• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1257966
審判番号 不服2010-13781  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2004- 17057「サイバーホスピタルシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月 4日出願公開、特開2005-209085〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年1月26日の出願であって、平成21年8月14日付けの拒絶理由通知に対し同年10月26日付けで手続補正がなされたところ、平成22年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、当審より平成23年11月29日付けで平成22年8月23日付けの前置報告書を援用した審尋がなされ、平成24年2月3日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年6月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
本件補正は、平成21年10月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「複数の病院総合情報システムと複数の端末とに対して電気的通信回線を介して接続されたサイバーホスピタルシステムにおいて、
前記病院総合情報システムで発生された複数の医療情報ファイルを保管するデータベースシステムと、前記医療情報ファイルには、ガンの悪性度、ガンの種類、ガンの位置、ガンの大きさ、医師名、治療日時、治療で実際に適用した手技の区別、生存/死亡の区別の各事項が含まれる、
前記端末からガン治療に関する情報提供要求をガン悪性度の情報とともに受信し、前記受信した悪性度と同一の悪性度に関する治療情報ファイルを前記データベースシステムから抽出し、前記抽出された治療情報ファイルに基づいて治療成績表を作成し、前記端末に送信する情報提供システムと、前記治療成績表には医師ごとに症例数、手技名、生存率の各事項が含まれる
を具備することを特徴とするサイバーホスピタルシステム。」(以下、「本願発明」という。)を、

平成22年6月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「複数の病院総合情報システムと複数の端末とに対して電気的通信回線を介して接続されたサイバーホスピタルシステムにおいて、
前記病院総合情報システムで発生された複数の医療情報ファイルを保管するデータベースシステムと、前記医療情報ファイルには、ガンの悪性度、ガンの種類、ガンの位置、ガンの大きさ、医師名、治療日時、治療で実際に適用した手技の区別、生存/死亡の区別の各事項が含まれる、
前記端末からガン治療に関する情報提供要求をガン悪性度の情報とともに受信し、前記受信したガン悪性度と同一のガン悪性度に関する治療情報ファイルを前記データベースシステムから抽出し、前記抽出された医療情報ファイルに基づいて病院別の治療成績表を作成し、前記端末に送信する情報提供システムと、前記治療成績表には病院別の症例数、手技名、生存率の各事項が含まれる
を具備することを特徴とするサイバーホスピタルシステム。」(以下、「補正後の発明」という。)

に変更することを含むものである。(なお、下線部は、本願発明に対する補正箇所である。)

なお、上記の平成21年10月26日付け手続補正書では、請求項1中に、「治療で実際に適用したの手技の区別」との記載があるが、本願明細書中の記載や、その後に提出された平成22年6月23日付けの手続補正書の記載から、この「治療で実際に適用したの手技の区別」は「治療で実際に適用した手技の区別」の誤記であると認められるので、「治療で実際に適用した手技の区別」と認定した。
同様に、上記の平成21年10月26日付け手続補正書では、請求項1中に、「前記抽出された医療情報ファイル」との記載があるが、この「抽出された医療情報ファイル」は、請求項1において、初めて出現する語句であり、本願明細書中の第10、14?15段落の記載や、この語句の前段の記載において「治療情報ファイル」が抽出されていることが記載されていることから、この「前記抽出された医療情報ファイル」は「前記抽出された治療情報ファイル」の誤記であると認められるので、「前記抽出された治療情報ファイル」と認定した。

2 補正の適否
(1)補正の目的要件

本件補正は、本願発明に対して、
ア 「受信した悪性度と同一の悪性度」について、それぞれが「ガン悪性度」であることを具体的に限定し、
イ 「治療成績表」が、「病院別」に作成されることを具体的に限定し、
ウ 「治療成績表」には、「医師ごとに症例数、手技名、生存率の各事項が含まれる」としていた発明特定事項を削除し、「病院別の症例数、手技名、生存率の各事項が含まれる」とする発明特定事項を加えたものを、補正後の発明とする補正である。
ここで、上記ウに係る補正事項については、本願発明における発明特定事項のうち「医師ごとに」という条件を削除し、補正後の発明として、「病院別の」という条件を発明特定事項に加える補正であるが、この「病院別」という条件は、「医師ごと」という条件を下位概念化したものではなく、また、上記「医師ごと」という条件以外の、補正前のいずれの発明特定事項を下位概念化したものでもない。
したがって、補正後の発明は、本願発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものには該当しない。また、上記ウに係る補正事項が、請求項の削除、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げられた事項を目的とするものには該当しない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、補正の目的要件を満たしておらず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成22年6月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成21年10月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書および図面の記載からみて、上記「第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「1 本願発明と補正後の発明」の項中で、「本願発明」として記載したとおりである。

2 引用発明
(1)引用発明1
原審の拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開2003-50869号公報(以下、「引用例1」という。)には、「治療情報提供システム及び治療情報提供方法」に関して、図面とともに下記の事項が記載されている。

ア 「【0024】図1において、治療情報提供システム100は、ネットワーク25を介して複数のユーザー端末30に接続される。治療情報提供システム100は、主に、データの入出力を制御する入出力制御処理部103と、データの表示を制御する表示制御処理部105と、データ通信を制御する通信制御処理部108と、治療情報提供処理を実行するプログラムをインストールするインストーラー109と、治療情報を検索する治療情報検索部110と、患者情報を管理する患者情報データベース150と、医師情報を管理する医師情報データベース160と、医師情報を含む治療情報を管理する治療情報データベース170とを有する。」(4頁6欄29?40行)

