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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A42B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A42B
管理番号 1258066
審判番号 不服2011-11264  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-30 
確定日 2012-06-06 
事件の表示 特願2008-184730号「帽子」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日出願公開、特開2010- 24563号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年7月16日の出願であって、平成22年12月16日付けで手続補正され、平成23年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月30日に拒絶査定を不服として審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成23年5月30日付け手続補正についての却下の決定
[補正却下の却下の決定]
平成23年5月30日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成23年5月30日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成22年12月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2を次のとおりとし、新たに請求項1とする補正を含むものである。

「帽子本体(2)が内生地(3)と外生地(4)を有する二重構造であって、かつ、頭廻りに接する汗止め用環状帯体(5)を有する帽子であって、
上記内生地(3)の下端縁(6)と上記外生地(4)の下端縁(7)の一部を縫合わせずに非縫合部(8)を形成し、該非縫合部(8)に対応した上記内生地(3)の外面(9)に身体保護片(1)を配設しかつ上記内生地(3)の下端縁(6)の内面に上記汗止め用環状帯体(5)を配設して縫製し、しかも、上記内生地(3)と上記外生地(4)の間に上記身体保護片(1)を収納した不使用状態で、上記縫製した縫製部位から上方端にわたって上記身体保護片(1)は折返しの無い縦断面1字状であり、かつ、上記身体保護片(1)は不使用状態では全体が折り返しの無い縦断面1字状であり、しかも、使用状態では倒立J字状であるように構成し、該身体保護片(1)を、露出垂下状使用状態と収納不使用状態に、切換可能とし、
さらに、上記非縫合部(8)は、底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲(A)に形成されていることを特徴とする帽子。」

2 補正の目的
本件補正前の特許請求の範囲の請求項2に関する本件補正は、本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「身体保護片」が「不使用状態では全体が折り返しの無い縦断面1字状」であると限定し、「不使用状態」が「収納不使用状態」であると限定するものであって、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 補正の適否
3.1 引用例1、3及び4に記載された事項並びに引用発明1及び3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実公昭45-19642号公報(以下、「引用例1」という。)及び実願昭63-130003号(実開平2-51211号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ以下の事項及び各発明が記載されている。

[引用例1]
(1)「帽子の両側下端任意個所に於て、表地と裏地と間に間隙を形成して格納室を設け、最下端に紐を止着した所望の耳おおいの上端を前記表地若しくは裏地の下端縁内面に縫着して成るを特徴とする耳おおい付帽子。」(実用新案登録請求の範囲)

(2)「上記耳おおい6を格納するには、それを縫着7の最下端部7’を基点にして上方に折曲げて表地1と裏地2と間の間隙3内に介入する。」(2欄1?3行)

(3)「しかるに、本考案は上記構成の如くしてなる故耳おおいは表地と裏地と間に介入して完全に格納され、したがつて、表に於ては表地により被覆されてなるからそれを表に少しも露呈せず外観上、美観を損うようなことなく体裁良きものであり、内面に於ては、裏地により覆つているのでそれが頭に直接触れず、被つたとき、違和感なるものを全く与えないというものである。」(2欄10?17行)

(4)第2?4図には、帽子本体が表地(1)と裏地(2)を有する二重構造であることが示されている。

(5)第4図には、耳おおい(6)を格納室(4)から取出した状態では、該耳おおい(6)は、縫着(7)の最下端部(7’)から下端部にわたって折り返しのない縦断面1字状に垂下することが示されている。

上記「(3)」には、「内面に於ては、裏地により覆つているのでそれが頭に直接触れず」と記載されているから、上記「(1)」における「裏地の下端縁内面」とは、「裏地の下端縁」の「表地側の面」であると認められる。
また、上記「(1)」?「(3)」より、格納室を形成する表地と裏地の下端縁は、縫合わせずに非縫合部を形成し、耳おおいが、該非縫合部に対応した位置に縫着され、格納室から取出した状態と格納室に格納した状態に、切換可能とされていることが認められる。

