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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1257667
審判番号 不服2011-353  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-07 
確定日 2012-05-31 
事件の表示 特願2007-120780「情報処理装置,表示制御方法,およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開,特開2007-280406〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は,平成15年7月11日に出願された特願2003-273466号の一部を,平成19年5月1日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願としたものであって,平成21年7月22日付け拒絶の理由に対し,同年10月2日に手続補正がなされたが,平成22年10月12日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ,これに対し,平成23年1月7日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成23年9月27日付けで前置報告書を用いた審尋がなされ,これに対し,同年11月16日に回答書が提出されたが,同年12月21日付けで平成23年1月7日付けでした手続補正の却下の決定がなされると共に同日付けで拒絶の理由が通知され,これに対し,平成24年2月20日に手続補正がなされると共に意見書が提出された。

第2 本願発明について
平成24年2月20日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「 【請求項1】
複数のフォルダのそれぞれに分類して記憶されている画像の表示手段による表示を制御する情報処理装置において,
外部機器から画像を取り込む場合,記憶されている画像の中に同一の画像が存在するか否かを判定し,すでに取り込んでいる画像の中に同一の画像が存在しないとき,前記外部機器から当該画像を取り込む取り込み手段と,
前記外部機器から取り込んだ画像を付加されている時間情報に基づいて分類する分類手段と,
ユーザからの操作を受け付ける操作手段と,
前記操作手段に対するユーザの操作に応じて,前記画像の前記表示手段による表示を制御する表示制御手段と
を備え,
前記表示制御手段は,
前記画像を前記時間情報に基づいて分類して表示するための第1の操作子と,前記画像を前記フォルダ毎に分類して表示するための第2の操作子とを前記表示手段の第1の表示領域に表示させ,
前記操作手段に対するユーザの操作により前記第1の操作子が選択された場合,複数の異なる時間単位を基準とする複数の異なる期間と,前記時間情報に基づいて各期間に分類される前記画像の個数を示す情報とを,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ,さらに,前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数の異なる期間の中から所定の期間が選択されたとき,選択された期間に含まれる前記画像を,選択された期間の基準となる時間単位より小さい時間単位を基準とする複数の期間に区分けして前記表示手段の第2の表示領域に表示させ,
前記操作手段に対するユーザの操作により前記第2の操作子が選択された場合,前記複数のフォルダの少なくとも1つを,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ,さらに,前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数のフォルダの中から所定のフォルダが選択されたとき,選択されたフォルダに分類されている前記画像を前記第2の表示領域に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。」

第3 刊行物の記載事項
1 文献1
本願の出願日前に頒布された刊行物であり,当審の拒絶の理由で引用された「P&A ACDSee5.0 日本語版 カレンダー表示で保存場所を気にせず確認できる爆速画像ビューア」(PCFan(ピーシーファン),第10巻第3号,第149ページ,平成15年5月15日発行)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
