分散処理することによって砥粒分散液を調製した。
【0069】上記の砥粒分散液を数週間貯蔵後、その一部を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA-31)を用いて分散処理し、そのまま研磨試験に供した。なお、上記高圧ホモジナイザーは孔径150μmのダイヤモンド製の絞り機構を使用し、該絞り機構の入口側と出口側との差圧は70MPaになるように調整した。
【0070】また、上記高圧ホモジナイザーによる分散処理から約1時間以内に、砥粒分散液の物性も測定した。
【0071】これらの結果を表1に示す。
【0072】比較例1
実施例1において、分散機による砥粒分散液の分散処理を、タービンステーター型のホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT-50)による約20分間の処理に代えた以外は同様にして研磨試験を行った。
【0073】また、上記タービンステーター型のホモジナイザーによる分散処理後1時間以内に、砥粒分散液の物性も測定した。
【0074】これらの結果を表1に示す。
【0075】実施例2
実施例1において、高圧ホモジナイザーによる分散処理に代えて、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製、ソニファイア250)による分散処理を施し、分散処理後そのまま研磨試験に供した。
【0076】また、上記超音波ホモジナイザーによる分散処理から1時間以内に、砥粒分散液の物性も測定した。
【0077】結果を表1に示す。」

【0078】の【表1】には「凝集粒子数(個)」について以下の記載がある。
実施例1: 9,100
比較例1:31,000
実施例2:11,300

「【0079】以上の結果が示すように、実施例1及び実施例2は、高圧ホモジナイザーを使用することにより、比較例1に比べて砥粒分散液の平均粒子径は小さい方にシフトし、粗粒子数も減少することがわかった。また、シリカの分散状態を示す光散乱指数(n)は大きくなることがわかった。
【0080】上記高圧ホモジナイザーを使用した場合と同様に、実施例3(当審注:実施例2の誤記と考えられる。)の超音波ホモジナイザーを使用した場合もシリカの分散状態は格段に向上することがわかった。従って、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーで処理することによってシリカの分散状態を向上させ、更に砥粒分散液中の凝集粒子数を低減させることによって、被研磨面のスクラッチの発生を抑制することが可能となった。 また、上記処理によって、研磨速度も向上することがわかった。」

(2)刊行物1記載の発明
刊行物1記載の事項を、特に、砥粒としてヒュームドシリカを採用し、砥粒を分散させる溶媒として水を採用するとともに、刊行物1の段落【0078】【表1】の実施例1及び実施例2の記載に着目して、本件出願の発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認めることができる。

「ヒュームドシリカの水分散液であって、砥粒分散液50μl中に含まれる0.5μm以上の凝集粒子数が9,100個又は11,300個である半導体研磨用組成物。」

2 刊行物2
刊行物2には以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体、電子部品の製造工程で使用する研磨スラリーの製造方法に関するものである。」

「【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、シリカ粒子等の砥粒を水系媒体中に分散されて得られる水性分散体を高圧ホモジナイザーで分散処理する工程と、得られたシリカの水性分散体に増粘剤を添加混合する工程と、を包含する。高圧ホモジナイザーで水性分散体を処理する工程は、シリカ粒子が水系媒体中に分散された水性分散体を互いに向かい合う状態で高圧で衝突させことにより、シリカ粒子を分散させる工程を包含し得る。
【0015】上記水性分散体を得るには、シリカ粒子を水系媒体中に混合し、混練機やディスパー等の高速攪拌機、ビーズミル等を用いて予備分散すれはよい。シリカ粒子の濃度は好ましくは3?70重量%であり、さらに好ましくは10?50重量%である。シリカ粒子の濃度が低すぎると、分散効率が悪いため得られた水性分散体が不安定になりやすい。濃度が高すぎると、予備分散工程での水系媒体が少なすぎるため、また水性分散体が極端に増粘したりゲル化して流動化しなくなることがある。
【0016】本発明で使用される水系媒体は、水、エタノール、メタノール等、およびこれらの混合溶媒が使用できるが、好ましくは脱イオンされた純水である。
【0017】また、本発明で好ましく使用されるシリカ粒子は、通常、乾式法、湿式法、ゾル-ゲル法等で製造されたシリカ粒子があげられ、中でも乾式法の中の一つであるヒュームド法シリカの粒子が高純度である点で好ましい。分散に供するシリカ粒子は一般に粉体であり、小さな粒子(一次粒子)の凝集体(二次粒子)として存在している。この一次粒子の平均粒子径は通常0.005?1μmである。」

「【0039】また研磨スラリーの粒度分布は、以下の通りである。
【0040】0.5mlの水性分散体中における、1μm以上の粒径を有するシリカ粒子が0?100,000個であり、2μm以上の粒径を有するシリカ粒子が0?3,000個であり、3μm以上の粒径を有するシリカ粒子が0?1,000個であり、5μm以上の粒径を有するシリカ粒子が0?500個であり、10μm以上の粒径を有するシリカ粒子が0?100個であり、さらに増粘剤を0.001?1重量%含有する。
【0041】上記範囲を外れる場合には、ウエハ表面へのスクラッチが大きくなる傾向にある。」

