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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1257728
審判番号 不服2011-1004  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-17 
確定日 2012-05-28 
事件の表示 特願2005- 44914「燃料噴射ノズル」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 8日出願公開、特開2005-240805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年2月22日(パリ条約による優先権主張2004年2月23日、欧州特許庁)の出願であって、平成22年3月25日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し平成22年6月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年9月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、平成23年1月17日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。


第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成22年6月29日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「ノズル・ボディ(2)と、前記ノズル・ボディ(2)に結合されたノズル・ヘッド(3)とを有し、
前記ノズル・ボディ(2)の内部に配置されたノズル・ニードル(7)を有し、前記ノズル・ニードルの端部はバルブ・シート(8)と協働して、開位置では前記ノズル・ニードル(7)が前記バルブ・シート(8)のところで燃料通路を開放し、閉位置では前記通路を閉鎖するように働き、
前記バルブ・シート(8)から前記ノズル・ヘッド(3)の中を延びる、ある流れ直径の縦穴(32)を有し、又
前記縦穴(32)から始まり、燃料を燃焼機関の燃焼室(20)の中へそれを通って導入することができる少なくとも1つのノズル孔(31)を有する
内燃機関用の燃料噴射ノズルであって、
前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17であることを特徴とする燃料噴射ノズル。」


第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-301233号公報(以下、「引用例」という。)
(1)引用例の記載事項
引用例には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は、発明の理解の一助として、当審において付したものである。

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃焼エンジン、特に大型ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズル(1)のノズルヘッド(2)用材料において、
前記ノズルヘッド用材料が、通常生じる不純物を除き、重量%で、Ni:0?50%、炭素(C):0?5%、Si:0?5%、およびCr:少なくとも50%を含むクロム基合金であることを特徴とするノズルヘッド用材料。
【請求項2】 La、Ce、イットリウム(Y)、Hf、Sc、および希土類元素から成る群から選ばれた少なくとも1つの反応元素を含み、各反応元素の合計含有量が最大5%である請求項1に記載されたノズルヘッド用材料。
【請求項3】 通常生じる不純物を除き、重量%で、Ni:少なくとも45%、Cr:50?55%、炭素(C):0?5%、Si:0?5%と、および1種以上の反応元素:0?5%とを含む請求項1または請求項2に記載されたノズルヘッド用材料。
【請求項4】 前記各反応元素の含有量が最大1%、とりわけ最大0.2%であり、炭素(C)量が最大1%、とりわけ最大0.05%であり、Si量が最大1%、とりわけ最大0.5%である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたノズルヘッド用材料。
【請求項5】 熱間等静水圧圧縮成形法によって製造された請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたノズルヘッド用材料。
【請求項6】 大部分の粒径が10?200マイクロメータ、とりわけ40?150マイクロメータである金属粉末から製造された請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたノズルヘッド用材料。
【請求項7】 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された材料で製造された、燃焼エンジン、とりわけ大型ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズル用のノズルヘッド。
【請求項8】 長手方向ボア(20)と、燃料を燃焼空間に導入するための、前記長手方向ボアから始まる少なくとも1つのノズル開口とを有し、前記長手方向ボア(20)から前記ノズル開口(21)への移行部分が、好ましくは電気化学的に丸みを与えられている請求項7に記載されたノズルヘッド。
【請求項9】 請求項6または請求項7に記載されたノズルヘッドを有する燃焼エンジン用燃料噴射ノズル。
【請求項10】 請求項9に記載された燃料噴射ノズルを有する燃焼エンジン、とりわけ大型ディーゼルエンジン。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項10】)

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料噴射ノズルのノズルヘッド用材料、この材料から製造されたノズルヘッド、および燃焼エンジン(とりわけ、大型ディーゼルエンジン)の燃料噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、船舶用の駆動ユニットとして、または定置プラントで発電用に使用される大型ディーゼルエンジンでは、燃料噴射ノズルによって、燃料(典型的には、重油またはその他のディーゼル燃料)が燃焼空間内に導入される。これらの噴射ノズルは、通常、燃焼空間内に部分的に突出するノズルヘッド(アトマイザとも呼ばれる)を含む。ノズルヘッドは、熱的、機械的および化学的に高い負荷状態に曝される摩耗部品である。歪の程度に応じて、ノズルヘッドに損傷(例えば、腐食、エロ-ジョンおよび/または摩耗の結果としての材料の消失、または、亀裂)を生じることがあり、これによって破損につながる可能性がある。」(段落【0001】及び【0002】)