以上の記載事項によると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「帽子本体が表地と裏地を有する二重構造である帽子であって、帽子の両側下端任意個所において、前記表地と前記裏地の下端縁を縫い合わせずに非縫合部を形成し、耳おおいの上端を前記非縫合部に対応した前記裏地の下端縁の表地側の面に縫着してなり、前記耳おおいは、前記表地と前記裏地と間に形成された間隙からなる格納室に完全に格納した状態では、縫着の最下端部を基点にして上方に折曲げられており、取出した状態では、縫着の最下端部から下端部にわたって折り返しのない縦断面1字状であり、前記耳おおいを、垂下状の取出した状態と、格納した状態とに、切換可能とした、耳おおい付帽子。」

[引用例3]
(1)「山部の後部の内布との間に収納部を形成するよう反転可能に外布を設け、上記山部の下縁に日除け片を連設し該日除け片を上記収納部に収納するようにした帽子。」(実用新案登録請求の範囲1.)

(2)「本考案によれば、山部の後部に通気性を有する内布と外布で収納部を形成し、該収納部に山部の下縁に連設した日除け片を収納するようにした帽子が提供される。
(作用)
本考案の帽子は、日除け片を使用しないときは、普通の帽子と同じように被り、暑いときは日除け片を収納部から引き出して使用し」(明細書2ページ7?14行)

(3)「第1図において、山部(1)とつば(2)は公知のように構成され、・・・。該山部(1)の前部のはぎ布は、表布(3)と・・・裏布(4)で構成され、後部は・・・内布(5)で構成されている。・・・。上記内布(5)を被つて該内布との間に収納部(6)を形成するよう反転可能に外布(7)を設けてある。・・・。
上記山部(1)の下縁には、日除け片(9)が縫目(10)で連設されている。該日除け片(9)は、上記収納部(6)に入れられる程度の大きさの1枚の布片で構成してあるが2枚若しくはそれ以上の複数枚に分割して構成することもでき」(明細書3ページ1行?4ページ3行)

(4)第1?3図には、山部(1)の後部が内布(5)と外布(7)を有する二重構造であって、内布(5)の下端縁と外布(7)の下端縁を縫合わせずに形成された非縫合部が、底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲に形成されており、底面視、後方縁から左右側縁に渡る日除け片(9)が、上記非縫合部に対応した内布(5)の下縁に縫目(10)で連設されていることが示されている。

上記「(2)」より、日除け片は、収納部から引き出した状態と、収納部に収納した状態とに、切り換え可能とされていることが認められる。

以上の記載事項によると、引用例3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「山部の後部が内布と外布を有する二重構造であって、上記内布の下端縁と上記外布の下端縁を縫合わせずに非縫合部を形成して収納部を形成し、該非縫合部に対応した前記内布の下縁に、底面視、後方縁から左右側縁に渡る、上記収納部に入れられる程度の大きさの日除け片が縫目で連設されており、該日除け片を、上記収納部から引き出した状態と上記収納部に収納した状態に、切換可能とし、上記非縫合部は、底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲に形成されている帽子。」

また、原査定で提示された米国特許第3414906号明細書(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。

[引用例4]
(1)「The remainder of the lower edge of the cap body is
connected to an ear muff structure 28, which includes side members
such as the flap 30. As can be seen in FIGURES 1 and 2, the ear
muff structure might more properly be termed a warming band as in
the preferred construction this band 28 encircles the head. The band
tapers in depth at the forward end as indicated at 32. The forward
end 32 is normally the narrowest depth of the warming band, the
band being of greater depth at the rear 34, and in the preferred
construction of greatest depth at the intermediate point 36 of the
sides of the band.」(明細書3欄30?40行)
(和訳:キャップ本体の下端の残りの部分は、フラップ30のようなサイドメンバーを含む耳覆い構造28に接続されている。図1と図2に見られるように、耳覆い構造は、より正確には防寒バンドと呼ばれ、好ましくは、このバンド28は頭部を囲む。バンドは、32で示される前方端部で徐々に幅が狭くなっている。前方端部32は、通常、防寒バンドで一番狭く、後部34はそれより太く、好ましくは、36で示すバンドの両側の中間点で最大となる。)(注:和訳は当審による。以下同様。)

