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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C08J
管理番号 1258481
審判番号 無効2010-800041  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-03-09 
確定日 2012-01-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3640503号発明「エポキシ硬化剤の耐性に優れる強化樹脂組成物およびその成形体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3640503号の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、その出願が平成9年6月19日にされ、平成17年1月28日に特許権の設定登録(請求項の数6)がなされた。

これに対して、平成22年3月9日付けで、請求項1?6に係る発明の特許について、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社から本件無効審判請求がなされ、同年5月31日付けで被請求人旭化成ケミカルズ株式会社から答弁書及び訂正請求書が提出され、同年7月8日付けで請求人から弁駁書が提出され、同年9月14日付けで被請求人から上申書が提出され、同年同月15日付で被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、同日付けで請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、同年同月29日に第1回口頭審理が行われ、その後、請求人からは同年10月13日付けの上申書及び同年同月14日付けの上申書が提出され、被請求人からは同年同月22日付けの上申書が提出されたものである。

なお、第1回口頭審理において、以降の審理は書面審理とすることが宣された。

第2.訂正の請求の可否についての判断
1.訂正の内容
平成22年5月31日付けの訂正請求書による訂正の請求の趣旨は、本件特許明細書を本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?6のとおりである。

○訂正事項1?4
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項1?5に係る
「【請求項1】 (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物。
【請求項2】 無機質充填剤が、ガラス繊維、またはガラス繊維およびガラスフレークである請求項1記載の強化樹脂組成物。
【請求項3】 (A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が、エチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1又は2記載の強化樹脂組成物。
【請求項4】 エチレン性不飽和化合物がアクリル酸ステアリルまたはスチレンである請求項3記載の強化樹脂組成物。
【請求項5】 酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、請求項1?4のいずれかに記載の強化樹脂組成物から成形された成形体。」を、
「【請求項1】 (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形された成形体であって、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、成形体。
【請求項2】 無機質充填剤が、ガラス繊維、またはガラス繊維およびガラスフレークである請求項1記載の成形体。
【請求項3】 (A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が、エチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1又は2記載の成形体。
【請求項4】 エチレン性不飽和化合物がアクリル酸ステアリルまたはスチレンである請求項3記載の成形体。」
と訂正する。

○訂正事項5
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項6に係る
「【請求項6】 酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、請求項1?4のいずれかに記載の強化樹脂組成物から成形されたイグニッションコイルボビン芯材。」を、
「【請求項5】 (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形されたイグニッションコイルボビン芯材であって、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、イグニッションコイルボビン芯材。」
と訂正する。

○訂正事項6
本件特許明細書の発明の詳細な説明における段落【0032】の
「ASTM D256」を「ASTM D648」に、
「ASTM D638」を「ASTM D256」に、
それぞれ訂正する。

2.訂正の適否の判断
(1)訂正事項1?5に係る訂正の適否
訂正事項1?5に係る訂正は、特許請求の範囲についてする訂正であって、上記訂正事項1?4は、訂正前の請求項1?4を削除し、訂正前の請求項1?4を引用する訂正前の請求項5をそれぞれ訂正後の請求項1?4とするものであり、上記訂正事項5は、訂正前の請求項5を訂正後の請求項1としたことに伴い、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項6を訂正後の請求項5とするものである。
よって、訂正事項1?5に係る訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
また、訂正事項1?5に係る訂正により、発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)を新たに追加するものではないことから、これらの訂正が特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(2)訂正事項6に係る訂正の適否
訂正事項6に係る訂正は、発明の詳細な説明の段落【0032】において、「ASTM D256」を「ASTM D648」に、「ASTM D638」を「ASTM D256」に、それぞれ訂正するものであるが、被請求人が提出した参考資料1?3を参酌するまでもなく、ASTM D256がプラスチックのノッチ付き試験片の耐振り子衝撃力を測定する標準試験方法であり、ASTM D648が曲げ負荷下でのプラスチックのたわみ温度の標準測定方法であり、ASTM D638がプラスチック引張特性に関する標準試験方法であることは、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)において周知のことであるから、訂正前のASTM規格番号はその測定項目からみて明らかな誤記と認められ、当該訂正が誤記の訂正を目的とするものであることは明らかである。
さらに、訂正事項6に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

3.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とし、さらに、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、本件訂正を認める。

第3.本件発明
上記「第2.訂正の適否の判断」で述べたとおり、本件訂正を認めるので、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正した明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】 (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形された成形体であって、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、成形体。
【請求項2】 無機質充填剤が、ガラス繊維、またはガラス繊維およびガラスフレークである請求項1記載の成形体。
【請求項3】 (A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が、エチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1又は2記載の成形体。
【請求項4】 エチレン性不飽和化合物がアクリル酸ステアリルまたはスチレンである請求項3記載の成形体。
【請求項5】 (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形されたイグニッションコイルボビン芯材であって、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、イグニッションコイルボビン芯材。」

第4.請求人の主張
請求人は、「特許第3640503号の明細書の請求項1?6に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、第1回口頭審理調書に記載のとおり、以下の無効理由1乃至4を主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第22号証を提出している。(甲第1号証乃至甲第11号証は審判請求書に、甲第12号証乃至甲第20号証は平成22年7月8日付け弁駁書に、甲第21号証は平成22年10月13日付け上申書に、甲第22号証は平成22年10月14日付け上申書に、それぞれ添付されたものである。)

1.無効理由の概要
(1)無効理由1
本件請求項1乃至2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証、甲第5号証乃至甲第7号証及び甲第10号証乃至甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

(2)無効理由2
本件請求項3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証及び甲第10号証乃至甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

(3)無効理由3
本件請求項4に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証及び甲第5号証乃至甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

(4)無効理由4
本件請求項5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証、甲第5号証乃至甲第7号証及び甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

2.証拠方法
甲第1号証:特開平4-353536号公報
甲第2号証:特開平7-196869号公報
甲第3号証:特開平3-163164号公報
甲第4号証:実験成績証明書(SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社総合技術研究所佐藤匠により、2009年12月8日に作成)
甲第5号証:特開昭60-233150号公報
甲第6号証:特開昭49-57044号公報
甲第7号証:Craig Yeager, Carlos Carreno and Donald Rogge "Chemical Resistance of Advanced Thermoplastic Composites in Automotive Fluid"、「SAE Technical Paper Series」、1990年3月7日、第1ページ左欄ABSTRACTの第14?31行及び第3ページ右欄CONCLUSIONSの第1?7行、並びにその抄訳
甲第8号証:特開平7-173381号公報
甲第9号証:特開平7-97442号公報
甲第10号証:特開昭63-258950号公報
甲第11号証:特開昭61-158116号公報
甲第12号証:新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、昭和62年12月25日、目次iv?viiページ、179?189ページ及び215?219ページ
甲第13号証:高分子学会高分子辞典編集委員会編、「新版高分子辞典」、株式会社朝倉書店、1989年9月10日初版第2刷、138ページ
甲第14号証:特開平2-263857号公報
甲第15号証:特開昭61-292304号公報
甲第16号証:特開平6-254972号公報
甲第17号証:特開平7-230931号公報
甲第18号証:四国化成工業株式会社のホームページ
〔http://www.shikoku.co.jp/products/chemicals/PWB/curezol.html〕
甲第19号証:特開平8-157610号公報
甲第20号証:特開平9-12847号公報
甲第21号証:大石不二夫著、「プラスチックの耐久性」、株式会社工業調査会、1977年8月10日第2版、99?115ページ
甲第22号証:実験成績証明書(SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社総合技術研究所佐藤匠により、2009年10月13日に作成)

