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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10L
管理番号 1257958
審判番号 不服2009-17832  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-24 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2004-564504「低級アルコールを活性化させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月22日国際公開、WO2004/061056〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2003年12月22日(優先権主張 2002年12月27日(JP)日本国特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月4日付けで拒絶理由が通知され、それに対して同年5月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月17日付けで拒絶査定がされ、同年9月24日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、手続補正書が提出され、平成23年8月11日付けの審尋に対し、同年10月17日に回答書が提出され、さらに、同年12月28日付けで拒絶理由が当審より通知され、平成24年3月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の特許を受けようとする発明は、平成24年3月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に記載された特許を受けようとする発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧することにより活性化された二酸化ケイ素で製造されたガラスに低級アルコールを接触させることからなる、低級アルコールを活性化させる方法。」

第3 当審より通知した拒絶の理由
平成23年12月28日付けで当審より通知した拒絶の理由は、この出願は、請求項1?12に記載された特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである、ということはできないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合せず、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない、という理由[理由1]を含むものである。

第4 当審の判断
1 はじめに
特許法第36条第6項は、「第三項第四号の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号に規定する要件(いわゆる、「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号判決)である。

以下、この観点に立って、本願発明1について検討する。

2 発明の詳細な説明の記載
平成21年5月8日付けの手続補正、平成21年9月24日付けの手続補正及び平成24年9月24日付け手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明には、以下の(a)?(g)の事項が記載されている。

(a)「【0006】
【発明の開示】
本発明は、ガソリンや軽油などの燃料の燃費を悪化させることなく、有害ガスの放出を抑制することができ、かつ燃料を安定に保存できる燃料添加剤、及び当該燃料添加剤が添加された燃料組成物を提供することを目的としている。」

(b)「【0008】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明者は燃料油を低公害化する方法について検討してきたが(先行技術文献1及び2参照。)、さらにそれを広く応用することができる方法を検討してきた。その結果、燃料油に限らず物質に特定の処理をすることにより当該物質が活性化し、生体をはじめ他の多くの物質に大きな影響を与えることを見出し、このような物質の活性化方法、及び当該方法で活性化された物質を提供してきた(先行技術文献4及び5参照)。即ち、ガラスなどの物質を、木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧することにより、当該物質を活性化させる方法、及び当該方法により活性化された物質を提供してきた。本発明者らは、さらに検討を進めてきた結果、このような活性化された物質(以下、このような方法で活性化された物質を「プラウ触媒」という。)を用いて低級アルコールを活性化することができ、これをガソリンや軽油などの燃料に添加することにより、排気ガス中の有害ガスの量を大幅に減少させることを見出した。」

(c)「【0010】
本発明は、木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、物質を特定の温度と圧力で加温及び加圧することにより、物質を活性化させ、このようにして活性化された物質の利用に関する。以下、本発明ではこのようにして活性化された物質のことを「プラウ触媒」と称する。
このようなプラウ触媒の製造に使用される物質としては、セラミックス、ガラス、天然石などのシリカ等を主成分とする物質、二酸化ケイ素などの無機物質類:アルミニューム、チタン、ステンレス、鉄等の金属類:金、銀等の貴金属類:樹脂等の有機物質類などの化学品などが挙げられる。」

(d)「【0019】
次に、プラウ触媒の製造方法について説明する。
プラウ触媒は、セラミックス、ガラス、天然石などのシリカ等を主成分とする物質、二酸化ケイ素などの無機物質類:アルミニューム、チタン、ステンレス、鉄等の金属類:金、銀等の貴金属類:樹脂等の有機物質類などの化学品などの物質を、木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、当該物質を特定の温度と圧力で加温及び加圧することにより製造することができる。」

(e)「【0030】
「プラウ触媒により活性化された低級アルコールの効果は、前記してきたように、極めて優れたものである。その作用機構の詳細は必ずしも明確ではないが、プラウ触媒の作用を受けやすいと考えられる水素原子を有する低級アルコールがプラウ触媒により活性化され、活性化された低級アルコールの成分が燃料の燃焼に何らかの作用をしているものと考えられる。活性化された低級アルコールの水酸基部分の水素原子が、燃料の炭化水素の水素原子や、空気中の酸素原子などと何らかの相互作用をして、より完全な燃焼を誘導するものと考えられる。その結果、排気ガス中の不完全燃焼の残渣と考えられる一酸化炭素や炭化水素の量が減少したものと考えられる。」

