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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 IPCコード:なし
管理番号 1258022
審判番号 不服2011-28169  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-28 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2009-129907号「基板洗浄方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日出願公開、特開2009-200524号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、2005年6月1日(優先権主張2004年6月4日、日本国)を国際出願日とする特願2006-514111号の一部を平成21年5月29日に新たな特許出願としたものであって、平成23年9月20日付けで拒絶査定がなされ(平成23年10月4日発送)、これに対し、同年12月28日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年4月7日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものである(以下「本願発明」という。)。
「基板を所定の薬液で処理する工程と、
前記基板を略水平姿勢で回転させながら、純水を前記基板へ供給して前記基板上の薬液を洗い流すリンス処理を行う工程と、
前記基板を前記リンス処理時よりも高速で回転させて乾燥させる工程と、を有し、
前記リンス処理工程では、前記基板の帯電電圧の絶対値が小さくかつ基板の面内で均一になるように、純水の基板への供給ポイントの移動速度を基板の外周部よりも中心部で速くして基板の単位面積あたりの処理時間が同じになるようにする、基板洗浄方法。」

3.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-307492号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審にて付与。)。

ア.「【請求項1】 基板を保持して基板の面に沿って回転させる基板保持部と、
この基板保持部に保持された基板の被洗浄面を洗浄する洗浄部と、
前記洗浄部を保持して移動させる移動機構と、
前記洗浄部が基板の中央部を通過した後、基板の周縁部に向かうにつれて洗浄部のスキャン速度が小さくなるように前記移動機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする洗浄装置。」(特許請求の範囲【請求項1】)

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば成膜処理や研磨処理を行った基板の洗浄に用いられる基板洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体デバイスが形成される基板となる半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)の表面の清浄度を高く維持する必要がある。このため各々の製造プロセスや処理プロセスの前後には必要に応じてウエハ表面を洗浄しているが、例えば成膜工程や研磨工程の後にも例えば図9に示す洗浄装置を用いてウエハ表面の洗浄が行われている。
【0003】前記洗浄装置は、基板保持部であるスピンチャック11にウエハWを保持し、モータ12によりウエハWを水平面内にて一定の角速度で回転させながら、ウエハWの被洗浄面である上面に例えば高圧水を吹き付けるノズル13を、ウエハWの例えば直径に沿って一定の速度で水平に複数回移動させるようになっており、それによってウエハWの被洗浄面に付着した粒子汚染物を除去している。あるいは高圧水ノズルの代わりに、超音波で振動した洗浄水をウエハWの被洗浄面に供給する超音波ノズルや、水平に回転可能とする洗浄ブラシを備えた装置もあり、そのような装置においても超音波ノズルや洗浄ブラシをウエハWに対して一定の速度で水平に移動させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した装置を用いて洗浄されたウエハWを観察すると、ウエハWの周縁部にパーティクルが残存する傾向が見られる。このことから洗浄処理時の洗浄能力は、ウエハWの周縁部よりも中心部の方が大きいと考えられるが、この理由については次のように推察される。つまり洗浄処理中ウエハWは一定の角速度で回転しているため、単位時間当たりの洗浄面積は図10に示すようにウエハWの中心部における面積S2よりも周縁部における面積S1の方が大きくなる。これはウエハWの中心Oから周縁に向かうほど顕著になる。従ってウエハWの外周に近いほど単位面積当たりの洗浄時間は短くなり、ウエハ中心部よりも洗浄能力が低くなると考えられる。
【0005】そこでウエハ周縁部のパーティクルを十分に除去するために洗浄時間を長くすることが考えられるが、ウエハ周縁部に合わせて洗浄時間を長くすると、ウエハ中心部は洗浄過多になって損傷を受けるおそれがあるため、実際にはウエハ周縁部の洗浄度を満足させる程度に洗浄時間を長くすることはできない。つまりウエハ中心部と周縁部との洗浄度が同程度になるように洗浄時間を設定することは困難であり、洗浄時間を調節することによっては洗浄度の差を根本的に解決することはできない。」