(1) 本文
「画面のレイアウトを自由に変更・登録できる
使い勝手のよさに定評のある画像管理ソフト「ACDSee」の最新版が登場。前回のバージョンアップでは多機能化とデザインの改良を行い,タブによって各ウィンドウを切り替えられる多重構造のインタフェースを採用した。だが,一部ユーザーの間では,従来までのシンプルさが損なわれてしまったという声もあった。
そこで,今回のバーションでは,インタフェースのカスタマイズの自由度を大幅にアップ。それぞれのタブの表示と非表示を選べるようになり,自分にとって必要な機能だけのウィンドウ構成にできる。また,各ウィンドウのレイアウトも変更でき,レイアウトに名前を付け,複数のレイアウトをすばやく切り替えて使用できる。さらに,これらとは別にインタフェースの「フル」と「ライト」の選択ができ,ライトを選べばバージョン3.1のような,ごくシンプルな操作画面にできる。これで前バージョンの弱点は補われたといっていいだろう。
管理機能としては,カレンダー機能に注目だ。フォルダツリーを選んで一度サムネイルを表示した画像は,Exifの撮影日,ファイルの更新日,サムネイル作成日のいずれかによって自動的にデータベース化される。そして,カレンダーの年,月,日,時間の部分をクリックすると,該当する画像のサムネイルだけをすばやく一覧表示できる。
カレンダー機能といえばアドビシステムズ「フォトショップアルバム」が思い出されるが,ACDSeeはツリー表示型の管理ソフトなので,登録の手間ナシでスピーディに日付分類できることが独自のメリットだ。
さらに磨きをかけた快適操作と高速表示
もうひとつの注目の新機能としては,カテゴリー機能が挙げられる。これは,自分で定義したカテゴリーのアイコンに,画像をドラッグ&ドロップして登録し,別のフォルダや別の階層にある複数の画像をカテゴリー別にスムーズに一覧,検索できる機能だ。
そのほかのおもな改良点は,サブフォルダ内の画像も含めて一括してサムネイルを作成できるようになったこと,データベースのネットワーク共有に対応したこと,画像修正後もExifなどのメタデータを保持できるようになったこと,Exif表示がより細かく正確になったこと,表示がさらにスピードアップしたことなど。
従来通りのメリットとしては,リネーム,回転,サイズ変更などの多彩な一括処理機能,ほとんどの操作ができるキーボードショートカット,ーピクセル単位で細かく設定できるサムネイルサイズ,画像以外にも対応した豊富なファイル形式のサポート,外部ディスクのサムネイル管理機能など。
高速の起動と表示は実に快適であり,新搭載のカレンダー機能は極めて便利だ。速さと操作性にこだわるユーザーには文句なしのイチオシといっていい。」
(2) 上部中央の図面(以下,「図面1」という。)には,「ツールバーやウィンドウを階層化することで,非常に豊富な機能をひとつの画面で一覧でき,ボタン操作ですばやく画面切り替えができる。ここから不要な機能を削って,自分専用のインタフェースにカスタマイズできる」という説明文と共に,画面が示されており,画面の左上を枠で囲み「ナビゲーションペイン」と記載され,画面の右を枠で囲み「ファイルペイン」と記載され,画面の左下に「プレビューペイン」と記載されている。
さらに,画面の左上,枠で囲まれた「管理」のアイコンと認められるものの左には,「取り込み」というアイコンと認められるものが示されている。
(3) 図面1の下の図面(以下,「図面2」という。)には,「カレンダーの日付をクリックすると,その日の撮影画像を検索し,一覧表示できる。年別,月別,曜日別,時間別で表示することもできる。また,Exifデータの撮影日や,データベースの更新日を変更することも可能」という説明文と共に,図面1の「ナビゲーションペイン」において,画面上の「カレンダー」という文字が枠に囲まれ,カレンダーが表示され,「太字が画像のある日付」という記載がなされ,イの図面の「ファイルペイン」には「選択した日付の画像をサムネイル表示」と記載されている。
(4) 図面2の右下の図面(以下,「図面3」という。)には,「カテゴリー機能を使えば,異なるフォルダ内の画像もほぼ瞬時に一覧できる。また,カテゴリーとは別に,画像にキーワードや注記などのテキストデータを入力して,検索,表示することもできる」という説明文と共に,イの図面における「ナビゲーションペイン」にあたると認められる部分の画面が示され,画面上の「カテゴリー」という文字が枠に囲まれ,「ひとつの画像に複数のカテゴリーを付加できる」という文字が記載されている。
(5) ページ右側には製品のパッケージと認められる画像が記載されると共に,「対応OS:Win98/Me/2000/XP」と記載されている。
