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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1257755
審判番号 不服2009-9553  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-07 
確定日 2012-06-01 
事件の表示 特願2008-101821「コンピュータが実行可能なワークフロー制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日出願公開、特開2008-186478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、1997年12月18日(パリ条約による優先権主張1996年12月18日、米国)を国際出願日とする特願平10-528008号の一部を平成20年4月9日に新たな特許出願としたものであって、平成21年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年5月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同年6月8日に手続補正がなされ、当審において、平成22年6月8日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月9日に手続補正がなされ、さらに、平成23年1月20日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月21日に手続補正がなされたものである。

第2 本願の請求項2に係る発明

本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年7月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項2】
データベースに記憶されており組織と関連付けられているオペレータ識別子と関連して実行される作業項目の処理を制御するコンピュータによって実現される方法であって、
(a)前記作業項目を処理する際に用いることができそれぞれがルールの組と関連付けられている複数のノードを定義する情報を、メモリに記憶するステップと、
(b)ノードの間の組織上の関係を定義して前記ノードによる前記作業項目の処理を制御するプログラマブルなデータ構造を前記メモリに記憶するステップと、
(c)前記ノードの間の組織上の関係を用いて、どのオペレータ識別子を前記作業項目の中の第1の作業項目と関連付けることができるかを制御するステップと、
(d)ある1つのオペレータ識別子が前記第1の作業項目と関連付けられているものと同一の組織識別子と関連付けられているかどうかを判断するステップと、
(e)前記ある1つのオペレータ識別子が前記第1の作業項目と関連付けられているものと同一の組織識別子と関連付けられていない場合には、前記ある1つのオペレータ識別子と前記第1の作業項目とが関連付けられることを回避するステップと、
(f)前記ノードの間での前記作業項目のフローをそれぞれの対応するノードと関連付けられたルールの組に従って制御するプロセスを実行するステップであって、前記作業項目は当該作業項目と同一の組織識別子と関連付けられているオペレータ識別子と関連付けられている、ステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

第3 平成23年1月20日付け拒絶理由通知の概要

平成23年1月20日付け拒絶理由通知は、概略、次のとおりである。

「[理由1]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・・・(中略)・・・
・請求項2
請求項2に記載された「(c)前記ノードの間の組織上の関係を用いて、前記作業項目の処理の変更を制御するステップ」は、発明の詳細な説明または図面に記載されたいずれのステップ(ステップ300?340、400?420、500?550)にも該当しない。
また、請求項2に記載された「(d)特定のオペレータ識別子と関連して特定の作業項目の処理を変更することが前記組織上の関係と適合的であるかどうかを判断するステップ」、「(e)前記変更が前記組織上の関係と適合的でない場合には、前記特定の作業項目の処理の変更を回避するステップ。」は、上記ステップ(c)と関連するから、上記ステップ(d)(e)も、発明の詳細な説明に記載されていない。
したがって、請求項2の記載は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではない。」

第4 判断

本願発明は、上記(a)?(f)の一連のステップを含む方法である。
これに対し、発明の詳細な説明には、ステップ300からステップ340までの一連のステップと、ステップ400からステップ420までの一連のステップと、ステップ500からステップ550までの一連のステップとが記載されている。
そこで、本願発明の上記(a)?(f)の一連のステップと、発明の詳細な説明に記載された上記一連のステップとを対比する。

1.本願発明の「(a)前記作業項目を処理する際に用いることができそれぞれがルールの組と関連付けられている複数のノードを定義する情報を、メモリに記憶するステップと、
(b)ノードの間の組織上の関係を定義して前記ノードによる前記作業項目の処理を制御するプログラマブルなデータ構造を前記メモリに記憶するステップと、」について

発明の詳細な説明及び図3には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した)。
「【0028】
更に詳しくは、図8を参照すると、アクセス制御が、既に述べたように、下位組織42、46の間にだけでなく、第1及び第2の下位組織42、46のそれぞれの内部においても、提供される。上述したように、作業項目10はデータベース14に記憶される(ステップ400)。メモリ部分175(図6)は、ノード52を定義する(ノード・データ構造60などの)情報を記憶し、メモリ部分73は、ノード52の中の第1のノードとノード52の中の第2のノードとの間の組織上の関係を定義する(構造65などの)プログラムされたデータ構造を記憶する。このプログラムされたデータ構造は、次に、ノードの間の組織上の関係を提供して、オペレータの1人による、作業項目10へのアクセス又は作業項目10の処理を制御するのに用いられる。」
「【0029】
・・・(中略)・・・既に論じた(ルールのような)定義的データ項目は、下位組織42、46の一方だけでなく、ノード521-52nの中の1つにも関連している。例えば、ルールのデータ構造48においては、ルール「Rule1」は、ノードAと関連している。」
「作業項目を処理する際に用いることができるノード又はステップを定義する情報と、記憶されたノードの中の選択されたものの間の組織上の関係を定義して作業項目へのアクセス又はその処理を制御するプログラマブルなデータ構造とをメモリに記憶する。」(図3のステップ410)