イ 「【0026】治療情報検索部110は、後述されるメインプログラムによって制御され、更に、治療情報提供システム100で独自に管理される治療情報を抽出するコンピューター方針サブルーチン111と、医療チーム検索サブルーチン112と、ユーザー登録サブルーチン113とを有する。
【0027】治療情報データベース170は、治療方針を管理する治療方針データベース171と、ユーザーが本システムを用いて治療情報を受けた際の情報を患者過去事例として管理するデータベース172とを有する。更に、治療情報データベース170は、医師情報データベース160を有し、医師情報データベース160は、医師が過去に行った治療例や本システムを用いて治療方針を提供した際の情報を医師過去事例として管理するデータベース161を有する。
【0028】上記各データベースは、例えば、該補助記憶装置に格納される。
【0029】次に、治療情報システム100によって管理されるデータベースのデータ構成について図2及び図3で説明する。
【0030】図2及び図3は、データベースのデータ構成の例を示す図である。図2より、患者情報データベース150は、患者(ユーザー)に関する情報を管理するデータベースであって、レコードを特定するためのレコードNo.、氏名、年齢、生年月日、性別、住所、ユーザーID、パスワード、疾患名(診断名)、診断に用いた検査内容及び検査データ、自覚症状、本人病歴、家族病歴、アレルギーの有無、治療方針履歴、検索時優先順位等の項目を有する。患者情報データベース150において、項目の疾患名(診断名)、診断に用いた検査内容及び検査データ、自覚症状、本人病歴、家族病歴及びアレルギーの有無等、治療方針の選択に必要な情報は体調情報に対応し、項目の検索時優先順位は要求情報に対応する。また、項目の検索時優先順位は、医療チーム選択時の患者及びユーザーによる要求事項を示す情報であって、例えば、入院の可否及び治験的治療の可否、地域限定の有無、又は、保健外治療の有無等の情報並びにその重要視度が設定される。なお、該要求情報は、医療チーム及びコンピューターによる治療情報の選択時に用いてもよい。
【0031】また、図2より、医師情報データベース160は、医師に関する情報を管理するデータベースであって、レコードを特定するためのレコードNo.、医師名、医療チームの構成メンバー、治療実施地域、専門分野、論文情報、所属施設の医療過誤履歴、所属施設の治療、検査、病床等の設備、治療方針毎の施設頻度等の項目を有する。医師情報データベース160は、更に、例えば、医師名によって、医師過去事例データベース161と関連付けされる。医師過去事例データベース161は、医師が過去に行なった治療例や本システムを通じて治療情報提供した際の情報等を管理するデータベースであって、レコードを特定するためのレコードNo.、医師の登録ID、医師名、患者名、ユーザーID、患者入力診断名、自覚症状、検査値、診断名、治療方針、過去に行った治療例等の項目を有する。
【0032】図3より、治療情報データベース170は、治療情報に関する情報を管理するデータベースであって、治療方針データベース171と、患者過去事例データベース172と、医師過去事例データベース161を有する医師情報データベース160との関連付けによって構成される。治療方針データベース171は、治療方針に関する情報を管理するデータベースであって、レコードを特定するためのレコードNo.、治療方針名、適用可能疾患名、各疾患毎の治療効果情報、注意事項、保健適用可否、治療費、検査結果毎の治療効果情報、自覚症状毎の治療効果情報、治療方針毎の実施頻度等の項目を有する。患者過去事例データベース172は、本システムを利用したユーザー(患者)の事例を管理するデータベースであって、レコードを特定するためのレコードNo.、ユーザーID、患者名、診断名、体調情報(自覚症状、検査結果等)、患者要求事項、医師の検索結果、医師の選択結果、医師の提示した治療方針等の項目を有する。患者過去事例データベース172には、本システムをユーザーが利用することにより、その事例が自動的に記録されるが、治療後の経過や患者や家族の闘病記録などの情報(患者体験談)を手動で記入し記録することもできる。その際には、キーワードと関連づけさせて記録させることが好ましい。」(5頁7欄8行?8欄35行)

