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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B
管理番号 1257944
審判番号 不服2011-1793  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-26 
確定日 2012-06-08 
事件の表示 特願2005- 56903「換気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-169941〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年3月2日(国内優先権主張 平成16年7月28日,平成16年11月18日)の出願であって,平成22年10月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年1月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において同年12月2日付けで拒絶理由通知を行ったところ,平成24年2月13日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成24年2月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の,請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「換気框と,
前記換気框に設けられ,且つ,開口を画成するための上下左右の画成枠からなる空気流通部と,
前記空気流通部を開閉する蓋框と,
前記換気框に対して前記蓋框を開閉可能に連結する連結部材を備えた建物用の換気装置において,
前記蓋框は,その室内側に左右の膨出部と,これらの膨出部間及び蓋本体部の室内側面により形成される溝部を備え,その溝部に上下アームを備えた操作部が取り付けられ,前記蓋本体部において上下アームに連動する連動棒が昇降し,それらの先端を前記上下画成枠に出没させることで,前記空気流通部の閉鎖時に前記蓋框を前記換気框側に係止させると共に,
前記連結部材は,一端が前記左右画成枠に回動自在に,他端が前記蓋框に回動自在に取付けられると共に,前記一端は前記蓋框の開放時及び閉鎖時に前記他端の下方に位置することを特徴とする換気装置。」(以下,「本願発明」という。)


第3 引用刊行物記載の発明
当審における平成23年12月2日付け拒絶理由通知で引用した,本願優先日前に頒布された刊行物は,以下の2件である。
刊行物1:特公昭47-27382号公報
刊行物2:実願昭62-23214号(実開昭63-132089号)のマイクロフィルム