なお、第1回口頭審理調書に記載のとおり、被請求人は甲第1号証乃至甲第20号証の成立を認めている。

第5.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として乙第1号証乃至乙第6号証を提出している。(乙第1号証乃至乙第3号証は平成22年5月31日付け答弁書に、乙第4号証及び乙第5号証は平成22年9月14日付け上申書に、乙第6号証は平成22年10月22日付け上申書に、それぞれ添付されたものである。)

乙第1号証:石塚正明他著、「長繊維強化熱可塑性プラスチック<バートン>の特性と成形」、プラスチックエージ、1990年5月、206?213ページ
乙第2号証:「VERTON 長繊維強化熱可塑樹脂」のパンフレット、アイ・シー・アイ・ジャパン株式会社高機能樹脂事業本部
乙第3号証:実験成績証明書(旭化成ケミカルズ株式会社樹脂総合研究所機能樹脂技術開発部古河弘昭により、2010年5月27日に作成)
乙第4号証:大石不二夫著、「プラスチックの耐久性」、株式会社工業調査会、1977年8月10日第2版、106?113ページ
乙第5号証:「ザイロン^(R)ハンドブック」、旭化成工業株式会社、昭和63年2月、16?17ページ及び40?43ページ
乙第6号証:「NORYL^(R) THERMOPLASTIC RESINS」、エンジニアリングプラスチックス株式会社、34ページ

なお、第1回口頭審理調書に記載のとおり、請求人は乙第1号証乃至乙第5号証の成立を認めている。

第6.甲第1号証乃至甲第3号証及び甲第5号証乃至甲第11号証の記載事項
1.甲第1号証の記載事項
(1a)「【請求項1】 (A)熱可塑性樹脂20?94.99重量%と、(B)硫化亜鉛0.01?10重量%と、(C)平均繊維径が3?20μmで成形品中における平均繊維長が1?10mmであるガラス繊維5?70重量%とからなることを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1)

(1b)「【発明が解決しようとする課題】ガラス繊維強化樹脂を用いて成形品を製造する場合、様々な用途においてガラス繊維強化樹脂の調色を必要とする場合が多い。このような調色は、通常ガラス繊維強化樹脂に顔料として酸化チタンを配合することにより行なわれるが、ガラス繊維強化樹脂に酸化チタンを配合した場合、ガラス繊維が酸化チタンによって傷付けられ、成形品の強度が著しく低下するという問題がある。」(段落【0003】)

(1c)「【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、顔料として酸化チタンに代えて硫化亜鉛を使用することにより、成形品中のガラス繊維長を長く保つことが可能であること、また硫化亜鉛と共にコバルト塩を添加することにより、成形品の長期性能が向上することを知見し、本発明をなすに至った。」(段落【0005】)

(1d)「(A)成分
(A)成分の熱可塑性樹脂の種類に特に制限はなく、例えばポリオレフィン、ポリアミド、・・・、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のいずれのものでも用いることができる。」(段落【0007】)

(1e)「(B)成分
(B)成分の硫化亜鉛は、顔料として配合されるもので、これにより成形品中におけるガラス繊維の繊維長を長く保つことが可能になるものである。これに対し、顔料として硫化亜鉛に代えて酸化チタンを用いた場合は、成形品中のガラス繊維を長く保持することが難しく、成形品の引張強度,曲げ強度,剛性,耐熱性が低下する。・・・
硫化亜鉛の配合量は、全体の合計量の0.01?10重量%、好ましくは0.03?5重量%である。0.01重量%未満であると着色(調色)が不十分となる。10重量%を超えると成形品が重くなり、かつ物性が低下する上、10重量%より多く添加しても調色上のメリットがなく、逆に経済的でなくなる。」(段落【0010】?【0011】)

(1f)「以上説明したように、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、調色を行なった場合でも、成形品中のガラス繊維の繊維長を長く保つことができ、従って機械的強度の高い成形品を得ることができる。」(段落【0029】)

2.甲第2号証の記載事項
(2a)「【請求項1】(A)ポリフェニレンエーテル20?80重量部、(B)スチレン系重合体、ポリアミドまたはスチレン系重合体とポリアミドの組合せ80?20重量部、(C)水分吸着量2?15%の抗菌性ゼオライト0.1?10重量部および(D)分子量300以上の燐系熱安定剤、分子量300以上のチオエーテル系熱安定剤及び分子量300以上の高度立体障害フェノール系熱安定剤、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱安定剤0.05?5重量部からなる抗菌性樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1)

(2b)「本発明の樹脂組成物の機械的強度、剛性、寸法安定性改良のため、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維クロス、ガラス繊維マット、・・・から選ばれた1種以上の強化剤を添加しても良い。」(段落【0019】)

(2c)「本発明の抗菌性樹脂組成物は無毒性のため、食品と接触するような用途に使用できる。また、本発明の抗菌性樹脂組成物は成形時の熱安定性に優れており、射出成形以外に押出成形、ブロー成形、フィルムやシート成形も可能であり、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、建築部品、家庭用雑貨などの分野に使用できる。」(段落【0023】)

(2d)「(1)使用原材料
PPEは三菱ガス化学(株)製で25℃クロロホルム中の極限粘度が0.45dl/gのものを使用する。PSとして電気化学(株)製のハイインパクトポリスチレンHI-S-3(HIPSと略記)、PAとしては東レ(株)製・アミラン1017・ナイロン6(PAと略記)を、相溶化剤として試薬一級のフマル酸を使用した。抗菌性ゼオライトは、(株)シナネンゼオミック社から発売されているポリスチレン80wt%と抗菌性ゼオライト20wt%を溶融混練したマスターバッチゼオミック・MJ2PS(以下抗菌剤Aと略記)、A型ゼオライト中に含まれるアンモニウムイオン1.3%、銀イオン3%、亜鉛イオン4.5%のもの(以下抗菌剤Bと略記)、A型ゼオライト中に含まれるアンモニウムイオン1.0%、銀イオン2%、銅イオン5%のもの(以下抗菌剤Cと略記)を使用した。エラストマーは(株)クラレ製・SEPS・セプトン2002(以下セプトンと略記)、難燃剤はトリフェニールホスフェート(TPPと略記)を使用した。安定剤としてテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4´-ビフェニレンジホスホナイト(安定剤1と略記)、2,4-ビス-(オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン(安定剤2と略記)および試薬一級の硫化亜鉛(安定剤3と略記)を使用した。ガラス繊維として旭グラスファイバー(株)製・長さ3mm・CS03-JA404(以下GFと略記)を、ポリテトラフルオロエチレンとして(株)ダイキン製・ルブロンL5F(以下PTFEと略記)を使用した。」(段落【0025】)

(2e)「【表1】

」(段落【0033】の【表1】)

3.甲第3号証の記載事項
(3a)「1.主成分として
A)熱可塑性ポリアミド 10?84重量%
B)変性ポリフエニレンエーテル 10?83重量%
C)繊維または粒状の填料あるいはこれらの混合物 5?40重量%
D)硫化亜鉛顔料 1から20重量%
および更に
E)耐衝撃性変性ゴム 0?30重量%
F)難燃剤 0?25%
を含有する、填料含有熱可塑性樹脂成形材料。」(特許請求の範囲請求項1)

(3b)「さらに本発明は、成形品の製造のためのこれらの成形材料の使用、ならびにこれらの成形材料を利用し、これらを主成分として含有している成形品に関する。」(第1ページ右下欄第8?11行)

