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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1258062
審判番号 不服2010-28190  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-13 
確定日 2012-06-06 
事件の表示 特願2000-371316「電気通信回線を利用してアート情報を提供する方法およびそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月21日出願公開、特開2002-175479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月6日の出願であって、平成19年12月6日付けで手続補正がなされ、平成22年6月8日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月13日付けで意見書が提出されたが、同年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月13日付けで拒絶査定不服審判請求及び手続補正がなされたものである。
その後、平成23年9月29日付けで審尋がなされたが、請求人からは回答がなされなかった。

2.平成22年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月13日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成22年12月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、または、ゲーム・ソフトウェアを含むコンピュータ・ソフトウェア、または、これらのいずれかを組み合わせたアート情報を前記アート情報のダウンロードの要求に応じて電気通信回線を経由して提供する方法において、
前記アート情報の所有者から提供された1またはそれ以上のアート情報を前記電気通信回線に結合されたコンピュータの所定のメモリ領域内に格納する段階と、
前記アート情報のダウンロードの要求に応じて、前記メモリ領域に格納された前記デジタル化されたアート情報を前記メモリ領域から前記電気通信回線上に送出する段階と、
前記アート情報のダウンロードの要求に応じて、前記メモリ領域に格納された前記アート情報と所定の関連を有するカウンタによって、前記要求が指定する前記アート情報のダウンロードを要求する回数を計数する段階と、
前記カウンタが示す計数値に基づいて、前記コンピュータ内の演算部によって前記所有者に支払われる前記アート情報の提供手数料を前記アート情報毎に算出する段階であって、前記アート情報の提供手数料は、前記アート情報のカウンタ値の多い順に所定の提供手数料を支払うために算出される、段階と、
から構成されることを特徴とする方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記カウンタが示す計数値に基づいて、前記コンピュータ内の演算部によって前記所有者に支払われる前記アート情報の提供手数料を前記アート情報毎に算出する段階」について、「前記アート情報の提供手数料は、前記アート情報のカウンタ値の多い順に所定の提供手数料を支払うために算出される」ものであるとの限定を付加するものである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-76339号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 コンピュータシステムを用いたコンテンツ運用方法において、
所望のコンテンツ情報を示すコンテンツ指示情報およびコンテンツの利用形態を示す利用形態指示情報の入力を利用者に促す所望コンテンツ入力段階と、
前記所望コンテンツ入力段階において入力されたコンテンツ指示情報に対応したコンテンツ情報を、前記利用形態情報に対応した出力形式に従って出力するコンテンツ出力段階と、
前記所望コンテンツ入力段階において入力された前記コンテンツ指示情報および前記利用形態指示情報に対応するコンテンツ情報の使用料金を、予め記憶された使用料データに基づいて算出し、その算出額を出力する料金出力段階と、
同一のコンテンツ情報に関する利用状況を監視し、その監視結果に基づいて当該コンテンツホルダーに対する対価を算出して出力する対価出力段階とを有することを特徴とするコンテンツ運用方法。」

イ.「【0008】A:実施形態のシステム構成
1.全体構成
図1は、実施形態のシステムの全体構成を示した図である。本システムは、コンテンツホルダーが所有するコンテンツを、システム運用者がデジタル化してホストコンピュータ100内のデータベース101に格納し、利用者がこのデータベース101にアクセスすることによって、所望のコンテンツが利用できると共に、利用に伴う対価の支払いができるように構成されている。
【0009】ホストコンピュータ100は、後に詳しく説明するデータベース101を作成したり、利用者が使用する端末との間でデータの授受を行ったりするものであり、演算装置、コンテンツ運用プログラムや各種の検索プログラム、及び制御プログラムや各種のデータを格納するための記録媒体などから構成される。システム運用者は、ホストコンピュータ100の管理を行い、コンテンツホルダーからのコンテンツ管理の預託を受ける者である。コンテンツホルダーには、例えば、美術館、博物館、出版社、新聞社、個人、団体、などのコンテンツの著作者、著作権者、所有者が該当する。一方、利用者は、出版社、編集プロダクション、広告代理店、ソフトハウス、一般企業、放送業者、美術館、博物館、個人などが該当する。この場合、利用者は、例えば、公衆回線に接続された端末等を用いて、ホストコンピュータ100にアクセスする。また、ホストコンピュータ100は、コンテンツの提供を受けた利用者からライセンス料などの対価を徴収したり、また、コンテンツホルダーに対する利益還元を行うための処理やデータ作成も行う。
【0010】2.データベース101の構成
次に、データベース101の構成について説明する。データベース101は、様々なデジタルデータを有する複数のファイルを含み、動画、静止画、音声、文字などのデジタルデータを統合したマルチメディア統合データベースとして構築されている(図1参照)。具体的には、著作物などのコンテンツを、動画、静止画、音声、文字などのデジタルデータに変換したもの(マルチメディア情報)を統合した実データベース110、コンテンツの管理に用いられるコンテンツ管理データベースと111、利用者の管理に用いられる利用者管理データベース112、コンテンツホルダーの管理に用いられるコンテンツホルダー管理データベース113から構成されている。これらの各データベースには、1のコンテンツに対して予め1つずつ付与した識別番号を格納している。それぞれのデータベースに格納されたデータを識別番号によって統合的に管理するためである。」

