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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1257939
審判番号 不服2010-9701  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-07 
確定日 2012-06-08 
事件の表示 特願2000-604557「移動局におけるページングメッセージの検出装置及びそれに関連した方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日国際公開、WO00/54442、平成14年11月19日国内公表、特表2002-539674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年3月10日(パリ条約に基づく優先権主張1999年3月10日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年1月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。


2.前審の拒絶理由及び拒絶査定と出願人及び審判請求人の意見

2-1.平成21年8月21日付けの拒絶理由通知書
平成21年8月21日付けの拒絶理由通知書では、特許法第36条第6項第2項について次の事項を指摘している。

『1. 請求項1の「ページングメッセージを受けるため無線装置を作動する選択した仕方を選択するために上記決定装置でなされた決定の表示に応じて作動できるセレクタ」は、日本語として明確でなく、また、技術的に明確でない。
たとえば、「選択した仕方を選択する」は、日本語として明確ではない。』

2-2.平成21年11月27日付けの出願人の意見
上記拒絶理由に対して、出願人は平成21年11月27日付けで手続補正書を提出し、同日付け意見書にて、以下の意見を述べている。

『B-1.請求項1の記載について
(1)請求項1については、構成要件としてのセレクタに関する記載が明確でないとのご指摘をいただきました。
(2)上記セレクタに関する記載は、補正により、「上記決定装置によりなされた決定の表示を受けるよう接続されたセレクタであって、該決定装置によりなされた該決定の表示に応答して作動し、上記無線装置を作動させて上記ページングメッセージを受けるための方法を上記選択的方法から選択する、セレクタ」と改められました。当該補正後の記載は明確であると思料致します。
(3)なお、請求項1に対しては、特に「選択した仕方を選択する」との表現が日本語として明確ではないとのご指摘をいただいておりますが、かかる記載は上記補正後の記載により「選択的方法から選択する」と改められております。ここにおける「選択的方法」とは、例えば本件明細書の段落[0047]によって教示されるとおりの、「第1のページ表示ビットを検出するか、第2のページ表示ビットを検出するか、あるいはその両方を検出するか」に対応して選択される方法であって構いません。
(4)以上のとおり、補正前の請求項1において不明確であるとのご指摘をいただいた記載は、補正後の請求項1において全て明確なものとなっております。』

2-3.平成22年1月5日付けの拒絶査定
平成22年1月5日付けの拒絶査定では、特許法第36条第6項第2項について次の事項を指摘している。

『2.
上記「1」の摘記における「選択的方法」など、請求項1-23に係る「選択的方法」が、明確ではない。
たとえば請求項1の「上記無線装置を作動させて上記ページングメッセージを受けるための方法を上記選択的方法から選択する」から、選択的方法とは、「無線装置を作動させてページングメッセージを受けるための方法」であると言える。また、選択されるから、選択的方法は複数あると言える。
ここで、発明の詳細な説明には、上記「1」のとおり(ページ表示ビットを受信した後で)ページングメッセージを受信することが記載されているが、発明の詳細な説明を参照しても「無線装置を作動させてページングメッセージを受けるための、複数の方法」の具体的なものが、明確ではない。
また、意見書「B-1(3)」で、選択的方法が「ページ表示ビットの利用される仕方」に対応すると主張していると考えられるが、請求項には、そのようなことが記載されていない。
よって、請求項1-23に係る発明は、明確ではない。』

2-4.審判請求人の意見
上記拒絶査定に対して、審判請求人は平成22年5月7日付けの手続補正書により、請求項1を次のように補正した(下線部は変更のあった部分を示す)。

【請求項1】
無線装置に割当てられ、ページングチャンネルにおいて画定されたページングチャンネルスロットにおいてページングメッセージをその無線装置に選択的に伝送し、またページングチャンネルスロットにおけるページングメッセージの伝送を表わす値のページ表示ビットをページングチャンネルスロットに相応した時間間隔で無線装置に伝送する無線通信システムにおいて作動できる無線装置を、ページングメッセージを受けるためにページ表示ビットを利用するよう、選択的方法で作動させる装置において、
無線装置へのページ表示ビットの伝送に関連した状態の動作パラメータの表示を受けるように接続され、受けた表示に応じて動作パラメータの表示を決定する決定装置と;
上記決定装置によりなされた決定の表示を受けるよう接続されたセレクタであって、該決定装置によりなされた該決定の表示に応答して作動し、上記無線装置を作動させて上記ページ表示ビットを利用させるための方法を上記選択的方法から選択する、セレクタと、を有し、
上記セレクタが、上記無線装置を作動させて上記ページ表示ビットを利用させることを選択するための上記選択的方法には、少なくとも一対のページ表示ビットにおける一つのページングビットが、ある選択値をとると検出されたことに応答して、ページングメッセージをデコードすべきかどうかの決定を行うための方法が含まれ、
上記無線通信システムが有するネットワークインフラストラクチャには、無線装置に対して選択された近傍区域に位置する多数の伝送局が備えられており、上記無線装置は、該無線装置の動作中において上記多数の伝送局の各々に対して同調を行い、
上記接続された決定装置が受けるべき動作パラメータの表示には、上記無線装置に対して選択された上記近傍区域内に位置する伝送局の数の表示が含まれる
ことを特徴とする無線装置の作動装置。