(1)刊行物1
刊行物1には,以下の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(1a)「1 引違いサツシの縦框の略全長または上下方向に換気口を設けると共に,把持部を有する開閉板を縦框の室内側に取付け,さらに開閉板と縦框の内部に両端を枢着されたクランクと,クランクに形成された回転止め駒と,駒に接する板バネとからなる開閉板の開閉機構を取付けたことを特徴とする換気框。」(特許請求の範囲)
(1b)「第1図に示す如く換気框1は引違いサツシ2の縦框3に形成されるものであり,該縦框3は他の框4よりも稍幅広に形成されるとともに,その外面及び内面は上框と下框間において外郭部5が形成され,略全面に亙り換気口6,6aが打抜かれており,外部より空気の導入をなすように形成されている。
なお第1図中,2は窓ガラスを示す。
第2図及び第3図に示す如く前記換気口6の外面内側には換気板7が縦方向に等間隔に配設されており,空気は換気板7,7間の間隙を通過して内部へ導入される。」(2欄1?12行)
(1c)「この発明は上記構成をなす縦框3において,その内面換気口6aを往復動自在な開閉板10で閉塞あるいは開放することにより室内の換気を行いうる様にしたものである。
前記開閉板10は上框及び下框に亙る長さと,前記内面換気口6aを閉塞しうる幅厚を有しており,その上方および下方には縦框の内部に位置する如く開閉板10を応動せしめる開閉機構11が設置されている。さらに開閉板10の外方には前記開閉機構11を固着しうる固着板17,17が突設されるとともにその内方すなわち室内側には把持部26がその長手方向に一連に設けられている。
また前記開閉機構11は第4図?第6図に示すように開閉板10に固着された回動部材12と,縦框3の室内側に固定され,クランク13及び該クランク13の支軸14ならびに板バネ15とを固定する固定部材16等より構成されている。
回動部材12は断面が略П形に形成されており,その幅長は前記開閉板10に設けた固着板17,17間に挾持される様に形成されている。
すなわち,回動部材12は固着板17,17間に嵌挿され側壁をネジ等で固着板17,17にそれぞれ固定され,背面は開閉板10に密着されるものである。また背面の中央下部には後述する固定部材16の一部材が嵌合しうる適宜な幅を有する溝18が形成されている。さらに側壁の下部には軸孔が穿設され,該軸孔にはクランク13を回動すべく回動軸19が掛け渡されている。
前記クランク13は適宜長さのアーム20,20間の先端部に駒21が挾着せしめられたものであり,該端部は前記回動軸19により回動部材12に回動自在に軸支されるとともに先端部すなわち駒21部は支軸14により軸支されている。
なお,駒21は後述する板バネ15に密着する面を大とした二つの水平部22,23を有する略菱形に形成され,かつ回転動作し易いように隅部は彎曲せしめられている。
支軸14は前記固定部材16の一方の側壁より他方の側壁に嵌挿して固着され,クランク13の支軸となっている。
固定部材16は断面が略凹字形に形成され,その背面は縦框3の外郭部5内に嵌合しうる幅を有する略正方形に形成されるとともに,両側壁の中央には軸孔が穿設され支軸14が固定されている。さらに前記背面の両端部中央には側壁と同等の立ち上り部を有し,かつその先端が内方に略直角に彎曲せしめられた板バネ固定板24が突設されている。
前記立ち上り部すなわち側壁の高さは縦框の内部に挿入されうるように形成されている。板バネ固定板24,24には彎曲せしめられたその内面に板バネ15が掛け渡され固定されている。板バネ15は内方に稍隆起しており,その弾撥力により,換気を必要としない時はアーム14の先端に挾持せしめた駒21の一辺23を板バネ15に密着せしめてクランク13を定着せしめ,該アーム14に連結している開閉板10を閉の状態に維持せしめている。
また換気の必要な時は駒21を90度開転せしめ,他の辺22を板バネ15に密着せしめて開閉板10の開の状態を維持せしめる。
この開閉板10の開の状態の時は板バネ15の弾撥力により駒21が旧の位置すなわち換気を必要としない時の状態に戻ろうとするものであり,外部よりわずかな力を加えるだけで戻るように形成されている。
前記クランク13および回動部材12の一部分は固定部材16の側壁と板バネ固定板24との間に挿入されるものである。すなわちアーム20,20は板バネ固定板24を跨いだ状態で駒21を固定部材16の中央の支軸14に枢着せしめている。またアーム20,20の後端部も固定部材16内に位置し,それぞれの端部には回動部材12の側壁が連結している。
・・・
すなわち,上記開閉機構11は縦框3に固着した固定部材16の中央に支軸14を固定し,該支軸14に回転自在としたクランク13の一方の端部を枢着し,他方の端部は開閉板10に固着した回動部材12の端部に回転自在にとりつけたものである。
なお,開閉機構11は上述の様な構成に限定されるものではない。
次に上記換気框の作用を説明する。
第7図に示す様に換気を必要とする時は内方の開閉板10を手前斜下方に手で引けばよく,該操作により開閉板10に取付けられている回動部材12はその下部に設けてある回動軸19とともに手前斜下方に移動する。しかして前記回動軸19に枢着しているアーム20は回動軸19の動作に伴い支軸14を支点として手前方向へ回転動作する。この時アーム20の先端に挾着している駒21はその外面に密接している板バネ15を圧しながら回転する。
開閉板10は駒21が略90度回転する位置すなわち駒21の他の辺22が板バネ15に定着する位置まで手前に引くことにより,そのまゝ手を離してもその状態を保つものである。この様にして縦枠と開閉板10との間に間隙を有せしめ,換気口を通して外部より空気を室内へ導入するものである。また換気を必要としなくなつた場合は軽く手で押せば,前記板バネ15及び駒21の関係により開閉板10は旧の位置すなわち縦枠3と密着する位置に戻るものである。」(2欄26行?5欄14行)
(1d)「この発明は,上述の様に引違いサツシにおいて縦框の略全長または上下方向に換気口を設けるとともに縦框の内面に開閉板を取付け,かつ縦框の内部には開閉板の操作位置を保持し得る開閉機構を設けたものであるから手動操作で簡単に開閉板を操作せしめるだけで換気を充分に行うことができる。また縦框を利用したものであり,サツシに錠をしたまゝでも換気を行うことができるとともに,換気の状態でほつておいても何物の外部よりの侵入も不可能である。
さらに開閉板を操作せしめる開閉機構は,その操作を簡便ならしめるとともに,操作後の開閉板の状態をそのまゝの位置に保持しうることができる等この種換気框として多くの効果を奏するものである。」(5欄15行?6欄10行)
(1e)上記(1c)の記載事項を参照して第6図をみると,開閉板10は,厚みをもった板で,その室内側の左右には丸み面取りがされており,丸み面取り部間の長手方向に把持部26が一連に設けられていることが明らかである。
また,上記(1c)の記載事項を参照して第4図,第7図をみると,閉塞時にはクランク13の先端部が他端部の下方に,開放時には先端部と他端部が略水平の位置になっている。
さらに,第1,3図からみて,開閉板10は上下方向に長いものである。