以上の記載から,文献1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「フォルダツリーを選んで画像のサムネイルを表示するWin98/Me/2000/XPのOSに対応する画像管理ソフトにおいて,
サムネイルを表示した画像をExifの撮影日,ファイルの更新日,サムネイル作成日のいずれかによって自動的にデータベース化する機能と,
ナビゲーションペインと,ファイルペインからなる画面と,
ナビゲーションペイン上に設けられ,各ウィンドウを切り替えられるタブと,
ナビゲーションペインにフォルダツリーを表示し,フォルダツリーを選んでファイルペインにサムネイル表示をすることができる機能と,
ナビゲーションペインにあたる場所にカレンダーを表示し,カレンダーの年,月,日,時間の部分をクリックすると,データベース化された年別,月別,曜日別,時間別に該当する画像をファイルペインに一覧表示するカレンダー機能と,
ナビゲーションペインにあたる場所にカテゴリー一覧を表示し,カテゴリーのアイコンに画像をドラッグ&ドロップすることで画像をカテゴリーに登録し,別のフォルダや別の階層にある複数の画像をカテゴリー別に一覧できるカテゴリー機能と
を有する,画像管理ソフト。」

2 文献2
本願の出願日前に頒布された刊行物であり,当審の拒絶の理由で引用された特開2000-090252号公報(以下,「文献2」という)には,図面と共に以下の事項が記載されている(なお,文献2において,「サブネイル」は「サムネイル」の誤記と認められる。)。
(1) 「【0027】外部から元画像データを取得する場合,CPU111は,画像データとともにその画像データの作成日時(撮像日時)データを取得する作成日時(撮像日時)取得手段として機能し,各元画像データとその画像データの作成日時データとを画像データ格納部165に格納する。作成日時データが無い場合には,当該元画像データを外部から取得したり作成保存した日時をファイル名として格納する。また,例えばデジタルカメラにより1秒間に複数枚の画像が連写された場合のように,作成日時やデータ取得日時が同一の場合,元画像データについては,それらの元画像データを画像処理装置が取得した順に,例えばa,b,c,…等のサブネイルを作成日時に付して別々のファイル名とする。この様に,本実施形態では,元画像データとともに撮像日時データを取得し,この撮像日時を元画像データのファイル名とするので,操作者は,画像を見ずにファイル名を手がかりとして元画像データの内容を推察することができ,元画像データの整理を比較的容易に行うことが可能となる。そして,外部から取得した元画像データは,画像データ並べ替え処理及び画像データ区分処理によって,1又は複数のフォルダに区分され,画像データ格納部165に格納される。」
(2) 「【0054】図11は,新画像表示処理の動作を表したフローチャートであり,図12は,新画像表示処理において表示される画面を示す図である。新画像表示処理においては,CPU111は,まず,図12(a)に示すように,元画像データのフォルダ名を階層化した階層化画面を表示する。この元画像データの階層化画面においては,フォルダ名とともに各フォルダに含まれる画像の数を表示する。そして,操作者のマウス13によるポイントから,表示させる画像のフォルダを取得する(ステップS410)。続いて,レイアウト格納部166に格納されるレイアウトのファイル名を表示し,操作者のマウス13によるポイントから,画像を表示するのに用いるレイアウトを取得する(ステップS412)。」

3 文献3
本願の出願日前に頒布された刊行物であり,当審の拒絶の理由で引用された特開平11-215457号公報(以下,「文献3」という)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0037】カレンダ表示手段113は,指定期間判定手段111で得た指定期間に基づいてカレンダ表示画面の表示およびカレンダ表示画面内の日付別表示欄に縮小画像を表示する。例えば,年別表示指示があった場合には,図7に示すような表示画面の月別表示欄72に,その月内に撮影された画像の縮小画像を表示し,月指定の場合には図8に示すような表示画面の日付別表示欄82に,指定期間(月)内に撮影された画像を日別に表示し,日指定の場合には図9に示すような表示画面の表示欄92にその日に撮影された画像を表示(マルチ表示)する。カレンダ表示手段113は,また,使用者の操作によりカレンダ表示画面の表示欄72,82,または92の表示内容(日付および対応の縮小画像)をスクロールアップ/ダウンさせる。なお,同一日に撮影した画像が複数ある場合には代表画像(例えば,その日の最初に撮った画像)を1個表示するようにし(図9(b)),指示によりその日に撮った画像をマルチ表示(図9(a))するようにしてもよい。」

