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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1257659
審判番号 不服2010-90  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-05 
確定日 2012-05-31 
事件の表示 特願2006- 65814「光記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日出願公開、特開2007-242185〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年3月10日に出願したものであって、平成21年6月15日付で通知した拒絶の理由に対し、同年8月18日付で意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成23年2月15日付で、審査官が作成した前置報告書を利用した審尋を行い、同年4月25日付で回答書が提出され、同年8月2日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し同年10月11日付で意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月20日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し平成24年2月27日付で意見書が提出されたものである。

2.手続の概要
(A)
平成23年12月20日付けの拒絶の理由の概要は下記のとおりである。

(a)
「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



発明の詳細な説明には、「第1記録層に記録後の第1記録層の反射率(R1)と第2記録層の未記録状態の反射率(R2)の差が、0.03以内であり」「反射率の差とは、|R1-R2|/(R1+R2)で示されるものである」の技術的な意義を理解するために必要な事項が記載されていない。」

(b)
「(1)
【図1】に関し、「▲」や「×」等がそれぞれ具体的にはどのような構成の光記録媒体に対してどのような反射率(記録前なのか記録後なのか)を測定したものなのか、および、記録感度を【図1】に記載の「最適記録パワー」に換算する方法、が不明である。 」

(c)
「(2)
明細書の段落【0005】には「本発明は、高速記録に対応可能な2層型光記録媒体において、両記録層の記録後の反射率が規格を満足すると共に、両記録層の記録感度差が改善された高感度光記録媒体の提供を目的とする。」(下線は、当審で付した。)と記載されており、
審判請求の理由において、「図1に示したように、反射率と記録感度の間には相関があり、反射率が同じレベルになれば、L0層とL1層の記録感度差も小さくなり」と主張しており、
明細書の段落【0007】には「図1は、記録層材料と記録層の膜厚及び保護層の膜厚を変えて作成した光記録媒体の反射率と最適記録パワーの関係を示したものであるが、一般に、反射率が上がると最適記録パワーも高くなり、記録感度が悪化する傾向にある。」と記載されており、
【図1】には、「▲」や「×」等の全てのプロットが一つの「直線」上に位置しており、反射率を上げるとその量に比例する量だけ最適記録パワーが大きくなる(すなわち、記録感度が悪化する)という相関関係があることが記載されている。

以上を総合すると、審判請求の理由における主張の主旨は、L0層とL1層のいずれもが反射率と記録感度の間に図1に示したような相関関係を有するので、反射率が同じレベルになれば、L0層とL1層の記録感度差も小さくなる、と解することが妥当である。

ここで、上記主張によれば少なくとも実施例、比較例に係る光記録媒体は、当然、図1に示したような反射率と記録感度の間に相関関係を有するはずであるから、仮に実施例、比較例のデータを【図1】中にプロットすると、これらのプロットに加え「▲」や「×」等を含めた全てのプロットが一つの「直線」上に位置するはずである。
そこで、【表1】の記載に基づき実施例、比較例のデータを【図1】中にプロットする。
具体的には、R1、R2、R3の値をそれぞれ反射率の値として横軸に、記録感度の値を最適記録パワーの値として縦軸にとり、合計で15の点を【図1】中にプロットすると、これらのプロットは、「▲」や「×」等で形成される「直線」から大きく上方にはずれた位置にプロットされるから、実施例、比較例に係る光記録媒体は、L0層とL1層の両方とも反射率と記録感度の間に図1に示したような相関関係を有さない光記録媒体である。

したがって、審判請求人の主張は、採用することはできず、依然として、反射率が同じレベルになれば、L0層とL1層の記録感度差も小さくなる理由(原理)が不明であり、依然として反射率の差=|R1-R2|/(R1+R2)を0.03以内とすることの技術的な意義が不明である。 」

(d)
「(3)
光記録媒体の技術分野において、記録感度は、色素記録膜の光学特性や熱的特性、色素材料の分解温度、色素材料以外に含有させることができる感度を向上させるための添加剤の有無、基材の種類、金属反射膜の金属の種類、反射層の厚さ、等の影響を受ける(反射率のみでは決まらない)ことが技術常識である(特開平11-348424号公報の段落【0002】、特開2003-331473号公報の段落【0048】、特開2002-254819号公報の段落【0039】、特開平5-67349号公報の段落【0037】、等を参照。)ことを勘案すると、反射率が同じでもこれらの点(例えば、色素記録膜の光学特性)に応じて記録感度が様々な値を取り得るといえるから、これらの点に関し何も前提条件や限定を有さない本願発明に係る光記録媒体のL0層とL1層が必ず【図1】に示したような反射率と記録感度の間に相関を有するということはありえない。
また、本願発明は、審判請求人が、平成21年8月18日付け意見書において「L0層には半透過性の反射膜が形成されており、該反射膜を薄くしてL0層の反射率を低くすると、L0層の記録感度は悪化するが」(下線は、当審で付した。)と主張しているとおりの光記録媒体であり、L0層の半透過性の反射膜を薄くしてL0層の反射率を低くした場合にはL0層の記録感度は向上せずにかえって悪化するものであるから、本願発明には、反射率と記録感度の間に【図1】に示したような相関を有さない場合が包含されていることも明らかである。 」

