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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1257727 |
審判番号 | 不服2010-15299 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-08 |
確定日 | 2012-05-28 |
事件の表示 | 特願2003-356308「ピック・アンド・プレイス式スピンドル・アセンブリ用一体型空気流制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日出願公開、特開2004-282009〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成15年10月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年10月17日,米国)の出願であって,平成22年3月1日付けで,同年2月10日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。 その後,当審において,平成23年8月18日付けで,平成22年7月8日付けの手続補正の却下の決定を行うとともに拒絶理由を通知したところ,平成23年11月29日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされるとともに意見書が提出された。 第2.当審で通知した拒絶理由 平成23年8月18日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 本願の請求項(1?7,9?11)に係る発明は,本願の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.実願平1-4079号(実開平2-95296号)の マイクロフィルム 2.実願昭63-157251号(実開平2-78283号)の マイクロフィルム 第3.当審の判断 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明は,平成23年11月29日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「部品ピック・アンド・プレイス機械用のスピンドル・アセンブリであって,前記スピンドル・アセンブリは,スピンドルを当該スピンドル軸線方向に沿って移動するように収容するハウジングを含み,前記ハウジングは,前記スピンドルの内部ボアへの空気流を制御する,前記スピンドルから隔てられた多くとも2つの電動弁を収容しており,前記スピンドルの前記内部ボアは,部品をピック・アンド・プレイスするために用いる空気流を通すために,一端に開口を備えており,前記多くとも2つの電動弁のうちの少なくとも1つの弁と,前記スピンドルの前記内部ボアとの間を流れる空気流が,前記ハウジングの内部にその一部として一体的に形成されている空気通路を介して流れる,部品ピック・アンド・プレイス機械用のスピンドル・アセンブリ。」 2.刊行物記載事項 (1)本願の出願日(優先日)よりも前に頒布された刊行物である,実願平1-4079号(実開平2-95296号)のマイクロフィルム(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 1a)「本考案は,電子部品等のような小型部品の複数個を,真空によって同時に吸着するようにした吸着装置に関するものである。」(第1頁第18?20行) 1b)「前記各吸着コレット2は,前記ヘッダ1における水平部1aに,上下方向に摺動自在に嵌挿したスピンドル軸3の下端に取付き,該各スピンドル軸3の上端における頭部3aを,前記ヘッダ1における垂直部1bに基端を固着した板ばね4の先端に固着することにより,前記各吸着コレット2の各々を,板ばね4によって上下動可能に弾性的に吊設するように構成されている。」(第6頁第16行?第7頁第3行) 1c)「前記ヘッダ1における垂直部1bの内部には,空気供給通路6を,前記各吸気コレット2の列方向に延びるように形成して,この空気供給通路6の一端に,図示しないコンプレッサー等の圧搾空気源からの空気供給用ホース7を接続する。 また,前記ヘッダ1における垂直部1bの内部には,前記空気供給通路6内に連通するノズル9と,大気へのデイフューザ10とによって構成したエゼクター8の複数個を,前記空気供給通路6の長手方向に適宜間隔で設ける。なお,符号11は,前記各エゼクター8におけるノズル9の着脱を行うための盲栓を,符号12は,前記各エゼクター8におけるデイフューザ10からの空気が大気中に放出するときに発生する流出音を消すための多孔質の消音筒体である。 