4 文献4
本願の出願日前に頒布された刊行物であり,当審の拒絶の理由で引用された刊行物である特開2001-119653号公報(以下,「文献4」という)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
(1) 「【0046】一方,スライドスイッチ6aを右にスライドさせると,このマルチメディア情報処理装置は,マルチメディア対応記憶部4に記憶した情報を提示する提示状態になる。
【0047】提示状態になると,整理提示部5は,マルチメディア対応記憶部4に記憶された情報を,時刻を用いて整理し,液晶ディスプレイ5a上に提示する。図6は,この一例を示すものであり,画像獲得部1が獲得した静止画のサムネイルが,1ヶ月のカレンダに表示される様子を示している。サムネイルが表示される欄は,時刻計数部3によって計数された日付と同じ欄に表示される。同一日に複数の静止画を獲得した場合は,獲得した時刻が早い順に上から表示される。例えば,図6のサムネイル画像c1は,図3のデータ名Data002に対応するもので,Data002は7月7日に獲得されたので,図6のカレンダ一覧表の7月7日の欄に表示される。」
(2) 「【0075】また,この第1実施形態で表示したカレンダ一覧表示は,1ヶ月単位であったが,マルチメディア対応記憶部4に記憶された画像情報とメディア情報とを,時刻を用いて整理して提示する方法であればなんでも良い。例えば,スケジュールソフトのように,1日単位や一週間単位で時刻順に表示しても良い。あるいは,同じタイトルを持つ静止画だけを,記録した時刻順に一覧しても良い。これにより,顧客名簿などにも対応できる。また,メディア情報としてテキストが入力された場合は,ユーザが指定した文字列を含む静止画のみを,記録した時刻順に一覧表示しても良い。」

5 文献5
本願の出願日前に頒布された刊行物であり,当審の拒絶の理由で引用された特開2003-108976号公報(以下,「文献5」という)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0044】次に,PCにおいてデジタルカメラから「まだ取り込んでいない画像を取り込む」場合の動作手順を図11に基づき説明する。図11はPCにおいてデジタルカメラからまだ取り込んでいない画像を取り込む動作手順を示すフローチャートである。
【0045】図11と上記図10との違いは,ステップS1501のみであり,他のステップSは同様である。ステップS1501で,デジタルカメラからアーカイブビットOnの画像のリストを取得する。これにより,まだ取り込んでいない画像のみの取り込みを行う。」

6 文献6
本願の出願日前に頒布された刊行物であり,原査定で引用された特開2001-309219号公報(以下,「文献6」という)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0017】図1は,本実施形態における画像転送システムを示す概念図である。撮像装置10は画像管理装置50と無線で通信する。無線にはBT(ブルーツース)又は携帯電話などが含まれる。また撮像装置10と画像管理装置50は無線の他RS323C又はUSBなどのケーブル経由で通信を行ってもよい。
【0018】本実施形態における撮像装置10はデジタルカメラである。画像管理装置50は,パーソナルコンピュータ,アルバム装置,及びプリントサービスシステムのラボサーバなどである。ユーザは撮像装置10で撮影した撮影画像をこれらの画像管理装置50に転送して保存する。
【0019】撮像装置10は,撮影した画像に固有の識別情報を付与する。撮影画像に固有の識別情報とは,各撮影画像を表すIDのことであり,他の撮影画像と重なることのないものである。ここで言う識別情報は,撮像装置10で過去に撮影された全ての他の撮影画像及び将来撮影される他の撮影画像と重ならないものである。また識別情報は,画像管理装置50に既に転送済みの撮影画像とも重ならないものである。さらに識別情報は,他の撮像装置で撮影された他の撮影画像とも極めて高い確率で重ならないものである。識別情報は,ユニバーサルユニークID(Universally Unique Identifier)又は撮影画像データからハッシュ関数を用いて作成されるハッシュ値などである。
【0020】図2に画像ファイルの模式図を示す。画像ファイルは圧縮画像データとヘッダを含む。撮像装置10は,撮影画像を含む画像ファイルのヘッダ部分に識別情報を付与する。