(f)「【0032】
参考例1 ガラス製品からなるプラウ触媒の製造
(1) 二酸化ケイ素の活性化
第1図及び第2図に示した装置1を用いて、ガラスの原料である二酸化ケイ素をプラウ触媒に活性化した。
水道水10Lに対し、木酢液、竹酢液の混合液の濃度が0.05%となるように調製した溶液を装置1に入れ、その中にガラスの原料である二酸化ケイ素を10kg入れて蓋2を締めて、加圧空気を導入して8気圧とした。
30℃で48時間、この状態で維持した後、装置1から活性化された二酸化ケイ素を取り出した。
【0033】
(2) ガラスビー玉、ガラスビーズからなるプラウ触媒の製造
ガラスビー玉、ガラスビーズ製造時に、実施例1で活性化された二酸化ケイ素をガラスビーズを製造する量の5%となるように調製し、ガラスビー玉、ガラスビーズからなるプラウ触媒を製造した。」

(g)「【0034】
実施例1 プラウ触媒により活性化されたイソブタノールの製造
容積600mlの容器に参考例1で製造したガラスビー玉及びガラスビーズからなるプラウ触媒を、それぞれ400gを充填し、550Lの貯蔵槽に貯蔵したエタノール100Lを流速10L/分で、48時間循環させてプラウ触媒で活性化されたエタノール100Lを製造した。…
【0036】
実施例3 活性化されたイソブタノールを含有するイソブタノールの製造
実施例1に記載の方法で製造されたイソブタノール0.1Lを、イソブタノール9.9L中に加えて、良く撹拌して、活性化されたイソブタノールを1重量%含有する本発明の活性化イソブタノール10Lを製造した。…
【0038】
実施例5 燃料添加剤プラウFAの製造
実施例3で製造した活性化されたイソブタノールを1重量%含有するイソブタノール(比重、0.802)を500g、エタノール(比重、0.816)を650g、及びナフサ・ラフィネート(比重、0.7307)を300g取り、これらを混合して撹拌して、燃料添加剤プラウFAを1000g製造した。…
【0040】
実施例7 ガソリン燃料組成物の製造
実施例5で製造した燃料添加剤プラウFAを重量で約7重量%になるようにレギュラーガソリンに添加して、本発明のガソリン燃料組成物を製造した。…
【0042】
試験例1
実施例7で製造したガソリン燃料組成物、及びレギュラーガソリンを使用して東京都環境科学研究所にて排気ガス及び燃費の試験を行った。…
【0043】
(1) レギュラーガソリンを用いた試験結果
…カーボンバランスによる燃料消費率は、10.23km/Lであった。
排気ガスの分析の結果を次の表3に示す。
【0044】
【表3】


【0045】
(2) 実施例7で製造したガソリン燃料組成物を用いた試験結果
…カーボンバランスによる燃料消費率は、10.22km/Lであった。
排気ガスの分析の結果を次の表4に示す。
【0046】
【表4】




3 本願発明1の課題
本願発明1の課題は、本願明細書の段落【0006】の記載からみて、「ガソリンや軽油などの燃料の燃費を悪化させることなく、有害ガスの放出を抑制することができ、かつ燃料を安定に保存できる燃料添加剤、及び当該燃料添加剤が添加された燃料組成物を提供すること」(摘示a)といえる。

4 発明の詳細な説明に記載された発明
発明の詳細な説明の記載には、請求人が定義する「プラウ触媒」の製造に使用される物質として、セラミックス、ガラス、天然石などのシリカ等を主成分とする物質、二酸化ケイ素などの無機物質類などを列挙しており(摘示c、d)、「ガラスなどの物質を、木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧することにより、当該物質を活性化させる方法、及び当該方法により活性化された物質を提供してきた。本発明者らは、さらに検討を進めてきた結果、このような活性化された物質(以下、このような方法で活性化された物質を「プラウ触媒」という。)を用いて低級アルコールを活性化することができ、これをガソリンや軽油などの燃料に添加することにより、排気ガス中の有害ガスの量を大幅に減少させることを見出した。」(摘示b)との一応の記載がある。
また、実施例として、二酸化ケイ素から製造したガラスビー玉、ガラスビーズからなるプラウ触媒(摘示f)を低級アルコールに接触させ、当該低級アルコールを燃料添加剤として用いる具体例が記載されており、また、上記燃料添加剤の添加前後において、燃料消費率には差が無く、COやHCの排出量の低減が観測されていること(摘示g)から、発明の詳細な説明において、「ガソリンや軽油などの燃料の燃費を悪化させることなく、有害ガスの放出を抑制することができ、かつ燃料を安定に保存できる燃料添加剤、及び当該燃料添加剤が添加された燃料組成物を提供する」という本願発明の課題に関する、一応の解決手段として明記されているのは、
「木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧することにより活性化された二酸化ケイ素から製造されたガラスビー玉及びガラスビーズに低級アルコールを接触させることからなる、低級アルコールを活性化させる方法。」といえる。