そして,前記各エゼクター8における吸込み口8aと,前記各吸着コレット2とを,ゴムーホス等のように可撓性に構成した真空伝達通路13を介して各々別々に接続する。 この構成において,ヘッダ1の垂直部1bにおける内部の空気供給通路6内に供給された圧搾空気は,各エゼクター8の箇所に各々分配され,該各エゼクター8においてそのノズル9から大気へのデイフューザ10に向って噴出することにより,各エゼクター8における吸込み口8aには,ベルヌイの定理により真空が発生するから,各吸着コレット2の各々に対して電子部品等の小型部品を吸着することができるのである。」(第7頁第9行?第8頁第16行) 上記記載事項1a?1cによれば,引用例1には以下の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明」という)。 「電子部品等の小型部品の吸着装置であって,ヘッダ1の水平部1aにスピンドル軸3を上下方向に摺動自在に嵌挿し,スピンドル軸3の下端に吸着コレット2を取り付け,ヘッダ1の垂直部1bの内部には,一端を圧搾空気源からの空気供給用ホース7に接続した空気供給通路6を形成するとともに,空気供給通路6に連通するノズル9と大気へのデイフューザ10とによって構成されるエゼクター8を設け,エゼクター8における吸込み口8aと吸着コレット2とを真空伝達通路13を介して接続し,空気供給通路6内に供給した圧搾空気をエゼクター8のノズル9からデイフューザ10に向けて噴出することにより,エゼクター8の吸込み口8aに真空を発生させるようにした吸着装置。」 (2)同じく本願の出願日(優先日)よりも前に頒布された刊行物である,実願昭63-157251号(実開平2-78283号)のマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 2a)「本考案は,負圧によって鉄板やガラス板などのワークを吸着するための吸着装置に関する。」(第2頁第4?5行) 2b)「吸着装置1は,吸着パッド2,空気流によって負圧を発生し吸着パッド2に負圧を供給するエジェクタバルブ3,及び,エジェクタバルブ3に圧縮空気を供給するための切換え弁4から構成されている。 エジェクタバルブ3及び切換え弁4は,ハウジング11に一体的に設けられており,ゴムなどの弾性材料からなる吸着パッド2は,ハウジング11の凸部11aに嵌まり込んで取りつけられている。」(第5頁第12行?第6頁第1行) 2c)「切換え弁4は,ハウジング11の中央部に位置するよう連結部11bによって支持された円筒状のシリンダ21,シリンダ21の内周面を軸方向に摺動可能な弁体22,弁体22の下端面中央部に連結され吸着パッド2の吸着面2aから突出した操作バー23,弁体22を吸着面2aの方向へ付勢する圧縮バネ28,及び,ハウジング11の周面から突出して設けられた供給口24などから構成されている。なお,シリンダ21の外周面とハウジング11の内周面との間が,上述のエジェクタ室14又はエジェクタ室14と負圧室2bとを連通する通路となっている。 弁体22には,その外周面に環状の溝25が形成されており,この溝25は流路26によって空気室30に開口し,空気噴出口12の流入側に連通している。供給口24には供給孔27が設けられており,弁体22が第1図の状態から上方へ移動したときに,弁体22の溝25が供給孔27に接続されるようになっている。」(第6頁第10行?第7頁第8行) 2d)「供給口24には,図示しないホースなどが接続され,供給孔27には圧縮空気が供給されている。」(第7頁第16?17行) 2e)「そうすると,操作バー23の先端部23aがワークWに当接し,操作バー23は第1図の鎖線で示すようにシリンダ21に対して相対的に上昇移動し,これによって弁体22が上方へ移動して溝25が供給孔27の位置に達し,供給孔27からの圧縮空気が流路26を経て空気噴出口12に流入し,その上端部から噴出する。 これによって,エジェクタバルブ3のエジェクタ室14には負圧が発生し,その負圧は吸着パッド2の負圧室2bに供給され,ワークWは吸着パッド2の吸着面2aに吸着される。」(第8頁第6?16行) 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「吸着装置」,「ヘッダ1」は,それぞれ本願発明の「部品ピック・アンド・プレイス機械用のスピンドル・アセンブリ」,「ハウジング」に相当する。また,引用発明の「スピンドル軸3」及びこれに一体的に取り付けられる「吸着コレット2」と「真空伝達通路13」は,本願発明の「スピンドル」に相当するといえるから,引用発明における,吸着コレット2に至る真空伝達通路13は,本願発明の「スピンドルの内部ボア」に相当する。