ウ.「【0012】
【発明の実施の形態】図1乃至図4には、本発明に係る基板洗浄装置の一例が示されている。この基板洗浄装置は、図1に示すように、基板である例えばウエハWを被洗浄面が上を向くように水平な状態(ほぼ水平な状態も含む)で保持する基板保持部であるスピンチャック21と、該スピンチャック21を鉛直な軸の回りに回転させるスピンモータ22と、ウエハWの被洗浄面を洗浄する洗浄部である例えば高圧水ノズル3と、ウエハWの受け渡し時に下降しかつ洗浄時に上昇して洗浄中に飛散する水を受ける略筒状の内カップ41と、内カップ41を昇降させる例えばリニアモータやソレノイドからなる内カップ駆動源42と、内カップ41で受けられ下に落ちた水を受けて排水する排水孔44を備えた外カップ43とを備えている。そしてこの基板洗浄装置は、高圧水ノズル3のスキャン速度をウエハWの被洗浄面上の洗浄位置に応じて変え得るようになっている。外カップ43とスピンモータ22のシャフト23との間は軸受け部45により水密に保たれている。
【0013】高圧水ノズル3は、その下端がウエハWの被洗浄面から例えば40?60mm離れるような高さに位置しており、例えば水圧30?100kgf/cm2で洗浄水を吐出するようになっている。」

エ.「【0018】図4には、洗浄位置とスキャン速度との関係が示されている。…(中略)… つまり高圧水ノズル3が位置Aから位置Oを経て位置Bへ移動する際に、ノズル3は停止状態から徐々に速くなって位置Oでv0となり、その後徐々に遅くなって位置Bで再び停止状態になる。ノズル3が位置B-位置O-位置Aと移動する際も同じである。従ってウエハWに関して言えば、ノズル3のスキャン速度は、ウエハ周縁部からウエハ中心部に向かって徐々に速くなり、ウエハ中心部で最も速くなった後、反対側のウエハ周縁部に向かって徐々に遅くなる。…(中略)… ためである。」

オ.「【0020】続いて上述の基板洗浄装置にて実施される基板洗浄方法について説明する。先ず予めウエハWの径、洗浄処理中のウエハWの単位時間当たりの回転数、ウエハ中心部におけるノズルのスキャン速度等の必要事項が操作部63により入力されて設定される。そして高圧水ノズル3を待機位置に位置させた状態で、図示しない搬送アームにて保持したウエハWをスピンチャック21に受け渡してウエハWを水平に保持させた後、高圧水ノズル3をウエハWの上方に移動させるとともに、スピンモータ22の回転を制御しながらウエハWを所定の回転数例えば1000rpmで回転させる。次いで高圧水ノズル3から所定圧例えば50kgf/cm2の洗浄水をウエハWの被洗浄面に吹き付けながら、スキャン駆動モータ53の回転を制御して高圧水ノズル3を水平走査させる。
【0021】その際、スキャン駆動モータ53は、モータ53自身の回転数を積算することによりノズル3の移動量を認識し、それに基づいてノズル3の位置に対応した位置信号を生成して制御部61へフィードバックする。制御部61はその位置信号をCPU62に渡し、CPU62は受け取った位置信号に基づいてスキャン駆動モータ53の単位時間当たりの回転数を計算して求め、その計算値に対応した制御信号を生成して制御部61に出力する。制御部61は、CPU62から受け取った制御信号に基づいて駆動信号を生成し、その駆動信号に基づいてスキャン駆動モータ53の単位時間当たりの回転数がリアルタイムで制御され、それによって図4(a)に示すように洗浄位置に応じてスキャン速度が制御される。具体的には例えばウエハ中心部におけるスキャン速度v0は165mm/sであり、その時のウエハ周縁部におけるスキャン速度v1は2mm/sである。」

