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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
管理番号 1258003
審判番号 不服2011-7570  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-11 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2006- 21195「エンジンのスロットル制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-198362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年1月30日の出願であって、平成22年2月24日付けで拒絶理由が通知され、平成22年4月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成22年5月13日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成22年7月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年1月4日付けで上記平成22年7月15日付けの手続補正書による手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、平成23年4月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成23年12月19日付けで書面による審尋がなされ、平成24年2月20日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成23年4月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年4月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成23年4月11日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年4月22日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記(a)を、下記(b)と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
エンジンへの空気の供給量を電子的に制御するスロットル制御装置において、
エンジンに接続する吸気通路を開閉するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータと、
スロットルグリップの回転操作量を電気信号に変換するセンサ機構と、
前記センサ機構の出力に基づいて前記駆動モータの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記センサ機構は、前記スロットルグリップの回転操作に従動する2本のワイヤと、前記2本のワイヤの変位に応じた電気信号を発生するセンサ本体とを有し、
前記吸気通路の上流端の開口にはエアクリーナケースが接続し、前記エアクリーナケースに設けられたエアフィルタの下流で内部空間を構成する膨張室には、前記エアフィルタで浄化された空気が貯留され、
前記駆動モータが、前記エアクリーナケースの前記膨張室の内部に配置され、
前記センサ機構及び制御装置が、前記エアクリーナケースの外部に配置される
ことを特徴とするエンジンのスロットル制御装置。
【請求項2】
前記センサ機構は、前記2本のワイヤの変位に応じて前記スロットルグリップの回転操作量に応じた回転変位を発生する回転カムをさらに備え、前記センサ本体が、前記回転カムの回転変位量に応じた電気信号を発生することを特徴とする請求項1記載のエンジンのスロットル制御装置。
【請求項3】
前記センサ機構のセンサ本体及び回転カムは、ヘッドパイプの後方で、燃料タンクとエンジンとにはさまれる空間に収まるように、メインフレームの前端部に掛け渡されたクロスメンバに取り付けられることを特徴とする請求項2記載のエンジンのスロットル制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、シートの下に配設されることを特徴とする請求項1記載のエンジンのスロットル制御装置。
【請求項5】
前記エンジンは多気筒エンジンであって、少なくとも複数の前記駆動モータを有し、その何れもが前記エアクリーナケースの前記膨張室の内部に配置されることを特徴とする請求項1記載のエンジンのスロットル制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、通常出力運転時又は高出力運転時には、前記駆動モータを全て駆動させて全気筒を稼動させ、低出力運転時には、一部の前記駆動モータを停止させることを特徴とする請求項5記載のエンジンのスロットル制御装置。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
エンジンへの空気の供給量を電子的に制御するスロットル制御装置において、
エンジンに接続する吸気通路を開閉するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータと、
スロットルグリップの回転操作量を電気信号に変換するセンサ機構と、
前記センサ機構の出力に基づいて前記駆動モータの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記センサ機構は、前記スロットルグリップの回転操作に従動する2本のワイヤと、前記2本のワイヤの変位に応じて前記スロットルグリップの回転操作量に応じた回転変位を発生する回転カムと、前記回転カムの回転変位量に応じた電気信号を発生するセンサ本体とを有し、
前記吸気通路の上流端の開口にはエアクリーナケースが接続し、前記エアクリーナケースに設けられたエアフィルタの下流で内部空間を構成する膨張室には、前記エアフィルタで浄化された空気が貯留され、
前記駆動モータが、前記エアクリーナケースの前記膨張室の内部に配置され、
前記センサ機構及び制御装置が、前記エアクリーナケースの外部に配置され、
前記センサ機構のセンサ本体及び回転カムは、ヘッドパイプの後方で、燃料タンクとエンジンとにはさまれる空間に収まるように、メインフレームの前端部に掛け渡されたクロスメンバに取り付けられ、 前記エアクリーナケースは、前記燃料タンクと前記エンジンとにはさまれるように配置され、 前記センサ機構は、上方を前記燃料タンクに、下方を前記エンジンに、後方を前記エアクリーナケースに囲われた領域に配置されて、平面視で前記ヘッドパイプを中心として車体一側寄りに偏移して配置され、 前記センサ機構は側面視で前記センサ本体が前記メインフレームに覆われるとともに、前記回転カムに繋がる前記2本のワイヤが前記メインフレームの上端よりも上方に配置されることを特徴とするエンジンのスロットル制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、シートの下に配設されることを特徴とする請求項1記載のエンジンのスロットル制御装置。
【請求項3】
前記エンジンは多気筒エンジンであって、少なくとも複数の前記駆動モータを有し、その何れもが前記エアクリーナケースの前記膨張室の内部に配置されることを特徴とする請求項1記載のエンジンのスロットル制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、通常出力運転時又は高出力運転時には、前記駆動モータを全て駆動させて全気筒を稼動させ、低出力運転時には、一部の前記駆動モータを停止させることを特徴とする請求項3記載のエンジンのスロットル制御装置。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、請求項1について、本件補正前の発明特定事項である「センサ機構」について「2本のワイヤの変位に応じて前記スロットルグリップの回転操作量に応じた回転変位を発生する回転カムと、前記回転カムの回転変位量に応じた電気信号を発生するセンサ本体とを有する」との限定を付加し、同じく「センサ機構」について「センサ機構のセンサ本体及び回転カムは、ヘッドパイプの後方で、燃料タンクとエンジンとにはさまれる空間に収まるように、メインフレームの前端部に掛け渡されたクロスメンバに取り付けられ」及び、「センサ機構は、上方を前記燃料タンクに、下方を前記エンジンに、後方を前記エアクリーナケースに囲われた領域に配置されて、平面視で前記ヘッドパイプを中心として車体一側寄りに偏移して配置され、前記センサ機構は側面視で前記センサ本体が前記メインフレームに覆われるとともに、前記回転カムに繋がる前記2本のワイヤが前記メインフレームの上端よりも上方に配置される」との限定を付加し、「エアクリーナケース」について「燃料タンクと前記エンジンとにはさまれるように配置され」との限定を付加する補正を含むものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭60-175740号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「本発明は自動二輪車等に適した多気筒内燃機関の吸気絞り弁の同調開閉装置に関する。」(第1ページ左下欄第18及び19行)