上記(1a)?(1e)の記載事項及び図面からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「引違いサッシの縦框3の略全長に,上框と下框とその間に形成される外郭部5,5で囲われ,外部よりの空気の導入をなす内面換気口6aを設けると共に,
厚みをもった板で,その室内側の左右には丸み面取りがされており,丸み面取り部間の横方向中央部において長手方向に把持部26を一連に設けた,内面換気口6aを閉塞しうる上下方向に長い開閉板10を縦框3の室内側に取付け,
縦框3の内面換気口6aを往復動自在な開閉板10で閉塞あるいは開放することにより室内の換気を行いうるように,縦框3の内部の上方および下方に位置する開閉板10の開閉機構11を備え,
該開閉機構11は,適宜長さのアーム20,20間の先端部に駒21が挾持せしめられたクランク13の,先端部を縦框3の外郭部5,5内に固着した固定部材16に支軸14により回動自在に枢着すると共に,他端部を開閉板10に固着した回動部材12に回動軸19により回動自在に枢着し,閉塞時にはクランク13の先端部が他端部の下方に,開放時には先端部と他端部が略水平の位置になる換気框。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
刊行物2には,以下の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(2a)「(1) 引き戸の上部の両縦框間に開口部を設けるとともにその開口部を覆う開閉戸を併設し,その開閉戸の両端と両縦框間をパンタグラフ式のアームで連結し,かつ開閉戸の内部に一対のロック棒を長手方向に移動可能に配し,これら一対のロック棒を互いに相反する方向に移動させる機構で連結し,各ロック棒の端部をそれぞれ前記開口部を縁どる枠に係脱可能とするとともに室内側より操作できるハンドルを上記機構に接続したことを特徴とする引き戸用換気小窓。」(実用新案登録請求の範囲)
(2b)「実施例は,第4図に示すガラス引違い戸10の戸枠11に建込まれる内引き戸12の上部に換気小窓Aを取付けるようにしたものである。一般に換気小窓を引き戸12の上部に取付けるときは第1図にもみられるように引き戸12に嵌め込まれるガラスGの上部を切りつめその端部を中桟13で支持して上框12aと中桟13との間に換気用の空間,すなわち開口部14が形成される。実施例においても同様にして開口部14が形成され,第1図?第3図にみられるように開口部14が枠15により縁取られる。
枠15は外引き戸と干渉しないように開口部14を室内側より覆うようにした開閉戸18の取付けと閉時に開閉戸18と気密を図る枠を構成するもので,実施例においては引き戸12の上框12aと中桟13がそのまま上下枠として利用され,別途補助枠16を縦框12bのガラス嵌溝に嵌め込み,共有の枠15として形成されている。・・・一方枠15の室内側に配置される開閉戸18は,内部に後述するロック機構を組み込む必要があるため,本体19自体が平坦な中空部材で形成され,左右の開放端部(左右対称であるため一方のみ図示)にキャップ20が嵌め込まれている。
本考案の目的が達成されるように上記開閉戸18は枠15に対しパンタグラフ式のアーム21,……により支持される。これらアーム21,…は前記キャップ20と補助枠16との間に組み込まれ,互いに組みをなすアーム21,21の中央部がピン22により互いに回転自在に連結されている。これらアーム21,21の上端はクロスしてキャップ20と補助枠16に枢着され,一方下端はパンタグラフの動きができるようにスライダ23,23に枢着されている。各スライダ23,23はキャップ20及び補助枠16の側面に形成された上下方向に延びるスライダ案内溝19a,16aにそれぞれ摺動可能に嵌合されている。
このパンタグラフ式のアーム21,…で支持された開閉戸18は閉時において枠15にロックできるように,本体19の中空部に一対のロック棒24,24を備えている。ロック棒24,24は上下にある間隔をおいて平行にかつ長手方向,図では左右方向に移動可能に配置され,各ロック棒24,24の後端は各ロック棒24,24を互いに相反する方向に移動させる機構25,図示例ではリンクに連結されている。一方,各ロック棒24の先端部の延長線上にあるキャップ20及び補助枠16には,図示されていないが先端部を挿通させる透孔と先端部が係脱する係合穴がそれぞれ形成されている。・・・
前記リンク25は開閉戸17(当審注:18の誤記と認める。以下,同。)の室内がわ面に備えるハンドル26により操作されるものであって,リンク25の中心にはハンドル26の回転軸26aが固着されている。」(4頁10行?7頁9行)
(2c)「開時において,開口部14から虫が舞い込まないように,枠15の前面に目の細かい網28が張り渡され,虫の侵入防止が図られている。」(7頁16?19行)
(2d)「実施例において,換気を行うときは,ハンドル26を回して第2図に見られる開の位置に合わせ,そのままハンドル26を手前に引く。ハンドル26を開の位置まで回転させると,その回転力がハンドル26の回転軸26aを介してリンク25に伝わり,リンク25の両端に連結されている各ロック棒24,24が後退し,ロック棒24,24の先端部が係合穴から離脱する。また,ハンドル26を手前に引くとパンタグラフ式のアーム21,…の下端が上に引き上げられ,それに伴って開閉戸17が引き戸12に平行して室内側に迫り出し,第1図及び第3図に示す二点鎖線に示す位置に達する。
・・・
換気を止めて閉じるときは,前記開の手順の逆を行い,開閉戸17を枠15に固定する。」(8頁2?18行)
(2e)第1?4図からみて,開口部14と開閉戸18は横長であり,第3図等からみて,補助枠16及びその結合穴は,枠15の長手方向の横方向にあると認められる。

