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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1257940
審判番号 不服2010-12339  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-08 
確定日 2012-06-08 
事件の表示 特願2005- 90852「アンテナ装置及びアンテナ素子」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-279161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年3月28日の出願であって、原審において平成22年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年6月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、以下のように出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項5に記載された発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項5に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

(本願発明)
「金属線と該金属線を支持するプラスチック製の取付部材とから構成されたアンテナ素子であって、前記金属線は、直角に折り曲げられた基端部と水平方向に延在するアンテナ部とを有し、前記取付部材は前記基端部が挿入される挿入孔と前記アンテナ部の少なくとも一部を支持するための金属線挿入溝とを有し、
前記金属線挿入溝は、互いに対向し、且つ互いに近接する方向へ斜め上方へ突出して、前記アンテナ部の一部を固定する一対の金属線固定用爪を少なくとも一箇所有することを特徴とするアンテナ素子。」

(補正後の発明)
「金属線と該金属線を支持するプラスチック製の取付部材とから構成されたアンテナ素子であって、前記金属線は、直角に折り曲げられた基端部と水平方向に延在するアンテナ部とを有し、前記取付部材は前記基端部が挿入される挿入孔と前記アンテナ部の少なくとも一部を支持するための金属線挿入溝とを有し、
前記金属線挿入溝は、互いに対向し、且つ互いに近接する方向へ斜め上方へ突出して、前記アンテナ部の一部を固定する一対の金属線固定用爪を少なくとも一箇所有し、
前記一対の金属線固定用爪の各々は、当該一対の金属線固定用爪で挟まれた空間が前記金属線の挿入方向へその幅が広くなるような傾斜をもつ、逆三角形形状をしている、
ことを特徴とするアンテナ素子。」


2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の爪の形状を「前記一対の金属線固定用爪の各々は、当該一対の金属線固定用爪で挟まれた空間が前記金属線の挿入方向へその幅が広くなるような傾斜をもつ、逆三角形形状をしている」構成に限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。


3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開2005-20644号公報(以下、「引用例」という。)には、「衛星信号受信用アンテナ装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】
グランド電極としての第1の金属板と、この第1の金属板に対向して配設されてなる第2の金属板と、これら第1の金属板及び第2の金属板の間に配設されたアンテナ素子とを備え、円偏波された電波を受信する衛星信号受信用アンテナ装置であって、
各アンテナ素子は、電波を受信する金属線及びこれを支持するプラスチック製の取付部材からなり、
前記取付部材は、前記金属線の垂直に折り曲げられた基端部が挿入される挿入孔と、金属線の水平方向に延在するアンテナ部の少なくとも一部を支持するための金属線挿入溝を有し、
前記金属線挿入溝は、左右対称に折り曲げられた金属線のいずれにも対応するように形成されていることを特徴とする衛星信号受信用アンテナ装置。」(2頁、請求項1)

ロ.「【0013】
図1は、本発明の衛星信号受信用アンテナ装置に用いられるアンテナ素子の構造を示すものである。このアンテナ素子1は、図示の通り、金属線からなるアンテナ線2と、プラスチック製の取付部材3とから構成される。
【0014】
アンテナ線2は、2箇所で直角に折り曲げられ、それぞれ、垂直方向に折り曲げられた基端部2a、この基端部2aに繋がる支持部2b、及びこの支持部2bに対して面内方向で直角に折り曲げられた受信部2cとされている。
【0015】
取付部材3は、ほぼ直方体形状をしたプラスチックの成型体からなり、図2に示すように、その上面には、上記アンテナ線2の支持部2bが挿入される第1の金属線挿入溝3aが長手方向に沿って、取付部材3のほぼ全長に亘って形成されている。また、第1の金属線挿入溝3aの両端部には、アンテナ線2の直角に折れ曲がった受信部2cに対応して、当該第1の金属線挿入溝3aとは直交する第2の金属線挿入溝3bが取付部材3を幅方向に横切るように形成されている。ここで、第2の金属線挿入溝3bが、取付部材3を幅方向に横切って全幅に亘り形成されているのは、受信部2cの折り曲げ方向が支持部2bに対して左右いずれの場合にも対応するためである。このような金属線挿入溝3a,3bを形成することで、左右対称に折り曲げられたアンテナ線2のいずれをも取り付けることが可能である。
【0016】
さらに、前記第1の金属線挿入溝3aの長さ方向の中央位置には、取付部材3を垂直に貫通する貫通孔3cが形成されている。この貫通孔3は、前記アンテナ線2の基端部2aを挿入するためのもので、ここに挿入されたアンテナ線2の基端部2aは、基板と接続されて当該アンテナ線2の信号取り出し電極として機能することになる。
【0017】
また、取付部材3の第1の金属線挿入溝3aの複数箇所には、微小突起3dが形成されている。微小突起3dは、アンテナ線2の支持部2bが前記第1の金属線挿入溝3aに挿入された際に、これを押圧支持することで、支持部2bが第1の金属線挿入溝3aから簡単に脱落してしまうのを防ぐ役割を有する。これら微小突起3dを形成しておくことで、余分な部品を使わなくてもアンテナ線2を取付部材3に取付固定することが可能になる。」(3?4頁、段落13?17)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例記載の「アンテナ素子1」は、「金属線からなるアンテナ線2」と、「プラスチック製の取付部材3」とから構成され、
前記「アンテナ線2」は、「垂直(即ち、直角)に折り曲げられた基端部2a」と「水平方向に延在する支持部2b及び受信部2c(即ち、アンテナ部)」を有し、
前記「取付部材3」は、「前記基端部が挿入される貫通孔3c(即ち、挿入孔)と前記アンテナ線の支持部2b(即ち、アンテナ部の少なくとも一部)を支持するための金属線挿入溝3a」とを有し、
前記「金属線挿入溝3a」は、段落17及び図2の記載から明らかなように、「互いに対向し、且つ互いに近接する方向へ突出して、前記アンテナ線の一部が脱落してしまうのを防ぐ(即ち、アンテナ部の一部を固定する)一対の微小突起3dを複数箇所(即ち、少なくとも一箇所)」有している。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「金属線と該金属線を支持するプラスチック製の取付部材とから構成されたアンテナ素子であって、前記金属線は、直角に折り曲げられた基端部と水平方向に延在するアンテナ部とを有し、前記取付部材は前記基端部が挿入される挿入孔と前記アンテナ部の少なくとも一部を支持するための金属線挿入溝とを有し、
前記金属線挿入溝は、互いに対向し、且つ互いに近接する方向へ突出して、前記アンテナ部の一部を固定する一対の微小突起を少なくとも一箇所有している、
アンテナ素子。」