ウ.「【0017】B:実施形態の動作
1.各手続きにおける動作
本システムを運用するときは、主に以下の4つの手続きがあり、それに伴う動作を図1および図5から図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0018】(1)データベース作成手続
この手続は、システム運用者が、コンテンツホルダーからコンテンツの預託を受けて、データベースを作成する手続きである。図5は、データベース作成手続の動作を示すフローチャートである。コンテンツホルダーから、システム運用者がコンテンツの預託を受けると、コンテンツをデジタルデータであるマルチメディア情報に変換する(S101)。例えば、絵画や写真(ネガ、ポジを含む)などの静止画像や図形は、スキャナやデジタルカメラを用いてデジタル画像データに変換したり、音楽や映画などの音声は、アナログ信号をデジタルデータに変換する。また、小説やニュースなどの文章はテキストデータに変換する。なお、当初よりデジタルデータ化されているコンテンツの場合には、そのままデータベース101に格納される。次に、作成されたマルチメディア情報に識別番号を付して実データベース110に格納する(S102)。このとき、記憶容量を削減するためにデータを圧縮して格納してもよい。」

エ.「【0020】(2)利用者へのコンテンツ供給手続
次に、利用者へのコンテンツ供給手続について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。利用者へのコンテンツ供給手続は、利用者から使用希望を受け、データベースから使用希望を満たすマルチメディア情報を検索して、検索されたマルチメディア情報を利用者に供給する手続である。まず、利用者からの使用希望を受ける(S201)。ここでは、利用者端末のキーボードやタッチパネルを用いたユーザーインタフェイスを介して利用者が入力した使用希望データがホストコンピュータ100に入力される。例えば、利用者が利用者端末からコンテンツホルダー名や、コンテンツ名などの条件を使用希望データとして入力することによって、ホストコンピュータ100に入力される。利用者端末とホストコンピュータは、例えば、インターネット等のネットワークを介して接続されている。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0022】いずれかのデータベースから該当するマルチメディア情報が存在することが検索された場合は(S203:YES、または、S205:YES)、該当するマルチメディア情報を受け取る(S207)。すなわち、条件データと合致するマルチメディア情報を実データベース110から読み出す処理を行う。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0025】また、データ提供媒体としては、インターネットやパソコン通信、LAN、WANなどのネットワークを介して提供するネットワーク系や、CD-ROM、DVD、DATなどのデータ記憶媒体のパッケージ系、カタログ、書籍、写真集、百科事典などの形式に印刷した紙媒体のアナログ系などが例としてあげられる。また、適したデータ形式とは、例えば、印刷物としてデータを提供する場合には、文字データをフォントデータに変換して印刷可能な形式にするようなことをいう。
【0026】データの加工が終了すると、使用希望のデータ提供媒体を用いて、利用者にデータを提供する処理を行う(S209)。例えば、ネットワークを介して提供する場合は、加工したデータを送信する。紙やCD-ROMなどの媒体を利用者に郵送する場合は、紙へのプリントやCD-ROMへの記録などの処理を行ったり、送付先の宛名をプリントしたりする。提供先である利用者のアドレスなどのデータは、利用者が、ステップ201で入力するようにしてもよいし、予め利用者管理データベース112に格納してあるデータに基づいてもよい。」

オ.「【0030】(4)コンテンツホルダーへの対価支払い手続
次に、コンテンツホルダーへの対価支払い手続について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。まず、コンテンツホルダーに対する対価を算出する(S401)。対価は、コンテンツおよび使用カテゴリ毎に規定されている支払い率データを読み出して、図6のステップS210で算出した使用料金に乗算することによって算出する。そして、対価データベース113aを更新する(S402)。すなわち、同一のコンテンツに関する利用状況を監視し、算出した対価とコンテンツホルダーに関するデータとを関連付けて図4に示した対価データベース113aに格納する。その後、コンテンツホルダーに対して対価を支払う(還元する)(S403)。すなわち、対価データベース113aに格納されたデータに基づいて、コンテンツホルダーに対する対価を出力する処理および、出力した対価についてシステム運用者とコンテンツホルダーとの間で決済するための処理を行う。例えば、電子決済処理、銀行振込処理、支払明細作成処理などのコンテンツホルダーへの対価支払い手続を行う。」