(e)
「(4)
回答書において「本願発明のような、第1基板、有機色素からなる第1記録層(L0層)、半透過性の第1反射層、第2反射層、無機膜層、透明中間層、有機色素からなる第2記録層(L1層)、無機膜層、第2基板が順次積層された光記録媒体において、L0層とL1層の色素材料を適宜選択し、第1反射層の膜厚を除く各種条件(L0層とL1層の膜厚や他の層の材質、膜厚など)を固定して、第1反射層の膜厚を変化させた場合、L0層の反射率R1とL0層の記録感度、L1層の反射率R2とL1層の記録感度は連動しますから、「R1とR2の差」を小さくすれば、当然「L0層とL1層の記録感度差」は小さくなります(表1参照)。
色素材料や各層の材質、膜厚などを変えれば反射率と記録感度の関係は変わりますが、本願発明の技術思想からみれば、それらは設計上の事項にすぎず、変更した条件下でも、「R1とR2の差」と「L0層とL1層の記録感度差」は連動します。
また、変化させる条件も第1反射層の膜厚に限られるわけではなく(但し、設計上、第1反射層の膜厚が最も好ましい)、他の要件を変化させて反射率を変えることも可能です。 」と主張している。
しかしながら、「連動」の意味(定義や、連動しているか否かを判別する方法)が不明である。 」

(f)
「 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明について、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしたものではない。」

(B)
平成24年2月27日付けの意見書の概要は下記のとおりである。

(a)
「【意見の内容】
拒絶理由通知に対し、以下のとおり意見を申し述べます。」

(b)
「(1)について
本願発明はDVD+R DLディスクに関するもので、DVDは標準規格に則って規定されていて、試験方法は標準規格に記載されており、当業者は周知の測定の対象、測定方法となります。参考資料のDVD標準規格のAnnex-C(P.109-110)に測定方法、測定対象は記載されています。なお、上記規格は膨大なもののため、関連箇所のみを提出します。」

(c)
「(2)について
追記型DVD DLの規格及び実際の記録ドライブでは両層とも同じ最適記録パワー(記録感度)、反射率の規格を満たす必要があります。
図1は最適記録パワー(記録感度)と反射率の一般的な関係を示したものですが、最適記録パワーを下げて感度を上げると反射率が低下する傾向が見られ、両者は背反関係になっています。そこで、本願発明では、反射率として必要最低限のレベルを確保した上で、最適記録パワーを下げる技術を提案しています。
一方、DVD DLディスクではL0層を透過したレーザ光がL1層に入射するので、記録層の吸収率の変更(記録層の色素材料処方変更)や、反射層の反射率の変更(反射層の膜厚変更)により、L0記録層、L1記録層に加わるレーザ出力を制御できます。

表1の比較例1、実施例1では、比較例1のL0層の記録感度が悪い(65mW)ため、L0層の反射層の膜厚を制御してL0層、L1層の反射率を同じにすることにより、実施例1のL0層の記録感度を改善(61mW)しています。
一方、L1層の記録感度はやや悪化していますが(60mW→61mW)、両層の最大記録パワーは下がっており(65mW→61mW)、比較例1の最大記録パワーに対して改善した結果が得られています。そして、結果的に、両記録層の最適記録パワー差(感度差)が小さくなることが追記型DVD DLの規格に記載されている両記録層の最適記録パワーを改善することになります。
また、表1の実施例2、3、4では、実施例3、4のL1層の反射率が低いことが課題であり、記録層の色素材料の混合比の変更(50:50→85:15)、L0層の反射層膜厚の制御により、L0層、L1層の反射率を同じにすること(何れも50mW)ができます。」

(d)
「(3)について
上記(2)で述べたように、単層での記録感度と反射率は背反関係にありますが、各層の反射率も、L0層を高くするとL1層が低くなるし、記録感度も、L0層を高くするとL1層が低くなるという背反関係にあります。
そして、本願発明は、全体の記録感度、反射率を向上させることを目的としているのではなく、L0層、L1層の記録感度、反射率のレベルを同一にしてワースト値を下げることを目的としています。
図1は最適記録パワー(記録感度)と反射率の一般的な関係を示したものですが、本願発明は上記目的を達成するため、この一般的な関係を利用したものです。
したがって、図1の関係自体は、本願発明の目的効果とは直接関係ありません。」