(イ)「第1図において車体の主要部であるフレーム10は前後部を夫々前フォーク11と前輪12及びリヤアーム13と後輪14により支持し、前上部には燃料タンク15を、その後にシート16を載置する。前フォーク11上部にはハンドルバー17を固定する。
フレーム10の下部に搭載した多気筒内燃機関20は所謂L型配置のシリンダ21、21aを有し、上向シリンダ21は後方に気化器30を備えた吸気通路22を設けてクリーナボックス26より空気を吸入し、前向シリンダ21aは上方に気化器30aを備えた吸気通路22aを設けてクリーナボックス26aより空気を吸入する。各シリンダ21、21aの排気は各排気口23、23aに接続した排気管24、24aを介してマフラ25に導かれ、消音して後方に排出される。」(第2ページ右上欄第14行ないし左下欄第9行)

(ウ)「フレーム10の一部に設置したポテンショメータなどのトランスジューサ42を、コントロールケーブル51及びレバー52を介して、ハンドルバー17の一端に回動自在に設けたアクセルグリップ等の操作子50により回動し、操作子50の回動角を電気的変位信号に変換し、電気的結線43を介してコントロールユニット40に送る。コントロールユニット40は電気的変位信号を受けてこれに対応した電気的駆動信号を発生し、並列に設けた電気的結線44、44aを経て、互に同一の特性を有するサーボモータ41、41aに送りこれを同調して回動する。
アクセルグリップ等の操作子50を回動すればコントロールケーブル51を介してトランスジューサ42も回動し、この回動は電気的変位信号に変換されてコントロールユニット40に送られる。これを受けてコントロールユニット40は電気的駆動信号を発生してサーボモータ41、41aに送り、作動軸33、33aを介して各絞り弁32、32aを、互に同調して、操作子50の回動角に対応する開度まで回動する。従って各絞り弁32、32aは操作子50により互に同調して開閉される。」(第2ページ左下欄第19行ないし第3ページ左上欄第1行)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図面の記載から、以下の事項が分かる。
(エ)アクセルグリップ等の操作子50の回動に従動するコントロールケーブル51と、コントロールケーブル51の変位に応じてアクセルグリップ等の操作子50の回動角に応じた回動を発生するレバー52と、レバー52の回動角に応じた電気的変位信号を発生するトランスジューサ42とによりセンサ機構を構成していることが分かる。

(オ)センサ機構及びコントロールユニット40が、クリーナボックス26の外部に配置されていることが分かる。

(カ)センサ機構のトランスジューサ42及びレバー52は、前フォーク11の後方で、燃料タンク15と多気筒内燃機関20とにはさまれる空間に収まるように取り付けられていることが分かる。