ウ 「【0033】図4及び図5は、治療情報検索部によって実行されるメインプログラムの例を説明するフローチャート図である。図4において、治療情報検索部110によって実行されるメインプログラムは、ユーザーID有無確認画面G21をユーザー端末30へ表示し、ユーザーに登録済みのユーザーかどうか回答を要求する(ステップS2)。ステップS3でユーザーが登録済みであるか否かを判断する。ユーザーが登録済みでない場合、ユーザー登録サブルーチン113を実行して(ステップS4)、ステップS5へ進む。一方、ユーザーが登録済みである場合、ステップS5へ進む。
【0034】ステップS5において、画面G22をユーザー端末30へ表示し、ユーザーに(1)コンピューターの治療方針のみの提供を希望(画面G22中の「コンピューターの情報を見たい」の回答が「Yes」、画面G22中の「医療チームからの回答を希望する」の回答が「No」)、(2)コンピューターの治療方針と医師治療方針の両方の提供を希望(画面G22中の「コンピューターの情報を見たい」の回答が「Yes.」、画面G22中の「医療チームからの回答を希望する」の回答が「Yes」)、(3)医師治療方針のみの提供を希望(画面G22中の「コンピューターの情報を見たい」の回答が「No.」、画面G22中の「医療チームからの回答を希望する」の回答が「Yes」)の何れかの回答を要求し、ユーザーが上記(1)から(3)のいずれを回答したか判断する(ステップS5)。ユーザーが(1)コンピューターの治療方針のみを希望している場合、コンピューター方針サブルーチン111を実行し(ステップS6)、プログラムを終了する。ユーザーが(2)医師治療方針を希望している場合、コンピューター方針サブルーチン111を実行(ステップS6)後、ステップ7を実行する。ユーザーが(3)医師治療方針のみを希望している場合、患者情報をユーザーに入力してもらう入力画面G71及びG72をユーザー端末30に表示する(ステップS7)。尚、この入力画面G71で得られる情報により、ユーザーが必要とする治療情報を絞り込む際の重要度(検索時優先順位)が設定される。
【0035】ステップS7での入力画面によって得られたユーザーによる入力情報を患者情報データベース150へ登録して(ステップS8)、医療チーム検索サブルーチン112を実行する(ステップS9)。
【0036】ステップS9での検索結果より、検索された件数が適当(所定数を満たしている)か否かをコンピューターで判断する(ステップS10)。所定数を満たしていない場合、ステップS7へ戻り、再度入力画面G71及びG72をユーザー端末30へ表示し、ユーザーから情報を取得する。一方、所定数を満たしている場合、医療チーム検索サブルーチンで得られた検索結果(医療チーム)を表示する(画面G111)(ステップS11)。この際、更に、該医療チームの治療方針を医師過去事例データベース161から検索した結果(画面G112)並びに、入力した患者情報に関係する患者の意見を、患者過去事例データベース172から検索した結果(画面G113)もユーザー端末30に表示する事もできる。その後、抽出された医療チームが妥当かどうかユーザーに回答を要求する(ステップS12)。
【0037】ユーザーの判断が再度検索を必要とした場合、ステップS7へ戻り、入力画面G71及びG72をユーザー端末30へ表示する(ステップS12)。一方、ユーザーの判断により検索された医療チームが妥当であると判断された場合、図5のステップS13へ進む。尚、この際に、検索された医療チームの中からユーザーが患者情報を送付する医療チームを選択、指定できるようにしてもよい。
【0038】図5において、患者情報等を含む依頼データを、上記の如く検索又はユーザーに指定された医療チームへ通知すると共に、ユーザー端末30へ医療チームからの回答に要する所要時間等を表示し(ステップS13、画面G131)、ユーザーにコンピューターによる治療方針の提供が必要か否かを再度判断してもらう(ステップS14)。尚、この際に、医療チームに対して通知する患者情報の内容についての修正の有無をユーザーに判断させてもよく、また、医療チームから治療情報を受け取る手段をユーザーに選択させてもよい。ユーザーがコンピューターによる治療方針の提供が必要であると判断をした場合(画面G131のチェック域1316で「Yes」をチェック)、コンピューター方針サブルーチン111を実行する(ステップS6)後、ステップ15を実行する。一方、ユーザーがコンピューターによる治療方針の提供は不要であると判断した場合(画面G131の表示域1316で「No」をチェック)、患者情報データベース150及び患者過去事例データベース172へ検索結果を登録する(ステップS15)。
【0039】治療情報提供システム100は、ステップS13で依頼データを通知した医療チームから回答を示す回答データを受信する(ステップS16)と、該回答データを患者過去事例データベース172と医師過去事例データベースとへ登録する(ステップS17)。全回答データをソートする(ステップS18)。更に、患者情報データベース150へ回答データを登録する(ステップS19)。ユーザーへ治療情報を開示して(ステップS20)、処理を終了する。」(5頁8欄36行?6頁10欄27行)

エ 「【0049】図4のステップS7及び図6のステップS22において、例えば、図10(A)及び図10(B)に示されるような入力画面がユーザー端末30に表示される。図10(A)は、治療情報の検索に対するユーザーの要望を設定する画面の例を示す図である。図10(A)において、画面G71は、患者情報の収集を行う画面であるが、治療情報の検索に対するユーザーの要望(検索時優先順位)の設定も同時に行う。画面G71は、ユーザーへ質問に回答するように促すメッセージを表示する表示域711と、質問内容の重要性(検索時優先順位)を設定するように促すメッセージを表示する表示域712と、質問内容を表示し、該当項目に設定する設定域713とを有する。表示域711には、例えば、「治療方針への要望に関する以下の質問にお答えください。(該当するチェック欄にマークしてください。)」のようなメッセージが表示される。表示域712には、例えば、「また、点数記入欄がある各質問事項について、その内容が「重要だと思う」なら「3点」を、どちらでもよいと思う」なら「2点」を、「重要でないと思う」なら「1点」を記入してください。」のような質問内容の重要性を設定する方法が表示される。ここでの入力により、ユーザーが必要とする治療情報を絞り込む際の重要度(検索時優先順位)が設定される。設定域713には、例えば、「治療を受ける場所について」、「家族が看護にかけられる時間について」、「医療保険対象外の治療は」、「未認可の治療法や薬に興味がありますか?」、「病名は分かっていますか」、「どんな検査を受けましたか」等の質問項目が表示され、ユーザーは各質問項目に対して該当する内容をチェックする。ユーザーによってチェックされた場合、例えば、■のように表示される。
【0050】設定域713にて、例えば、ユーザーが、項目「治療を受ける場所について」の重要性を「3」点として「場所を特定したい」をチェック、項目「家族が看護にかけられる時間について」の重要性を「2」点として「できるだけ病院にまかせたい」をチェック、項目「医療保険対象外の治療は」の重要性を「1」点として「考慮する」をチェック、項目「未認可の治療法や薬に興味がありますか?」の重要性を「2」点として「Yes」をチェック、項目「病名は分かっていますか」に対して「Yes」をチェック等を行なうと、更に、図10(B)に示されるような画面G72がユーザー端末30に表示される。
【0051】図10(B)は、詳細質問を表示する画面の例を示す図である。図10(B)において、画面G72は、画面G71にてユーザーが設定した項目に対して、更に詳細な質問が必要な場合にユーザー端末30に表示される画面である。例えば、画面G72は、画面G71の設定域713の項目「治療を受ける場所について」でチェックされた「場所を特定したい」に対応して、例えば、項目「治療を受ける場所に関して 1.都道府県を選択してください 2.市町村を選択してください」のような質問内容が表示され、夫々、「□北海道 □青森 □岩手」で示される選択域721と、「□大阪市 □吹田市 □高槻市」で示される選択域722とが表示される。更に、画面G72は、画面G71の設定域713の項目「病名は分かっていますか」でチェックされた「Yes」に対応して、例えば、項目「病名について 1.どこが悪いと言われましたか」のような質問内容が表示され、「□頭(脳) □心臓 □胃」で示される選択域723が表示される。」(7頁12欄42行?8頁14欄2行)

