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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1258008
審判番号 不服2011-11253  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-30 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2004-235146号「全量基肥によるイネの栽培」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月23日出願公開、特開2006-50962号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年8月12日にされた出願であって、平成23年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、平成23年9月7日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成23年11月9日付けで回答書が提出されたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成23年5月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1は以下のとおりである。(以下、「本願発明」という。
「全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法。」

2.引用刊行物及びその記載内容
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2001-169667号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている(以下、アンダーラインは合議体が記した。)。
(1a)「【請求項1】全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が40日?80日である倒伏軽減化合物を含有する粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農作業の省力化を目的として行われる全量基肥によるイネの栽培において、増収効果を有するイネの栽培方法に関する。」
(1c)「【0002】
【従来の技術】全量基肥によるイネの栽培においては、しばしば重度のイネの倒伏を招き、その結果、機械収穫が困難となり、更に収量が低下する場合があった。特開平7-213128号公報には、被覆資材で被覆した粒状肥料とともにある種の倒伏軽減化合物を含有する粒状または液状肥料を苗または籾の近傍に施用する栽培方法により、イネの倒伏が軽減できるとともに、精玄米収量が増加することが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、該栽培方法においても、単位面積あたりの籾数が減少する場合がある。」
(1d)「【0004】
【課題を解決するための手段】このような状況下で、本発明者らは鋭意検討を行った結果、全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が40日?80日である倒伏軽減化合物を含有する粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することにより、単位面積あたりの籾数が減少することなく、精玄米収量がより増加することを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が40日?80日である倒伏軽減化合物を含有する粒状物(以下、本粒状物と記す。)を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法(以下、本発明方法と記す。)を提供する。」
(1e)「【0005】
【発明の実施の形態】本発明方法において用いられる本粒状物は、含有している倒伏軽減化合物全体の25℃水中における50%溶出期間が40日?80日となるように、倒伏軽減化合物を固体担体に含有させたものである。具体的には倒伏軽減化合物を固体担体に担持させた粒状物の表面を、被覆資材により被覆してなるものが挙げられる。本発明における倒伏軽減化合物(以下、本化合物と記す。)とは、例えばイネの稈長を短くすることにより収穫時期の倒伏を軽減する効果を有する植物生長調節剤の一種であり、かかる本化合物としては、具体的には(E)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンテン-3-オール〔特開昭56-25105号公報に記載の化合物〕、(2RS、3RS)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンタン-3-オール〔特開昭53-28170号公報に記載の化合物〕、(E)-1-シクロヘキシル-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンテン-3-オール〔特開昭55-111477号公報に記載の化合物〕等のトリアゾール化合物あるいはその塩〔具体的には、塩酸塩、硫酸塩等〕または4’-クロロ-2’-(α-ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(Short Review of Herbicides & PGRs、1990、保土ヶ谷化学(株)出版、第306頁に記載の化合物)等のイソニコチンアニリド化合物あるいはその塩〔具体的には、塩酸塩、硫酸塩等〕等を挙げることができる。かかる本粒状物における固体担体としては、ウレタン、ポリスチレン等の合成樹脂組成物;カオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物質;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の植物性固形物;尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質粒状肥料;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質粒状肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム質粒状肥料;珪酸カルシウム等の珪酸質粒状肥料、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質粒状肥料;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質粒状肥料;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質粒状肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質粒状肥料等を挙げることができる。該固体担体の粒径は特に限定はないが、必要により行われる被覆工程での製造上の好適さの点から1?5mm程度であることが好ましい。担体としては、窒素室粒状肥料等の粒状肥料が好ましい。担体として、粒状肥料を用いる場合、本粒状物は基肥の一部または全部として用いられる。」
(1f)「【0006】本化合物を固体担体に担持させる方法は特に限定されないが、例えば本化合物を固体担体の表面へ付着させる方法、本化合物の溶液を固体担体に浸透させる方法、本化合物を固体担体とともに造粒する方法等があげられる。その具体例としては、例えば、特開昭63-107880号公報に記載される方法等があげられる。本化合物を固体担体に担持させた粒状物の表面を、各種の樹脂、パラフィン類、油脂類、硫黄等の被覆資材により特定の厚みで被覆することにより、本粒状物が製造できる。被覆資材および被覆方法は、例えば特開平8-73291号公報、特開平9-263475号公報、特開平10-152387号公報等に記載される被覆資材および被覆方法が用いられ、かかる被覆により本化合物の25℃水中における50%溶出期間が40日?80日となるような被覆資材の膜厚に調整される。被覆資材は、本化合物を固体担体に担持させた粒状物に対する重量比率で、約2?30%の範囲である。被覆資材には、必要に応じて無機質粉末、耐候性改良剤、着色剤、結合剤等を加えることもできる。本粒状物中における本化合物の含有量は、通常約0.00001?5重量%、好ましくは0.001%?1重量%である。」
(1g)「【0011】
【実施例】以下に、本発明方法を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明方法はこれらに限定されるものではない。まず、以下に本粒状物と基肥とを配合した配合物の例を示す。尚、本粒状物の施用方法としては、本配合例の施用に限られるものではない。
配合例1「本粒状物A」特開平10-152387号公報に記載の方法に準じて製造された((E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンテン-3-オール(以下「化合物A」と記す)を粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N-P_(2)O_(5)-K_(2)O-化合物A=13%-0%-16%-0.018%、化合物Aの25℃水中における50%溶出期間が47日、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が17日目で80%)12.4部と、「被覆粒状肥料B」(特開平9-202683号公報に記載の方法に準じて製造された「被覆尿素60日タイプ」;N-P_(2)O_(5)-K_(2)O=43%-0%-0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が60日目で80%)12.2部と、「被覆粒状肥料D」(特開平9-202683号公報に記載の方法に準じて製造された「被覆尿素100日タイプ」;N-P_(2)O_(5)-K_(2)O=41%-0%-0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が100日目で80%)7.7部と、「尿素」(住友化学工業株式会社製、N-P_(2)O_(5)-K_(2)O=46%-0%-0%)5.1部と、「くみあい苦土入り燐酸加里化成高度40号」(小野田化学工業株式会社製、N-P_(2)O_(5)-K_(2)O=0%-20%-20%)62.6部とを配合し、「本配合物1」100.0部を得た。」
(1h)「【0027】次に本発明方法によるイネの栽培の試験例を示す。本発明方法は、本試験例に限られるものではない。
試験例1
配合例1で得た「本配合物1」の40.0g/m^(2)(窒素施用量:4.9g/m^(2)、化合物A施用量:0.0009g/m^(2))相当量を、田植え6日前に本田の圃場作土へ全層施用し、その後イネ幼植物を移植し、「本発明区1」とした。また「本配合物1」45.6g/m^(2)(窒素施用量:5.6g/m^(2)、化合物A施用量:0.0010g/m^(2))相当量を、田植えと同時に側条施肥田植機を用いてイネ幼植物から横5cm、深さ5cmの位置に側条施用し、「本発明区2」とした。比較として、化合物Aを含有していないこと以外は本配合物1と同様の配合物「基準配合物1」を用いて、44.3g/m^(2)(窒素施用量:5.5g/m^(2))相当量を、本発明区2と同様に側条施用し、「基準区1」とした。試験は20日間育苗された2.5葉期のイネ幼植物(品種:コシヒカリ)を用いて行い、本発明区1は1区75m^(2)、2連で、本発明区2と比較区1は1区150m^(2)、1連で行った。田植え後120日目に倒伏程度を調査した。倒伏程度は直立を0、完全倒伏を4とし、傾斜角度を均等に区分することにより評価した。田植え後120日目に収穫し、稈長、籾数、登熟度、精玄米収量を調査した。結果を表1に示す。籾数、登熟度、精玄米収量は基準区1に対する相対値で示した。表1から明らかなように、本発明区1、2は、籾数、登熟度、精玄米量のいずれの収量要素においても増加が認められた。」