そして、審判請求人は、請求の理由において、以下の意見を述べている。

『(b)すなわち、補正後の請求項1の記載によれば、選択的方法が「ページ表示ビットの利用される仕方」に対応することが明らかである。この点において、補正後の請求項1中の「選択的方法」に関する記載は何ら不明確の問題を生じるものではない。
(c)なお、指摘事項(A)に関連して既に申し述べたとおり、「ページ表示ビットの利用される仕方」の具体的な内容は、例えば明細書中の段落[0047]-[0049]にて開示されている。したがって、補正後の請求項1に記載される「選択的方法」に関する記載は明細書の記載等との関係において何ら不明確の問題を生じるものではない。』


3.当審の判断
請求項1の「無線装置を、ページングメッセージを受けるためにページ表示ビットを利用するよう、選択的方法で作動させる装置において」との記載からは、以下の(1)及び(2)が読み取れる。

(1)「装置」は、「無線装置」を「選択的方法」で作動させる。
(2)「選択的方法」で作動した「無線装置」は、「ページングメッセージを受けるためにページ表示ビットを利用するよう」に作動する。

請求項1の「上記ページ表示ビットを利用させるための方法を上記選択的方法から選択する、セレクタ」との記載からは、以下の(3)が読み取れる。

(3)「セレクタ」は、「選択的方法」の中から「ページ表示ビットを利用させるための方法」を選択する。

請求項1の「上記セレクタが、上記無線装置を作動させて上記ページ表示ビットを利用させることを選択するための上記選択的方法には、少なくとも一対のページ表示ビットにおける一つのページングビットが、ある選択値をとると検出されたことに応答して、ページングメッセージをデコードすべきかどうかの決定を行うための方法が含まれ」との記載からは、以下の(4)から(6)が読み取れる。

(4)「セレクタ」は、「無線装置」を作動させる。
(5)「選択的方法」は、「無線装置を作動させてページ表示ビットを利用させること」を「セレクタ」が選択するためのものである。
(6)「選択的方法」には、「ページングメッセージをデコードすべきかどうかの決定を行うための方法が含まれ」る。

ここで、(1)及び(2)から、「選択的方法」を実行するのは「無線装置」であると認められ、「無線装置」が「選択的方法」を実行することによって、「無線装置」は「ページングメッセージを受けるためにページ表示ビットを利用するよう」になると解釈できる。
ところが、(5)によれば、「選択的方法」を実行するのは「セレクタ」であって、「セレクタ」が「選択的方法」を実行することによって、「無線装置を作動させてページ表示ビットを利用させること」が「選択される」のだと解釈できる。
つまり、(1)及び(2)と(5)とは、「選択的方法」を実行する主体と、実行した結果において、矛盾している。

加えて、(3)によれば、「セレクタ」が、「選択的方法」の中から「ページ表示ビットを利用させるための方法」を選択しているので、「選択的方法」は、それ自体が実行される方法ではなく、複数の方法からなる集合であって、その集合の要素の1つに「ページ表示ビットを利用させるための方法」があるのだと解釈できる。
この(3)の解釈は、「選択的方法」それ自体が実行されるか否かという点で、(1)、(2)及び(5)と矛盾している。
さらに、「セレクタ」が「選択」する対象が「方法」であるのか否かという点で、(3)と(5)とは矛盾している。

加えて、(3)と(6)によれば、「選択的方法」には「ページ表示ビットを利用させるための方法」と「ページングメッセージをデコードすべきかどうかの決定を行うための方法」とが含まれていることになるが、(5)によれば、「選択的方法」は、「無線装置を作動させてページ表示ビットを利用させること」を「セレクタ」が選択するためのものに他ならず、「ページングメッセージをデコードすべきかどうかの決定を行うための方法」を含むとは解釈できない。
したがって、「選択的方法」の要素として、「ページ表示ビットを利用させる方法」以外に、どのような方法が含まれているのかが不明であり、かつ、仮に「ページ表示ビットを利用させる方法」以外の方法が「選択的方法」に含まれているとしても、「ページ表示ビットを利用させる方法」以外の方法がどのような条件で選択されるのかが不明である。

以上のとおりであるから、審判請求人が請求の理由にて『(b)すなわち、補正後の請求項1の記載によれば、選択的方法が「ページ表示ビットの利用される仕方」に対応することが明らかである。この点において、補正後の請求項1中の「選択的方法」に関する記載は何ら不明確の問題を生じるものではない。』と述べている点については、「選択的方法」が「ページ表示ビットの利用される仕方」に対応することが明らかであるとは言えず、「選択的方法」に関する記載は依然として不明確の問題を生じている。

なお、審判請求人が請求の理由にて『(c)なお、指摘事項(A)に関連して既に申し述べたとおり、「ページ表示ビットの利用される仕方」の具体的な内容は、例えば明細書中の段落[0047]-[0049]にて開示されている。したがって、補正後の請求項1に記載される「選択的方法」に関する記載は明細書の記載等との関係において何ら不明確の問題を生じるものではない。』と述べている点については、発明の詳細な説明に「選択的方法」という文言が記載されているわけではないので、請求項1の「選択的方法」が発明の詳細な説明のどれに対応するのかが明らかとは言えない。よって、明細書の記載等との関係においても、請求項1の「選択的方法」は不明確である。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-27 
結審通知日 2012-01-12 
審決日 2012-01-24 
出願番号 特願2000-604557(P2000-604557)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 丸山 高政
近藤 聡
発明の名称 移動局におけるページングメッセージの検出装置及びそれに関連した方法  
代理人 小川 信夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 箱田 篤  
代理人 中村 稔  
代理人 西島 孝喜  

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