(3c)「ポリフエニレンエーテルおよびポリアミドから成る混合物中の繊維あるいは粒状の填料は、成形材料の機械的性質に不利に作用する場合が多い。この作用は、特に黄色がかつた本来の色調に基づき白色顔料として二酸化チタンを含有する繊維強化淡色成形体に起こる。」(第2ページ左上欄第5?10行)

(3d)「填料の例としては、アスベスト、炭素繊維、・・・ガラス繊維、・・・が挙げられる。」(第6ページ左上欄第17行?右上欄第2行)

4.甲第5号証の記載事項
(5a)「1.(A)ポリエチレンテレフタレート系樹脂 35?95重量%
(B)ガラス繊維 5?60重量%
(C)硫化亜鉛系顔料 0.1?20重量%
からなり且つ(A)?(C)の各成分の合計量が100重量%になるように(A)?(C)の各成分を配合してなる白色に着色されたガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1)

(5b)「したがつて、白あるいは白系統に着色する場合、通常は、代表的な白色顔料である酸化チタンが用いられる。
ところが、このようなガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート樹脂に酸化チタンを添加すると、成形物の機械的強度の低下や熱変形温度が低下する傾向がある。この傾向は、主成分であるポリエチレンテレフタレートの分子量が比較的小さい場合には、特に強く現われる。
これは、酸化チタンを添加して、ガラス繊維とポリエチレンテレフタレートを供に押出、射出成形等により溶融、混練操作を行なうと含有されるガラス繊維の繊維長が非常に短かくなり、この結果、ガラス繊維長の依存度が比較的高い引張強度、衝撃強度等の機械的強度や、熱変形温度が低下する。この原因としては、熱可塑性ポリエステル用に使われるガラス繊維(Eガラス)のモース硬度が6.5であるのに対し、酸化チタンのモース硬度が6?7とかなり高いため、ガラス繊維と酸化チタンをポリエチレンテレフタレート中で溶融混練されると、酸化チタンによりガラス繊維表面にキズが付き、ガラス繊維が極めて折れやすい状態になるためと推定される。」(第1ページ右下欄第12行?第2ページ左上欄第15行)

(5c)「本発明の目的は、機械的強度や熱変形温度を低下させることなくかつガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を白色に着色する方法を提供することにある。」(第2ページ右上欄第8?11行)

5.甲第6号証の記載事項
(6a)「モース硬度が5以下の無機顔料を含有することを特徴とする、無機顔料で着色したガラス繊維強化熱可塑性成形材料。」(特許請求の範囲)

(6b)「無機顔料たとえば二酸化チタンで着色されたガラス繊維強化熱可塑性樹脂が、顔料着色されない同じ材料よりも劣る機械的性質を示すことは古くから知られている。」(第1ページ左下欄下から1行?右下欄第3行)

(6c)「本発明の成形材料は、たとえば二酸化チタンで着色されたガラス繊維強化成形材料に比して、引張強度及び衝撃強度において明らかに改善されている。
本発明における無機顔料は、有色又は白色の金属塩及び鉱物であつて、・・・特に好ましい白色顔料はたとえば硫化亜鉛(スフアレライト又はウルツアイト構造)である。」(第2ページ左上欄第7?15行)

6.甲第7号証の記載事項
(7a)「このペーパーは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン6,6、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルイミド(PEI)に基づく、ガラス繊維強化された、長ガラス繊維強化された、カーボン繊維強化された、およびPTFE潤滑された複合材の耐薬品性の包括的研究を示す。
従来の繊維強化された物質に比べて、長繊維強化された熱可塑性プラスチックの優れた性能が、明瞭に示される。高温非晶質基礎ポリマーのうちで、ポリエーテルスルホンは、無鉛ガソリン、および無鉛ガソリン/アルコール混合物に対する優れた耐薬品性を与えた。」(第1ページ左欄ABSTRACTの第14?31行)

(7b)「1.長繊維強化されたコンパウンドは、それらの短繊維強化された同等物に比べて、改善された耐薬品性を示し、これは露出される繊維末端の数の減少および芯作用の対応する減少による。」(第3ページ右欄CONCLUSIONSの第1?7行)

7.甲第8号証の記載事項
(8a)「【請求項1】 (I)下記一般式(1)で表される環化末端基を、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニットの100個に対して平均0.01個以上含有し、数平均分子量が1,000?100,000の範囲にあるポリフェニレンエーテル樹脂30?90重量%、
【化1】(構造式省略)
(II)下記一般式(2)で表される環化末端基を、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニットの100個に対して平均0.01個以上含有し、数平均分子量が1,000?100,000の範囲にあるポリフェニレンエーテル樹脂0.5?10重量%、
【化2】(構造式省略)
(III)ビニル芳香族化合物重合体0?10重量%、
(IV)少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックAと少なくとも1個のオレフィン化合物重合体ブロックBから成るブロック共重合体であり、このブロック共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAの含有量が50重量%以上70重量%以下であり、しかもオレフィン化合物重合体の不飽和度が20%以下であるブロック共重合体が20?5重量%、
(V)少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックAと少なくとも1個のオレフィン化合物重合体ブロックBから成るブロック共重合体であり、このブロック共重合体中のビニル芳香族化合物ブロックAの含有量が10重量%以上50重量%未満であり、しかもオレフィン化合物重合体の不飽和度が20%以下であるブロック共重合体が0.1?10重量%、
(VI)少なくとも1個のビニル芳香族化合物と少なくとも1個のオレフィン化合物から成るグラフト共重合体であり、このグラフト共重合体のビニル芳香族化合物の含有量が80重量%以上95重量%以下であり、しかもオレフィン化合物の不飽和度が20%以下であるグラフト共重合体が5?30重量%、
上記(I)?(VI)を主成分として成る樹脂組成物成形体。
【請求項2】 請求項1、2記載の樹脂組成物から成形されたコイル用ボビン。」(特許請求の範囲請求項1?2)

(8b)「本発明は、耐熱性、耐熱エージング性、機械的特性、成形加工性に優れ、剥離、割れ等の不具合もない樹脂成形体、好ましくはコイル用ボビンに関するものである。」(段落【0001】)

(8c)「上記式(I)、(II)のポリフェニレンエーテル樹脂は、基本的に特開平2-276823号公報に記載の方法に従って、特定の末端基を有するポリフェニレンエーテル系重合体(a)を炭素-炭素二重結合を有する化合物(b)とラジカル発生剤の存在下で該ポリフェニレンエーテル系重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することにより得られ、しかも上記式(I)のポリフェニレンエーテル樹脂は不飽和化合物(b)としてスチレン系化合物を用いることにより得られ、かつ上記式(II)は不飽和化合物(b)として不飽和ジカルボン酸又はその誘導体等を用いることにより得られる。」(段落【0016】)

(8d)「実施例1?9及び比較例1?4に用いられているポリフェニレンエーテル樹脂(I)は、上記のポリフェニレンエーテルの100重量部に対してスチレン10重量部をヘンシェルミキサーで均一にブレンドした後、スクリューの直径が30mmφの二軸押出機中300℃で溶融混練し、水槽を通してペレット化する。」(段落【0036】)

(8e)「実施例1?9及び比較例1?3、及び5に用いられているポリフェニレンエーテル樹脂(II)は、上記(4)、(5)で示されるポリフェニレンエーテルの100重量部に対して無水マレイン酸0.53重量部を添加することによって得られる。」(段落【0038】)