オ 「【0057】図5のステップS13にてユーザー端末30に表示される治療方針の依頼内容を示す画面、及び、医療チームへ通知される医療方針の依頼内容を示す画面は、例えば、図12(A)及び図12(B)に示されるような画面である。
【0058】図12(A)に示される画面G131は、ユーザー端末30に表示される治療方針の依頼内容を示す画面であって、医療チームへ治療方針を依頼することを表すメッセージを表示する表示域1311と、医療チームへ通知される患者情報を表示する表示域1312と、患者情報の通知可否をチェックするチェック域1313と、医療チームから治療方針が提示される予定日を表示する表示域1314と、治療方針の提示方法をチェックするチェック域1315と、コンピュータ治療方針の参照を選択するチェック域1316とを有する。
【0059】表示域1311には、例えば、「以下の内容を医療チームに通知し、治療方針の提出を要請します。」のようなメッセージが表示される。表示域1312には、例えば、医師へ通知される内容として、項目、年齢、性別、病名、検査、重要度で示される患者要望等の項目を有し、夫々、例えば、「58歳5ヶ月」、「女性」、「肝臓癌」、「CT、細胞診実施済み」、「重要度3」として「大阪市内の病院で治療を受けたい」、「重要度2」として「治験的な治療方法でもかまわない」のように表示される。チェック域1313には、「医療チームに対し、上記内容を通知していいですか?」のような質問が表示され、その質問に対して「Yes」のチェックができる。「Yes」がチェックされた場合、表示域1312に表示される患者情報がそのまま医療チームへ通知される。但し、この際、無記入等がある場合には、例えば「医療チームに通知する情報が少ないと、治療情報の提供に支障が出る場合があります」等のメッセージを表示し、「本当によろしいですか?」の質問と共に「Yes」又は「No」の表示がされる。「Yes」がチェックされた場合、表示域1312に表示される患者情報がそのまま医療チームへ通知され、「No」がチェックされた場合、入力の画面に戻る。表示域1314には、例えば、「医療チームからの治療方針提示は○○月○○日の予定です。」のように医療チームからの治療方針提示予定期日が表示される。チェック域1315には、「どの方法で情報を得たいですか? □当ホームページ内(プライバシーは確保されます)、□e-mail、□tel、□Fax、□・・」のように医療方針取得方法の選択図が表示され、チェックした取得方法によって医療チームからの治療方針を受け取ることができる。チェック域1316には、「蓄積されたデータのなかから、あなたの状況とよく似た事例等を知ることができます。コンピューターの情報を見たいですか? Yes□ No□」のように表示され、「Yes」をチェックすることによって、コンピュータ治療方針を参照することができる。参照する必要がない場合、「No」をチェックする。」(8頁14欄47行?9頁15欄48行)

カ 「【0064】図14は、医療チームからの回答例を示す図である。図14に示される画面G160は、医療チームからの回答例を示す図であって、医療チームに関する情報を表示する表示域1601と、治療法に関する情報を表示する表示域1602と、医療チームの過去事例の参照可否をチェックするチェック域1603とを有する。
【0065】表示域1601には、回答医療チーム名、医療チームID、治療実施施設所在地、治療方法、コメント等の情報が表示され、例えば、回答医療チーム名として「△△△医療チーム」、医療チームIDとして「TEAM0001」、治療実施施設所在地として「○○県○○市○○町○○-○○-○○」等が表示され、表示域1602には、例えば治療方法として「生体肝移植」、コメントとして「他臓器への転移がない場合、高い回復効果が得られる方法ですが、適合する供給者がいないとできない。当施設の成功例は3例です。」のような表示がされる。また、チェック域1603には、例えば「上記医療チームを参照する□Yes□No」の様に表示され、「Yes」をチェックすると図15の画面G161が表示され、医療チーム過去事例を参照することができる。参照する必要がない場合、「No」をチェックする。」(10頁17欄5?27行)