また、記載事項(1a)の「倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が40日?80日である」は、「倒伏軽減化合物の25℃水中における40?80日目のいずれかの日の積算溶出率が50%である」と言い換えることができる。
したがって、上記各記載及び技術常識を総合的に勘案すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における40?80日目のいずれかの日の積算溶出率が50%である倒伏軽減化合物である粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法。」(以下、「引用発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平10-152387号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】農薬を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料。」
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、肥料および農薬の両有効成分の溶出が制御された緩効性(遅効性と言うこともある)粒状肥料に関する。」
(2c)「【0009】さらに、溶出速度の制御方法としては、被膜形成樹脂の透水性を架橋密度や化学構造、あるいは膜厚を変えることで制御することが可能である。また、被膜中に水可溶性粉粒体、水難溶性粉粒体等を導入し人為的に被膜中に顕在あるいは潜在の欠陥を導入する方法も有用な技術である。」
(2d)「【0016】本発明の被覆粒状肥料には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の材料以外の助材を加えてもよい。例えば、製品の固結防止のため、タルク、ろう石、炭酸カルシュウム、シリカ等の無機粉末を該被覆肥料表面にまぶしておくことは重要な技術である。本発明の農薬含有粒状被覆肥料の主な用途は、水稲、畑作物等の農作物や花卉分野である。具体的な例をあげると、例えば水稲における病害虫防除、稲の倒伏軽減を目的とした農薬、植物成長調節剤と稲の生育のため施す肥料としての用途がある。適期に溶出するよう制御しているため、例えば、施用方法としては田植えと同時に側条施肥が可能である。」
(2e)「【0017】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
参考例1:農薬含有肥料の調製
粒状化成肥料[住友化学工業(株)製、平均粒径2.9mm]1kgを、熱風発生機を付設した温度制御可能なパン型転動造粒機(パン径500mm)に仕込み、20?30RPMで回転させ粒状肥料を転動状態にした。農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル、住友化学工業(株)製]1gをノニオン系界面活性剤であるソルポ-ル8043[東邦化学(株)製、化学名:ポリオキシエチレンノニルフェニルエ-テル]8gとトリエチレングリコ-ル11部を混合した溶媒に60℃で溶解させて得た農薬溶液を、該転動状態にある肥料粒子に霧吹きを用いて噴霧・添加した。該溶液は、肥料粒子中に速やかにに浸透することを確認した。しかる後に、さらに転動状態を継続し、揮発性溶媒を除去してウニコナゾ-ルPを含有した粒状化成肥料を得た。」
(2f)「【0021】実施例1、2、3、4、5、6
上記実施例1(当審注:上記「参考例1」の誤記と認める。)、2及び3で得た表面が水溶性樹脂あるいは水不溶性粉体で被覆した農薬含有粒状サンプルA、B、C、及びDを用いて下記の通りウレタン樹脂で被覆した被覆肥料を作成した。」
(2g)「【0024】
【発明の効果】本発明の農薬含有の粒状被覆肥料は、肥料成分と農薬成分の溶出挙動が制御されており、適期にこれらの成分を溶出するように制御できるため、例えば、水稲における施用方法として、田植えと同時に側条施肥が可能である。」
(2h)【表1】には、実施例1?7の25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)がそれぞれ、
7日目 30%、 0%、11%、 0%、 8%、 0%、 0%、
14日目 74%、 5%、25%、 0%、18%、 8%、 8%、
30日目 96%、33%、53%、 8%、48%、18%、12%、
90日目 98%、88%、98%、45%、85%、66%、58%、
であることが記載されている。