(e)
「(4)について
(3)で述べた、各層の反射率や記録感度も背反関係にあるという意味で「連動」という表現を用いました。」

3.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成23年10月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認められる。

「有機色素からなる第1記録層と半透過性の第1反射層が積層された案内溝を有する第1基板と、少なくとも、第2反射層、無機膜層、有機色素からなる第2記録層、無機膜層が順次積層された第2基板とが、透明中間層を介して両基板が外側になるように設けられた追記可能な光記録媒体であって、前記有機色素がスクアリリウム色素を含み、第1記録層に記録後の第2記録層の反射率が、記録前に比べて上昇すると共に、第1記録層に記録後の第1記録層の反射率(R1)と第2記録層の未記録状態の反射率(R2)の差が、0.03以内であり、可能記録線速度が31m/s以上であることを特徴とする光記録媒体。
なお、記録後の反射率とは、記録後の信号振幅の上端の反射率のことであり、反射率の差とは、|R1-R2|/(R1+R2)で示されるものである。」

4.当審の判断

(A)拒絶理由の「(1)」について(上記2.(A)(b)を参照。)
【図1】に関し、「「▲」や「×」等がそれぞれ具体的にはどのような構成の光記録媒体に対してどのような反射率(記録前なのか記録後なのか)を測定したものなのか」「が不明である。」と指摘したところ、測定方法について参考資料が提出された(上記2.(B)(b)を参照。)だけで、「▲」や「×」等に対応する光記録媒体の具体的な構成やどのような反射率かについては何も釈明がなされなかった。
したがって、拒絶理由の「(1)」は解消しない。

(B)拒絶理由の「(2)」について(上記2.(A)(c)を参照。)
審判請求の理由における主張の主旨に関し「以上を総合すると、審判請求の理由における主張の主旨は、L0層とL1層のいずれもが反射率と記録感度の間に図1に示したような相関関係を有するので、反射率が同じレベルになれば、L0層とL1層の記録感度差も小さくなる、と解することが妥当である。」と認定し、「実施例、比較例に係る光記録媒体は、L0層とL1層の両方とも反射率と記録感度の間に図1に示したような相関関係を有さない光記録媒体である。」と判断し、「したがって、審判請求人の主張は、採用することはできず、依然として、反射率が同じレベルになれば、L0層とL1層の記録感度差も小さくなる理由(原理)が不明であり、依然として反射率の差=|R1-R2|/(R1+R2)を0.03以内とすることの技術的な意義が不明である。」と指摘した。
上記認定、判断、指摘に対し審判請求人は、「一方、L1層の記録感度はやや悪化していますが(60mW→61mW)、両層の最大記録パワーは下がっており(65mW→61mW)、比較例1の最大記録パワーに対して改善した結果が得られています。そして、結果的に、両記録層の最適記録パワー差(感度差)が小さくなることが追記型DVD DLの規格に記載されている両記録層の最適記録パワーを改善することになります。」(上記2.(B)(c)を参照。)などと主張したが、この主張は、例えば上記認定の誤りを具体的な明細書中の記載に基づいて指摘したものではないし、この主張(例えば、「両層の最大記録パワーは下がっており(65mW→61mW)」などの点)と上記認定とがどのような関係にあるのかが説明されていないため、この主張をどのように解釈すると上記認定が誤っているといえるのかも不明である。
また、他に上記認定、判断、指摘に対して何も釈明をしていない。

そして、改めて検討しても上記認定、判断、指摘はいずれも妥当であるところ、【図1】から理解できる事項は、具体的な構成やどのような反射率かが不明の「▲」や「×」等に対応する光記録媒体の「反射率」と「最適記録パワー」が【図1】に記載されている、という程度にとどまるから、「L0層とL1層のいずれもが反射率と記録感度の間に図1に示したような相関関係を有する」ことを前提とする審判請求人の主張には理由がないことが明らかである。
したがって、拒絶理由の「(2)」は解消しない。

(C)拒絶理由の「(3)」について(上記2.(A)(d)を参照。)
「光記録媒体の技術分野において、記録感度は」「(反射率のみでは決まらない)ことが技術常識である」「ことを勘案すると、反射率が同じでもこれらの点(例えば、色素記録膜の光学特性)に応じて記録感度が様々な値を取り得るといえるから、これらの点に関し何も前提条件や限定を有さない本願発明に係る光記録媒体のL0層とL1層が必ず【図1】に示したような反射率と記録感度の間に相関を有するということはありえない。 」と指摘したところ「図1の関係自体は、本願発明の目的効果とは直接関係ありません。」「図1は最適記録パワー(記録感度)と反射率の一般的な関係を示したものです」「本願発明は上記目的を達成するため、この一般的な関係を利用したものです。」(上記2.(B)(d)を参照。)と釈明した。