(3)対比
補正後の発明と引用発明を対比すると、
補正後の発明の「金属線固定用爪」と、引用発明の「微小突起」は、いずれも「金属線固定部材」である点で一致しているものの、
引用発明の「微小突起」が、補正後の発明の「斜め上方へ」突出する構成、及び「前記一対の金属線固定用爪の各々は、当該一対の金属線固定用爪で挟まれた空間が前記金属線の挿入方向へその幅が広くなるような傾斜をもつ、逆三角形形状をしている」構成を備えているか否かは不明である。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「金属線と該金属線を支持するプラスチック製の取付部材とから構成されたアンテナ素子であって、前記金属線は、直角に折り曲げられた基端部と水平方向に延在するアンテナ部とを有し、前記取付部材は前記基端部が挿入される挿入孔と前記アンテナ部の少なくとも一部を支持するための金属線挿入溝とを有し、
前記金属線挿入溝は、互いに対向し、且つ互いに近接する方向へ突出して、前記アンテナ部の一部を固定する一対の金属線固定部材を少なくとも一箇所有している、
アンテナ素子。」

(相違点)
「金属線固定部材」に関し、補正後の発明は「金属線固定用爪」であり、「斜め上方へ」突出する構成及び「前記一対の金属線固定用爪の各々は、当該一対の金属線固定用爪で挟まれた空間が前記金属線の挿入方向へその幅が広くなるような傾斜をもつ、逆三角形形状をしている」構成を備えているのに対し、引用発明は単に「微小突起」である点。


(4)判断
そこで、上記「金属線固定部材」に関する相違点について検討する。
引用発明の「金属線固定部材」である「微小突起」については、引用例にはその具体的形状に関する記述は見あたらないが、
一般に断面形状が円形の線や棒の固定部材として、一対の爪状の部材を設け、係止力を発生するために当該爪の先端部の形状を、当該一対の爪で挟まれた空間が挿入方向へその幅が広くなるような傾斜を持つ略三角形の形状とすることは、例えば実公昭50-662号公報(第1図)、実開昭51-50948号公報(第2図)、実開昭51-46242号公報(第2?4図)にあるように周知のことである。
そして、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらず、かつ、具体的な三角形の形状は固定の態様にともなう単なる設計的事項であるから、これを「逆三角形」の形状となすのも適宜のことであり、この場合、全体として「斜め上方へ」突出する形状と言えるのも自明なことである。
したがって、前記周知技術ないしは前記設計的事項に基づいて、引用発明の「微小突起」を、「斜め上方へ」突出する「金属線固定用爪」となし、かつ「前記一対の金属線固定用爪の各々は、当該一対の金属線固定用爪で挟まれた空間が前記金属線の挿入方向へその幅が広くなるような傾斜をもつ、逆三角形形状をしている」構成とする程度のことは当業者であれば容易になし得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知技術ないしは設計的事項に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術ないしは設計的事項に基づいて容易に発明できたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術ないしは設計的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-06 
結審通知日 2012-04-11 
審決日 2012-04-24 
出願番号 特願2005-90852(P2005-90852)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志佐藤 智康  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 矢島 伸一
遠山 敬彦
発明の名称 アンテナ装置及びアンテナ素子  
代理人 福田 修一  
代理人 佐々木 敬  
代理人 池田 憲保  
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