8.甲第9号証の記載事項
(9a)「【請求項1】 炭素数9以上22以下のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはシクロアルキル基とのアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルから選ばれた、少なくとも1種以上のビニル化合物が結合したポリフェニレンエーテル樹脂であって、一般式(a)で表される末端基を、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニットの100個に対して平均0.01個以上含有し、(a)末端以外の部位への結合量が、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニットの100個に対して平均0.01個以上含有し、数平均分子量が10,000?22,000の範囲にあることを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂。
【化1】(構造式省略)」(特許請求の範囲請求項1)

(9b)「本発明のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルは、炭素数9から22を含有するアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはシクロアルキル基とのエステルであり、好ましくは炭素数12?18を含む化合物とのエステルである。炭素数8以下の場合は成形品の表面外観、平滑性を損なうために好ましくなく、炭素数23以上の場合は、熱変形温度を著しく損なうため好ましくない。具体的には、・・・ステアリルアクリレート、・・・等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルが結合したポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル重合体とアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとをラジカル重合開始剤の不存在下または存在下に、ポリフェニレンエーテル重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって製造できる。」(段落【0028】?【0029】)

9.甲第10号証の記載事項
(10a)「1.(a)ポリフェニレンエーテル樹脂、またはポリフェニレンエーテル-ポリアルケニル芳香族樹脂100重量部;および
(b)上記ポリフェニレンエーテル樹脂(a)のエポキシ化合物に対する接着性を改善するための、成分(a)100重量部あたり1-15重量部のポリアミド成分添加剤
を含み、該ポリアミド成分が
(i)ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド6,10および非晶質ナイロンよりなる群から選ばれたポリアミド;または
(ii)ポリアミドと第2のポリフェニレンエーテル樹脂との相溶化ブレンド
からなる、エポキシ樹脂に対する改善された接着性を有する成形物品を与えるポリフェニレンエーテル組成物。
・・・
10.さらに強化に十分な量の強化剤を含有する請求項1記載の組成物。
11.上記強化剤がガラス繊維、マイカ、クレーまたはタルクよりなる群から選ばれる請求項10記載の組成物。」(特許請求の範囲請求項1、10及び11)

(10b)「熱可塑性ポリフェニレンエーテル成形用組成物は電気産業の種々の用途に有用であるとして長い間知られてきた。・・・
ある種の複雑な電気的ワイヤリング装置、たとえばボビンとして知られる装置は、成形された熱可塑性樹脂でできた支持部品を必要とする。電気部品でワイヤリングされた後、支持部品は繊細なワイヤリングを保護し電気的破損を防止するために熱硬化性または硬化性エポキシ樹脂組成物にカプセル封入されることが多い。エポキシ樹脂は種々の電荷を運ぶワイヤ間の電気絶縁材として働く。支持部品用の熱可塑性複合材料はエポキシとしっかり接着して、電気的劣化をもたらすアーク放電や徐々に生じる放電を防止することが必要である。」(第2ページ右上欄第18行?左下欄第15行)

10.甲第11号証の記載事項
(11a)「(1)合成樹脂のハウジング内に磁心の周りに環状に順次配置した合成樹脂ボビンに巻いた低電圧側コイル及び合成樹脂に巻いた高電圧側コイルを内蔵し前記の電圧変換要素間の空隙をエポキシ樹脂で充填封止したトランスにおいて、前記合成樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂15?80重量%、ポリスチレン樹脂および/またはゴム補強ポリスチレン樹脂15?80重量%及びビニル芳香族-α,β-不飽和ジカルボン酸無水物共重合体1?30重量%の樹脂組成物材料としてなる充填封止剤との接着性の改良されたトランス。
(2)樹脂組成物材料がガラス繊維補強剤を含んでなる特許請求の範囲第1項記載のトランス。」(特許請求の範囲請求項1及び2)

(11b)「本発明は、テレビおよびCRTディスプレーなどの高電圧発生器として使用されるフライバックトランス、複写機用の高圧(または電源)トランスおよび自動車のイグナイターなどのトランスに関するものである。更に詳しくは、該トランスは、主にフェライトコアー、巻線を巻いたコイルボビン、注形用エポキシ樹脂および外装ケースなどからなる構造を有し、これらの外装ケースおよびコイルボビンがポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、該エポキシ樹脂との接着性を改良したポリフェニレンエーテル系樹脂を該トランスの外装ケースおよびコイルボビンに使用することに関するものである。」(第1ページ右下欄第15行?第2ページ左上欄第7行)

(11c)「本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の機械的、熱的、電気的諸特性および寸法安定性等を維持し、かつ注形用エポキシ樹脂との接着性の改良を目的とするものである。」(第2ページ右上欄第17?20行)

(11d)「また、本発明で使用する樹脂組成物材料中に他の添加剤例えば・・・着色剤などを添加することも可能である。」(第6ページ右上欄第3?11行)

第7.無効理由1についての判断
1.本件発明1について
1-1.甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、摘示事項(1a)のとおり、「熱可塑性樹脂20?94.99重量%と、硫化亜鉛0.01?10重量%と、平均繊維径が3?20μmで成形品中における平均繊維長が1?10mmであるガラス繊維5?70重量%とからなることを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物」が記載されている。
また、摘示事項(1f)から、ガラス繊維強化樹脂組成物から成形された成形体が記載されているといえる。
そして、摘示事項(1e)のとおり、硫化亜鉛の配合量は、全体の合計量の0.01?10重量%、好ましくは0.03?5重量%であることが記載されている。

よって、摘示事項(1a)?(1f)を総合すると、甲第1号証には、
「熱可塑性樹脂20?94.99重量%と、硫化亜鉛0.03?5重量%と、平均繊維径が3?20μmで成形品中における平均繊維長が1?10mmであるガラス繊維5?70重量%とからなることを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物から成形された成形体。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

1-2.本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明における「硫化亜鉛」は、顔料として配合されるものであるから(摘示記載(1e))、本件発明1における「白色着色剤としての硫化亜鉛」に相当し、甲1発明における「平均繊維径が3?20μmで成形品中における平均繊維長が1?10mmであるガラス繊維」は、ガラス繊維は無機質充填剤の一種であることは明らかであるから、本件発明1における「無機質充填剤」に相当する。
そして、無機質充填剤の配合量についてみれば、甲1発明においては、熱可塑性樹脂20?94.99重量%に対し、ガラス繊維5?70重量%であるから、本件発明1における「樹脂100重量部に対し、無機質充填剤5?200重量部」と、その範囲が重複する部分を有しており、硫化亜鉛の配合量についてみれば、甲1発明における「0.03?5重量%」と、本件発明1における「0.5?7.7重量%」とは、その範囲が重複する部分を有している。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「樹脂100重量部に対し、無機質充填剤5?200重量部、白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形された成形体。」である点で一致しているが、以下の点で相違している。

相違点a:硫化亜鉛が配合された強化樹脂組成物から成形された成形体(以下、単に「成形体」という。)が、本件発明1では、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものであるのに対し、甲1発明は、当該規定がない点。

相違点b:本件発明1は、ポリフェニレンエーテル系樹脂であるのに対し、甲1発明は、熱可塑性樹脂である点。

1-3.甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、摘示事項(2a)のとおり、「ポリフェニレンエーテル20?80重量部、スチレン系重合体、ポリアミドまたはスチレン系重合体とポリアミドの組合せ80?20重量部、水分吸着量2?15%の抗菌性ゼオライト0.1?10重量部および分子量300以上の燐系熱安定剤、分子量300以上のチオエーテル系熱安定剤及び分子量300以上の高度立体障害フェノール系熱安定剤、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱安定剤0.05?5重量部からなる抗菌性樹脂組成物」が記載されている。
また、摘示事項(2c)から、抗菌性樹脂組成物から成形された成形体が記載されているといえる。
そして、摘示事項(2d)及び(2e)のとおり、実施例番号4として、ポリフェニレンエーテル30重量部、ハイインパクトポリスチレン26重量部、ポリスチレン80wt%と抗菌性ゼオライト20wt%を溶融混練したマスターバッチである抗菌性ゼオライト20重量部、硫化亜鉛4重量部及びガラス繊維20重量部からなる抗菌性樹脂組成物が記載されている。