そうすると、上記記載(2h)の実施例1に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が30%であり、14日目が74%であり、30日目が96%であり、90日目が98%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明1」という。)が記載されていると認められる。

また、上記記載(2h)の実施例2に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が0%であり、14日目が5%であり、30日目が33%であり、90日目が88%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明2」という。)が記載されていると認められる。

また、上記記載(2h)の実施例3に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が11%であり、14日目が25%であり、30日目が53%であり、90日目が98%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明3」という。)が記載されていると認められる。

また、上記記載(2h)の実施例4に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が0%であり、14日目が0%であり、30日目が8%であり、90日目が45%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明4」という。)が記載されていると認められる。

また、上記記載(2h)の実施例5に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が8%であり、14日目が18%であり、30日目が48%であり、90日目が85%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明5」という。)が記載されていると認められる。

また、上記記載(2h)の実施例6に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が0%であり、14日目が8%であり、30日目が18%であり、90日目が66%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明6」という。)が記載されていると認められる。

また、上記記載(2h)の実施例7に着目して、刊行物2には、
「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル]を含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料であって、
25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)は、7日目が0%であり、14日目が8%であり、30日目が12%であり、90日目が58%である粒状被覆肥料」の発明(以下、「刊行物2記載の発明7」という。)が記載されていると認められる。

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
本願発明の「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である」ことと、引用発明の「倒伏軽減化合物の25℃水中における40?80日目のいずれかの日の積算溶出率が50%」としたこととは、倒伏軽減化合物の25℃水中における溶出の度合いを調整した点で共通する。