【0021】各撮影画像には,撮像装置10により,このような固有の識別情報が付与されるので,識別情報を用いて撮影画像を管理することができる。識別情報を用いて撮影画像を転送する本実施形態の処理を以下に説明する。
【0022】図1に戻り,撮像装置10は,実際の撮影画像の転送に先立ち,撮像装置10が保持する撮影画像に対応する識別情報のリストである転送候補識別情報リスト(転送候補IDリスト)を画像管理装置50に転送する。転送候補識別情報リストには,撮像装置10が保持する全ての撮影画像に対応する識別情報が含まれる。
【0023】一方画像管理装置50は,画像管理装置50が既に保持する撮影画像に対応する識別情報のリストである既存識別情報リスト(既存IDリスト)を保持している。画像管理装置50は,撮像装置10から受け取った転送候補識別情報リストから,画像管理装置50が既に保持する撮影画像に対応する識別情報を削除して,残りの識別情報を転送対象識別情報リスト(転送対象IDリスト)として撮像装置10に送信する。転送対象識別情報リストには,撮像装置10が保持する撮影画像のうち,画像管理装置50に既に転送済みの撮影画像を除いた撮影画像に対応する識別情報が含まれる。
【0024】撮像装置10は,転送対象識別情報リストに従って撮影画像を画像管理装置50に転送する。
【0025】このように撮像装置10は,実際に撮影画像を転送する前に,転送先の画像管理装置50と識別情報をやり取りすることによって,既に転送済みの撮影画像を知ることができる。そのため,既に転送済みの撮影画像を除いた撮影画像を画像管理装置50に転送するので,重複した撮影画像の転送を防ぐことができる。以下に本実施形態における画像転送システムについて詳細に説明する。」

第4 対比及び判断
1 対比
(1) 引用発明は「Win98/Me/2000/XPのOSに対応する」ものであるところ,「Win」はマイクロソフト社の「Windows」(登録商標),「OS」はコンピュータ上で動作するオペレーティングシステムをいうものであることは明らかであるが,かかるオペレーティングシステムが,階層構造の多数のフォルダ(ディレクトリ)によりファイルを記憶管理するファイルシステムを採用することは,当業者によく知られているところである。
そして,引用発明は「画像のサムネイルを表示」をすることができるから,本願発明の「表示手段」を有し,かつ,「表示を制御」することができるものであることは明らかであり,引用発明の「Win98/Me/2000/XPのOSに対応する画像管理ソフト」は,当該「OS」が動作するコンピュータで動作しているものであるから,引用発明は実質的に本願発明の「情報処理装置」を有しているということができる。
よって,引用発明と,本願発明は,複数のフォルダのそれぞれに分類して記憶されている画像の表示手段による表示を制御する情報処理装置である点で一致する。
(2) 引用発明の「Exifの撮影日」は本願発明の「画像に付加された時間情報」に相当し,引用発明の「自動的にデータベース化」は本願発明の「分類」に相当する。
よって,引用発明と,本願発明は,画像に付加されている時間情報に基づいて所定の時間単位を基準として画像を分類する分類手段を具備している点で一致する。
(3) 引用発明は「タブ」,「クリックすると」のような,操作を受け付ける手段を有しているから,引用発明と,本願発明は,ユーザからの操作を受け付ける操作手段を具備している点で一致する。
(4) 引用発明は,「フォルダツリーを選んで画像のサムネイルを表示」したり,「カレンダーの年,月,日,時間の部分をクリックすると,該当する画像をファイルペインに一覧表示する」ものであるから,操作手段の操作によって画像の表示を制御するものである。
よって,引用発明と,本願発明は,操作手段の操作に応じて,前記画像の前記表示手段による表示を制御する表示制御手段を具備している点で一致する。
(5) 引用発明の「ナビゲーションペイン」は本願発明の「第1の表示領域」に相当し,引用発明の「タブ」は本願発明の「操作子」に相当する。
そして,引用発明の記載された文献1の図面2と図面3を比較すると,カレンダー機能を示す図面2では「カレンダー」が囲まれ,カテゴリー機能を示す図面3では「カテゴリー」が囲まれているところ,当該画面部分は明らかに「タブ」様であり,各摘記箇所の枠囲みは,当該タブが選択されていることを明示している記載ということができる。
すると,引用発明では,文献1の図面1の状態では,明示はないものの「フォルダ」の「タブ」が選ばれ,図面2の状態では「カレンダー」の「タブ」が選ばれているということができる。