キ 「【0067】図15は、医師の過去事例を表示する画面例を示す図である。図15において、医師の過去事例を表示する画面G161は、ユーザーが選択したチームの情報であることを示すメッセージを表示する表示域1611と、回答した医療チームのメンバー(例えば、医師名等)を表示する表示域1612と、治療施設情報を表示する表示域1613と、回答医師の専門分野を表示する1614と、学会誌への投稿を表示する表示域1615と、年間患者数に関する情報を表示する表示域1616とを有する。
【0068】表示域1611には、例えば、「あなたが選んだチームの情報」のようなメッセージが表示される。表示域1612には、回答医療チームのメンバーとして例えば「千葉 太郎、埼玉 良子」のように医師名等が表示される。表示域1613には、上記医療チームのメンバーが従事又は推奨する、回答した治療方法を行うことができる施設の情報を治療施設情報として表示し、例えば、病院名は××病院、病床は1000床、職員は医師、看護婦、臨床検査技師等とその各人数、設備はMRI及びCT等、などの情報が表示される。尚、該治療施設情報は、複数の治療施設についての情報を表示してもよい。表示域1614には、専門分野として、「消化器科」及び「日本消化器学会会員、臨床病理学会会員」などの情報が表示される。表示域1615には、学会誌への投稿に関する情報として「23報(チーム全体 ?2001年)」のように表示される。表示域1616には、年間患者数に関する情報として、例えばのべ数「1000人」、治療方針回答回数として「87回」、治療方針回答例として「生体肝移植 7回」、「エタノール局注療法 35回」、「抗ガン剤による治療 15回」、治療実施例として「生体肝移植 3例(?2001年)」、「エタノール局注療法 8例/年」、「抗ガン剤による治療 7例/年」のような情報が表示される。」(10頁17欄33行?18欄16行)

上記摘記事項アの第24段落4頁6欄29?31行及び図1を参酌すると、ここには、複数のユーザー端末30に対してネットワーク25を介して接続された治療情報提供システム100が記載されている。

上記摘記事項イの第27段落5頁7欄18?22行及び第32段落5頁8欄13?18行には、治療情報データベース170は、医師情報データベース160を有していることが記載されており、同第31段落5頁8欄4?12行には、医師情報データベース160が医師名によって医師過去事例データベース161と関連付けられることが記載されているから、当該治療情報データベース170には、当該医師過去事例データベース161が含まれているものである。また、当該医師過去事例データベース161は、医師が過去に行った治療例等を含むデータベースであり、検査値、診断名、医師名、治療方針、過去に行った治療例等の各項目が含まれることが記載されている。
そして、上記摘記事項ウの第39段落6頁10欄19?23行には、医療チームから送られた治療情報である回答データを医師過去事例データベースに保管することが記載されている。ここで、治療情報である当該回答データは、医療チームから送られるものであるから、医療チームで発生されたものということができる。

上記摘記事項ウの第35段落6頁9欄23?26行並びに上記摘記事項エの第49段落7頁12欄42?49行及び第50段落8頁13欄23?34行には、ユーザー端末30上で、治療情報に対するユーザーの要望を患者情報とともに入力することが記載されている。そして、上記摘記事項ウの第37段落6頁9欄44行?第38段落6頁10欄6行及び上記摘記事項オの第57段落8頁14欄47行?9頁15欄1行には、ユーザー端末30上で入力された上記情報の内容を確認することが記載されており、同第59段落9頁15欄12?21行には、例として、診断名を含む患者情報とともに、ガン治療に関する情報の提供の要求が入力されることが記載されている。
上記摘記事項ウの第39段落6頁10欄19?27行には、上記ガン治療に関する情報の提供の要求に対する回答として、治療情報が開示されることが記載され、上記摘記事項カの第65段落10頁17欄22?26行のように、医療チーム過去事例を参照することを要求すると、上記摘記事項キの第67段落10頁17欄33?42段落、同68段落10頁18欄8?16行及び図15に示されるように、医師の過去事例として、医療チームにおける、ユーザーの診断名と同一の診断名に関する症例数、治療の実施の方法の各項目が含まれる治療実施例が表示されることが記載されている。
ここで、上記摘記事項イの第27段落5頁7欄18?22行に記載されるように、当該治療情報提供システムでは、医師が過去に行った治療例は、医師過去事例データベース161によって管理されるものであるから、ユーザーの診断名と同一の診断名に関する治療情報が、当該医師過去事例データベース161から抽出され、抽出された治療情報に基づいて当該治療実施例が作成されるものであるということができる。
また、ユーザーの要求に基づいて治療実施例が作成され、表示されるものであるから、ここでは、ユーザー端末から要求を受信し、作成された治療実施例をユーザー端末に送信しているということができる。そして、ここには、ユーザーの要求を受信し、情報を抽出し、治療実施例を作成し、送信するための手段も存在しているということができる。

したがって、上記引用例1の摘記事項 ? および図面(図 )に記載された の構成及び動作(並びに上記技術常識)によれば、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「複数のユーザー端末に対してネットワークを介して接続された治療情報提供システムにおいて、
医療チームで発生された複数の治療情報を保管する治療情報データベースと、前記治療情報には、検査値、診断名、医師名、治療方針、過去に行った治療例の各項目が含まれる、
前記ユーザー端末からガン治療に関する情報提供要求を診断名とともに受信し、前記受信した診断名と同一の診断名に関する治療情報を前記治療情報データベースから抽出し、前記抽出された治療情報に基づいて治療実施例を作成し、前記ユーザー端末に送信する手段と、前記治療実施例には、医療チームごとに症例数、治療の実施の方法の各項目が含まれる
を具備する治療情報提供システム。」