(2)「As may be seen in FIGURES 1 and 2, the warming band is
secured to the cap body by means of a tape 38. The connecting tape
38 extends in connecting relation between the warming band and the
lower edge 40 of the cap body. The tape 38 is of a length
corresponding to the length of the warming band. The tape is in
preferred construction folded in half so as to be generally U-shaped
throughout its length. The tape is secured along its upper edge to
the cap body by stitching 42. The warming band is secured between
the lower ends 44 and 46 of the tape by stitching 48.
Turning to FIGURE 3, it will be seen that in the usual cap
construction, the terminal end 40 of the cap body is formed by
folding over the ends of the material as indicated at 50.
Accordingly, the terminal end 40 is of double thickness as compared
to upper portions of the skirt. This double thickness provides a
ridge of material which encircles the head and actually is the
determinant of the cap size. In most caps, some effort is made to
eliminate this unsightly ridge by use of a liner of some type or
another. The usual construction providing ear laps merely increases
the bulk along this terminal edge, thereby even more tending to
reduce the diameter of the terminal edge as compared to the
diameter of upper portions of the cap body. However, as may be
seen in FIGURE 4, the tape 38 is secured in any desirable way,
such as by stitching to the folded terminal edge 40. At this point,
the thickness of the terminal edge includes the folded skirt
portion which makes up the terminal edge and the upper edge of
the tape 38. As may be seen in FIGURE 3, when the warming band
is folded into the interior of the cap body, the thickness at the
terminal edge corresponds to the thickness at the upper tape ends
44 and 46, substantially to the other portions of the warming band
as well.」(明細書3欄58行?4欄16行)
(和訳:図1及び2に見られるように、防寒バンドは、テープ38によってキャップ本体に固定されている。接続テープ38は、防寒バンドとキャップ本体の下端40との間を連結している。テープ38は、防寒バンドの長さに対応する長さを有する。テープは、好ましくは、半分に折られ、概してその長さ全体にわたってU字形にされる。テープは、縫い目42によって、キャップ本体に、その上縁に沿って固定される。防寒バンドは縫い目48によって、テープの下端部44、46の間に固定される。
図3を見ると、通常のキャップ構造では、キャップ本体の末端40は、50で示すように、材料の端を折り曲げて形成されることが分かるであろう。それゆえ、末端40は、スカートの上部に比べて、倍の厚さがある。この倍の厚さは、頭を取り囲む材料の隆起となり、実際にキャップの大きさの決定要因となる。ほとんどのキャップでは、ある種のライナーや別のものを使用することで、この見苦しい隆起を排除する努力がなされている。通常、耳おおいを備えた構造は、単にこの末端縁に沿った厚さを増加させ、それにより、さらにキャップ本体の上部の直径に比べて端末のエッジの径を小さくする傾向がある。しかし、図4のように、テープ38は、折り畳まれた末端縁40に、縫い目などの任意の望ましい方法でしっかり固定されている。この時点では、末端縁の厚さは、末端縁とテープ38の上縁で構成する折り返しスカート部分を含む。図3に見られるように、防寒バンドがキャップ本体の内部に折り畳まれたとき、末端縁の厚さは、上方のテープ端部44、46の厚さとなり、実質的に防寒バンドの他の部分の厚さとなる。)

(3)図3には、キャップ本体の内部に折り畳まれたときの防寒バンドは、折り返しのない断面1字状であり、かつ、U字形にされたテープも、縫い目42において、そのU字形の折り返し以外に折り返しがないことが示されている。

(4)図4には、下がった位置の防寒バンドは、倒立J字状となった接続テープにてキャップ本体に接続されていることが示されている。

3.2 対比
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「表地」、「裏地」、「耳おおい」、「非縫合部に対応した裏地の下端縁の表地側の面」、「表地と裏地と間に形成された間隙からなる格納室」、「垂下状の取出した状態」及び「格納した状態」は、それぞれ本件補正発明における「外生地」、「内生地」、「身体保護片」、「非縫合部に対応した内生地の外面」、「内生地と外生地の間」、「露出垂下状使用状態」及び「収納不使用状態」に相当する。
また、本件補正発明における「非縫合部(8)は、底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲(A)に形成されている」ことと、引用発明1における「帽子の両側下端任意個所において、前記表地と前記裏地の下端縁を縫い合わせずに非縫合部を形成」することとは、「非縫合部は、底面視、一部の範囲に形成されている」限りにおいて一致する。
したがって、本件補正発明と引用発明1とは