カ.「【0023】上述実施の形態によれば、ウエハWに対向する高圧水ノズル3の位置(洗浄位置)によってノズル3のスキャン速度を制御することによって、単位時間当たりの洗浄面積がウエハWの面内全体に亘ってほぼ一定となり、従って単位面積当たりの洗浄時間がウエハWの面内全体に亘ってほぼ一定となるので洗浄能力がウエハWの面内においてほぼ一様になり、この結果基板の面内における洗浄能力のバラツキを抑えることができる。
【0024】つまり従来のようにノズル3を一定の速度で走査させるときには、既述のようにウエハ中心部から離れるに連れてウエハW上の単位時間当たりの洗浄面積は大きくなり、従ってウエハW上の単面積当たりの洗浄時間は短くなっていくので、ウエハ中心部から離れるほど洗浄能力が劣って十分に洗浄が行われなかったが、上述の実施の形態のように、ウエハ中心部から離れるに連れてノズル3のスキャン速度を徐々に小さくすると、ウエハ面内の全域において洗浄位置における洗浄時間をほぼ一定にすることができる。」

キ.「【0027】さらにまた従来のようにノズル3を一定の速度で走査させる場合には、ウエハ周縁部にパーティクルが残り易く、それを解消するために全体の洗浄時間を長くしてウエハ周縁部の洗浄を十分に行う必要があるが、そのように一様に洗浄時間を長くする場合に比べて上述実施の形態によれば洗浄時間が短くて済むのに加えて、ウエハ中心部が洗浄過多になるのを防ぐことができ、ウエハの損傷や帯電による破壊を防ぐことができる。」

以上の記載及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「基板を水平な状態で回転させながら、洗浄水を前記基板へ供給して前記基板上を洗浄する洗浄工程を有し、
前記洗浄工程では、洗浄水を基板へ供給するノズル3のスキャン速度を基板の周縁部よりも中心部で速くして基板の単位面積当たりの洗浄時間が一定になるようにする、基板洗浄方法。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「(洗浄水を)基板へ供給するノズル3」は本願発明の「(純水の)基板への供給ポイント」に相当し、以下同様に「基板の単位面積当たりの洗浄時間」は「基板の単位面積あたりの処理時間」に、「スキャン速度」は「移動速度」に、「周縁部」は「外周部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「洗浄工程」と、本願発明における「リンス処理(を行う)工程」とは、リンスもリンス洗浄といわれるように洗浄処理といえるので、「洗浄処理(を行う)工程」の点で共通する。
さらに、引用発明の「洗浄水」と本願発明の「純水」とは、「洗浄水」の点で共通する。
したがって、両者は、
「基板を略水平姿勢で回転させながら、洗浄水を前記基板へ供給して前記基板上を洗い流す洗浄処理を行う工程を有し、
前記洗浄処理工程では、洗浄水の基板への供給ポイントの移動速度を基板の外周部よりも中心部で速くして基板の単位面積あたりの処理時間が同じになるようにする、基板洗浄方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願発明では、基板を所定の薬液で処理する工程と、前記基板を略水平姿勢で回転させながら、純水を前記基板へ供給して前記基板上の薬液を洗い流すリンス処理を行う工程と、前記基板を前記リンス処理時よりも高速で回転させて乾燥させる工程とを有しているのに対し、引用発明では、このような工程については不明である点。

相違点2
洗浄処理工程が、本願発明では、純水を洗浄水とするリンス処理工程であるのに対して、引用発明では、洗浄水が純水かどうか不明であり、リンス処理工程であるかどうか不明である点。

相違点3
基板の単位面積あたりの処理時間が同じになるようにするのは、本願発明では、基板の帯電電圧の絶対値が小さくかつ基板の面内で均一になるようにするためであるのに対し、引用発明では、基板の単位面積あたりの処理時間(洗浄時間)が同じになるようにするためであり、基板の基板の帯電電圧の絶対値が小さくかつ基板の面内で均一になるようにするためであるかについては不明である点。