(c)「【0021】好適実施態様では、ノズルヘッドは、長手方向ボアと、燃料を燃焼空間に導入するための、長手方向ボアから始まる少なくとも1つのノズル開口とを有し、長手方向ボアからノズル開口への移行部分は好ましくは電気化学的に丸みを付与される(電解加工される)。燃料流路における鋭い縁は、移行領域に丸みを付与することによって回避され、これによって流動状態が最適化される。
【0022】本発明ノズルヘッドは、燃焼エンジン用、特にディーゼルエンジン用の燃料噴射ノズルに特に適切である。本発明ノズルヘッド、またはそれが設けられた燃料噴射ノズルは、大型ディーゼルエンジン、例えば、クロスヘッド駆動部を有するユニフロー掃気付きの2行程大型ディーゼルエンジンまたは4行程大型ディーゼルエンジンに特に適する。」(段落【0021】及び【0022】)

(d)「【0025】図1は、全体として符号1で示されている、大型ディーゼルエンジン(特に、ユニフロー掃気付きの2行程大型ディーゼルエンジン)の燃料噴射ノズルの断面である。燃料噴射ノズル1は、ノズル本体3に固定された本発明によるノズルヘッド2の実施態様を含む。ノズルヘッド2は、図示のとおり、ノズルヘッドを別々に、すなわち燃料噴射ノズル1全体を交換する必要なしに交換できるように、ノズル本体3に取り外し可能に取着できることが好ましい。
【0026】ノズルヘッド2は、長手方向ボア20と、複数(図では、2つのみが示されているが、例えば、5つ)のノズル開口21とを有する。各ノズル開口21は、長手方向ボア20から始まり、そこから半径方向に僅かに下方に傾斜するように延在する。
【0027】運転の際、燃料(通常は重油、またはその他のディーゼル燃料)が、それ自体公知の方法で大型ディーゼルエンジンの作動サイクルに断続的に一致して、長手方向ボア20とノズル開口21とを通じて燃焼空間内(詳細は図示せず)に高圧で噴射される。」(段落【0025】ないし【0027】)

(e)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様としてのノズルヘッドを有する燃料噴射ノズルの断面図。
【符号の説明】
1 燃料噴射ノズル、
2 ノズルヘッド、
3 ノズル本体、
20 長手方向ボア、
21 ノズル開口」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】)

(2)上記(1)(a)ないし(e)及び図面から分かること
(ア)上記(1)(a)ないし(e)及び図1から、引用例には、ノズル本体3と、ノズル本体3に固定されたノズルヘッド2とを有する燃焼エンジン用の燃料噴射ノズル1が記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(e)及び図1並びに技術常識から、引用例に記載された燃料噴射ノズル1は、ノズル本体3の内部に配置されたノズル・ニードルを有し、前記ノズル・ニードルの端部はバルブ・シートと協働して、開位置では前記ノズル・ニードルが前記バルブ・シートのところで燃料通路を開放し、閉位置では前記通路を閉鎖するように働くものであることが分かる。

(ウ)上記(1)(a)ないし(e)及び図1並びに技術常識から、引用例に記載された燃料噴射ノズル1は、バルブ・シートからノズルヘッド2の中を延びる、ある流れ直径の長手方向ボア20を有し、又前記長手方向ボア20から始まり、燃料を燃焼エンジンの燃焼空間内へそれを通って導入することができる少なくとも1つのノズル開口21を有するものであることが分かる。