そうすると,上記記載(2a)?(2e)および第1?4図からみて,刊行物2には以下の発明が記載されているものと認められる。
「上框12aと中桟13,両縦框12b及び補助枠16からなる枠15で縁取られた換気用の空間,すなわち横長の開口部14と,該開口部14を覆う横長の開閉戸18を併設し,その開閉戸18の両端と両縦框12b間をパンタグラフ式のアーム21で連結する引き戸用換気小窓において,
開閉戸18の内部に一対のロック棒24,24を長手方向である左右方向に移動可能に配し,これら一対のロック棒24,24を互いに相反する方向に移動させる機構25で連結し,閉開時に各ロック棒24の端部を,それぞれ前記開口部14を縁取る枠15の長手方向の横方向にある,補助枠16の係合穴に係脱可能とするとともに,上記機構に接続され,室内側より操作できるハンドル26を開閉戸18の室内がわ面に備える換気小窓。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)


第4 当審の判断
1 本願発明と刊行物1記載の発明の対比
本願発明と,刊行物1記載の発明を対比すると,
刊行物1記載の発明の「換気框」は,本願発明の「建物用の換気装置」及び「換気装置」に相当し,以下同様に,
「縦框3」は,「換気框」及び「上下左右の画成枠」に,
「縦框3」の上下部分である「上框と下框」は,「上下画成枠」に,
「縦框3」の左右部分は,「左右画成枠」に,
「内面換気口6a」は,「空気流通部」に,
「クランク13」及びその「アーム20,20」は,「連結部材」に,
「先端部」は,「一端」に,
「閉塞時」は,「閉鎖時」に,
「他端部」は,「他端」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明の「開閉板10」と,本願発明の「蓋框」,「蓋本体部」とは,「(空気流通部を開閉する)蓋体」で共通するといえる。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「換気框と,
前記換気框に設けられ,且つ,開口を画成するための上下左右の画成枠からなる空気流通部と,
前記空気流通部を開閉する蓋体と,
前記換気框に対して前記蓋体を開閉可能に連結する連結部材を備えた建物用の換気装置において,
前記連結部材は,一端が前記左右画成枠に回動自在に,他端が前記蓋体に回動自在に取付けられると共に,前記一端は前記蓋体の閉鎖時に前記他端の下方に位置する換気装置。」

そして,次の点で相違する。
<相違点1>
空気流通部を開閉する蓋体が,本願発明では,蓋框で,上下アームを備えた操作部が取り付けられ,蓋本体部において上下アームに連動する連動棒が昇降し,それらの先端を前記上下画成枠に出没させることで,空気流通部の閉鎖時に蓋框を換気框側に係止させるのに対して,刊行物1記載の発明では,厚みをもった板で,上下アームや連動棒がなく,空気流通部の閉鎖時に蓋框を換気框側に係止させることができない点。

<相違点2>
空気流通部を開閉する蓋体が,本願発明では,その室内側に左右の膨出部と,これらの膨出部間及び蓋本体部の室内側面により形成される溝部を備え,その溝部に操作部が取り付けられるのに対し,
刊行物1記載の発明では,厚みをもった板で,その室内側の左右には膨出部はなく,その長手方向に把持部26が一連に設けられている点。