(2)両発明の一致点
したがって、両者は、次の点で一致する。
「全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における溶出の度合いを調整した粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用するイネの栽培方法。」

(3)両発明の相違点
また、両者は、次の点で相違する。
相違点:倒伏軽減化合物の25℃水中における所定時間経過後の積算溶出率に関し、本願発明は「6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である」のに対し、引用発明は「40?80日目のいずれかの日の積算溶出率が50%」である点。

4.本願発明の容易推考性の検討
上記相違点について検討する。
(1)刊行物2には、上記刊行物2記載の発明1?7が記載されており、それらの「(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ル」は、刊行物2の記載事項(2d)に「農薬含有粒状被覆肥料の主な用途」の「イネの倒伏軽減を目的とした農薬」として例示されたものでもあり、かつ、本願明細書【請求項1】で倒伏軽減化合物として示された「(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンテン-3-オール」と同様のものでもあるので、本願発明の「倒伏軽減化合物」に相当し、農薬としてそのような化合物を含有した刊行物2記載の発明1?7の「農薬含有の粒状被覆肥料」は、本願発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に相当する。
また、刊行物2記載の発明1?7の「25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)」は、本願発明の「倒伏軽減化合物の25℃水中における」「積算溶出率」に相当する。
そして、刊行物2記載の発明1?7のうち、「25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)」が、7日目が「0%」「11%」「8%」、14日目が「5%」「25%」「18%」「8%」のものは、「6時間後の積算溶出率が15%以下」「14日目の積算溶出率が5%以上45%以下」であることは明らかである。

そして、刊行物2記載の発明1?7のうち刊行物2記載の発明2,6,7は、7日目の積算溶出率が全て「0%」であり、14日目の積算溶出率が「5%」「8%」「8%」であるから、本願発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物」の範囲に含まれるものである。

(2)そこで、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」として、刊行物2記載の発明1?7のものを用いることが、当業者が容易になし得たことであるか否かについて検討する。
(2-1)刊行物1の記載事項(1g)には、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に対応する「本粒状物A」として、刊行物2を引用して、「特開平10-152387号公報に記載の方法」に準じて製造された「被覆資材により被覆した粒状物」を例示している。
さらに両者は、農薬が「((E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンテン-3-オール」である点においても共通するものである。
そうすると、これらの観点から引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に、例示された刊行物2に実施例として記載された、刊行物2記載の発明1?7の「農薬としてウニコナゾ-ルP[化学名:(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4、4-ジメチル-2-(1H-1、2、4-トリアゾ-ル-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オ-ルを含有した粒状肥料表面を、熱硬化性樹脂を主成分としてなる被覆材により被覆してなる農薬含有の粒状被覆肥料」を使用することは、当業者が容易になし得たことである。
(2-2)ところで、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」は「倒伏軽減化合物の25℃水中における40?80日目のいずれかの日の積算溶出率が50%」のものであるのに対して、刊行物2記載の発明1?7のうち刊行物2記載の発明1,3は、農薬溶出率が30日目にすでに96%,53%に達しており、刊行物2記載の発明4は、農薬溶出率が90日目でも45%であるので、それらは、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に使用することが適当でないものである。
また、刊行物2記載の発明5も、農薬溶出率が30日目に48%であり、40日目になる前に積算溶出率が50%を超えている蓋然性が高い為、同様に引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に使用することが適当でないものと類推される。
一方、刊行物2記載の発明2,6,7は、少なくとも30日目から90日目の間に、積算溶出率が50%となるものであり、倒伏軽減化合物の溶出の度合いが、「40?80日目のいずれかの日の積算溶出率が50%」程度のものである。
そうすると、倒伏軽減化合物の溶出の度合いという観点から検討すると、刊行物2記載の発明1?7のうち刊行物2記載の発明1,3?5の粒状被覆肥料は、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に使用することが適当でないものである、一方、刊行物2記載の発明2,6,7の粒状被覆肥料は、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に使用することに、そのような支障が存在するものではない。
そうすると、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に、刊行物2記載の発明2,6,7の「農薬含有の粒状被覆肥料」を使用することは、当業者が容易になし得たことである。