(エ)上記(1)(a)ないし(e)及び図1並びに技術常識から、前記長手方向ボア20の長さは、その流れ直径に比べて大きい値であることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用例には、
「ノズル本体3と、ノズル本体3に固定されたノズルヘッド2とを有し、
ノズル本体3の内部に配置されたノズル・ニードルを有し、前記ノズル・ニードルの端部はバルブ・シートと協働して、開位置では前記ノズル・ニードルが前記バルブ・シートのところで燃料通路を開放し、閉位置では前記通路を閉鎖するように働き、
バルブ・シートからノズルヘッド2の中を延びる、ある流れ直径の長手方向ボア20を有し、又
前記長手方向ボア20から始まり、燃料を燃焼エンジンの燃焼空間内へそれを通って導入することができる少なくとも1つのノズル開口21を有する
燃焼エンジン用の燃料噴射ノズル1であって、
前記長手方向ボア20の長さが前記長手方向ボア20の前記流れ直径に比べて大きい値である燃料噴射ノズル1。」
という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ノズル本体3」は、その技術的意義からみて、本願発明における「ノズル・ボディ(2)」に相当し、以下同様に、「固定された」は「結合された」に、「ノズルヘッド2」は「ノズル・ヘッド(3)」に、「長手方向ボア20」は「縦穴(32)」に、「燃焼エンジン」は「燃焼機関」及び「内燃機関」に、「ノズル開口21」は「ノズル孔(31)」に、「燃料噴射ノズル1」は「燃料噴射ノズル」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「前記長手方向ボア20の長さが前記長手方向ボア20の前記流れ直径に比べて大きい値である」は、「前記縦穴の長さが前記縦穴の流れ直径に比べて大きい値である」限りにおいて、本願発明における「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17である」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明は、
「ノズル・ボディと、前記ノズル・ボディに結合されたノズル・ヘッドとを有し、
前記ノズル・ボディの内部に配置されたノズル・ニードルを有し、前記ノズル・ニードルの端部はバルブ・シートと協働して、開位置では前記ノズル・ニードルが前記バルブ・シートのところで燃料通路を開放し、閉位置では前記通路を閉鎖するように働き、
前記バルブ・シートから前記ノズル・ヘッドの中を延びる、ある流れ直径の縦穴を有し、又
前記縦穴から始まり、燃料を燃焼機関の燃焼室の中へそれを通って導入することができる少なくとも1つのノズル孔を有する
内燃機関用の燃料噴射ノズルであって、
前記縦穴の長さが前記縦穴の前記流れ直径に比べて大きい値である燃料噴射ノズル。」
である点で一致し、以下の<相違点>で相違している。

<相違点>
「縦穴の長さ」と「縦穴の流れ直径」の比について、本願発明においては、「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17である」のに対し、引用発明においては「前記長手方向ボア20の長さが前記長手方向ボア20の前記流れ直径に比べて大きい値である」が、「縦穴(長手方向ボア20)の長さと前記縦穴(長手方向ボア20)の流れ直径の比」がどのような値であるか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。


第5 当審の判断
相違点について、以下に検討する。
引用発明においては、「縦穴(長手方向ボア20)の長さと前記縦穴(長手方向ボア20)の流れ直径の比」がどのような値であるか明らかでないが、引用例の図面を参酌すると、「前記長手方向ボア20の長さが前記長手方向ボア20の前記流れ直径に比べて大きい値である」ことは確かである。
そして、本願発明において、「縦穴(長手方向ボア20)の長さと前記縦穴(長手方向ボア20)の流れ直径の比」が「少なくとも17である」という数値範囲には、これといった臨界的意義が認められない。
してみると、本願発明において「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17であること」とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認められる。

(参考までに、本願の図面と引用例の図面を対照すると、「縦穴(長手方向ボア20)の長さと前記縦穴(長手方向ボア20)の流れ直径の比」は、ほぼ同じであるように見受けられる。)

また、仮に、「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17である」ことが、審判請求人が主張するように「与えられた縦穴の長さに対して流れ直径を小さくすることによって縦穴を細くすることにより、・・・バルブ・シートとノズル孔の間の容積が減少する」ことを意味するとしても、「バルブ・シートとノズル孔の間の容積」を小さくすることにより、噴射終了後にバルブ・シートの下流に残留する燃料を少なくしようとする技術思想は、従来周知の技術思想(以下、「周知技術思想」という。例えば、特開平7-63139号公報の段落【0002】及び【0003】、特開平3-294655号公報の第1ページ右下欄第8行ないし第2ページ左上欄第6行、特開平1-177450号公報の第3ページ右上欄第11行ないし第14行等の記載を参照。)にすぎず、このような技術思想をもってすれば、「与えられた縦穴の長さに対して流れ直径を小さくすることによって縦穴を細くすることにより、・・・バルブ・シートとノズル孔の間の容積が減少する」ようにすることも、当業者が容易に想到できたことといえる。
その際に、「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17であること」と数値範囲を限定することは、上記のように、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