<相違点3>
蓋体の開放時の連結部材が,本願発明では,左右画成枠に回動自在な一端は,蓋框に回動自在な他端の下方に位置するのに対して,刊行物1記載の発明では,外郭部5,5内に取り付けられた回動自在な先端部は開閉板10に固着した回動部材12に回動自在な他端部と略水平に位置する点。

2 相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1について>
刊行物2記載の発明の「上框12aと中桟13及び両縦框12b」は,本願発明の「換気框」に相当し,
以下同様に
「枠,補助枠16」は,「上下左右の画成枠」に,
「開口部14」は,「空気流通部」に,
「開閉戸18」は,「蓋框」,「蓋本体部」に,
「ロック棒24,24」は,「連動棒」に,
「アーム21」は,「連結部材」に,
「換気小窓」は,「建物用の換気装置」,「換気装置」に,
「ハンドル26」は,「操作部」に,
「ロック棒24,24」は,「連動棒」に,
それぞれ相当し,
連動棒の先端を出没させる対象が,本願発明は,「上下画成枠」であるが,刊行物2記載の発明は,横方向にある補助枠16の係合穴に係脱可能であるため,「左右画成枠」であるといえる。
また,刊行物2記載の発明の「開閉戸18」は横長であるため,「横長の蓋框を有しているといえ,「ロック棒24,24」は長手方向である左右方向に配しているから,「長手方向である左右方向に移動可能に配した連動棒」を有しているといえる。

そうすると,刊行物2記載の発明は,
「換気框と,
換気框に設けられ,且つ,開口を画成するための上下左右の画成枠からなる空気流通部と,
空気流通部を開閉する横長の蓋框と,
換気框に対して蓋框を開閉可能に連結する連結部材を備えた建物用の換気装置において,
蓋框は,蓋本体部に操作部が取り付けられ,操作部が取り付けられ,蓋本体部において長手方向である左右方向に移動可能に配した連動棒があり,それらの先端を左右画成枠に出没させることで,空気流通部の閉鎖時に蓋框を換気框側に係止させることを特徴とする換気装置。」に相当する構成を有している。なお,下線部は,本願発明と相当関係にない構成である。

刊行物1記載の発明では開閉板10を閉の状態に維持するために駒21と板バネ15によるクランク13を用いているが,バネを用いたクランクによる閉の状態は,強い風や振動,小さい子供のいたずら等で開の状態になり得るものであって,当業者であればより確実に閉の状態を維持できる構造とすることを考えると認められるから,刊行物1記載の発明と同様な換気口に関する発明である刊行物2記載の,連動棒の先端を画成枠に出没させることによって閉鎖時に係止する構造を採用することは,当業者が容易に想到したことである。
そして,刊行物2記載の発明の蓋框は横長であり,連動棒は長手方向である左右方向に移動可能に配され,その先端は左右画成枠に係止されるから,開閉板10が縦方向に長い刊行物1記載の発明に採用する際には,連動棒を長手方向である縦方向に動かす,すなわち昇降させて,上下画成枠に先端を出没させることとなるのは自明である。
ここで,本願発明の「上下アーム51,52」は【図4】では水平に突き出た凸部であり,【図15】では垂直の棒状体として示されており,どのようなものであるのか不明であるが,本願明細書【0024】の「ハンドルアーム50を回転させることになり,上下アーム51,52が昇降し,これらの上下アーム51,52に連動する連動棒53,54が昇降し,それらの先端が前記上下画成枠21,22に出没するようになっている。」との記載や,【0029】?【0032】の記載からみて,操作による動きを伝える機構と認められる。そして,操作による動きを伝える機構は,当業者が適宜選択し得たものであるから,操作部に上下アームを備えて連動棒を連動させることは格別の構成ではない。

そうすると,刊行物1記載の発明の「蓋体」を刊行物2記載の発明の連動棒がある蓋本体部とし,連動棒へ操作による動きを伝える機構を適宜選択することによって,本願発明の相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>
<相違点1について>で検討した,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用する際には,操作部の位置は,同様に手で触れる刊行物1記載の発明において横方向中央部にある把持部26の,操作しやすい高さの場所とすることが自然であり,刊行物2記載の発明において,ハンドル26は蓋本体部に相当する開閉戸18の室内がわ面に備えられているから,操作部は蓋本体部の室内側に取り付けられたものとなる。
そして,刊行物1記載の発明における「蓋体」の厚みや形状は,意匠等を考慮して適宜決めうる事項であるから,左右の部分を厚くして膨出部とするなどして溝部を形成することは,適宜なしうる当業者の設計的事項にすぎない。
そうすると,蓋体を,その室内側に左右の膨出部と,これらの膨出部間及び蓋本体部の室内側面により形成される溝部を備え,その溝部に操作部を取り付けることは,格別のことではない。