(3)そして、上記(1)に記載したように、刊行物2記載の発明2,6,7は、「25℃水中における積算溶出率(農薬溶出率)」が、それぞれ7日目が「0%」、14日目が「5%」「8%」「8%」のものであって、「6時間後の積算溶出率が15%以下」「14日目の積算溶出率が5%以上45%以下」の範囲に含まれるものである。
そうすると、上記(2)?(2-2)で検討した様に、引用発明の「倒伏軽減化合物を含有する粒状物」に、刊行物2記載の発明2,6,7の「農薬含有の粒状被覆肥料」を使用することは、当業者が容易になし得たことであり、そのことにより、本願発明の相違点に係る構成とすること、すなわち、粒状物を「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物」とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(4)「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物」とすることの技術的意義、及び、本願発明の効果について、さらに検討する。
(4-1)本願明細書には、「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物」とすることの技術的意義に関して、
ア.「【0005】・・・全量基肥によるイネの栽培において、全量基肥の施用直後から2週間までの初期時期における倒伏軽減化合物の溶出量が、倒伏軽減効果にムラを生じさせないために極めて重要な要因になり得ることを見出し、本発明に至った。」
イ.「【0007】 本発明によれば、全量基肥によるイネの栽培において、用いられた倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除し、倒伏軽減効果にムラを生じさせないことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】 本発明栽培方法において用いられる本粒状物は、含有している倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下となるように、倒伏軽減化合物を固体担体に含有させたものである。」
ウ.「【0017】
配合例1
「本粒状物A」(特開平10-152387号公報に記載される方法に準じて製造された(E)-(S)-1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1-ペンテン-3-オール(以下「化合物A」と記す)を粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N-P_(2)O_(5)-K_(2)O-化合物A=13%-0%-16%-0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が0.5%、14日目の積算溶出率は10.5%)12.5部と、「被覆粒状肥料C」・・・15.0部と、「被覆粒状肥料E」・・・11.7部と、「新すずらん」・・・52.0部と、「17.5-45.5 りん安4号」(住友商事株式会社輸入販売、N-P_(2)O_(5)-K_(2)O=17.5%-45.5%-0%)8.8部とを配合し、「本配合物1」100.0部を得た。
・・・
【0030】
次に、倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%より大きくかつ14日目の積算溶出率が45%より大きい倒伏軽減化合物を含有する粒状物と、基肥とを配合した比較配合物の例を示す。
比較配合例1
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「比較粒状物A」(・・・化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が18.1%、14日目の積算溶出率は56%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「比較配合物1」100.0部を得た。
【0031】
次に本発明栽培方法によるイネの栽培の試験例を示す。本発明栽培方法は、本試験例に限られるものではない。
試験例1
本発明区として次の2区を設けた。
(a)配合例1で得られた「本配合物1」の40.0g/m^(2)(窒素施用量:6.4g/m^(2)、化合物A施用量:0.0012g/m^(2))相当量を、田植え5日前に本田の圃場作土へ全層施用し、その後イネ幼植物を移植し、「本発明区1」とした。(b)配合例9で得られた「本配合物9」の40.0g/m^(2)(窒素施用量:6.4g/m^(2)、化合物A施用量:0.0012g/m^(2))相当量を、本発明区1と同様に施用し、「本発明区2」とした。
比較区として次の2区を設けた。
(c)「比較配合物1」の40.0g/m^(2)(窒素施用量:約6.4g/m^(2)、化合物A施用量:0.0012g/m^(2))相当量を、本発明区1と同様に施用し、「比較区1」とした。
(d)化合物Aを含有していないこと以外は「本配合物1」と同様の配合物「比較配合物2」の40.0g/m^(2)(窒素施用量:約6.4g/m^(2))相当量を、本発明区1と同様に施用し、「比較区2」とした。
・・・田植え後120日目に試験区内の倒伏程度と倒伏軽減効果のムラとを調査した。倒伏程度は直立を0、完全倒伏を4とし、傾斜角度を均等に区分することにより評価した。倒伏軽減効果のムラは効果が均一を0、若干ムラ有りを5、ムラ有りを10、著しいムラ有りを20として評価した。2連平均の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明区1及び2では、倒伏軽減効果が認められ倒伏軽減効果のムラを抑えることができることが確認された。」
エ.「【0032】【表1】
試験区 倒伏程度 倒伏軽減効果のムラ
本発明区1 0 0
本発明区2 0 0
比較区1 0.15 5
比較区2 15 5 」
オ.「【0033】 本発明によれば、全量基肥によるイネの栽培において、用いられた倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除し、倒伏軽減効果にムラを生じさせないことが可能となる。」
と、記載されている。
(4-2)そうすると、本願発明の「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物」は、「倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除し、倒伏軽減効果にムラを生じさせない」という作用効果を生ずるという技術的意義を有するものであって、さらに該作用効果は、【表1】に表された試験例の結果として具体的に示されたものである。
(4-3)そこで、試験例の結果について検討する。
本発明区1,2は、「6時間後の積算溶出率が18.1%、14日目の積算溶出率は56%」の倒伏軽減化合物、すなわち、溶出の早い倒伏軽減化合物を用いた比較区1に対して、「倒伏軽減効果が認められ」るものと認識される一方、「倒伏軽減効果のムラを抑えること」に関する効果は、本発明区1,2の倒伏程度がそもそも「0」であって、倒伏が生じていない状態であり、倒伏の存在を前提としたムラは評価できない状態であるので、効果は、本願明細書【0031】記載の「倒伏軽減効果が認められ」た結果として、「倒伏軽減効果のムラを抑えることができる」程度のものとは認識できるものの、倒伏することを前提としても「倒伏軽減効果のムラを抑えることができる」ものとは認識できない。
そうすると、本願発明の「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下」であることの効果及び技術的意義は、【表1】に表された試験例の結果として具体的に示されたものから認識できる、「倒伏軽減効果が認められ」ること、及び、それにともない「倒伏軽減効果のムラを抑えることができること」にあるとするのが相当である。
また、6時間後の積算溶出率が「15%以下」、14日目の積算溶出率が「5%以上45%以下」であるとする数値限定についても、試験例の結果から、その値近傍で効果が大きく変動する様なものと認識できるものではないので、「15%」「5%」「45%」なる値は臨界的な性質を有する値ではないと認識することが相当である。