(2)引用発明2
原審の拒絶理由に引用され、本願の(原出願の)出願日(優先日)前に頒布された特開2002-288336号公報(以下、「引用例2」という。)には、「診療報酬請求事務代行・情報サービス業の処理方法」に関して、図面とともに下記の事項が記載されている。

ア 「【請求項4】 診療報酬請求事務代行・情報サービス装置は、電子カルテ等の情報を含めて病院等の医療機関・調剤薬局から種々の医療情報を収集して蓄積しておき、該医療情報を分析することにより、病院等の医療機関・調剤薬局等毎に病名毎の患者数、同一患者の通院数等の情報、あるいは患者に対するアンケート調査の結果等も統計情報として登録し、該統計情報に基づいて病名毎の医療機関のランキング等の情報を被保険者である患者または自治体および各企業等の全ての装置にインターネット等を介して送信することで、情報公開することを特徴とする診療報酬請求事務代行・情報サービス業の処理方法。」(2頁2欄1?12行)

イ 「さらに、本発明の第4の目的は、4)患者、すなわち被保険者に対して、各医療機関の統計情報や診療成績や医療方針などを情報公開して、被保険者が自分に最も適した医療機関を選ぶことができる診療報酬請求事務代行・情報サービス業の処理方法を提供することにある。」(4頁5欄2?6行)

ウ 「【0018】さらに、4)診療報酬請求事務代行・情報サービス装置は、電子カルテ等の情報を含めて病院等の医療機関・調剤薬局から種々の医療情報を収集して蓄積しておき、該医療情報を分析することにより、病院等の医療機関・調剤薬局等毎に病名毎の患者数、同一患者の通院数等の情報、あるいは患者に対するアンケート調査の結果等も統計情報として登録し、該統計情報に基づいて病名毎の医療機関のランキング等の情報を被保険者である患者または自治体および各企業等の全ての装置にインターネット等を介して送信することで、情報公開することを特徴としている。」(4頁6欄22?32行)

エ 「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を、図面により詳細に説明する。
(処理システムの構成)図1は、本発明の一実施例を示す診療報酬請求事務代行・情報サービス業の処理システムのブロック図である。図1において、60は本発明の中心的な役割を果す診療報酬請求事務代行・情報サービス装置(装置A)であり、70は装置Aに接続されたデータベース(DB)である。10は支払基金・国保連合会等のレセプト審査支払機関に設置された装置(装置C)、20は自治体等(国民健康保険等)および各企業等(健康保険組合等)に設置された装置(装置D)、30は病院等の医療機関・調剤薬局に設置される装置(装置B)、40は厚生省・都道府県等の行政機関に設置された装置(装置E)、50は国民健康保険等,健康保険組合等の被保険者を含む患者であり、本発明では、被保険者とその家族に対して1枚ずつIDカード(被保険者またはその家族を証明する識別カード)を所持しているものとする。従来は、医療機関にかかるときには、その医療機関が発行した診療カードを窓口に提出していたが、本発明によれば医療機関はカードを発行する必要がなく、各医療機関に共通なIDカードを提出すればよい。
【0020】本発明の診療報酬請求事務代行・情報サービス装置60は、1?6の機能を備えている。1は、自治体等、各企業等の基本情報(被保険者等の情報)および病院等の医療機関・調剤薬局の基本情報(認可申請等の情報)、および法改訂時における厚生省等が発行した診療報酬算定時に必要な情報を、インターネット等を介して受信し、データベース(以下、DB)70に蓄積する機能である。」(4頁6欄33行?5頁7欄13行)

オ 「【0035】(第4の実施例)第4の実施例では、患者、すなわち被保険者に対して、各医療機関の統計情報や診療成績や医療方針などを情報公開して、被保険者が自分に最も適した医療機関を選ぶことができるようにする。従来、患者が自分の病状に最も適した医療機関・薬局等を自由に選択できる状態にはなかった。すなわち、病名毎に経験富かな医師、看護婦、設備を備えた病院や診療所のランキング等の情報は、どこにも開示されていなかった。本発明の診療報酬請求事務代行・情報サービス装置(A)60は、病院等基本情報収集・登録機能90および診療行為等情報収集・登録・提供機能130を持っているため、電子カルテ等の情報を含めて病院等の医療機関・調剤薬局から種々の統計情報を収集することができるので、この統計情報を分析することにより、病院等の医療機関・調剤薬局等毎に病名毎の患者数、同一患者の通院数等の情報、あるいは患者に対するアンケート調査の結果等も登録することができ、それらの情報に基づいて病名毎のランキング等の情報を被保険者である患者に公開することができる。これらは、医事統計編集・提供機能160による医事統計編集処理プログラム190および医事統計等提供処理プログラム200により実現することができる。」(7頁12欄13?34行)

上記摘記事項エ及び図1には、複数の病院等の医療機関等に設置される装置(装置B)30に対して、インターネットを介して接続される診療報酬請求事務代行・情報サービス装置(装置A)60が記載されている。

上記摘記事項ア、ウ、オには、診療報酬請求事務代行・情報サービス装置(装置A)60が、病院等の医療機関等に設置される装置(装置B)30で発生された電子カルテ等の情報を含む医療情報を収集することが記載されており、上記摘記事項エの第20段落5頁7欄6?13行には、当該病院等の医療機関等から受信した情報を、診療報酬請求事務代行・情報サービス装置60がデータベース70に蓄積することが記載されている。

