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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1257956
審判番号 不服2009-10108  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-20 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2002-582198「化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)の表面タンパク質」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月24日国際公開、WO02/83859、平成16年11月 4日国内公表、特表2004-533236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願
本願は、2002年(平成14年)4月12日(パリ条約による優先権主張2001年4月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年2月17日付で拒絶査定がなされ(同年2月19日発送),同年5月20日付で拒絶査定不服審判が請求されると共に,同日に特許請求の範囲についての補正がなされたものであり,「化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)の表面タンパク質」に関するものと認められる。

第2 原査定の理由
一方、原査定の拒絶の理由(平成19年11月21日付拒絶理由通知書)は、次のとおりである。

「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1-115に係る発明は配列番号2?668を引用するものであるが、本願明細書には当該配列番号に示されるコードデータを記載した配列表が発明の詳細な説明の最後にその一部分として記載されていないし、本願明細書の記載および当該分野の技術常識を参酌しても配列番号2?668が具体的にどのようなアミノ酸配列を意味するのか不明である(請求項1-115に記載の配列が不明である以上、審査を行うことができない)。
よって、請求項1-115に係る発明は不明確である。」

第3 当審の判断

1.本願特許請求の範囲の記載
本願は,外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)であるところ,外国語特許出願に係る国際出願日における明細書の翻訳文は特許法第36条第2項の規定により願書に添付して提出した明細書と、外国語特許出願に係る国際出願日における請求の範囲の翻訳文は同項の規定により願書に添付して提出した特許請求の範囲と,並びに外国語特許出願に係る国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文は同項の規定により願書に添付して提出した図面と,みなされる(特許法第184条の4第2項)から,本願が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているか否かの判断の基礎となるのは,平成15年12月15日に,国際出願翻訳文提出書により提出された国際出願翻訳文(以下,単に「翻訳文」という。)である。
そして,本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は,翻訳文に記載され,その後,平成21年5月20日付で補正された特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 (i)偶数番号の配列番号2?668のいずれかのアミノ酸配列に、少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列;
(ii)偶数番号の配列番号2?668のいずれかのアミノ酸配列;
(iii)(i)または(ii)のアミノ酸配列いずれかの免疫原断片;
(iv)(i)または(ii)のアミノ酸配列いずれかの少なくとも7の隣接するアミノ酸残基;あるいは
(v)感受性被験者において、β溶血性連鎖球菌コロニー形成または感染を防御するかまたは改善する(ameliorate)のに有効な、(i)、(ii)、(iii)または(iv)のいずれかの生物学的均等物を含んでなる、単離ポリペプチド。」

2.本願の特許を受けようとする発明
特許法第36条第6項第2号の要件は,「特許を受けようとする発明が明確であること。」というものであるところ,特許請求の範囲の請求項には,各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてが記載されているものである(特許法第36条第5項)から,本願の請求項1に係る特許を受けようとする発明(以下,単に「本願発明」という。)は,上記の請求項1に記載されたとおりのものであると認められる。

3.特許法第36条第6項第2号に規定する要件の判断

(1)判断
本願発明は,その請求項1の記載によれば,ポリペプチドという化学物質を,特定の配列番号(偶数番号の配列番号2?668)により特定しており,そのような化学物質に係る発明を明確に把握するためには,配列番号の単なる番号のみによる特定では不十分であり,その配列番号がどのような具体的なアミノ酸配列を意味するのかが理解できる必要があることはいうまでもない。
しかしながら,本願の特許請求の範囲のみならず,それ以外の明細書又は図面の記載をみても,各配列番号の具体的なアミノ酸配列については記載されていないし,また,本願の出願当時の技術常識を参酌しても,各配列番号のアミノ酸配列が具体的にどのような配列であるのかが理解できるような記載もない。
したがって,本願発明は明確なものとはいえない。

請求人は,平成20年5月21日手続補足書により,配列番号1?674が記載された配列表を格納したフロッピーディスクを提出し,審判請求書において以下のように主張している。
「本願明細書には配列番号2?668で特定される発明を記載しており、出願当初明細書には配列番号1?668を特定の配列をもつものとして記載しております。
また、平成20年5月21日手続補足書において、配列番号1?674が記載された配列表を格納したフロッピーディスクを提出しており、これによって各配列は明確になったと思料いたします。この配列表は国際段階においても様式225への応答として国際調査期間(合議体注:「機関」の誤記と認められる。)たる米国特許商標庁に提出されていたものです。
審査官殿は、配列番号と対応する配列が記載された配列表が本願の明細書に記載されていない以上、後から配列表を格納したフロッピーディスクを意見書に添付して提出したとしても、それをもって本願明細書に配列表が記載されているということはできず、また、配列番号で特定された配列が具体的な配列として明確になったとも認められない、と認定されています。
しかしながら、出願人は出願当初明細書において特定の配列をもつものとして記載していた配列を補充してこれを明確にすることにより拒絶理由は解消したものと思料いたします。」

しかし,請求人の上記主張からも明らかなように,提出された配列表のデータは,国際出願日には提出されておらず,その後に,国際調査機関に提出されたものである。そして,国際調査機関における手続きについて規定したPCT規則13の3.1の(e)には,「出願時における国際出願に含まれていない配列リストは、(a)又は(b)の規定に基づく求めに応じて又はその他の理由により提出されたか否かを問わず、国際出願の一部を構成しない。」と規定されており,国際調査機関たる米国特許商標庁に提出されていたからといって,それが出願の一部となるものでもないことは,PCT規則の規定からも明らかである。

また,特許法施行規則第38条の13の2第1項には,「塩基配列又はアミノ酸配列を含む外国語特許出願に係る国際出願日における明細書が規則5.2(b)の規定に従つて作成されており、かつ、当該明細書に同条約に基づく規則12.1の規定に従つて作成された配列表が記載されているときは、当該配列表は、特許法第184条の4第1項の規定により提出される翻訳文に記載されたものとみなす。」と,国際出願日において明細書に所定の配列表が記載されているときに,それが翻訳文に記載されているものとみなされることが規定されており,また,同条第2項の規定により読み替えて適用される特許法施行規則第27条の5第2項の規定により翻訳文提出時に提出された磁気ディスクに記録した事項については,明細書に記載した事項とみなさないことが,同条第6項に規定されている。

以上のように,平成20年5月21日付けで提出された各配列番号の配列表を格納したフロッピーディスク中の配列表のデータは,明細書の一部とは認められないし,そもそも,出願当初の明細書に全く記載がなくデータの提出もない具体的な配列が,その配列データを後で提出することにより明細書に明確に記載されていることになるということは,明らかに不合理であり,先願主義の原則にもとることであるから,請求人の主張は採用することができない。

第4 むすび
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-13 
結審通知日 2012-01-16 
審決日 2012-01-27 
出願番号 特願2002-582198(P2002-582198)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 英雄西 剛志  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 冨永 みどり
伏見 邦彦
発明の名称 化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)の表面タンパク質  
代理人 千葉 昭男  
代理人 押鴨 涼子  
代理人 富田 博行  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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