そして、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用発明及び周知技術思想から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術思想に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、審判請求人の主張についてさらに検討する。審判請求人は、審判請求書において、「本願明細書の段落0006に記載されているように本願発明の目的は、作動能力や信頼性を犠牲にすることなく有害排出物の排出量を少なく抑えることができるノズル・ヘッドを有する燃料噴射ノズルを提供することである。この目的を達成するために、本願発明は、「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17である」という構成を採用してバルブ・シートとノズル孔の間の容積を減らし、本明細書の例えば段落0032に記載されているように、「盲穴が著しく小さくなるので、ノズル・ニードル7が再びバルブ・シート8に密封式に押し込まれて噴射工程が終了した後にバルブ・シートの下流に存在する燃料が、かなり少なくなる。その結果、噴射工程が終了した後に、盲穴からの燃料によって燃焼室内及び排気排出用構成部品内で生じる有害な排出物がかなり大幅に減少する」という効果を奏する。・・・(中略)・・・縦穴の長さLは本質的に、内燃機関の設計、特にシリンダヘッドの設計に応じて決定される。長さLの最小値もシリンダヘッドの設計に応じて決定される。一方では、ノズル・ヘッドは燃焼室の内部へ突き出る部分を短くする必要がある。従って、縦穴の長さは、限られた範囲内に収める必要があり、その範囲は狭い。また、縦穴で生じる圧力降下を可能な限り少なくするためにノズル・ヘッドの長さを可能な限り短くしようとする。このように、縦穴の長さLは本質的に内燃機関の設計によって定まる。当業者は、シリンダヘッドの設計が終えた段階で、縦穴の長さを変化させる余地は殆どないことを熟知している。従って、内燃機関の設計におけるパラメータの中で変更することができるのは縦穴の流れ直径だけである。すなわち、縦穴の長さと縦穴の流れ直径の比を大きくすることは、与えられた縦穴の長さに対して流れ直径を小さくすることによってのみ可能となり、これによりバルブ・シートとノズル孔の間の容積が減少することが明らかである。」と主張している。
しかし、本願発明のように「縦穴(32)の長さ(L)と縦穴(32)の流れ直径の比」を限定するだけでは、従来と比較して「盲穴が著しく小さくなる」とはかならずしもいえず、例えば、縦穴の流れ直径が従来と同様であり、縦穴の長さが従来よりも長くなれば、「バルブ・シートとノズル孔の間の容積」はかえって増加することになる。
また、審判請求人も認めているように、「縦穴の長さLは本質的に、内燃機関の設計、特にシリンダヘッドの設計に応じて決定される。」のであるから、内燃機関の大きさや形式や形状が異なれば、それに応じて適した「縦穴の長さL」も変わる。したがって、特定の大きさの、特定の形式の、特定の形状のエンジンについては、「前記縦穴(32)の長さ(L)と前記縦穴(32)の前記流れ直径の比が少なくとも17である」ものが適しているかもしれないが、エンジンの大きさや形式、形状が異なれば、適当な比の値も変わってくるものと解される。たとえば、より小型のエンジンであれば、適当な比の値がより小さくなり、より大型のエンジンであれば、適当な比の値がより大きくなる可能性がある。また、従来よりも大型なエンジンでは、上記のように、ノズル・ヘッドの縦穴の流れ直径が従来のものと同様であり、縦穴の長さが従来のものよりも長いものが適している可能性もある。
したがって、審判請求人が主張するように「内燃機関の設計におけるパラメータの中で変更することができるのは縦穴の流れ直径だけ」であるとはいえないし、「縦穴の長さと縦穴の流れ直径の比を大きくすることは、与えられた縦穴の長さに対して流れ直径を小さくすることによってのみ可能」ともいえず、「これによりバルブ・シートとノズル孔の間の容積が減少することが明らか」でもない。
したがって、審判請求人の上記主張は、当を得ていない。


第6 むすび
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-28 
結審通知日 2012-01-06 
審決日 2012-01-17 
出願番号 特願2005-44914(P2005-44914)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩附 秀幸  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
安井 寿儀
発明の名称 燃料噴射ノズル  
代理人 森 徹  
代理人 田中 正  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  

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