よって、摘示事項(2a)?(2e)を総合すると、甲第2号証には、
「ポリフェニレンエーテル30重量部、ハイインパクトポリスチレン26重量部、ポリスチレン80wt%と抗菌性ゼオライト20wt%を溶融混練したマスターバッチである水分吸着量2?15%の抗菌性ゼオライト20重量部、硫化亜鉛4重量部及びガラス繊維20重量部からなる抗菌性樹脂組成物から成形された成形体。」
の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

1-4.本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明における「硫化亜鉛」は、熱安定剤として添加しているものの(摘示記載(2a))、顔料として機能することは明らかであるから、本件発明1における「白色着色剤としての硫化亜鉛」に相当し、甲2発明における「ガラス繊維」は、ガラス繊維は無機質充填剤の一種であることは明らかであるから、本件発明1における「無機質充填剤」に相当し、甲2発明における「抗菌性樹脂組成物」は、ガラス繊維を配合していることから、本件発明1における「強化樹脂組成物」に相当するものであるといえる。
そして、無機質充填剤の配合量についてみれば、甲2発明においては、ポリフェニレンエーテル30重量部に対し、ガラス繊維20重量部であるから、本件発明1における「ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、無機質充填剤5?200重量部」と、その範囲が重複する部分を有しており、硫化亜鉛の配合量についてみれば、甲2発明における4重量%(4重量部÷100重量部)と、本件発明1における「0.5?7.7重量%」とは、その範囲が重複する部分を有している。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、無機質充填剤5?200重量部、白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形された成形体。」である点で一致しているが、少なくとも以下の点で相違している。

相違点c:成形体が、本件発明1では、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものであるのに対し、甲2発明は、当該規定がない点。

1-5.甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、摘示記載(3a)のとおり、「熱可塑性ポリアミド10?84重量%、変性ポリフエニレンエーテル10?83重量%、繊維または粒状の填料あるいはこれらの混合物5?40重量%、硫化亜鉛顔料1から20重量%、および更に耐衝撃性変性ゴム0?30重量%、難燃剤0?25%を含有する、填料含有熱可塑性樹脂成形材料」が記載されている。
また、摘示事項(3b)から、填料含有熱可塑性樹脂成形材料から成形された成形体が記載されているといえる。

よって、摘示記載(3a)?(3d)を総合すると、甲第3号証には、
「熱可塑性ポリアミド10?84重量%、変性ポリフエニレンエーテル10?83重量%、繊維または粒状の填料あるいはこれらの混合物5?40重量%、硫化亜鉛顔料1から20重量%を含有する、填料含有熱可塑性樹脂成形材料から成形された成形体。」
の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

1-6.本件発明1と甲3発明との対比
甲3発明における「変性ポリフェニレンエーテル」は、本件発明1における「ポリフェニレンエーテル系樹脂」に相当し、甲3発明における「硫化亜鉛顔料」は、本件発明1における「白色着色剤としての硫化亜鉛」に相当し、甲3発明における「繊維または粒状の填料あるいはこれらの混合物」は、本件発明1における「無機質充填剤」に相当し、甲3発明における「填料含有熱可塑性樹脂成形材料」は、本件発明1における「強化樹脂組成物」に相当する。
そして、無機質充填剤の配合量についてみれば、甲3発明においては、変性ポリフエニレンエーテル10?83重量%に対し、繊維または粒状の填料あるいはこれらの混合物5?40重量%であるから、本件発明1における「ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、無機質充填剤5?200重量部」と、その範囲が重複する部分を有しており、硫化亜鉛の配合量についてみれば、甲3発明における「1から20重量%」と、本件発明1における「0.5?7.7重量%」とは、その範囲が重複する部分を有している。

そうすると、本件発明1と甲3発明とは、「ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、無機質充填剤5?200重量部、白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形された成形体。」である点で一致しているが、少なくとも以下の点で相違している。

相違点d:成形体が、本件発明1では、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものであるのに対し、甲3発明は、当該規定がない点。

1-7.相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。

○相違点a、c及びdについて

本件特許明細書には、次の記載がある。

「ポリフェニレンエーテル系樹脂は耐熱性、電気特性、耐酸、耐アルカリ性等に優れ、しかも低比重、低吸水性である等の優れた特性を有する樹脂である。
近年、電気特性、高耐熱の特性を生かし、無機充填剤を配合した強化樹脂組成物材料が、電機部品のコイルボビンの芯材等に使われている。上記用途において強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、判別のため各種の色に着色されて使用されることが多い。
しかしながら、この着色材料を用いてコイルボビン芯材を得る場合、芯材の周りを形成するエポキシ樹脂を硬化させるために用いる硬化剤により、該着色材料からなる芯材にクレーズやクラックが発生し、酷い場合には芯材の破壊に至ることがあった。
特開昭60-233150号公報にはポリエチレンテレフタレート系樹脂にガラス繊維および硫化亜鉛を配合してなる組成物が開示され、酸化チタンで着色された組成物と比べ耐熱性、機械特性に優れると明示されている。特開平6-192563号公報等にはポリフェニレンエーテル樹脂に無機充填剤を配合した成形性、剛性、寸法安定性に優れた組成物が明示され、さらにイグニッションコイルボビン用途の規定がある。しかしながら、これらの公報、その他文献等にて、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物をエポキシ樹脂にて包埋する際のエポキシ硬化剤の耐性について検討された報告は見たらず、エポキシ硬化剤の耐性に優れる強化樹脂組成物、強化ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の発明には至っていなかった。
本発明の目的は、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられるエポキシ硬化剤性の耐性に優れ、耐熱性、機械物性のバランスに優れる強化樹脂組成物、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することである。」(段落【0002】?【0004】)

「本発明の硫化亜鉛を含む組成物がエポキシ硬化剤に耐性を示す理由は現時点では不明であるが、何らかの弱い化学結合が生じている可能性もある。」(段落【0025】)

「本発明の組成物、及び成形体は、従来の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物では達し得なかった高い耐エポキシ硬化剤性、耐熱性、機械物性のバランスに優れ、イグニッションコイルボビン芯材用途等、産業上有用である。」(段落【0048】)

以上の本件特許明細書の記載によると、本件発明1は、従来のポリフェニレンエーテル系樹脂と無機質充填剤を配合してなる強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(以下、「強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物」という。)では、着色材料を用いてコイルボビン芯材を得る場合、芯材の周りを形成するエポキシ樹脂を硬化させるために用いる硬化剤により、該着色材料からなる芯材にクレーズやクラックが発生し、酷い場合には芯材の破壊に至ること(段落【0002】?【0004】)にかんがみ、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられるエポキシ硬化剤の耐性に優れ、耐熱性、機械物性のバランスに優れる強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物から成形された成形体を提供するものであり(段落【0002】?【0004】及び【0048】)、白色着色剤として硫化亜鉛を配合することにより、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物から成形された成形体が耐エポキシ硬化剤性を示し(段落【0025】)、よって、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物から成形された成形体を、相違点a、c及びdに係る「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」態様とするものであるといえる。