(キ)クリーナボックス26は、燃料タンク15と多気筒内燃機関20とにはさまれるように配置されていることが分かる。

(ク)センサ機構は、上方を燃料タンク15に、下方を多気筒内燃機関20に、後方を記クリーナボックス26に囲われた領域に配置されていることが分かる。

(ケ)レバー52に繋がるコントロールケーブル51がフレーム10の上端よりも上方に配置されていることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)(ア)ないし(ウ)、(2)(エ)ないし(ケ)並びに図面の記載から、引用文献には、次の発明が記載されているといえる。

「 多気筒内燃機関20への空気の供給量を電子的に制御する絞り弁の同調開閉装置において、
多気筒内燃機関20に接続する吸気通路22を開閉する絞り弁32、32aと、
前記絞り弁32、32aの開度を調整するサーボモータ41、41aと、
アクセルグリップ等の操作子50の回動角を電気的変位信号に変換するセンサ機構と、
前記センサ機構の出力に基づいて前記サーボモータ41、41aの動作を制御するコントロールユニット40と、を備え、
前記センサ機構は、前記アクセルグリップ等の操作子50の回動に従動するコントロールケーブル51と、前記コントロールケーブル51の変位に応じて前記アクセルグリップ等の操作子50の回動角に応じた回動を発生するレバー52と、前記レバー52の回動角に応じた電気的変位信号を発生するトランスジューサ42とを有し、
前記吸気通路22の上流端の開口にはクリーナボックス26が接続し、
前記センサ機構及びコントロールユニット40が、前記クリーナボックス26の外部に配置され、
前記センサ機構のトランスジューサ42及びレバー52は、前フォーク11の後方で、燃料タンク15と多気筒内燃機関20とにはさまれる空間に収まるように取り付けられ、
前記クリーナボックス26は、前記燃料タンク15と前記多気筒内燃機関20とにはさまれるように配置され、
前記センサ機構は、上方を前記燃料タンク15に、下方を前記多気筒内燃機関20に、後方を前記クリーナボックス26に囲われた領域に配置されて、
前記レバー52に繋がる前記コントロールケーブル51が前記フレーム10の上端よりも上方に配置される
多気筒内燃機関20の絞り弁の同調開閉装置。」(以下、「引用発明」という。)

2.-2 対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明における「多気筒内燃機関20」は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「絞り弁の同調開閉装置」は「スロットル制御装置」に、「吸気通路22」は「吸気通路」に、「絞り弁32、32a」は「スロットルバルブ」に、「サーボモータ41、41a」は「駆動モータ」に、「アクセルグリップ等の操作子50」は「スロットルグリップ」に、「回動角」は「回転操作量」に、「電気的変位信号」は「電気信号」に、「コントロールユニット40」は「制御装置」に、「回動」は「回転操作」に、「コントロールケーブル51」は「ワイヤ」に、「回動角」は「回転操作量」に、「回動」は「回転変位」に、「レバー52」は「回転カム」に、「回動角」は「回転変位量」に、「トランスジューサ42」は「センサ本体」に、「クリーナボックス26」は「エアクリーナケース」に、「前フォーク11」は「ヘッドパイプ」に、「燃料タンク15」は「燃料タンク」に、「フレーム10」は「メインフレーム」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「 エンジンへの空気の供給量を電子的に制御するスロットル制御装置において、
エンジンに接続する吸気通路を開閉するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブの開度を調整する駆動モータと、
スロットルグリップの回転操作量を電気信号に変換するセンサ機構と、
前記センサ機構の出力に基づいて前記駆動モータの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記センサ機構は、前記スロットルグリップの回転操作に従動するワイヤと、前記ワイヤの変位に応じて前記スロットルグリップの回転操作量に応じた回転変位を発生する回転カムと、前記回転カムの回転変位量に応じた電気信号を発生するセンサ本体とを有し、
前記吸気通路の上流端の開口にはエアクリーナケースが接続し、
前記センサ機構及び制御装置が、前記エアクリーナケースの外部に配置され、
前記センサ機構のセンサ本体及び回転カムは、ヘッドパイプの後方で、燃料タンクとエンジンとにはさまれる空間に収まるように取り付けられ、
前記エアクリーナケースは、前記燃料タンクと前記エンジンとにはさまれるように配置され、
前記センサ機構は、上方を前記燃料タンクに、下方を前記エンジンに、後方を前記エアクリーナケースに囲われた領域に配置されて、
前記回転カムに繋がる前記ワイヤがメインフレームの上端よりも上方に配置される
エンジンのスロットル制御装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(1)本願補正発明においては、エアクリーナケースに設けられたエアフィルタの下流で内部空間を構成する膨張室には、エアフィルタで浄化された空気が貯留され、駆動モータが、エアクリーナケースの膨張室の内部に配置されているのに対して、引用発明においては、エアクリーナーケースの構成が明らかでなく、駆動モータはエアクリーナーケースの外部に配置されている点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願補正発明においては、センサ機構は、スロットルグリップの回転操作に従動する2本のワイヤを有するのに対して、引用発明においては、センサ機構は、スロットルグリップの操作に従動するワイヤを1本有する点(以下、「相違点2」という。)。