<相違点3について>
本願発明において,開放時に,連結部材の左右画成枠に回動自在な一端が蓋框に回動自在な他端の下方に位置するということは,開放する際に連結部材が回転して左右画成枠と90度になる前に係止されて開状態になることを意味していると解されるが,連結部材がどの程度回転したときに係止して開状態とするかは,設計者が自由に設定できる事項にすぎず,かつ,一般的に窓等の連結部材の回動を90度以内の開状態とすることは周知の技術(例えば,実願平1-53941号(実開平2-144814号)のマイクロフィルムにおける第2図の平行リンク32,実公昭35-12072号公報における第2図のL字型片8等参照。)にすぎず,該周知の技術を刊行物1記載の発明のクランクの回動角度に採用することは,当業者が適宜なしうることである。そして,請求人が回答書等で主張する「閉鎖する場合に蓋框を空気流通部に押込むという動作を行うことができる」という作用効果は,その結果として自ずと生じることにすぎない。


請求人は,平成24年2月13日付け意見書の2.2-2において,以下のように主張している。
「刊行物1に記載されているとされる「左右の丸み面取り部を含んだ分を膨出部」は,開閉板10が備えているものであって,この開閉板10は審判官殿が認定されているように「厚みをもった板」です。
どの程度の厚みかといえば,刊行物1の第6図で図示されている厚み程度では,本願発明の「上下アームを備えた操作部」(後述)のための溝部を設けることができるでしょうか。
「板」であることから薄いもので,その板の材質はどうであれ,板に溝部を設ける,即ち,当業者がこの開閉板10に基づいて蓋框を設計する場合に溝部を設けるでしょうか。
蓋框に対しては,その開閉毎に力が加えられるものであって,その構造はそれらの力に耐えられるべきものであり,刊行物1の開閉板10からは,室内側に把持部26を設ける以外の構造は,示唆されないように考えます。」
しかしながら,溝を形成する際には素材を切削するだけでなく,素材の両側を厚くすることもできるから,刊行物1における開閉板10の厚さが薄いことが溝を形成することを阻害する要因となるとはいえない。

また,請求人は同意見書の5.5-1において,以下のように主張している。
「しかし,このような意匠を考慮していることに加え,その溝部に技術的意義を備えさせるために,溝部は膨出部間及び蓋本体部の室内側面により形成されることと補正しました。
これは,本願発明の蓋本体部においては,操作部の上下アームに連動する連動棒が昇降し,それらの先端を前記上下画成枠に出没させるもので,操作部及びそれに連動する連動棒にとって最適な位置にその操作部を配置させるという技術的な側面があることを示す構成です。」

上記主張の「技術的な側面」とは,なぜ最適な位置なのか不明であり,どういうことを意味しているのか不明りょうであって,補正により技術的な側面があることが明らかになったとはいえないが,「溝部は膨出部間及び蓋本体部の室内側面により形成される」点については<相違点2について>で検討したとおりであり,格別の構成ではない。

さらに,請求人は同意見書の5.5-2において,以下のように主張している。
「本願発明の操作部は,上下アームを備えたものですが,刊行物2の操作部はハンドル26です。
本願発明の操作部の上下アームは,ハンドルアーム50により昇降動作するもので(本願明細書段落0024),刊行物2のハンドル26とは異なるものです。
刊行物2に記載のハンドル26を取り付けるためには,本願発明の溝部は不要なものです。刊行物2の発明においても,その開閉戸18にはハンドル26とリンク25との間には,ハンドル26の回転軸26aを通す孔が形成されているのみです。
これに対し,本願発明の操作部は上下アームを備えたもので,これらを収容する台座部も想定されることから,上述のように溝部が必要になってくることとなります。」
上記主張中の「台座部」が何を意味しているか不明であり,「必要」との記載は当該意見書ではここ以外にないことから,「上述」がどこを指しており,溝部がなぜ必要と主張しているのか不明であるが,溝部については<相違点2について>で検討したとおりであり,上下アームについては<相違点1について>で検討したとおりである。

3 まとめ
したがって,本願発明は,上記刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-09 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-11 
出願番号 特願2005-56903(P2005-56903)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 仁科 雅弘
中川 真一
発明の名称 換気装置  
代理人 島田 義勝  
代理人 水谷 安男  
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