そして,この真空伝達通路13が吸着コレット2側の端部あるいはエゼクター8の吸込み口8a側の端部に開口を備えることは明らかであるから,引用発明は,本願発明における「スピンドルの内部ボアは,部品をピック・アンド・プレイスするために用いる空気流を通すために,一端に開口を備えており,」との要件を備える。 したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば, 「部品ピック・アンド・プレイス機械用のスピンドル・アセンブリであって,前記スピンドル・アセンブリは,スピンドルを当該スピンドル軸線方向に沿って移動するように収容するハウジングを含み,前記スピンドルの内部ボアは,部品をピック・アンド・プレイスするために用いる空気流を通すために,一端に開口を備えている部品ピック・アンド・プレイス機械用のスピンドル・アセンブリ。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明は,ハウジングが,スピンドルの内部ボアへの空気流を制御する,スピンドルから隔てられた多くとも2つの電動弁を収容しており,そのうち少なくとも1つの弁とスピンドルの内部ボアとの間を流れる空気流が,ハウジングの内部にその一部として一体的に形成されている空気通路を介して流れるのに対して,引用発明は,吸着コレット2に至る真空伝達通路13への空気流を制御する弁を,少なくともヘッダ1内には備えていない点で相違する。 上記相違点について検討する。 引用例2には,吸着パッドに負圧を供給するエジェクタバルブと該エジェクタバルブに圧縮空気を供給するための切換え弁とをハウジングに一体的に設けたワークの吸着装置が記載されている(記載事項2a?2e参照)。この「切換え弁」は,本願発明の「多くとも2つの電動弁」に相当するものである。 引用発明において,空気供給通路6への圧搾空気の供給は,部品を吸着・保持するのに必要な所定のタイミングで行う必要があり,そのためには,コンプレッサー等の圧搾空気源から空気供給通路6に至るまでの流路の何処かに弁を設けることが必要であることは明らかであるところ,引用例2を参酌すれば,ヘッダ1内にその弁を設けることは,当業者が容易に想到し得たといえる。このとき,真空伝達通路13の吸込み口8a側の端部とちょうど同じ位置ではなく,わずかでも離れたところに弁を設ければ,必然的に,本願発明でいうところの「弁とスピンドルの内部ボアとの間を流れる空気流が,ハウジングの内部にその一部として一体的に形成されている空気通路を介して流れる」との構成を採ることになる。また,電動弁(通常,電磁弁と呼ばれるもの)は,制御弁としてきわめて常識的に採用される形態の弁に過ぎない。したがって,上記相違点に係る本願発明の構成は,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。 以上のことから,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.請求人の主張に対して 請求人は,平成23年11月29日付け意見書において,1つの切換え弁と1つの吸着パッドとが一体となった引用例2の構成を,1本の空気供給用ホースから複数の吸着コレットに圧縮空気を供給する引用例1の構成に適用することには無理があること,また,本願発明の目的は,(電動弁を)スピンドルに隣接して配置して,ノズル先端に加えるべき空気圧である真空を形成するために要する時間を最小にし,起動時間を短縮することであり,引用例2における切換え弁を以てしては,本願発明の目的を達成することができないことを主張する。 しかし,引用例2から参酌した事項は,切換え弁を動作させるための具体的な機構ではなく,吸着パッドに負圧を供給するエジェクタバルブに圧縮空気を供給するための切換え弁をハウジングの内部に配置することである。 また,引用発明のような吸着装置は,電子部品を組み付ける生産ライン等において使用されるもので,吸着に要する時間を短縮することは,生産効率を上げるための自明の課題である。電動弁を使用すれば,弁の作動時間を短縮するのに有利であることも明らかである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 したがって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-22 |
結審通知日 | 2011-12-26 |
審決日 | 2012-01-17 |
出願番号 | 特願2003-356308(P2003-356308) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 永一、井上 猛 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
栗山 卓也 川向 和実 |
発明の名称 | ピック・アンド・プレイス式スピンドル・アセンブリ用一体型空気流制御装置 |
代理人 | 齋藤 晴男 |