さらに,引用発明の「データベース化された年別,月別,曜日別,時間別に該当する画像をファイルペインに一覧表示する」ことは,本願発明の「前記時間情報に基づいて分類して表示」することに相当し,引用発明の「フォルダツリーを選んで画像のサムネイルを表示する」ことは,本願発明の「画像をフォルダ毎に表示する」ことに相当するから,引用発明の「カレンダー」の「タブ」が本願発明の「第1の操作子」に相当し,引用発明の「フォルダ」の「タブ」が本願発明の「第2の操作子」に相当することになる。
よって,引用発明と,本願発明は,前記画像を前記時間情報に基づいて分類して表示するための第1の操作子と,前記画像を前記フォルダ毎に分類して表示するための第2の操作子とを前記表示手段の第1の表示領域に表示させる構成を具備する点で一致する。
(6) 引用発明の「カレンダー機能」は,「カレンダー」の「タブ」が選択された状態であることは既に検討したとおりである。
そして,引用発明の「年,月,日,時間」は本願発明の「時間単位」の「期間」に相当し,引用発明の「カレンダー」は時間的に異なる期間である「日」を複数表示しているから,引用発明は,本願発明の「時間単位を基準とする複数の異なる期間」を表示していることは明らかである。
さらに,引用発明の「年,月,日,時間の部分をクリック」することができる「カレンダー」を「ナビゲーションペイン」に表示することは,本願発明の「複数の異なる期間」を「操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ」ることに相当し,引用発明の「クリックすると,年別,月別,曜日別,時間別に該当する画像をファイルペインに一覧表示する」ことは,本願発明の「前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数の異なる期間の中から所定の期間が選択されたとき,選択された期間に含まれる前記画像を前記表示手段の第2の表示領域に表示」することに相当する。
よって,引用発明と,本願発明は,前記操作手段に対するユーザの操作により前記第1の操作子が選択された場合,時間単位を基準とする複数の異なる期間を,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ,さらに,前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数の異なる期間の中から所定の期間が選択されたとき,選択された期間に含まれる前記画像を前記表示手段の第2の表示領域に表示させる構成を具備する点で一致する。
(7) 引用発明の「選んで」は本願発明の「選択」することに相当し,引用発明の「フォルダツリー」は本願発明の「複数のフォルダの少なくとも1つ」に相当するから,引用発明の「ナビゲーションペインにフォルダツリーを表示」することは本願発明の「複数のフォルダの少なくとも1つを,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ」ることに相当する。
そして,引用発明の「ナビゲーションペインにフォルダツリーを表示し,フォルダツリーを選んでファイルペインにサムネイル表示をすることができる機能」は「フォルダ」の「タブ」が選ばれた状態であることは,既に検討したとおりである。
よって,引用発明と,本願発明は,前記操作手段に対するユーザの操作により前記第2の操作子が選択された場合,前記複数のフォルダの少なくとも1つを,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ,さらに,前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数のフォルダの中から所定のフォルダが選択されたとき,選択されたフォルダに分類されている前記画像を前記第2の表示領域に表示するという構成を具備している点で一致する。

2 一致点及び相違点
よって,本願発明と引用発明は以下の点で一致する。
「複数のフォルダのそれぞれに分類して記憶されている画像の表示手段による表示を制御する情報処理装置において,
画像に付加されている時間情報に基づいて所定の時間単位を基準として画像を分類する分類手段と,
ユーザからの操作を受け付ける操作手段と,
前記操作手段に対するユーザの操作に応じて,前記画像の前記表示手段による表示を制御する表示制御手段と
を備え,
前記表示制御手段は,
前記画像を前記時間情報に基づいて分類して表示するための第1の操作子と,前記画像を前記フォルダ毎に分類して表示するための第2の操作子とを前記表示手段の第1の表示領域に表示させ,