「帽子本体が内生地と外生地を有する二重構造である帽子であって、
上記内生地の下端縁と上記外生地の下端縁の一部を縫合わせずに非縫合部を形成し、該非縫合部に対応した上記内生地の外面に身体保護片を配設して縫製し、該身体保護片を、露出垂下状使用状態と、上記内生地と上記外生地の間に収納した収納不使用状態に、切換可能とし、
さらに、上記非縫合部は、底面視、一部の範囲に形成されている帽子」

である点で一致し、以下の各点で相違する。

[相違点1]
本件補正発明では、頭廻りに接する汗止め用環状帯体を有し、非縫合部に対応した上記内生地の外面に身体保護片を配設しかつ上記内生地の下端縁の内面に上記汗止め用環状帯体を配設して縫製し、内生地と外生地の間に身体保護片を収納した不使用状態で、縫製した縫製部位から上方端にわたって上記身体保護片は折返しの無い縦断面1字状であり、かつ、上記身体保護片は不使用状態では全体が折り返しの無い縦断面1字状であり、しかも、使用状態では倒立J字状であるように構成されているのに対し、引用発明1では、汗止め用環状帯体を有しておらず、耳おおいの上端を非縫合部に対応した裏地の下端縁の表地側の面に縫着してなり、耳おおいは、表地と裏地との間に形成された間隙からなる格納室に完全に格納した状態では、縫着の最下端部を基点にして上方に折曲げられており、取出した状態では、縫着の最下端部から下端部にわたって折り返しのない縦断面1字状である点。

[相違点2]
本件補正発明では、非縫合部は、底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲に形成されているのに対し、引用発明1では、両側下端任意個所に形成されている点。

3.3 相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
[相違点1]
身体保護片を帽子に縫製する際に、使用状態において全体が折り返しのない縦断面1字状となるように縫製するか、不使用状態において全体が折り返しのない縦断面1字状となるように縫製するかは、収納性や外観、着用感を考慮して当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、身体保護片を、収納した不使用状態では、縫製した縫製部位から上方端にわたって上記身体保護片は折返しの無い縦断面1字状で、かつ、全体が折り返しの無い縦断面1字状となり、しかも、使用状態では倒立J字状となるように構成することは、例えば引用例4に上記「3.1[引用例4]」の「(2)」?「(4)」のとおり記載されているように、本願出願前の当業者にとって周知の技術手段である。
また、帽子の頭回りに接する部位に汗止め用環状帯体を配設して縫着することは、例えば原査定で引用した特開2001-348720号公報、特開2000-314026号公報等にも記載があるように、本願出願前の当業者にとって周知の技術手段である。
したがって、引用発明1における「耳おおい」を、収納した不使用状態では、縫製した縫製部位から上方端にわたって上記身体保護片は折返しの無い縦断面1字状で、かつ、全体が折り返しの無い縦断面1字状となり、しかも、使用状態では倒立J字状となるように構成するとともに、引用発明1における「耳おおい付帽子」の頭回りに接する部位に、上記周知の汗止め用環状帯体を配設し、該汗止め用環状帯体を内生地と耳おおいと共に縫着することは、当業者が容易になし得たものである。

なお、請求人は、審判請求書の3ページの「4.(ハ)」において、「身体保護片1と内生地3とともに汗止め用環状帯体5を縫製するので、汗止め用環状帯体5が補強片の役割を果たし、強度的に優れる。」と主張しているが、該主張に係る作用効果は、本願明細書等に明示的に記載された事項ではないし、仮に本願明細書等の記載から自明な事項であったとしても、引用発明1における「耳おおい」を、収納した不使用状態では、縫製した縫製部位から上方端にわたって上記身体保護片は折返しの無い縦断面1字状で、かつ、全体が折り返しの無い縦断面1字状となり、しかも、使用状態では倒立J字状となるように構成するとともに、引用発明1における「耳おおい付帽子」の頭回りに接する部位に、上記周知の汗止め用環状帯体を配設する際に、汗止め用環状帯体を内生地と耳おおいと共に縫着することを妨げる特段の事情はなく、汗止め用環状帯体を内生地と耳おおいと共に縫着することにより、汗止め用環状帯体が補強片の役割を果たすことも、当業者であれば予測できる範囲のものであるから、請求人による上記主張は採用できない。