カ.「【0038】また、上記実施形態では、コンテンツホルダーに対する対価は、使用料金に対する一定の割合としたが、他の算出方法でもよく、例えば使用回数から算出してもよい。」

特に上記「カ.」の記載事項に着目し、これら記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「演算装置、各種プログラムやデータを格納するための記録媒体などから構成され、マルチメディア情報が格納されたデータベースを有するホストコンピュータに対して、利用者が利用者端末を用いてインターネットなどのネットワークを介してアクセスすることによって、所望のコンテンツが利用できると共に、利用に伴う対価の支払いができるようにしたコンテンツ運用方法であって、
コンテンツホルダーから所有する著作物などのコンテンツの預託を受けると、当該コンテンツを動画、静止画、音声、文字などのデジタルデータに変換(例えば、絵画や写真などの静止画像や図形はデジタル画像データに変換したり、音楽や映画などの音声はアナログ信号をデジタルデータに変換する。また、小説やニュースなどの文章はテキストデータに変換する。なお、当初よりデジタルデータ化されているコンテンツの場合にはそのまま)し、前記マルチメディア情報として前記ホストコンピュータ内のデータベースに格納する、データベース作成手続と、
利用者からのコンテンツの使用希望を前記ネットワークを介して受け、前記データベースから該当するマルチメディア情報が存在することが検索された場合は、当該マルチメディア情報を前記データベースから読み出し、インターネットなどのネットワークを介してデータを送信することによって提供する、利用者へのコンテンツ供給手続と、
同一のコンテンツに関する利用情報を監視し、その監視結果例えば使用回数からコンテンツホルダーに対する対価を算出する、コンテンツホルダーへの対価支払い手続と、
からなるコンテンツ運用方法。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.まず、本願補正発明における「デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、または、ゲーム・ソフトウェアを含むコンピュータ・ソフトウェア、または、これらのいずれかを組み合わせたアート情報・・」なる記載は、請求項1の記載全体や、発明の詳細な説明の「レンタル・フォト」の例、さらに段落【0014】の「サーバ11に格納されるデジタル化されたアート情報は、その内容に限定されず、あらゆる情報が含まれ、静止画像、動画像、音情報、これらが結合した情報、また静止画,動画および音情報を取り込んだ制御プログラムを含むゲーム・ソフトウェアであってもよい。」なる記載を参照するに、正確には「デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、ゲーム・ソフトウェアを含むコンピュータ・ソフトウェア、または、これらのいずれかを組み合わせたもの、のいずれかよりなるアート情報・・」のように解されるべきものであるといえる。
このこのとを踏まえると、引用発明の「・・コンテンツホルダーから所有する著作物などのコンテンツの預託を受けると、当該コンテンツを動画、静止画、音声、文字などのデジタルデータに変換(例えば、絵画や写真などの静止画像や図形はデジタル画像データに変換したり、音楽や映画などの音声はアナログ信号をデジタルデータに変換する。また、小説やニュースなどの文章はテキストデータに変換する。なお、当初よりデジタルデータ化されているコンテンツの場合にはそのまま)し、前記マルチメディア情報として前記ホストコンピュータ内のデータベースに格納する・・」における「マルチメディア情報」は、コンテンツを動画、静止画、音声、文字などのデジタルデータに変換したものであることから、本願補正発明における「デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、または、これらのいずれかを組み合わせた[もの、のいずれかよりなる]アート情報」である点で一致するということができる。
また、引用発明における「インターネットなどのネットワーク」は、本願補正発明における「電気通信回線」に相当する。
したがって、引用発明における「演算装置、各種プログラムやデータを格納するための記録媒体などから構成され、マルチメディア情報が格納されたデータベースを有するホストコンピュータに対して、利用者が利用者端末を用いてインターネットなどのネットワークを介してアクセスすることによって、所望のコンテンツが利用できると共に、利用に伴う対価の支払いができるようにしたコンテンツ運用方法であって」及び「利用者からのコンテンツの使用希望を前記ネットワークを介して受け、前記データベースから該当するマルチメディア情報が存在することが検索された場合は、当該マルチメディア情報を前記データベースから読み出し、インターネットなどのネットワークを介してデータを送信することによって提供する・・」によれば、所望のコンテンツを利用するにあたって、対応するマルチメディア情報がインターネットなどのネットワークを介して利用者端末側に取り込まれる、すなわちダウンロードされるものであることは自明というべきことであり、結局この場合、所望のコンテンツを利用するために「利用者端末を用いてインターネットなどのネットワークを介してアクセス」し、「利用者からのコンテンツの使用希望を前記ネットワークを介して」伝えることは、「ダウンロードの要求」をすることに他ならないといえるから、本願補正発明と引用発明とは「デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、または、これらのいずれかを組み合わせた[もの、のいずれかよりなる]アート情報を前記アート情報のダウンロードの要求に応じて電気通信回線を経由して提供する方法において」の点で一致する。