前記操作手段に対するユーザの操作により前記第1の操作子が選択された場合,時間単位を基準とする複数の異なる期間を,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ,さらに,前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数の異なる期間の中から所定の期間が選択されたとき,選択された期間に含まれる前記画像を前記表示手段の第2の表示領域に表示させ,
前記操作手段に対するユーザの操作により前記第2の操作子が選択された場合,前記複数のフォルダの少なくとも1つを,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ,さらに,前記操作手段に対するユーザの操作により前記複数のフォルダの中から所定のフォルダが選択されたとき,選択されたフォルダに分類されている前記画像を前記第2の表示領域に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。」
そして,以下の点で相違する。
・相違点1 本願発明は「外部機器から画像を取り込む場合,記憶されている画像の中に同一の画像が存在するか否かを判定し,すでに取り込んでいる画像の中に同一の画像が存在しないとき,前記外部機器から当該画像を取り込む取り込み手段」を有し,該「外部機器から取り込んだ画像」を分類手段の分類対象としているのに対し,引用発明は画像を外部機器から取り込む取り込み手段が明記されていない点。
・相違点2 本願発明は「複数の異なる時間単位を基準とする複数の異なる期間と,前記時間情報に基づいて各期間に分類される前記画像の個数を示す情報とを,前記操作手段により選択可能に前記第1の表示領域に表示させ」るのに対し,引用発明はナビゲーションペインにカレンダーを表示し,カレンダーの複数の日付を選択することができ,年,月,日,時間の部分をクリックするとサムネイルをファイルペインに表示するものの,「画像の個数」は表示しておらず,前記「年,月,日,時間」のような「異なる時間単位を基準とする」期間を同時に表示するものであるか否かは定かでない点。
・相違点3 本願発明は「選択された期間に含まれる前記画像を,選択された期間の基準となる時間単位より小さい時間単位を基準とする複数の期間に区分けして前記第2の表示領域に表示させる」のに対し,引用発明は,ナビゲーションペインにカレンダーを表示し,カレンダーの複数の日付を選択することができ,年,月,日,時間の部分をクリックするとサムネイルをファイルペインに表示するものの,その画像表示をさらに「小さい時間単位を基準とする複数の期間に区分けして表示」するか否かは定かでない点。
3 相違点についての検討
(1) 相違点1について
画像の表示を行う情報処理装置において,外部機器から画像を取り込むこと,即ち,本願発明のように情報処理装置に「外部機器から画像を取り込む取り込み手段」を設けることは周知であり,画像の取り込みにあたり,取り込み済の画像を取り込まないようにすることは,文献7(摘記箇所及び図6参照。),文献8(摘記箇所参照。)に記載されているように周知である。
また,引用発明が記載された文献1の図面1には,「取り込み」というアイコンと認められるものが記載されており,引用発明において,取り込んだ画像も管理の対象となることが示唆されているといえる。
よって,引用発明の情報処理装置に外部機器から画像を取り込む取り込み手段を設け,分類手段により分類される画像を,外部機器から取り込んだ画像とすることにより,相違点1に係る構成を解消することは,当業者が適宜なし得ることである。
(2) 相違点2について
文献2には,画像データを日付により区分するものにおいて,当該日付からなるフォルダを階層化表示する場合,フォルダ名と共に各フォルダに含まれる画像の数を表示することが記載されている(摘記箇所及び図12参照。)。
ここで,文献2の図12を参照すると,「3月(236枚)」との記載,並びに,「4月」フォルダの下層に「5日(11枚)」及び「7日(5枚)」のような記載があるから,本願の「複数の異なる時間単位を基準とする複数の異なる期間」について「画像の個数」と共に選択可能に表示しているものであることは明らかである。
そして,引用発明と文献2記載の技術は,いずれも,画像データを日付等の時間情報により,該当する時間情報のものを表示可能とするものである点で本願発明1と共通するものであるから,引用発明に文献2記載の技術を適用し,本願発明のようにすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
(3) 相違点3について
画像を期間単位で表示するものにおいて,画像を,表示対象となる期間をさらに細分化した期間ごとに区分けして表示する態様は,文献3(摘記箇所並びに図7及び図8参照。),文献4(摘記箇所及び図6参照。)にあるようにこの出願前周知の態様であり,引用発明にかかる周知の態様を採用することは,当業者であれば適宜なし得ることである。