ところで、甲第1号証には、摘示記載(1e)のとおり、顔料として硫化亜鉛に代えて酸化チタンを用いた場合は、成形品中のガラス繊維を長く保持することが難しく、成形品の引張強度,曲げ強度,剛性,耐熱性が低下することは記載されているが、硫化亜鉛を用いることにより、エポキシ硬化剤に耐性を示す点については記載も示唆もされていないことから、甲1発明からは、成形体が、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものとの発明特定事項を導き出すことはできない。

また、甲第2号証には、摘示事項(2a)?(2e)のとおり、ポリフェニレンエーテル、スチレン系重合体、ポリアミドまたはスチレン系重合体とポリアミドの組合せ、抗菌性ゼオライトおよび熱安定剤としての硫化亜鉛からなる抗菌性樹脂組成物が記載されているが、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もされていないことから、甲2発明からは、成形体が、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものとの発明特定事項を導き出すことはできない。

さらに、甲第3号証には、摘示事項(3a)?(3d)のとおり、熱可塑性ポリアミド、変性ポリフエニレンエーテル、繊維または粒状の填料あるいはこれらの混合物、硫化亜鉛顔料を含有する填料含有熱可塑性樹脂成形材料において、特に黄色がかつた本来の色調に基づき白色顔料として二酸化チタンを含有する繊維強化淡色成形体に起こる、成形材料の機械的性質に不利な作用を改善することが記載されているが、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もないことから、甲3発明からは、成形体が、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものとの発明特定事項を導き出すことはできない。

次に、成形体が、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」ものとの発明特定事項(以下、「エポキシ樹脂接着事項」という。)が、甲第1?3号証以外の甲各号証の記載に基いて、当業者が想起できるか否かについて検討する。

(a)甲第5号証
甲第5号証には、摘示記載(5a)?(5b)のとおり、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート樹脂に酸化チタンを添加して、ガラス繊維とポリエチレンテレフタレートを供に押出、射出成形等により溶融、混練操作を行なうと含有されるガラス繊維の繊維長が非常に短かくなり、この結果、ガラス繊維長の依存度が比較的高い引張強度、衝撃強度等の機械的強度や、熱変形温度が低下すること、及び機械的強度や熱変形温度を低下させることなくかつガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を白色に着色する方法として硫化亜鉛系顔料を用いることが記載されているが、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もないことから、甲第5号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。

(b)甲第6号証
甲第6号証には、摘示記載(6a)?(6b)のとおり、モース硬度が5以下の無機顔料を含有する無機顔料で着色したガラス繊維強化熱可塑性成形材料であることにより、二酸化チタンで着色されたガラス繊維強化成形材料に比して、引張強度及び衝撃強度において明らかに改善されていること、及び無機顔料が硫化亜鉛であることが記載されているが、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もないことから、甲第6号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。

(c)甲第7号証
甲第7号証には、摘示記載(7a)?(7c)のとおり、長繊維強化されたコンパウンドは、それらの短繊維強化された同等物に比べて、改善された耐薬品性を示し、これは露出される繊維末端の数の減少および芯作用の対応する減少によることが記載されているもが、硫化亜鉛を配合することについて何ら記載も示唆もないことから、甲第7号証には、硫化亜鉛を配合することと、耐薬品性の改善との関連性については記載されているとはいえない。
よって、甲第7号証には、硫化亜鉛を用いること、及びそれにより耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もないことから、甲第7号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。

(d)甲第10号証
甲第10号証には、摘示記載(10a)?(10b)のとおり、強化剤を含有するエポキシ樹脂に対する改善された接着性を有する成形物品を与えるポリフェニレンエーテル組成物が記載されているが、硫化亜鉛等の白色着色剤を用いることについて何ら記載も示唆もなく、さらに耐エポキシ硬化剤性についても何ら記載も示唆もない。
よって、甲第10号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。

(e)甲第11号証
甲第11号証には、摘示記載(11a)?(11d)のとおり、合成樹脂のハウジング内に磁心の周りに環状に順次配置した合成樹脂ボビンに巻いた低電圧側コイル及び合成樹脂に巻いた高電圧側コイルを内蔵し前記の電圧変換要素間の空隙をエポキシ樹脂で充填封止したトランスにおいて、前記合成樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂15?80重量%、ポリスチレン樹脂および/またはゴム補強ポリスチレン樹脂15?80重量%及びビニル芳香族-α,β-不飽和ジカルボン酸無水物共重合体1?30重量%の樹脂組成物材料としてなる充填封止剤との接着性の改良されたトランスにおいて、樹脂組成物材料がガラス繊維補強剤を含むこと、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の機械的、熱的、電気的諸特性および寸法安定性等を維持し、かつ注形用エポキシ樹脂との接着性の改良を目的とすること、及び他の添加剤として着色剤を添加しうることが記載されているが、着色剤として硫化亜鉛を配合することについて何ら記載も示唆もなく、さらに耐エポキシ硬化剤性についても何ら記載もない。
よって、甲第11号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。

上記(a)?(e)において検討したように、甲第1?3号証のみならず、甲第5?7及び10?11号証の記載に基いても、エポキシ樹脂接着事項を当業者が想起できるとはいえない。

そして、本件発明1がエポキシ接着事項を備えることによって奏される効果は、格別のものであり、甲第1?3、5?7及び10?11号証から予測し得ないものである。

結局、甲第1?3、5?7及び10?11号証の全ての開示内容をあわせて検討し、技術常識を考慮しても、エポキシ樹脂接着事項を導き出すことが、当業者にとり容易であるということはできない。

1-8.まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1?3、5?7及び10?11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用してさらに限定するものであるから、本件発明1が、甲第1?3、5?7及び10?11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2もまた、甲第1?3、5?7及び10?11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第8.無効理由2についての判断
1.本件発明3について
1-1.本件発明3と甲1発明乃至甲3発明との対比

本件発明3は、本件発明1?2を引用してさらに限定するものであるから、本件発明3と甲1発明乃至甲3発明とを対比すると、少なくとも上記第7.の1-2.における相違点a、上記第7.の1-4.における相違点c又は上記第7.の1-6.における相違点dの点で相違している。

1-2.相違点の検討
上記第7.の1-7.で検討したとおり、甲第1?3、5?7及び10?11号証に基いて、エポキシ樹脂接着事項を当業者が想起できるとはいえない。
次に、甲第8号証には、摘示記載(8a)?(8e)のとおり、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分として成る樹脂組成物成形体及び樹脂組成物から成形されたコイル用ボビンが記載されているが、硫化亜鉛を用いること、及びそれにより耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もないことから、甲第8号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。
したがって、甲第1?3、5?8及び10?11号証の全ての開示内容をあわせて検討し、技術常識を考慮しても、エポキシ樹脂接着事項を導き出すことが、当業者にとり容易であるということはできない。

1-3.まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1?3、5?8及び10?11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第9.無効理由3についての判断
1.本件発明4について
1-1.本件発明4と甲1発明乃至甲3発明との対比
本件発明4は、本件発明3を引用してさらに限定するものであるから、本件発明4と甲1発明乃至甲3発明とを対比すると、少なくとも上記第7.の1-2.における相違点a、上記第7.の1-4.における相違点c又は上記第7.の1-6.における相違点dの点で相違している。

1-2.相違点の検討
上記第7.の1-7.及び上記第8.の1-2.で検討したとおり、甲第1?3、5?8及び10?11号証に基いて、エポキシ樹脂接着事項を当業者が想起できるとはいえない。
次に、甲第9号証には、摘示記載(9a)?(9b)のとおり、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物が記載されているが、硫化亜鉛等の白色着色剤を用いること、及びそれにより耐エポキシ硬化剤性を示す点について記載も示唆もないことから、甲第9号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。
したがって、甲第1?3及び5?11号証の全ての開示内容をあわせて検討し、技術常識を考慮しても、エポキシ樹脂接着事項を導き出すことが、当業者にとり容易であるということはできない。

