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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1257607 |
審判番号 | 不服2006-25642 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-13 |
確定日 | 2012-05-30 |
事件の表示 | 特願2002-558983「固定ポリマー及びカチオン性ポリ(ビニルラクタム)を含む化粧品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 1日国際公開、WO02/58649、平成16年 7月 8日国内公表、特表2004-520370〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、2002年1月24日(優先権主張2001年1月26日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答して平成17年10月5日付けで手続補正がなされたが、平成18年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年11月13日に拒絶査定不服審判が請求されると共に、平成18年12月13日付けで手続補正がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋がなされ、平成21年9月10日付けで回答書が提出されたが、当審において拒絶理由が通知され、平成23年3月17日付けで意見書が提出されたものである。 本願の請求項1?20に係る発明は、平成18年12月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?20に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「 化粧品として許容される媒質中に、 (i)アニオン性、両性、及び非イオン性の固定ポリマー、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも一つの固定ポリマー、及び (ii)a)式(IV): [式中、 sは、3乃至6の整数を示し、 R_(9) は、水素原子またはC_(1)-C_(5) アルキル基を示し、 R_(10)は、水素原子またはC_(1)-C_(5) アルキル基を示す (ここで、R_(9) 及びR_(10)基の少なくとも一つが水素原子を示すことを前提とする)] のモノマー、 b)式(I): [式中、 Xは、酸素原子またはNR_(6) 基を示し、 R_(1) 及びR_(6) は、それぞれ別個に、水素原子または直鎖状もしくは分枝状の C_(1)-C_(5) アルキル基を示し、 R_(2) は、直鎖状もしくは分枝状の C_(1)-C_(4)アルキル基を示し、 R_(3) 及びR_(4) が、それぞれ別個に水素原子または C_(1)-C_(5) アルキル基を示し、 R_(5) がC_(9)-C_(24) アルキル基を示し、 Y、及びY_(1) は、それぞれ別個に、直鎖状もしくは分枝状の C_(2)-C_(16)アルキレン基を示し、 p=1、q=0、 m及びnは、それぞれ別個に、0乃至100の範囲の整数を示し、 zは、有機または無機の酸アニオンを示す] のモノマー、及び c)式(II): [式中、 Xは、酸素原子またはNR_(6) 基を示し、 R_(1) 及びR_(6) は、それぞれ別個に、水素原子または直鎖状もしくは分枝状の C_(1)-C_(5) アルキル基を示し、 R_(2) は、直鎖状もしくは分枝状の C_(1)-C_(4) アルキル基を示し、 R_(3) 及びR_(4) が、それぞれ別個に水素原子または C_(1)-C_(5) アルキル基を示し、 Y、及びY_(1) は、それぞれ別個に、直鎖状もしくは分枝状の C_(2)-C_(16)アルキレン基を示し、 p=1、q=0、 m及びnは、それぞれ別個に、0乃至100の範囲の整数を示す] のモノマー を含むターポリマーである、少なくとも1つのカチオン性ポリ(ビニルラクタム)ポリマーを含む ことを特徴とする、化粧品組成物。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例の記載の概要 当審における拒絶の理由に引用された、いずれも本願優先日前に頒布されたことが明らかな以下の刊行物には、次の事項が記載されている。 ・特表平10-511998号公報(以下、「引用例A」という。) (1) 「本発明は、所定の組成を有するビニルピロリドン(VP)とN-3,3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)との実質的に均一な共重合体、およびヘアスタイリング用およびヘアケア用に用いられる前記共重合体の透明低粘度水溶液に関するものである。」