上記摘記事項イ、ウ、オには、上記収集した電子カルテ等の情報を含む医療情報を分析することにより、病院等の医療機関等毎に病名毎のランキング等の情報を作成し、患者に公開することが記載されている。また、これらは、医事統計編集・提供機能160による医事統計編集処理プログラム190および医事統計等提供処理プログラム200により実現されることも記載されている。

したがって、上記引用例2の摘記事項ア?オおよび図1に記載された診療報酬請求事務代行・情報サービス装置の構成及び動作によれば、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「複数の病院等の医療機関等に設置される装置に対して、インターネットを介して接続された診療報酬請求事務代行・情報サービス装置において、
前記病院等の医療機関等に設置される装置で発生された医療情報を保管するデータベースと、
前記医療情報に基づいてランキングを作成し、公開する処理プログラムとを具備する診療報酬請求事務代行・情報サービス装置。」

3 対比
(1)本願発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「ユーザー端末」、「ネットワーク」は、本願発明の「端末」、「電気通信回線」と、それぞれ実質的に同じものである。

イ 引用発明1の「治療情報提供システム」は、患者が病院や医師を選択する際に必要な治療情報を提供するシステムであるから、本願発明の「サイバーホスピタルシステム」と、実質的に同じ機能を有している。

ウ 本願発明の「総合病院情報システム」は、病院で医療情報を管理するためのシステムのことであるから、引用発明1の「医療チーム」と、医療組織である点で一致している。

エ 本願発明の「医療情報ファイル」は、患者情報や診断情報、治療情報を含む医療情報のファイルであるから、引用発明1の「治療情報」と、医療情報である点で一致している。

オ 本願発明の「治療情報ファイル」は、引用発明1の「治療情報」と、治療情報である点で一致している。

カ 引用発明1の「治療情報データベース」は、患者や医師の過去の治療事例を含む治療情報を管理するデータベースのことであるから、本願発明の「データベースシステム」と、実質的に同じものである。

キ 本願発明の「ガンの悪性度、ガンの種類、ガンの位置、ガンの大きさ」は、ガンに関する検査や診断の情報であるから、引用発明1の「検査値、診断名」と、検査や診断の情報である点で一致している 。

ク 引用発明1の「過去に行った治療例」は、実際に治療で実施された方法の内訳であるから、本願発明の「治療で実際に適用した手技の区別」と、実質的に同じものであり、本願発明の「治療日時」は、治療に関する情報のことであるから、引用発明1の「治療方針、過去に行った治療例」と、治療内容に関する情報である点で一致している。

ケ 引用発明1の「各項目」は、本願発明の「各事項」ともいい得るものである。

コ 本願発明の「ガン悪性度の情報」及び「悪性度」は、ガンに関する検査や診断の情報のことであるから、引用発明1の「診断名」と、検査や診断の情報である点で一致している。

サ 本願発明の「治療成績表」は、治療の実施例や数を含む治療成績の表のことであるから、引用発明1の「治療実施例」と、治療成績である点で一致している。

シ 引用発明1の「・・・受信し、・・・抽出し、・・・作成し、・・・送信する手段」は、本願発明の「情報提供システム」と実質的に同様の機能を有しているものである。

ス 本願発明の「手技名」は、治療に用いられる技術や手法、方法と解されるから、引用発明1の「治療の実施の方法」と、実質的には同じものである。

(2)よって、上記ア?スから、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「複数の端末に対して電気通信回線を介して接続されたサイバーホスピタルシステムにおいて、
医療機関で発生された複数の医療情報を保管するデータベースシステムと、前記医療情報には、検査や診断の情報、医師名、治療内容に関する情報、治療で実際に適用した手技の区別の各事項が含まれる、
前記端末からガン治療に関する情報提供要求を検査や診断の情報とともに受信し、受信した検査や診断の情報と同一の検査や診断の情報に関する治療情報を前記データベースシステムから抽出し、前記抽出された治療情報に基づいて治療成績を作成し、前記端末に送信する情報提供システムと、前記治療成績には、症例数、手技名の各事項が含まれる
を具備するサイバーホスピタルシステム。」

(相違点1)
本願発明では、「複数の病院総合情報システム」が、電気的通信回線を介してサイバーホスピタルシステムと接続され、「病院総合情報システムで発生された複数の医療情報ファイル」が「データベースシステム」に保管されるものであるのに対し、引用発明1では、「医療チームで発生された複数の治療情報」が「治療情報データベース」に保管されるものであるものの、病院総合情報システムに相当する構成を有していない点。

(相違点2)
検査や診断の情報に関し、本願発明では、「ガンの悪性度、ガンの種類、ガンの位置、ガンの大きさ」が医療情報に含まれ、端末から「ガン悪性度の情報」を受信して、「悪性度」に関する治療情報をデータベースシステムから抽出するものであるのに対し、引用発明1では、「検査値、診断名」が医療情報に含まれ、ユーザ端末から「診断名」を受信して、「診断名」に関する治療情報を治療情報データベースから抽出するものである点。

(相違点3)
本願発明では、「治療日時」、「生存/死亡の区別」が医療情報に含まれ、治療成績には、「生存率」が含まれるものであるのに対し、引用発明1では、「治療方針、過去に行った治療例」が医療情報に含まれるものの、治療日時や生存/死亡の区別が医療情報に含まれるものとはされておらず、治療成績に生存率が含まれるものともされていない点。

(相違点4)
治療成績に関し、本願発明では、「医師ごと」に各事項が含まれる「治療成績表」であるのに対し、引用発明1では、「医療チームごと」に各項目が含まれる「治療実施例」である点。