1-3.まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲第1?3及び5?11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第10.無効理由4について
1.本件発明5について
1-1.本件発明5と甲1発明乃至甲3発明との対比
本件発明5は、本件発明1に係る「成形体」を、「イグニッションコイルボビン芯材」とするものであるから、本件発明5と甲1発明乃至甲3発明とを対比すると、少なくとも上記第7.の1-2.における相違点a、上記第7.の1-4.における相違点c又は上記第7.の1-6.における相違点dの点で相違している。

1-2.相違点の検討
上記第7.の1-7.で検討したとおり、甲第1?3、5?7及び11号証に基いて、エポキシ樹脂接着事項を当業者が想起できるとはいえない。
したがって、甲第1?3、5?7及び11号証の全ての開示内容をあわせて検討し、技術常識を考慮しても、エポキシ樹脂接着事項を導き出すことが、当業者にとり容易であるということはできない。

1-3.まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲第1?3、5?7及び11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第11.請求人の主張についての検討
請求人は、無効理由1乃至4について、概略、以下の主張を述べている。

主張1:
ガラス繊維を含む成形品において白色顔料として酸化チタンに代えて硫化亜鉛を用いると、成形品の強度が良くなる(強度が下がらない)ことが周知であった(甲第1号証、甲第3号証、甲第7号証、甲第19号証、甲第20号証)。従って、ポリフェニレンエーテル系樹脂とガラス繊維との成形体において、酸化チタンでなくて硫化亜鉛を用いて強度の低下を防ぐことは当業者が当然に行うことにすぎない。それによって耐エポキシ硬化剤性、あるいはさらに他の薬剤に対する耐環境応力き裂性が得られることが確認されたとしても、単なる第2、第3の効果の発見にすぎない。(平成22年10月13日付け上申書の4ページ第29?36行)

主張2:
環境剤が、甲第7号証記載の自動車関連流体であっても(甲第22号証)、エポキシ硬化剤であっても(甲第4号証)、酸化チタンおよび硫化亜鉛による作用は共通である。これは、ガラス繊維の長さが長ければ耐環境応力き裂性が高いということが、物理的な現象であるから、特定薬品だけに当てはまることではないゆえに、当然のことである。「エポキシ硬化剤」との文言を請求項に入れることによって進歩性が生まれるものではない。(平成22年10月13日付け上申書の5ページ第31行?6ページ第1行)
被請求人は、「『エポキシ硬化剤の耐性』は、甲第7号証が開示する『ガソリンなどの自動車関連流体に対する耐性』とはまったくことなるものである。」などと主張しているが、環境剤がエポキシ硬化剤であろうがガソリンであろうが、酸化チタンを硫化亜鉛に変えることの効果は、甲第4号証および甲第22号証により示されるように共通である。(平成22年10月13日付け上申書の6ページ第4?9行)

主張3:
訂正後の請求項1の発明は、「エポキシ樹脂と接着された、成形体」であるが、本件明細書の実施例においてエポキシ樹脂との接着は全く示されていない。全て、単なる樹脂組成物である。実施例で示されている物性は、全て樹脂組成物自体の物性である。従って、「エポキシ樹脂と接着された」の点に格別の技術的意義を認めることはできない。(平成22年9月15日付け口頭審理陳述要領書の2ページ第18?22行)

主張4:
本件において、硫化亜鉛による特有の効果があるかに見えるのは、酸化チタンも硫化亜鉛も含まないブランクの組成物の物性が明細書に比較例として示されていない故である。硫化亜鉛を含む組成物の物性は硫化亜鉛を含まないブランクの組成物の物性と同じである。これに対して、被請求人は「『白色着色剤を用いていないもの』と『白色着色剤として酸化チタンを用いたもの』との比較対比、即ち、訂正後の本件特許発明1及び訂正後の本件特許発明5の目的及び課題に適さないもの同士の比較対比を基にしたものであるにすぎない」と主張している。しかし、白色に着色することが本件発明の目的及び課題ではない。(平成22年9月15日付け口頭審理陳述要領書の3ページ第1?9行)

主張5:
エポキシ樹脂の硬化剤として、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体は周知であり、また、これらを選択することによって格別の効果が奏されるとは本件特許公報から認められない。(審判請求書の21ページ第17?18行)
これら甲第12?17号証は、エポキシ樹脂の硬化剤(あるいは硬化促進剤と呼ばれる)として、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体が周知であったことを示す。(平成22年7月8日提出の弁駁書の6ページ第5?7行)

1.主張1について
確かに、請求人が主張するとおり、ガラス繊維を含む成形品において白色顔料として酸化チタンに代えて硫化亜鉛を用いることにより、成形品の機械的強度が向上することについては、摘示記載(1b)?(1c)、(3a)?(3c)、(5a)?(5b)、(6a)?(6c)より、当業者に周知の事項であったと認められるが、甲第1号証乃至甲第11号証には、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示す点については何ら記載も示唆もないことから、ポリフェニレンエーテル系樹脂とガラス繊維との成形体において、酸化チタンでなくて硫化亜鉛を用いて強度の低下を防ぐことが当業者にとり容易に想到しうるものであるとしても、さらに、ポリフェニレンエーテル系樹脂とガラス繊維との成形体を、「酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された」態様とすることまで、当業者にとり容易に想到しうるものということはできず、また、耐エポキシ硬化剤性が単なる効果の発見にすぎないともいえない。

2.主張2について
甲第7号証には、摘示記載(7a)?(7c)のとおり、長繊維強化されたコンパウンドは、それらの短繊維強化された同等物に比べて、改善された耐薬品性を示し、これは露出される繊維末端の数の減少および芯作用の対応する減少によることが記載されているが、硫化亜鉛自体の記載がなく、硫化亜鉛と耐薬品性との関連性について何ら記載も示唆もされていないことから、そもそも甲第7号証からは、白色着色剤として硫化亜鉛を配合することにより、耐薬品性が改善されていることが記載されているということはできない。
したがって、甲第7号証に記載の耐薬品性、具体的には「ガソリンなどの自動車関連流体に対する耐性」と、本件発明に係る「エポキシ硬化剤の耐性」とが、ガラス繊維の長さに基づく効果という点で共通しているのか否かを検討するまでもなく、甲第7号証に基いて、当業者がエポキシ樹脂接着事項を想起できるとはいえない。

3.主張3について
本件特許明細書の【0032】には、耐エポキシ硬化剤性の測定方法について、「ASTM1号ダンベル試験片を曲げ歪み治具に取り付け、試験片中央部にエポキシ硬化剤を浸み込ませたガーゼを乗せる。サンプルにクラック、クレーズが発生するまでの時間を測定することにより耐エポキシ硬化剤性を評価した。測定はエポキシ硬化剤にヘキサヒドロ無水フタル酸系硬化剤を用い、360分まで測定を行った。」と記載されており、確かに、エポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着されていない成形体に、エポキシ硬化剤を浸み込ませたガーゼを乗せて耐エポキシ硬化剤性の測定を行っているが、エポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着するのではなく、エポキシ硬化剤を浸み込ませたガーゼを直接成形体と接触させていることからみて、エポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された成形体と同等以上の過酷な条件下で耐エポキシ硬化剤性を測定していることは明らかであり、上記耐エポキシ硬化剤性の測定方法によっても、「エポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、成形体」としての技術的意義は十分裏付けられているといえる。