イ.引用発明における「コンテンツホルダー」、「ホストコンピュータ」、「データベース」は、それぞれ本願補正発明における「アート情報の所有者」、「コンピュータ」、「メモリ領域」に相当し、
引用発明における「コンテンツホルダーから所有する著作物などのコンテンツの預託を受けると、当該コンテンツを動画、静止画、音声、文字などのデジタルデータに変換(例えば、絵画や写真などの静止画像や図形はデジタル画像データに変換したり、音楽や映画などの音声はアナログ信号をデジタルデータに変換する。また、小説やニュースなどの文章はテキストデータに変換する。なお、当初よりデジタルデータ化されているコンテンツの場合にはそのまま)し、前記マルチメディア情報として前記ホストコンピュータ内のデータベースに格納する、データベース作成手続と」は、ホストコンピュータはインターネットなどのネットワークに接続されていることは明らかである(上記「ア.」参照)ことを考慮すると、本願補正発明における「前記アート情報の所有者から提供された1またはそれ以上のアート情報を前記電気通信回線に結合されたコンピュータの所定のメモリ領域内に格納する段階と」に相当する。

ウ.引用発明における「利用者からのコンテンツの使用希望を前記ネットワークを介して受け、前記データベースから該当するマルチメディア情報が存在することが検索された場合は、当該マルチメディア情報を前記データベースから読み出し、インターネットなどのネットワークを介してデータを送信することによって提供する、利用者へのコンテンツ供給手続と」は、本願補正発明における「前記アート情報のダウンロードの要求に応じて、前記メモリ領域に格納された前記デジタル化されたアート情報を前記メモリ領域から前記電気通信回線上に送出する段階と」に相当する。

エ.引用発明における「対価」は、本願補正発明における「提供手数料」に相当し、
引用発明における「同一のコンテンツに関する利用情報を監視し、その監視結果例えば使用回数からコンテンツホルダーに対する対価を算出する、コンテンツホルダーへの対価支払い手続と」によれば、コンテンツ毎に、すなわち対応するマルチメディア情報毎に使用回数が計数されるものであり、また、対価の算出は、当然、計数値に基づいてホストコンピュータの「演算装置」によってなされるものであるといえるから、本願補正発明と引用発明とは「前記メモリ領域に格納された前記アート情報[毎に]、前記アート情報の[利用に関連する]回数を計数する段階と、[その]計数値に基づいて、前記コンピュータ内の演算部によって前記所有者に支払われる前記アート情報の提供手数料を前記アート情報毎に算出する段階と」を有する点で共通するということができる。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、または、これらのいずれかを組み合わせた[もの、のいずれかよりなる]アート情報を前記アート情報のダウンロードの要求に応じて電気通信回線を経由して提供する方法において、
前記アート情報の所有者から提供された1またはそれ以上のアート情報を前記電気通信回線に結合されたコンピュータの所定のメモリ領域内に格納する段階と、
前記アート情報のダウンロードの要求に応じて、前記メモリ領域に格納された前記デジタル化されたアート情報を前記メモリ領域から前記電気通信回線上に送出する段階と、
前記メモリ領域に格納された前記アート情報[毎に]、前記アート情報の[利用に関連する]回数を計数する段階と、
[その]計数値に基づいて、前記コンピュータ内の演算部によって前記所有者に支払われる前記アート情報の提供手数料を前記アート情報毎に算出する段階と、
から構成されることを特徴とする方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本願補正発明では、アート情報と「所定の関連を有するカウンタ」を有し、当該カウンタによって、「前記アート情報のダウンロードの要求に応じて」、「前記要求が指定する」前記アート情報の「ダウンロードを要求する」回数を計数するものであり、アート情報の提供手数料は、アート情報の「カウンタ値の多い順に所定の提供手数料を支払うために算出される」と特定しているのに対し、引用発明では、同一のコンテンツに関する利用情報を監視し、その監視結果である使用回数からコンテンツホルダーに対する対価を算出するものである点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
上記「(3)エ.」でも述べたように、引用発明においても、コンテンツ毎に、すなわち対応するマルチメディア情報毎に使用回数が計数されるものであるところ、この「使用回数」としては、上記「(3)ア.」で述べたように、マルチメディア情報はインターネットなどのネットワークを介して利用者端末側に取り込まれる、すなわちダウンロードされるものであることから、「ダウンロードを要求する回数」としてみることができることは当業者であればごく普通に想到し得ることである。そして、このような回数を計数するに際して、いわゆる「カウンタ(機能)」を用いることも当業者にとって技術的常套手段であり、周知の技術事項(この点に関しては、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-66824号公報の段落【0019】,【0040】,【0132】などの記載も参照されたい)にすぎない。
ところで、アート情報の提供手数料について、本願補正発明でいう「アート情報のカウンタ値の多い順に所定の提供手数料を支払うために算出される」なる記載の意味に関して、請求人がかかる記載事項の補正の根拠としている明細書の段落【0018】9?10行目には「・・さらに、掲載されるアート情報のカウンタ値の多い順に所定数の上位者のみに所定の提供手数料が支払われるようにしてもよい。」と記載とされており、あえて「所定数の上位者のみに」の記載部分を省いていることからして、上記記載の意味するところとしては、例えば明細書の段落【0018】7?8行目にも記載のように「単純にカウンタ値に比例する提供手数料」とするようなものも含んでいると解すべきものといえるところ、一方、引用発明においても、使用回数から対価を算出するものであり、単純に考えれば使用回数が多いほど対価も高くなる、すなわち使用回数に比例する対価とするのが常識的なことである。
よって以上のことを踏まえると、引用発明においても、コンテンツ(あるいは対応するマルチメディア情報)と「所定の関連を有するカウンタ」を設け、コンテンツ(あるいは対応するマルチメディア情報)のダウンロードの要求に応じて、要求が指定するコンテンツ(あるいは対応するマルチメディア情報)の「ダウンロードを要求する」回数を計数するようにし、対価については、コンテンツ(あるいは対応するマルチメディア情報)の「カウンタ値の多い順に所定の提供手数料を支払うために算出される」ものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。