(3)本願補正発明においては、センサ機構のセンサ本体及び回転カムは、メインフレームの前端部に掛け渡されたクロスメンバに取り付けられるとともに、センサ機構は、平面視でヘッドパイプを中心として車体一側寄りに偏移して配置され、側面視でセンサ本体がメインフレームに覆われるのに対して、引用発明においては、センサ機構のセンサ本体及び回転カムはフレームの一部に配置されているが、その詳細な配置位置は明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

2.-3 判断
相違点1ないし3について検討する。

(1)相違点1について
エンジンのエアクリーナケースにおいて、エアクリーナケースに設けられたエアフィルタの下流で内部空間を構成する膨張室には、エアフィルタで浄化された空気が貯留されるという構成は例を挙げるまでもなく慣用技術である。また、エンジンのスロットル制御装置において、スロットルバルブを開閉するモータをエアクリーナケースに収納することは周知の技術(例えば、特開2001-241366号公報(特に、段落【0011】、【図2(b)】等を参照。)、特開2005-105988号公報(特に、段落【0046】ないし【0048】、【図2】及び【図3】等を参照。)を参照のこと。以下、「周知技術1」という。)であり、且つ、そのモータの設置箇所をエアクリーナケース内のどの箇所とするかは当業者が適宜選択し得るものである。したがって、引用発明において上記慣用技術及び周知技術1を適用するにあたって、モータをエアクリーナケース内の膨張室に設置するようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

(2)相違点2について
エンジンのスロットル制御装置において、スロットルグリップの回転操作に従動する2本のワイヤで自動二輪車のスロットルを構成することは、周知の技術(例えば、実願昭56-139566号(実開昭58-44293号)のマイクロフィルム、実願昭52-114316号(実開昭54-39860号)のマイクロフィルム、特開2005ー315162号公報を参照のこと。以下、「周知技術2」という。)であるので、引用発明に上記周知技術2を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

(3)相違点3について
自動二輪車において、フレームが、メインフレームとメインフレームに掛け渡されたクロスメンバとにより構成されることは、周知の技術(例えば、特開2005-69201号公報(特に、段落【0025】ないし【0032】、【図4】等を参照。)、特開2004-116426号公報(特に、段落【0030】、【図4】ないし【図6】等参照。)、特開2004-100632号公報(特に、段落【0022】、【図2】及び【図3】等参照。)を参照のこと。以下、「周知技術3」という。)である。また、自動二輪車のスロットル制御装置において、スロットル制御関連部品を、保護性能の高い位置に配置すること(例えば、特開2005-325723号公報(特に、段落【0009】等を参照。)を参照のこと。)や、メンテナンス性に優れた車両幅方向片側に配置すること(例えば、特開2000-337167号公報(特に、段落【0016】、【0017】、【0025】等を参照。)を参照のこと。)は、当業者が普通に行っていることである。してみると、引用発明において上記周知技術3を適用するとともに、センサ機構のセンサ本体及び回転カムを、安全性やメンテナンス性等を考慮してフレームに適宜配置して、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明、周知技術1ないし3及び慣用技術から予想される以上の格別の効果を奏するとも認められない。
以上から、本願補正発明は、引用発明、周知技術1ないし3及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.-4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。


第3.本願発明について

1.本願発明
前記のとおり、平成23年4月11日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、平成22年4月22日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書、並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された上記(第2.の[理由]の1.(1)(a)【請求項1】)のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。

2.引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開昭60-175740号公報)記載の発明(引用発明)は、第2.の[理由]2.-1(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の[理由]1.(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-3に記載したとおり、引用発明、周知技術1ないし3及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、周知技術1ないし3及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1ないし3及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-22 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-24 
出願番号 特願2006-21195(P2006-21195)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 一郎岡澤 洋小川 恭司  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 川口 真一
柳田 利夫
発明の名称 エンジンのスロットル制御装置  
代理人 本山 慎也  
代理人 市川 利光  

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