(4-4)また、請求人は、平成23年11月9日付け回答書に、平成23年10月28日作成の実験成績書を添付しているので、該実験成績書を考慮して、上記(4-3)の効果及び技術的意義の認識について、再度検討する。
(4-5)該実験成績書は、「『全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法。』における定義された倒伏軽減化合物の溶出特性の意義を、異なる溶出特性を有する粒状物との対比により確認する。」とし、「化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が0.5%、14日目の積算溶出率は10.5%、50%溶出期間が40?80日」の本粒状物Aを用いた本発明区I、「化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が0.5%、14日目の積算溶出率は10.5%、50%溶出期間が40日以下」の本粒状物Bを用いた本発明区II、及び、「化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が30%、14日目の積算溶出率は35%、50%溶出期間が40?80日」の比較粒状物Aを用いたものを比較区Iの3試験区で、「倒伏程度」「倒伏軽減効果のムラ」を調査したものである。

(4-6)しかし、上記実験成績書は、本発明区I、本発明区II、及び、比較区Iの3試験区について調査しただけのものであって、本願発明の「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下」なる構成により、普遍的に「倒伏軽減効果のムラを抑えることができる」という作用効果が生じることを、客観的に認識できる性質のものではない。
例えば、
ア.本発明区Iと本発明区IIとで、6時間後と14日目の積算溶出率が同じであっても、溶出率が50%となる時期が異なる様に、様々な異なる溶出パターンが想定されるが、実験成績書から、それらのいかなる溶出パターンであっても、普遍的に「倒伏軽減効果のムラを抑えることができる」という作用効果が生じると認識できるものではない。
イ.イネの倒伏には、肥料成分も影響を与えるものと推測されるが、実験成績書から、いかなる肥料成分溶出パターンであっても、「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下」なる条件だけで、普遍的に「倒伏軽減効果のムラを抑えることができる」という作用効果が生じると認識できるものではない。
さらに、上記実験成績書は、主要な実験条件である溶出率が50%となる日すら具体的に示しておらず実験成績書としての客観性にも疑義があり、かつ、平成23年11月9日に提出されたものであり、出願時点に本願明細書に記載された、本願発明の効果及び技術的意義を、「倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下」なる条件だけで、普遍的に「倒伏軽減効果のムラを抑えることができる」というようなものであると認めることはできない。
そうすると、実験成績書を考慮しても、上記(4-3)の効果及び技術的意義の認識は変わるものではない。

(4-7)また、上記(4-1)?(4-6)も考慮すると、本願発明の効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものであって格別なものではない。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-30 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2004-235146(P2004-235146)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 土屋 真理子
中川 真一
発明の名称 全量基肥によるイネの栽培  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  

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