なお、付言しておくと、仮に、アート情報の提供手数料について、「アート情報のカウンタ値の多い順に所定数の上位者のみに所定の提供手数料を支払うために算出される」と特定(限定)されたとしても、例えば「インターネットビジネス白書 1997年版,日本,日本ビジネス開発株式会社,1996年12月1日(発行日),第1版,p.139」には、インターネットコンテストビジネスに関し、絵皿の絵柄コンテストを開催し、上位入賞者には賞金等を進呈することが記載されているように、引用発明において、対価(提供手数料)の支払いを使用回数が多い順の所定数の上位者のみとすることも当業者が適宜定め得ることであり、進歩性があるとは認められない。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から、当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年12月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
デジタル化された静止画像情報、動画像情報、音情報、または、ゲーム・ソフトウェアを含むコンピュータ・ソフトウェア、または、これらのいずれかを組み合わせたアート情報を前記アート情報のダウンロードの要求に応じて電気通信回線を経由して提供する方法において、
前記アート情報の所有者から提供された1またはそれ以上のアート情報を前記電気通信回線に結合されたコンピュータの所定のメモリ領域内に格納する段階と、
前記アート情報のダウンロードの要求に応じて、前記メモリ領域に格納された前記デジタル化されたアート情報を前記メモリ領域から前記電気通信回線上に送出する段階と、
前記アート情報のダウンロードの要求に応じて、前記メモリ領域に格納された前記アート情報と所定の関連を有するカウンタによって、前記要求が指定する前記アート情報のダウンロードを要求する回数を計数する段階と、
前記カウンタが示す計数値に基づいて、前記コンピュータ内の演算部によって前記所有者に支払われる前記アート情報の提供手数料を前記アート情報毎に算出する段階と、
から構成されることを特徴とする方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「前記カウンタが示す計数値に基づいて、前記コンピュータ内の演算部によって前記所有者に支払われる前記アート情報の提供手数料を前記アート情報毎に算出する段階」について、「前記アート情報の提供手数料は、前記アート情報のカウンタ値の多い順に所定の提供手数料を支払うために算出される」であるとの限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-03 
結審通知日 2012-04-09 
審決日 2012-04-20 
出願番号 特願2000-371316(P2000-371316)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮久保 博幸河野 将弘  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 松尾 俊介
井上 信一
発明の名称 電気通信回線を利用してアート情報を提供する方法およびそのシステム  
代理人 本城 吉子  
代理人 本城 雅則  
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