(6頁5?8行) (2) 「本発明のさらに他の目的は、所定の組成範囲のVPとDMAPMAとの実質的に均一な共重合体の透明低粘度水溶液であって、選定した固形分レベルを有し、ヘアスタイリング組成物に配合した際に使用者に向上したコンディショニング性、固定性(fixative property)および毛髪保持性を与える水溶液を提供することにある。」(7頁10?14行) (3) 「このようなヘアスタイリング製品は、ヘアスタイリング組成物中に配合した場合に、……毛髪保持性(カール維持性)および毛髪の剛さ(hair stiffnees property)を有意に改善すると共に、向上したヘアコンディショニング性(もつれ除去性、フライアウェイ(flyaway)性および適合性(compatibility)を維持する。」(14頁3?7行) (4) 「 ヘアスタイリングゲル 重量(g) (a)均一なVP/DMAPMA(80:20) 共重合体(15%水溶液として) 5.00 (b)ヒドロキシエチルセルロース(ナトロソル…) 0.50 (c)トリエタノールアミン(99%)(TEA) 0.20 (d)脱イオン水 十分な量」 (14頁9?15行) ・国際公開第00/68282号(以下、「引用例B」という。英文のため翻訳文で示す。翻訳文は特表2002-544299号公報による。) (5) 「三元重合体であって、 次の単量体;X、Y及びZからなり; Xが、 (ここで、nは3?6であり;RはH又は C_(1)?C_(5) アルキルであり、かつXの重量%は40?95である。)で表され; Yが、 (ここで、PはO又はNR_(2) であり;R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4) は単独でH又はC_(1)?C_(5) アルキルであり;R_(5) はC_(2)?C_(16) アルキルアルキレンであり;かつYの重量%は0.1?55である。)で表され;及び Zが、 (ここで、PはO又はNR_(2) であり;R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4) は単独でH又はC_(1)?C_(5) アルキルであり;R_(5) はC_(2)?C_(16) アルキレンであり;R_(6) はC_(9)?C_(24) アルキルであり;Mは、ハロゲン化物、トシレート又はリン酸塩の陰イオンであり;かつZの重量%は0.25?50である。)で表されることを特徴とする三元重合体。」(クレーム1) (6) 「VP/DMAPMA/QDMAPMAA-DTsの三元重合体(ドデシルトシレート疎水性物質)」と題する、例1?6の重合体の組成及び物性の表(6頁上段;対応公表公報【0013】【0014】参照) (7) 「本発明は、毛髪又は肌手入れ用組成物において使用するための重合体、特に、有利な低粘着性及び高い耐湿性を有するコンディショニング用及びスタイリング用三元重合体に関する。……VP及びDMAPMAの共重合体は、毛髪及び肌用組成物の活性成分として広く使用されてきた。これらの共重合体は、概して、コンディショナー及びシャンプーのような製品のための適切な重合体であるが、これらの及び他のパーソナルケア製品において優れた性能特性を有する新しい重合体を提供することが望まれている。……本明細書に記載するものは、ビニルピロリドン(VP)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)及びC_(9)?C_(24)アルキルジメチルアミノプロピルメタクリル酸四級化単量体(quarternized monomer)(QDMAPMA)の、所定の組成範囲内の、頭髪及び肌手入れ用組成物における使用のための三元重合体であり、これらの組成物は、低粘着性及び高耐湿性によって特徴付けられる。」(1頁4行?最下行;対応公表公報【0001】?【0003】参照) (8) 「実際の使用条件下で、既知の重合体を用いる同様の配合と比較して、試験したコンディショナー及びシャンプーの配合において、本発明の三元重合体は、優れたウエットコーミング、優れたドライ感及び柔らかさ、並びに優れたウエット感を有する。 さらに、それらは、剛性、耐湿性並びにドライ及びウエット感に関する優れたスタイリング特性によって特徴付けられる。」(10頁14?21行;対応公表公報【0031】?【0032】参照) (9)「 例20 スタイリングローション スタイリングローションの配合を、1重量%の例1の三元重合体及び0.1%の保存料を用いる水溶液において調製した。 例21 スタイリングムース 濃縮物を、1gの例1の三元重合体、0.1gの保存料及び98.9gの脱イオン水を溶解することによって調製した。 スタイリングムース配合は、ムースディスペンサーに備えることができるエアゾール中に70gの濃縮物及び30の炭化水素高圧ガスを混合することによって調製する。」(10頁22行?11頁8行;対応公表公報【0033】?【0035】参照) 3.対比・判断 引用例Aには、VPとDMAPMAとの共重合体はヘアスタイリング用及びヘアケア用に用いられ、コンディショニング性、固定性、カール保持性などを改善するものであること(上記(1)?