上記記載によれば、ステップ410は、「作業項目を処理する際に用いることができるノード又はステップを定義する情報」をメモリに記憶する。ここで、作業項目を処理する際に用いることができるノードを定義する情報とは、ノード・データ構造60のことであり、ステップ410は、このノード・データ構造60をメモリ部分175に記憶するステップである。そして、このノードの中の1つは、ルールのような定義的データ項目と関連している。
したがって、本願発明の「(a)前記作業項目を処理する際に用いることができそれぞれがルールの組と関連付けられている複数のノードを定義する情報を、メモリに記憶するステップ」は、ステップ410に相当する。
また、ステップ410は、記憶されたノードの中の選択されたものの間の組織上の関係を定義して作業項目へのアクセス又はその処理を制御するプログラマブルなデータ構造をメモリに記憶する。ここで、上記プログラマブルなデータ構造は、構造65のことであり、ステップ410は、構造65をメモリ部分73に記憶するステップといえる。
したがって、本願発明の「(b)ノードの間の組織上の関係を定義して前記ノードによる前記作業項目の処理を制御するプログラマブルなデータ構造を前記メモリに記憶するステップ」も、ステップ410に相当する。

2.本願発明の「(c)前記ノードの間の組織上の関係を用いて、どのオペレータ識別子を前記作業項目の中の第1の作業項目と関連付けることができるかを制御するステップ」について

上記1.のとおり、本願発明の上記(a)のステップ及び上記(b)のステップは、発明の詳細な説明に記載されたステップ410に相当する。したがって、本願発明の上記(c)のステップは、ステップ410の次のステップ420に対応すると解することができる。
このステップ420に関して、発明の詳細な説明及び図面には、次の事項が記載されている。
「【0028】
更に詳しくは、図8を参照すると、アクセス制御が、既に述べたように、下位組織42、46の間にだけでなく、第1及び第2の下位組織42、46のそれぞれの内部においても、提供される。上述したように、作業項目10はデータベース14に記憶される(ステップ400)。メモリ部分175(図6)は、ノード52を定義する(ノード・データ構造60などの)情報を記憶し、メモリ部分73は、ノード52の中の第1のノードとノード52の中の第2のノードとの間の組織上の関係を定義する(構造65などの)プログラムされたデータ構造を記憶する。このプログラムされたデータ構造は、次に、ノードの間の組織上の関係を提供して、オペレータの1人による、作業項目10へのアクセス又は作業項目10の処理を制御するのに用いられる。」
「プログラムされたデータ構造を用いて、ノードの間の組織上の関係を与え、オペレータによる作業項目へのアクセス及びその処理を制御する。」(図3のステップ420)

上記記載によれば、ステップ420は、ノードの間の組織上の関係を用いて、オペレータによる作業項目へのアクセス及びその処理を制御するステップであり、そのアクセス制御は、下位組織の内部において提供されるものである。
しかしながら、本願発明の上記(c)のステップと、発明の詳細な説明及び図面に記載されたステップ420は、ともにノードの間の組織上の関係を用いて、作業項目に関する制御を行うステップである点で共通するものの、その制御の内容は相違している。すなわち、本願発明の上記(c)のステップは、「どのオペレータ識別子を前記作業項目の中の第1の作業項目と関連付けることができるか」を制御するのに対し、ステップ420は、「オペレータによる作業項目へのアクセス及びその処理」を制御する点で相違する。
また、ステップ420については、段落【0028】及び図3の上記記載があるのみで、ステップ420における制御が、「どのオペレータ識別子を前記作業項目の中の第1の作業項目と関連付けることができるか」の制御であることは、発明の詳細な説明又は図面に記載も示唆もされていない。
したがって、本願発明の上記(c)のステップは、発明の詳細な説明又は図面に記載も示唆もされていない。

3.本願発明の「(d)ある1つのオペレータ識別子が前記第1の作業項目と関連付けられているものと同一の組織識別子と関連付けられているかどうかを判断するステップと、
(e)前記ある1つのオペレータ識別子が前記第1の作業項目と関連付けられているものと同一の組織識別子と関連付けられていない場合には、前記ある1つのオペレータ識別子と前記第1の作業項目とが関連付けられることを回避するステップと、」について

上記1.のとおり、本願発明の上記(a)のステップ及び上記(b)のステップは、発明の詳細な説明に記載されたステップ410に相当し、また、上記2.のとおり、本願発明の上記(c)のステップと、ステップ420は、ともにノードの間の組織上の関係を用いて、作業項目に関する制御を行うステップである点で共通するするから、本願発明の上記(d)(e)のステップも、発明の詳細な説明に記載されたステップ420、あるいは、当該ステップ420の後のステップに対応すると解することができる。

しかしながら、ステップ420が、本願発明の上記(d)(e)のステップを含むことは、発明の詳細な説明及び図面に記載も示唆もされていない。
また、ステップ420の後に、本願発明の上記(d)(e)のステップを有することも、発明の詳細な説明及び図面に記載されておらず、示唆もされていない。

したがって、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人は、平成23年7月21日付けの意見書において、「このステップ(c)は、図3のステップ420に対応する。」旨、主張している。
しかしながら、上記のとおり、本願発明の「(c)前記ノードの間の組織上の関係を用いて、どのオペレータ識別子を前記作業項目の中の第1の作業項目と関連付けることができるかを制御するステップ」は、発明の詳細な説明の段落【0028】及び図3に記載されたステップ420と相違している。
また、本願発明の上記(d)(e)の各ステップも、発明の詳細な説明に記載したものではない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-28 
結審通知日 2012-01-04 
審決日 2012-01-23 
出願番号 特願2008-101821(P2008-101821)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
松尾 俊介
発明の名称 コンピュータが実行可能なワークフロー制御システム  
代理人 千葉 昭男  
代理人 大塚 住江  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  

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