「【0064】
【発明の効果】本発明によれば、擬集粗大粒が原因で起こすスクラッチの発生がない研磨スラリーを提供することができる。得られた研磨スラリーは、例えば半導体ウエハ表面の研磨用に使用することができる。」

これらの記載事項から刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。
「ヒュームドシリカの水分散液である半導体研磨用組成物において、スクラッチの発生を低減するために、0.5mlの水分散液中における1μm以上の粒径を有するヒュームドシリカ粒子の粒子数を100,000個以下とすること。」

第3 対比
本件出願の発明における粒子数はヒュームドシリカの水分散液1ml当たりの数であるので、刊行物1記載の発明における砥粒分散液、すなわち、ヒュームドシリカの水分散液50μl中に含まれる0.5μm以上の凝集粒子数9,100個又は11,300個を前記水分散液1ml当たりの数に換算すると、それぞれ以下のとおりである。
9,100個/50μl=182個/μl=182×10^(3)個/ml
=18万2千個/ml
11,300個/50μl=226個/μl=226×10^(3)個/ml
=22万6千個/ml
ちなみに、上記第2の1(1)に摘記した刊行物1記載の発明の実施例1及び実施例2に対する比較例1では、その1ml当たりの粒子数は以下のようになる。
31,000個/50μl=620個/μl=620×10^(3)個/ml
=62万個/ml
すると、刊行物1記載の発明における粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数の上限は、「22万6千個/mlを超え62万個/ml未満」にあり、これは本件出願の発明における上限である「60万個/ml」を含む。
また、刊行物1には明記されていないものの、技術常識からみて、刊行物1記載の発明にも粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子より大きい粒径1μm以上のヒュームドシリカ粒子が存在していると考えられる。

したがって、本件出願の発明と刊行物1記載の発明とは、以下の一致点と相違点とを有しているということができる。

[一致点]
ヒュームドシリカの水分散液であって、粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数が62万個/ml未満である半導体研磨用組成物。

[相違点1]
粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数の上限について、本件出願の発明では、「60万個/ml」であるが、刊行物1記載の発明では、「22万6千個/mlを超え62万個/ml未満」である点。

[相違点2]
粒径1μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数について、本件出願の発明では「6000個/ml以下」であるのに対して、刊行物1記載の発明では具体的範囲が明らかでない点。

第4 相違点についての検討
相違点1について検討する。
本願の発明の詳細な説明の段落0027、段落0077の表1を参照しても、「60万個/ml」と特定したことによる臨界的意義、顕著な効果を見いだすことはできない。
よって、相違点1は、最適値を選択したにすぎず、格別なものとは認められない。

相違点2について検討する。
上記第2の2末尾で認定したように、刊行物2には、ヒュームドシリカの水分散液である半導体研磨用組成物において、スクラッチの発生を低減するために、0.5mlの水分散液中における、1μm以上の粒径を有するヒュームドシリカ粒子の粒子数を0?100,000個とすること、すなわち、水分散液の1ml当たりの粒子数に換算すると、0?200,000個/mlとすることが記載されている。
すなわち、刊行物2記載の事項は、スクラッチの発生を抑えるために、ヒュームドシリカの水分散液中における粒径1μm以上のヒュームドシリカ粒子に着目して、その粒子数を適切な範囲に抑えることであるということができる。
スクラッチの発生は、刊行物1記載の発明においても望まれることであり、そのための手段について、重畳的な採用を試みることに困難性は認められない。
そこで、この刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用し、粒径1μm以上のヒュームドシリカ粒子にも注目して、その粒子数を抑えるように構成することは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到するところである。
そして、粒径の大きな粒子の粒子数が少ないほどスクラッチの発生が小さいことは技術常識からみて明らかであること、また、粒径1μm以上のヒュームドシリカ粒子の粒子数を6000個/ml以下に限定したことによる臨界的な効果も見当たらないことからみて、粒子数をこのように限定することは、そのために要する費用とそれによってもたらされる効果とを勘案して、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項であるということができる。
請求人は、審判請求理由で「粒径を2段階で制限する」点を主張する。
しかし、一般に、課題を解決する手段が複数存する際に、より良い解決のため、複数の手段を重畳的に用いることは珍しくなく(例えば、特開2003-145929号公報の段落0040)、このことは、本件においても妥当する。
よって、請求人の主張は採用できない。

第5 むすび
したがって、本件出願の発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-24 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-13 
出願番号 特願2004-96849(P2004-96849)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 長屋 陽二郎
豊原 邦雄
発明の名称 半導体研磨用組成物  
代理人 上羽 秀敏  

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