5 発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明
との対比
特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには、明細書の発明の詳細な説明に、当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきことは、上記「第4 当審の判断 1」で述べたとおりである。そこで、本願の発明の詳細な説明の記載が、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載との関係で、サポート要件に適合するか否かについてみると、上記4で検討したとおり、本願の発明の詳細な説明には、本願の上記3の課題解決の手段として、本願請求項1に記載された構成を採用したことが一応、記載されているが、実際に、その構成を採用することに有効性があり、当該発明の課題が解決できると当業者において認識できるものであるか、以下、検討する。

第一に、本願の発明の詳細な説明には、「プラウ触媒」の作用に関し、「プラウ触媒の作用を受けやすいと考えられる水素原子を有する低級アルコールがプラウ触媒により活性化され、…燃料の燃焼に何らかの作用をしているものと考えられる。活性化された低級アルコールの水酸基部分の水素原子が、燃料の炭化水素の水素原子や、空気中の酸素原子などと何らかの相互作用をして、より完全な燃焼を誘導するものと考えられる」との一応の記載がある(摘示e)。
しかしながら、上記記載は、「活性化」及び「何らかの相互作用」という記載で説示するにとどまり、二酸化ケイ素から製造したプラウ触媒を用いることによって、いかなる現象が生じて上記3の課題を解決できる旨、論理的説明は記載されていないし、この点について指摘した当審による先の拒絶理由通知に対して、審判請求人は、意見書において何ら説明を行っていないから、上記3の課題が解決できることが理論的に十分に説明されているとはいえない。

第二に、本願の実施例及び試験例を検討する。
本願の実施例において対比検討しているものは、「プラウ触媒」と接触させた低級アルコールを燃料添加剤として加えた場合と、燃料添加剤を添加しないレギュラーガソリンの場合の比較によって、その効果を確認する例が記載されるのみである(摘示g)。
そうすると、「プラウ触媒」に接触された低級アルコールを用いた実験結果が、「プラウ触媒」に接触された低級アルコールに起因する効果か、「プラウ触媒」に接触させない場合の「低級アルコール自体」の添加に起因する効果か否か、技術常識を勘案しても、明確に区別できない。
また、この実施例及び試験例における「プラウ触媒」単独の効果につき、当審による先の拒絶理由通知における指摘に対し、追試結果を示すなど意見書等による反論もなされていないから、上記3の課題を解決できることが十分な具体例をもって記載されているとはいえない。

第三に、本願の出願時の技術常識を考慮して検討する。
本願の「木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧することにより活性化された二酸化ケイ素で製造されたガラス」に関して検討すると、木酢液や竹酢液の成分からみて、二酸化ケイ素に付着した成分は、ガラスを製造するときの加熱で変質・揮散してしまうことなどが考えられ、本願の発明の詳細な説明を見ても、「木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧」により、二酸化ケイ素にどのような変化が生じ、それがガラスとされた際にどのような影響を与えるのかが明らかでないし、また、二酸化ケイ素もガラス製造の過程で、溶融されてその構造を変質させていると解される。よって、当業者が出願時の技術常識に照らし上記3の課題を解決できると認識できるとはいえない。

よって、上記三点を総合すると、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものともいえない。

6 請求人の主張について
請求人は、平成24年3月12日付けで意見書において、特許法第36条第6項第1号に規定する要件について、「新請求項1において、「木酢液及び/又は竹酢液の存在下で、加温、加圧することにより活性化」される物質を「二酸化ケイ素で製造されたガラス」に限定した点をもって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、上記限定によっても依然として本願発明1が、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記3の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、この請求人の主張は採用できない。

7 まとめ
したがって、本願発明1が、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、当業者が出願時の技術常識に照らし、本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本願発明1が発明の詳細な説明に記載したものであるということはできず、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

第5 むすび
したがって、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるとはいえないから、この出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、その余の点を検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2012-04-05 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-24 
出願番号 特願2004-564504(P2004-564504)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 齋藤 恵
大畑 通隆
発明の名称 低級アルコールを活性化させる方法  
代理人 榎本 一郎  
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