(3))及びVP/DMAPMA共重合体、ヒドロキシエチルセルロース及び水を含有するヘアスタイリングゲル(上記 (4))が記載されている。このスタイリングゲルを引用発明とする。 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明に配合されているヒドロキシエチルセルロースは、毛髪化粧料において非イオン性の固定ポリマーとして用いられることは周知である(例えば、特開平9-124449号公報、特開平8-157342号公報、特開平11-171740号公報、特開平9-263520号公報参照)。また、引用発明に配合されているVP/DMAPMA共重合体のVP、すなわち、ビニルピロリドンは、本願発明における式(IV)において、R_(9) 及びR_(10)が水素原子を、sが3を表す化合物に相当し、その化学構造からビニルラクタムに包含されることは明らかである。そして、水は化粧品として許容される媒質であることは明らかであることから、両者は、「化粧品として許容される媒質中に、少なくとも一つの固定ポリマー及び少なくとも一つのポリ(ビニルラクタム)ポリマーを含む化粧品組成物である」点で一致し、前者は、ポリ(ビニルラクタム)ポリマーが式(IV)、式(I)及び式(II)で表されるモノマーを含むターポリマーであるのに対して、後者はVPとDMAPMAとの共重合体である点で相違する。 そこで、この相違点について検討する。 引用例Bには、式(X)、(Y)及び(Z)の単量体から成る三元重合体(ターポリマー)(上記 (5))が記載され、それぞれの単量体がVP、DMAPMA及びQDMAPMA(C_(9)?C_(24) アルキルジメチルアミノプロピルメタクリル酸四級化単量体)である三元重合体(上記(6)及び(7))が製造され、その水溶液をスタイリングローション及びスタイリングムースに用いたこと(上記 (9))が記載されている。 式(X)、(Y)及び(Z)は、それぞれ、本願発明における式(IV)(R_(9) =R、R_(10)=H及びs=n)、(II)(X=P、R_(1)=R_(1)、R_(3),R_(4)=R_(3),R_(4)、R_(6)=R_(2)、m、n=0)及び(I)(X=P、R_(1)=R_(1)、R_(6)=R_(2)、R_(3),R_(4)=R_(3),R_(4)、m、n=0)で表されるモノマーに包含されるものであるから、引用例BにおけるVP、DMAPMA及びQDMAPMAのターポリマーは、本願発明にかかるターポリマーに相当する。 そして、引用例Bには、従来技術として、VP及びDMAPMAの共重合体は、毛髪及び肌用組成物の活性成分として広く使用され、コンディショナー及びシャンプーのような製品には適切であるが、他のパーソナルケア製品において優れた性能特性を有する新しい重合体が望まれていた(上記 (7))と記載され、この記載を受けて上記ターポリマーが記載されてその性質が低粘着性及び高耐湿性によって特徴付けられること(上記(8))、さらにスタイリング特性が優れること(上記 (8))、スタイリング組成物への適用(上記 (9))が記載されているのである。 そうすると、引用例AにおけるVP及びDMAPMAの共重合体の性質を改善した新しい重合体と認められる、引用例Bに記載のターポリマーを、引用発明において、VP及びDMAPMAの共重合体に代えて用いることは当業者が容易に想到できる程度のものと認められる。 そして、引用発明におけるVP及びDMAPMAの共重合体を、引用例Bに記載のターポリマーに代えたことによって、本願発明が引用発明と比較して格別顕著な効果を奏したものとは認められない。 なお、この点に関し請求人は、平成23年3月17日付け意見書において比較実験結果を示して有利な効果を主張するが、意見書における比較実験は、本願発明と引用発明との比較、すなわち、VP及びDMAPMAの共重合体をターポリマーに置き換えたものとの比較ではなく、本願発明と、「ターポリマーと水を含有する組成物」又は「固定ポリマーと水を含有する組成物」との比較であるから、この実験結果は、本願発明の引用発明に比べての効果の顕著性を裏付ける根拠とはならない。 したがって、本願発明は引用例A及びBに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故、他の請求項について論及するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-22 |
結審通知日 | 2012-01-04 |
審決日 | 2012-01-17 |
出願番号 | 特願2002-558983(P2002-558983) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 天野 貴子 |
特許庁審判長 |
内田 淳子 |
特許庁審判官 |
上條 のぶよ 穴吹 智子 |
発明の名称 | 固定ポリマー及びカチオン性ポリ(ビニルラクタム)を含む化粧品組成物 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |