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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21M
管理番号 1257757
審判番号 不服2011-7922  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-14 
確定日 2012-06-01 
事件の表示 特願2001-560427「電気ランプ及び反射器のユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月23日国際公開、WO01/61730、平成15年 8月 5日国内公表、特表2003-523606〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成12年2月15日 欧州特許庁(EP)、平成12年2月18日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成22年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定
原査定における拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開平8-96753号公報
2.特開平4-348302号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平4-367538号公報(周知技術を示す文献)」

上記刊行物のうち、特開平8-96753号公報、特開平4-367538号公報を、それぞれ以下「引用例1」、「引用例2」という。

第3 当審の判断
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成22年10月15日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
焦点と、光軸と、首状部及び前記光軸を横切る発光窓の間の凹面状反射内表面とを持つ反射部を具備するモールド反射体と、気密に閉じられ、電気素子が配設されるキャビティを持ち、第1端部及び第2端部を持つ光透過ランプ容器を具備し、前記第1端部と前記第2端部とは、互いに対向し、それぞれの封止部を持ち、前記電気素子に接続される前記第1端部に関連する第1電流導体及び前記第2端部に関連する第2電流導体は、前記ランプ容器からそれぞれの前記封止部を通って外部へ出る電気ランプとを有し、
前記電気ランプは、該電気ランプの前記第1端部が前記首状部内にあり、前記キャビティが前記反射部の内側にあり、前記電気素子が前記焦点内にあり且つ前記光軸上にあるように前記反射体内に固定される電気ランプ及び反射器のユニットにおいて、
前記反射体は、-2×10^(-6)K^(-1)と3×10^(-6)K^(-1)との間の熱膨張係数を持つガラスセラミック材料から製造され、前記電気ランプは石英ガラスから製造され、前記石英ガラスの熱膨張係数に対するガラスセラミック材料の熱膨張係数の比率が-3.33乃至+5の間にあることを特徴とする電気ランプ及び反射器のユニット。」

2 刊行物記載事項
(1)本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例1には、高圧放電灯とこれを用いた光源装置、プロジェクタおよび液晶表示用プロジェクタに関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(1a)「【0017】
【実施例】以下本発明について、図1?図5に示す実施例に基づき説明する。なお、図1?図5中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0018】図1は本発明の一実施例の部分縦断面図であり、例えば定格入力が250Wの交流点灯式短アークメタルハライドランプを示している。
【0019】この短アークハライドランプ1は例えば石英ガラスからなる発光管2を有し、この発光管2の発光部は肉厚が1.4mmの石英ガラスからなり、長径がほぼ15mm,短径がほぼ11mmの楕円回転体よりなる楕円球状部2aに形成されており、結果として内表面積がほぼ4.7cm^(2) ,内容積がほぼ0.9ccとなっている。
【0020】この発光管2の楕円球状部2aの両端には一対の電極3a,3bの外端部が封着されている。・・・
【0021】これら電極3a,3bは、左右一対の封止部2b,2cに封着された金属箔導体4a,4bに接続されている。金属箔導体4a,4bは、例えばMo箔であり、幅3mm,厚さ3.0μmである。一方(図1では左方)の電極3aに接続された一方の金属箔導体4aは図示しない外部リード線を介して封止部2bの端部に外嵌被着された口金5に電気的に接続されており、また、他方の電極3bに接続された他方の金属箔導体4bは外部リード線6に接続されている。」

(1b)「【0033】図4は図1で示すメタルハライドランプ1を椀状のリフレクタ11の縮径内底部上に同心状に取り付けた投光装置12の一実施例を示している。リフレクタ11はガラスまたは金属により椀状に形成され、その焦点位置Fを有する回転曲面の内面に、反射特性に優れたTiO_(2) -SiO_(2) などの蒸着膜からなる反射面13を形成している。このリフレクタ11は光軸Oa-Obがほぼ水平となる姿勢で使用されるものであり、一端側の前面投光部、つまり開口部は開口径が例えば90?130mm程度に形成されており、椀状外底部には支持筒部14を外方へ同心状に突出するように突設している。この支持筒部14内には上記ランプ1の口金5部分が、絶縁セメント等の接着剤15により固着されている。これにより、ランプ1は、このランプ軸Oa-Obがリフレクタ11の中心軸、つまり光軸Oc-Odと略一致するようにしてリフレクタ11に取着されており、したがって、ランプ1は水平点灯される。
【0034】また、ランプ1は一対の電極3a,3b間の中間部が上記リフレクタ11の焦点位置Fとほぼ一致するようにして配置されている。」

(1c)図1の記載より、発光管2の楕円球状部2aの内部が、一対の電極が配設される、気密に閉じられたキャビティとされている点が看取できる。

(1d)図4の記載より、キャビティが反射面の内側にある点が看取できる。

記載事項1a?1d及び図面の記載を総合すると、引用例には次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。

「石英ガラスからなる発光管2を有し、この発光管2の楕円球状部2aの内部は気密に閉じられたキャビティとされて、該楕円球状部の両端には一対の電極3a,3bの外端部が封着され、これら電極3a,3bは、発光管2の左右一対の封止部2b,2cに封着された金属箔導体4a,4bに接続され、一方の電極3aに接続された一方の金属箔導体4aは外部リード線を介して封止部2bの端部に外嵌被着された口金5に電気的に接続されており、また、他方の電極3bに接続された他方の金属箔導体4bは外部リード線6に接続されているメタルハライドランプ1と、ガラスまたは金属により椀状に形成され、その焦点位置Fを有する回転曲面の内面に、反射特性に優れたTiO_(2) -SiO_(2) などの蒸着膜からなる反射面13が形成され、一端側の前面投光部、つまり開口部が、開口径が例えば90?130mm程度に形成されており、椀状外底部には支持筒部14が外方へ同心状に突出するように突設されているリフレクタ11とを備え、この支持筒部14内に上記ランプ1の口金5部分が絶縁セメント等の接着剤15により固着されることによって、ランプ1が、キャビティが反射面の内側にあり、このランプ軸Oa-Obがリフレクタ11の中心軸、つまり光軸Oc-Odと略一致し、一対の電極3a,3b間の中間部が上記リフレクタ11の焦点位置Fとほぼ一致するようにしてリフレクタ11に配置されている、メタルハライドランプ1を椀状のリフレクタ11の縮径内底部上に同心状に取り付けた投光装置12。」

(2)同じく本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において周知技術を示す刊行物として提示された引用例2には、耐熱性セラミツクス成形体及びその製造法に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面の平滑性が良好な耐熱性セラミックス成形体およびその製造法に関するものである。本発明はまた、耐熱性が良く高温度での使用に耐える反射鏡基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】照明装置、映写機等の光源ランプは、それが高輝度のものになるほど発熱も著しく、したがって、ランプと組み合わせて使用される反射鏡の温度上昇も激しい。・・・基材としてよく使われるガラスの場合、最高使用温度は転移点以下の温度となるため、最高度の耐熱性を有するパイレックス級ガラスでも550℃以下でしか使用できず、耐熱衝撃性はムク棒(直径5mm)による試験でも温度差250℃が限界であるから、上述のような苛酷な条件では安心して使用することができない。また、基材の耐熱限界によってランプや反射鏡の小型化が制限されてしまうことになる。
【0003】・・・Li_(2)O、Al_(2)O_(3)およびSiO_(2)の3成分を基本成分とする低熱膨張率ガラスを熱処理してβ-スポジュウメン固溶体(Li_(2)O-Al_(2)O_(3)-4SiO_(2))またはβ-ユークリプタイト固溶体(Li_(2)O-Al_(2)O_(3)-2SiO_(2))を生じさせることにより得られるセラミックス(いわゆる結晶化ガラス)は、優れた耐熱性を有し、また反射鏡基材とするのに必要な成形および研磨は結晶化させる前のガラスの段階で容易に行うことができるので、反射鏡基材として好ましい材料である。」

(2b)「【0013】
【実施例】
実施例1
・・・β-スポジュウメン固溶体になったことが確認された。熱膨張係数(室温?400℃の平均値)は6×10^(-7)/℃、・・・
【0014】実施例2
・・・β-スポジュウメン固溶体になったことが確認された。熱膨張係数は15×10^(-7)/℃、・・・」