そこで、これらの相違点について検討する。
〔相違点1について〕
基板の洗浄方法として、基板を所定の薬液で処理する工程と、前記基板を略水平姿勢で回転させながら、純水を前記基板へ供給して前記基板上の薬液を洗い流すリンス処理を行う工程と、前記基板を前記リンス処理時よりも高速で回転させて乾燥させる工程を有することは、本願優先日前周知の技術である〔例えば、特開2003-197590号公報(段落【0024】?段落【0030】)、特開2003-297788号公報(段落【0057】?段落【0066】、段落【0070】、図9)を参照。〕。
引用発明においても、洗浄工程だけで基板洗浄処理全体が完了するとはいえず、何らかの乾燥工程も当然必要な処理であり、さらに必要であれば、薬液処理及びその薬液除去のリンス処理も行うことは当業者が当然想定し得ることであり、格別な事項ではない。
そうすると、引用発明の洗浄方法を、薬液で処理する工程、リンス処理を行う工程及び高速で回転させて乾燥させる工程とを有する洗浄方法に用いることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

〔相違点2について〕
前述のように、リンス処理もリンス洗浄といわれるように洗浄処理といえ、ウエハ中心部が洗浄過多になることなく基板全域において洗浄時間を均一にすることは、薬液を洗い流すリンス処理であっても、薬液を用いない通常の洗浄であっても、何れでも必要なことであることから、引用発明の洗浄処理工程を、薬液処理工程、リンス処理工程及び乾燥工程を有する上記周知の基板洗浄方法の、薬液処理工程後の、純水で薬液を洗い流すリンス処理工程として用いて、相違点2に係る特定事項とすることは、引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たことである。

〔相違点3について〕
基板に純水を供給した場合、洗浄時間の増加とともに帯電電圧の絶対値が大きくなることは、本願優先日前に周知の技術である〔例えば、特開2003-031536号公報(段落【0016】、【0017】)、特開2000-012500号公報(段落【0050】、【0083】、図9)、特開平10-308374号公報(段落【0004】、【0005】)を参照。〕。
そして、引用例には、摘記事項キのように、洗浄時間が長くなるとウエハ(基板)が帯電し破壊することが示されており、上記周知技術を示唆するものといえる。
さらに、基板が帯電するのは、洗浄液と基板との摩擦により静電気が発生するためと解される(前記周知例の特開2003-31536号公報の段落【0016】を参照。)。
してみれば、引用発明において単位面積当たりの洗浄時間が一定であることは、単位面積当たりの洗浄水が基板表面と接触して摩擦する時間が一定ということであるから、引用発明においても、摩擦により発生する静電気量すなわち帯電電圧の絶対値が基板の面内で均一となるものと解され、また、基板の中心部における単位面積当たりの摩擦する時間が中心部におけるスキャン速度を速くしたことによりスキャン速度が一定のときと比較して短くなり、それだけ発生する静電気量すなわち帯電電圧の絶対値が小さくなるものと解される。
したがって、引用発明において、単位面積当たりの洗浄時間を一定にすることは、洗浄能力が基板の面内で均一になるだけでなく、その結果において、基板の帯電電圧の絶対値が小さくかつ基板の面内で均一になるようになるといえる。
そうすると、相違点3に係る特定事項は、基板の単位面積あたりの洗浄時間が同じになるようにすれば、当然に具備することになる機能(作用)を記載したにすぎないともいえる。
したがって、相違点3に係る特定事項は引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明の奏する作用効果を全体としてみても、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-05 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2009-129907(P2009-129907)
審決分類 P 1 8・ 121- Z ()
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木戸 優華  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
松下 聡
発明の名称 基板洗浄方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体  
代理人 高山 宏志  

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