(4) そして,引用発明に,文献2記載の技術及び上記周知技術を適用し,本願発明のように構成することによって生じる効果も,当業者であれば予測可能な程度のものにすぎない。
(5) 審判請求人の主張について
ア 本件審判請求人(以下,「請求人」という。)は,平成24年2月24日付け意見書において,『例えば,文献1の記載の発明では,「フォルダツリーを選んで一度サムネイルを表示した画像は,Exifの撮影日,ファイルの更新日,サムネイル作成日のいずれかによって自動的にデータベース化される。」と記載されているように,外部機器から取り込んだ画像は,取り込んだときには分類されず,いったんフォルダツリーを選んでサムネイルを表示して初めて日付情報に基づいて分類されます。』((4)(c)第3段落)と,本願発明と引用発明の相違を主張している。
しかしながら,引用発明の「カレンダー機能」は,「データベース化された年別,月別,曜日別,時間別に該当する画像」を「一覧表示」しており,該「一覧表示」に先立ち「Exif情報」「によって自動的にデータベース化」がされているのだから,相違点1で検討したように引用発明に周知の画像の取り込み機能を付加した発明でも,画像の取り込みの後,「分類手段」による分類がなされ,表示がされることとなる以上,請求人の主張は採用の限りではない。
イ また,請求人は,『また,周知技術して挙げられている文献3(特開平11-215457号公報)には,年,月,日のいずれかの時間単位を選択し,選択した時間単位より小さい時間単位を基準とする複数の期間に区分けして画像を表示することが記載されています。しかし,文献3に記載の発明では,所望の期間の画像を表示させるためには,いったん表示する時間単位を選択してから,所望の期間を選択しなければなりません。例えば,4月に撮影した画像を日単位で表示する場合,ボタン812で「月」を選択してから,「4月」を指定しなければいけません。
これに対して,請求項1に記載の本願発明では,第1の表示領域に表示されている複数の異なる時間単位を基準とする複数の異なる期間から所望の期間を選択するだけで,選択した期間の画像を,選択した期間の基準となる時間単位より小さな時間単位で区分けして表示させることができます。例えば,本願の図30の月ボタン672-2を選択するだけで,図31に示されるように,2001年7月の画像を日単位でカレンダー表示させたり,年ボタン671-3を選択するだけで,2001年の画像を日単位でカレンダー表示させたりすることができます。すなわち,請求項1に記載の本願発明では,画像を表示させる時間単位と期間を1つの操作により指定することができます。』と主張している。
しかしながら,文献2には,一般的な階層構造からなるフォルダのように,階層により「異なる時間単位」を表示しているものが示されている(図12(a)参照。)ところであり,相違点2で検討したよう,引用発明に文献2の技術を組合せた発明は,「第1の表示領域」において,一般的なフォルダ同様,異なる時間単位を任意に選択可能な表示がなされることになるのだから,これに,相違点3で検討した「第2の表示領域」に係る周知技術を付加すれば,異なる時間単位を任意に選択可能となることとなる以上,請求人の主張は採用の限りではない。

4 まとめ
以上のように,本願発明は,引用発明並びに文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者であれば容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5 まとめ
以上検討したように,本願発明は,引用発明並びに文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者であれば容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,この出願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-04 
結審通知日 2012-04-05 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2007-120780(P2007-120780)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 近藤 聡
齊藤 健一
発明の名称 情報処理装置、表示制御方法、およびプログラム  
代理人 稲本 義雄  

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