「図1の関係自体」と「この一般的な関係」との関係が不明であるが、「図1の関係自体」と「この一般的な関係」とが同じものを意味している、あるいは、「図1の関係自体」を一般化したものが「この一般的な関係」である、と解することが可能であるところ、いずれにしても、「図1の関係自体」は、「直接関係」ないという状況と「この一般的な関係を利用」しているという状況とが両立することはありえないから、主張は矛盾している。
加えて、【図1】から理解できる事項は、具体的な構成やどのような反射率かが不明の「▲」や「×」等に対応する光記録媒体の「反射率」と「最適記録パワー」が【図1】に記載されている、という程度にとどまるから、「図1の関係自体」や「この一般的な関係」がどのようなものなのかも不明である。
したがって、拒絶理由の「(3)」は解消しない。

なお、拒絶理由の「(3)」に対して直接釈明したものではないが、審判請求人は、「一方、L1層の記録感度はやや悪化していますが(60mW→61mW)、両層の最大記録パワーは下がっており(65mW→61mW)、比較例1の最大記録パワーに対して改善した結果が得られています。そして、結果的に、両記録層の最適記録パワー差(感度差)が小さくなることが追記型DVD DLの規格に記載されている両記録層の最適記録パワーを改善することになります。」(上記2.(B)(c)を参照。)と主張している。
しかしながら、本願明細書には「反射率の差=|R1-R2|/(R1+R2)を0.03以内」とすることにより「結果的に、両記録層の最適記録パワー差(感度差)が小さくなる」や「追記型DVD DLの規格に記載されている両記録層の最適記録パワーを改善すること」が達成できることの理論的根拠についての記載はなく、当業者の技術常識を踏まえても、その理論的根拠が明らかであるということはできない。
また、実施例、比較例について、本願明細書には「両記録層の最適記録パワー差(感度差)」や「両記録層の最適記録パワー」について影響を及ぼすと考えられる「色素記録膜の光学特性や熱的特性、色素材料の分解温度、色素材料以外に含有させることができる感度を向上させるための添加剤の有無、基材の種類、金属反射膜の金属の種類、反射層の厚さ、等」(上記2.(A)(d)を参照。)についてこれを客観的に明らかにした記載はなく、当業者が実施例、比較例の結果に基づく主張の適否について検証することはできない。
さらに、実施例、比較例が5例示されているが、「L0/L1色素材料(スクアリリウム色素)混合比(重量比)」および「半透過膜膜厚」の他にも「色素記録膜の光学特性や熱的特性、色素材料の分解温度、色素材料以外に含有させることができる感度を向上させるための添加剤の有無、基材の種類、金属反射膜の金属の種類、反射層の厚さ、等」が「両記録層の最適記録パワー差(感度差)」や「両記録層の最適記録パワー」に影響を及ぼすと考えられるにもかかわらず、実施例、比較例はいずれも「L0/L1色素材料(スクアリリウム色素)混合比(重量比)」および/または「半透過膜膜厚」を変化させているにすぎず、「色素記録膜の光学特性や熱的特性、色素材料の分解温度、色素材料以外に含有させることができる感度を向上させるための添加剤の有無、基材の種類、金属反射膜の金属の種類、反射層の厚さ、等」については全く考慮されていないものであるから、本願発明に関し「反射率の差=|R1-R2|/(R1+R2)を0.03以内」とすることにより「結果的に、両記録層の最適記録パワー差(感度差)が小さくなる」や「追記型DVD DLの規格に記載されている両記録層の最適記録パワーを改善すること」が普遍的に達成できることを裏付けるための実験として十分なものということはできない。

したがって、発明の詳細な説明には、「第1記録層に記録後の第1記録層の反射率(R1)と第2記録層の反射率(R2)の差が、0.03以内であり」「反射率の差とは、|R1-R2|/(R1+R2)で示されるものである」の技術的な意義を理解するために必要な事項が記載されておらず、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明について、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしたものではない。

5.むすび
以上のとおり,発明の詳細な説明の記載は、通商産業省令で定めるところにより、本願発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他について当業者が本願発明の技術的な意義を理解するために必要な事項を記載したものとなっていないから,本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、その他の拒絶の理由について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-30 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-16 
出願番号 特願2006-65814(P2006-65814)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 敬利渡部 博樹  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 関谷 隆一
馬場 慎
発明の名称 光記録媒体  
代理人 岡本 利郎  
代理人 友松 英爾  

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