[相違点2]
帽子に縫製される耳おおいなどの身体保護片の大きさは、保護する部位などに応じて、当業者が適宜決定し得る設計的事項であり、身体保護片を、少なくとも帽子の底面視、後方縁から左右側縁に渡る大きさとすることは、例えば引用例3及び4にそれぞれ上記「3.1」の「[引用例3](3)」及び「[引用例4](1)」のとおり記載されているように、本願出願前の当業者にとって周知の事項である。
また、身体保護片を格納する格納室を形成するための非縫合部を、底面視、該身体保護片の大きさに対応した範囲に形成することも、例えば引用例3に上記「3.1[引用例3](3)」のとおり記載されているように、本願出願前の当業者にとって周知の事項である。
したがって、引用発明1における「耳おおい」の大きさを適宜の大きさにし、それに対応する範囲の帽子本体の下端縁を縫合わせずに非縫合部を形成することは、上記周知の事項を前提とすれば、当業者であれば容易になし得たものであり、非縫合部を「帽子の底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲」に形成することによる効果も、当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、審判請求書4ページの「5.」で「引用文献1の帽子は、・・・身体保護片が耳に対応する狭い範囲にしか設けられていないので、首の後方等の部分を日除け・防寒等の保護をすることができません。」と主張しているが、本件補正後の請求項1には「該非縫合部(8)に対応した上記内生地(3)の外面(9)に身体保護片(1)を配設し」と記載されているのみであって、非縫合部における身体保護片が縫製される範囲については明示的に記載されていないし、仮に、本件補正発明に係る「身体保護片」が「底面視、後方縁から左右側縁に渡る」ものであるとしても、引用発明1における「耳おおい」を「底面視、後方縁から左右側縁に渡る」大きさとすることは、上記のとおり、当業者であれば容易になし得たものであるから、請求人による上記主張は採用できない。

3.4 本件補正発明の独立特許要件
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成23年5月30日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成22年12月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「帽子本体(2)が内生地(3)と外生地(4)を有する二重構造であって、かつ、頭廻りに接する汗止め用環状帯体(5)を有する帽子であって、
上記内生地(3)の下端縁(6)と上記外生地(4)の下端縁(7)の一部を縫合わせずに非縫合部(8)を形成し、該非縫合部(8)に対応した上記内生地(3)の外面(9)に身体保護片(1)を配設しかつ上記内生地(3)の下端縁(6)の内面に上記汗止め用環状帯体(5)を配設して縫製し、しかも、上記内生地(3)と上記外生地(4)の間に上記身体保護片(1)を収納した不使用状態で、上記縫製した縫製部位から上方端にわたって上記身体保護片(1)は折返しの無い縦断面1字状であり、使用状態では倒立J字状であるように構成し、該身体保護片(1)を、露出垂下状使用状態と不使用状態に、切換可能としたことを特徴とする帽子。」

第4 引用発明1及び引用発明3
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例3には、それぞれ上記「第2[理由]3.1」に記載したとおりの引用発明1及び引用発明3が記載されている。

第5 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]1」に示した本件補正発明から、「身体保護片」が「不使用状態では全体が折り返しの無い縦断面1字状」であるとの限定事項を省き、「不使用状態」が「収納不使用状態」であるとの限定事項を省き、「非縫合部」が「底面視、後方縁から左右側縁に渡る範囲(A)に形成されている」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記「第2[理由]3.3」に記載したとおり、引用発明1及び引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明1及び引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-19 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-09 
出願番号 特願2008-184730(P2008-184730)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A42B)
P 1 8・ 121- Z (A42B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西藤 直人  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 関谷 一夫
一ノ瀬 薫
発明の名称 帽子  
代理人 中谷 武嗣  
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