4 当審の判断
(1)相違点1について検討する。
引用発明2の「病院等の医療機関等に設置される装置」、「インターネット」、「診療報酬請求事務代行・情報サービス装置」、「医療情報」、「データベース」は、本願発明の「病院総合情報システム」、「電気的通信回線」、「サイバーホスピタルシステム」、「医療情報ファイル」、「データベースシステム」とそれぞれ実質的に同じ構成であるから、引用発明2には、「複数の病院総合情報システムに対して、電気的通信回線を介して接続されたサイバーホスピタルシステムにおいて、前記病院総合情報システムで発生された医療情報ファイルを保管するデータベースシステムとを具備する診療報酬請求事務代行・情報サービス装置。」が開示されている。

そして、引用発明1も引用発明2も、ともに医療情報の提供システムという同一技術分野に属する発明であり、病院等を選択する際に必要な医療情報を提供するという点で、解決すべき課題が共通しているものであって、引用発明1に引用発明2を適用する上で格別な阻害要因も見あたらないから、引用発明1における、「医療情報提供システム」に、引用発明2に開示された構成を適用することで、本願発明のように、「複数の病院総合情報システム」が、電気的通信回線を介してサイバーホスピタルシステムと接続され、「病院総合情報システムで発生された複数の医療情報ファイル」が「データベースシステム」に保管されるものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について検討する。
ガンの「悪性度」が、治療における予後の推定などに不可欠であり、重要なものと認識されていることは、例えば、特開平7-72156号公報の第2段落、「草野満夫、『各DNA量からみた消化器系腫瘍の悪性度診断』、医学のあゆみ、日本、医歯薬出版株式会社、1988年12月10日発行、第147巻、第11号、第873?876頁」の873頁左欄26行?右欄11行、「橘政昭、『V.予後因子・癌転移 前立腺癌』、日本臨床 増刊号 癌転移-基礎と臨床アップデート-、日本、株式会社日本臨床社、2003年11月28日発行、第61巻、増刊号8(通巻834号)、第314?318頁」の314頁右欄1?11行等に示されるように、当業者においては広く知られた周知な事項である。
すると、引用発明1における、ユーザ端末から「診断名」を受信して、「診断名」に関する治療情報を治療情報データベースから抽出する構成に加えて、上記の広く知られた事項に基づく要求にも対応すべく、本願発明のように、端末から「ガン悪性度の情報」をも受信して、「悪性度」に関する治療情報をもデータベースシステムから抽出するようにしたことは、当業者であれば容易になし得たことである。

また、ガンにおいて、「ガンの種類」や「ガンの位置」、ガンの進行度又は病期である「ガンの大きさ」を考慮して、治療内容や方針を決定することは、医療現場で当然に行われていることであって、広く知られた周知な事項である。
すると、引用発明1において、「検査値、診断名」を医療情報に含めることに加え、上記のような周知な事項を採用することで、本願発明のように、「ガンの悪性度、ガンの種類、ガンの位置、ガンの大きさ」を医療情報に含めるようにしたことは、設計変更に該当する構成であって、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について検討する。
医療現場におけるガン治療の評価の方法として、「生存率」や「死亡率」が広く用いられていることは、周知な事項であって、当業者においては、ごく普通に想定され得ることである。
すると、引用発明1の医療情報や治療成績において、上記のような周知な事項を採用することで、本願発明のように、「生存/死亡の区別」を医療情報に含め、治療成績に「生存率」を用いるようにしたことは、設計変更というべきものであって、当業者が適宜なし得たことである。

同様に、過去の治療例を蓄積する際に、その治療日時を付して情報を保存することは、医療現場において、医師がカルテを記載し保存する際に、当然に行われてきたことであるから、引用発明1の医療情報の「過去に行った治療例」に加えて、本願発明のように、「治療日時」を含めるようにしたことは、当業者が必要に応じてなし得た設計変更にすぎない。

(4)相違点4について検討する。
引用発明2の「ランキング」は、複数の評価対象について、表の形で成績を示すことであるから、引用発明2には、医療情報に基づいて、表の形で成績を作成し、公開することが開示されている。
そして、引用発明1も引用発明2も、ともに医療情報の提供システムという同一技術分野に属する発明であり、病院等を選択する際に必要な医療情報を提供するという点で、解決すべき課題が共通しているものであって、引用発明1に引用発明2を適用する上で格別な阻害要因も見あたらないから、引用発明1における、「治療実施例」に、引用発明2に開示された方法を適用することで、本願発明のように、「治療成績表」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、引用発明1では、「医療チームごと」に項目が含まれる形で、治療実施例を作成しているが、引用例1の図15の1612に示されるように、当該医療チームに属している医師が列挙されて表示されているものであるから、「医療チームごと」の治療実施例であると同時に、医師ごとの情報としても、治療実施例が示されているものである。
すると、治療成績に関し、引用発明1のように「医療チームごと」に作成することに代えて、本願発明のように「医師ごと」に作成するようにしたことは、必要に応じてなし得た設計変更であって、当業者が容易になし得たことである。

(発明の効果について)
なお、本願発明が奏する効果についても、いずれも引用発明1、引用発明2及び上記の周知な事項から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

(5)したがって、上記(1)?(4)から、本願発明は引用発明1、引用発明2及び上記の周知な事項に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記の周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-04 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2004-17057(P2004-17057)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 潤  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
猪瀬 隆広
発明の名称 サイバーホスピタルシステム  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 村松 貞男  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