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「発光管2」は、本願発明の「光透過ランプ容器」に相当する。以下同様に、「一対の電極3a,3b」は「電気素子」に、「発光管2の左右一対の封止部2b,2c」は「光透過ランプ容器」における「互いに対向し、それぞれの封止部を持」つ「第1端部」及び「第2端部」に、「(金属箔導体4aに接続された)外部リード線」は「第1電流導体」に、「外部リード線6」は「第2電流導体」に、「メタルハライドランプ1」は「電気ランプ」に、「リフレクタ11」は「モールド反射体」に、リフレクタ11の「回転曲面の内面」の「反射面13」はモールド反射体が具備する「凹面状反射内表面」を持つ「反射部」に、「前面投光部、つまり開口部」は「発光窓」に、「支持筒部14」は「首状部」に、「光軸Oc-Od」は「光軸」に、「焦点位置F」は「焦点」に、それぞれ相当する。そして、引用発明の「メタルハライドランプ1を椀状のリフレクタ11の縮径内底部上に同心状に取り付けた投光装置12」は、本願発明の「電気ランプ及び反射器のユニット」に相当する。
引用発明の「金属箔導体4a,4b」はそれぞれ「封止部2b,2c」に設けられていることからみて、引用発明における「一方の電極3aに接続された一方の金属箔導体4aは外部リード線を介して封止部2bの端部に外嵌被着された口金5に電気的に接続されており、また、他方の電極3bに接続された他方の金属箔導体4bは外部リード線6に接続されている」との構成は、本願発明における「前記電気素子に接続される前記第1端部に関連する第1電流導体及び前記第2端部に関連する第2電流導体は、前記ランプ容器からそれぞれの前記封止部を通って外部へ出る」構成に相当している。
引用発明において「支持筒部14内に上記ランプ1の口金5部分が絶縁セメント等の接着剤15により固着され」ている構成は、本願発明における「該電気ランプの前記第1端部が前記首状部内にあ」る構成に相当し、また、引用発明において「ランプ1が、このランプ軸Oa-Obがリフレクタ11の中心軸、つまり光軸Oc-Odと略一致し、一対の電極3a,3b間の中間部が上記リフレクタ11の焦点位置Fとほぼ一致するようにしてリフレクタ11に配置されている」構成は、本願発明における「電気ランプは、」「前記電気素子が前記焦点内にあり且つ前記光軸上にあるように前記反射体内に固定される」構成に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、
「焦点と、光軸と、首状部及び前記光軸を横切る発光窓の間の凹面状反射内表面とを持つ反射部を具備するモールド反射体と、気密に閉じられ、電気素子が配設されるキャビティを持ち、第1端部及び第2端部を持つ光透過ランプ容器を具備し、前記第1端部と前記第2端部とは、互いに対向し、それぞれの封止部を持ち、前記電気素子に接続される前記第1端部に関連する第1電流導体及び前記第2端部に関連する第2電流導体は、前記ランプ容器からそれぞれの前記封止部を通って外部へ出る電気ランプとを有し、
前記電気ランプは、該電気ランプの前記第1端部が前記首状部内にあり、前記キャビティが前記反射部の内側にあり、前記電気素子が前記焦点内にあり且つ前記光軸上にあるように前記反射体内に固定される電気ランプ及び反射器のユニットにおいて、
前記電気ランプは石英ガラスから製造される電気ランプ及び反射器のユニット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、前記反射体が-2×10^(-6)K^(-1)と3×10^(-6)K^(-1)との間の熱膨張係数を持つガラスセラミック材料から製造され、石英ガラスの熱膨張係数に対するガラスセラミック材料の熱膨張係数の比率が-3.33乃至+5の間にあるのに対して、引用発明は、リフレクタ11が単に「ガラス」により「形成され」るものであり、また、そのガラス材料の熱膨張係数や、石英ガラスの熱膨張係数に対する該材料の熱膨張係数の比率は不明である点。

上記相違点について検討する。
引用例2には、ランプと組み合わせて使用される反射鏡は温度上昇が激しいことから、通常使われるガラスに代えて優れた耐熱性を有する結晶化ガラス(ガラスセラミック材料)を反射鏡基材として用いることとした点が記載され、実施例として、熱膨張係数が6×10^(-7)/℃(=0.6×10^(-6)K^(-1))や15×10^(-7)/℃(=1.5×10^(-6)K^(-1))である耐熱性セラミックス成形体が挙げられている(記載事項2a、2b参照)。
引用発明においてリフレクタ11として用いられるガラス材料も、ランプ点灯時のリフレクタの温度上昇を勘案して一定の耐熱性を備えたものが用いられているものと考えられるところ、求める耐熱性の程度等により、引用発明において、リフレクタを構成する耐熱性材料として「ガラス」に代えて引用例2に記載された所定の熱膨張係数を持つセラミックス成形体を採用することは、当業者であれば格別困難なくなし得ることといえる。そして、石英ガラスの熱膨張係数が本願明細書の段落【0006】に記載されているように「0.6×10^(-6)K^(-1)」であるとすると、引用例2に記載された所定の熱膨張係数を持つセラミックス成形体をリフレクタの材料として採用したとき、石英ガラスの熱膨張係数に対する該材料の熱膨張係数の比率は1や2.5となるが、これらの数値は本願発明でいう「-3.33乃至+5の間」にあるものである。
以上のことから、引用発明においてリフレクタの材料として結晶化ガラス(ガラスセラミック材料)を採用して上記相違点に係る構成とすることは、引用例2の記載事項を参酌することにより、当業者であれば容易になし得たことといえる。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び引用例2の記載事項から当業者が予測し得た範囲内のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
したがって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-06 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-23 
出願番号 特願2001-560427(P2001-560427)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 政道  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
発明の名称 電気ランプ及び反射器のユニット  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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