4.主張4について
本件特許明細書の【0002】?【0003】には、「近年、電気特性、高耐熱の特性を生かし、無機充填剤を配合した強化樹脂組成物材料が、電機部品のコイルボビンの芯材等に使われている。上記用途において強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、判別のため各種の色に着色されて使用されることが多い。しかしながら、この着色材料を用いてコイルボビン芯材を得る場合、芯材の周りを形成するエポキシ樹脂を硬化させるために用いる硬化剤により、該着色材料からなる芯材にクレーズやクラックが発生し、酷い場合には芯材の破壊に至ることがあった。」と記載されており、着色材料を用いた強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において発生する欠陥を防止することを課題としているといえることから、「白色に着色することが本件発明の目的及び課題ではない」ということはできない。よって、酸化チタンも硫化亜鉛も含まないブランクの組成物の物性と、硫化亜鉛を含む組成物の物性が同じか否かが、本件発明における進歩性の判断を左右するものではない。

5.主張5について
被請求人は平成22年9月15日付け口頭審理陳述要領書の15ページ第17?19行において、「被請求人は、請求人が提出した甲第12号証乃至甲第18号証を尊重し、『酸無水物、イミダゾール化合物及びBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂』そのものの周知性について、争わない。」と主張していることも参酌すると、エポキシ樹脂の硬化剤として、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体は周知であるといえる。
しかしながら、エポキシ樹脂の硬化剤として、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体は周知であるとしても、甲第1?3及び5?11号証はいずれも、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示す点については記載も示唆もないことには変わりがなく、硫化亜鉛を用いることにより、耐エポキシ硬化剤性を示すこと自体が周知であるともいえないことから、エポキシ樹脂の硬化剤として、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体が周知であることをもって、甲第1?3及び5?11号証に記載された発明を組み合わせる動機づけがあるとはいえず、よって、本件発明における進歩性の判断を左右するものではない。

6.請求人の主張についてのまとめ
上記のとおりであるから、請求人の主張はいずれも採用できない。

第11.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張および証拠方法によっては、本件発明1?5の特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エポキシ硬化剤の耐性に優れる強化樹脂組成物およびその成形体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形された成形体であって、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、成形体。
【請求項2】
無機質充填剤が、ガラス繊維、またはガラス繊維およびガラスフレークである請求項1記載の成形体。
【請求項3】
(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が、エチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1又は2記載の成形体。
【請求項4】
エチレン性不飽和化合物が、アクリル酸ステアリルまたはスチレンである請求項3記載の成形体。
【請求項5】
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物から成形されたイグニッションコイルボビン芯材であって、酸無水物、イミダゾール化合物およびBF_(3)錯体の1種以上のエポキシ硬化剤を用いるエポキシ樹脂と接着された、イグニッションコイルボビン芯材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂と接触して用いられるような構造材料用途、例えばイグニッションコイルボビン芯材などにおいて、エポキシ硬化剤の耐性に優れる強化樹脂組成物および成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は耐熱性、電気特性、耐酸、耐アルカリ性等に優れ、しかも低比重、低吸水性である等の優れた特性を有する樹脂である。
近年、電気特性、高耐熱の特性を生かし、無機充填剤を配合した強化樹脂組成物材料が、電機部品のコイルボビンの芯材等に使われている。上記用途において強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、判別のため各種の色に着色されて使用されることが多い。
【0003】
しかしながら、この着色材料を用いてコイルボビン芯材を得る場合、芯材の周りを形成するエポキシ樹脂を硬化させるために用いる硬化剤により、該着色材料からなる芯材にクレーズやクラックが発生し、酷い場合には芯材の破壊に至ることがあった。
特開昭60-233150号公報にはポリエチレンテレフタレート系樹脂にガラス繊維および硫化亜鉛を配合してなる組成物が開示され、酸化チタンで着色された組成物と比べ耐熱性、機械特性に優れると明示されている。特開平6-192563号公報等にはポリフェニレンエーテル樹脂に無機充填剤を配合した成形性、剛性、寸法安定性に優れた組成物が明示され、さらにイグニッションコイルボビン用途の規定がある。しかしながら、これらの公報、その他文献等にて、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物をエポキシ樹脂にて包埋する際のエポキシ硬化剤の耐性について検討された報告は見たらず、エポキシ硬化剤の耐性に優れる強化樹脂組成物、強化ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の発明には至っていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられるエポキシ硬化剤性の耐性に優れ、耐熱性、機械物性のバランスに優れる強化樹脂組成物、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、(B)無機質充填剤5?200重量部、(C)白色着色剤として硫化亜鉛を全組成物中0.5?7.7重量%配合してなる強化樹脂組成物、該組成物から成形された成形体及びイグニッションコイルボビン芯材に関するものである。
【0006】
本発明の(A)成分として用いるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、一般式(a)及び/又は(b)で表される繰り返し単位を有するポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体あるいは共重合体である。
【0007】
【化1】

【0008】
(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立に炭素1?4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素を表す。但し、R1とR2、R5とR6は同時に水素ではない。)
ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0009】
この中で、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルが特に好ましい。ポリフェニレンエーテル共重合体とは、フェニレンエーテル構造を主単量単位とする共重合体である。その例としては、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールとo-クレゾールとの共重合体あるいは2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノール及びo-クレゾールとの共重合体等がある。
【0010】
本発明に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂の単独重合体あるいは共重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62-77570号公報)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6-キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。また、分子量および分子量分布も本発明の要件を満たす限り、特に限定されるものではないが、30℃クロロホルム溶媒下での還元粘度が0.3?0.7dl/gのものが好ましく用いられる。0.3dl/g未満の還元粘度のものでは熱安定性が悪くなる傾向があり、また0.7dl/gを越える還元粘度のものでは成形加工性が損なわれる傾向がある。
【0011】
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63-12698号公報及び特開昭63-301222号公報に記載されている、2-(ジアルキルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユニットや、2-(N-アルキル-N-フェニルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユN-アレキル-N-フェニルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0012】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂には、一般にガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤との密着性を改良するためなどに用いられる下記のα,β不飽和カルボン酸またはその無水物等により変性されたポリフェニレンエーテル樹脂も含むことができる。
α,β不飽和カルボン酸またはその無水物の例として、特公昭49-2343号公報、特公平3-52486号公報等に記載される無水マレイン酸、フタル酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水ハイミツク酸、5-ノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸あるいはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0013】
無水マレイン酸等のα,β不飽和カルボン酸またはその無水物とポリフェニレンエーテル樹脂との反応は、有機過酸化物の存在下または非存在下で両者を混合しポリフェニレンエーテル重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって製造できる。
本発明の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造する際には、あらかじめ無水マレイン酸等のα,β不飽和カルボン酸またはその無水物を結合したポリフェニレンエーテル樹脂を用いても良いし、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造する際に同時に、無水マレイン酸等のα,β不飽和カルボン酸またはその無水物を添加することによりポリフェニレンエーテル重合体と反応させる方法でも良い。
【0014】
さらに、ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、エチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂を含むことが出来る。
本発明において、無機充填剤を多く含ませると成形加工性が悪くなる傾向にあるが、該エチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル樹脂または強化樹脂組成物は、成形流動時および成形加工時の変色抑制に優れるため、それを用いることがより好適である。
【0015】
エチレン性不飽和化合物の例として、アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、オクチル、イソデシル、ラウリル、ラウリルートデシル、トリデシル、セチル-ステアリル、ステアリル、シクロヘキシル、ベンジルエステル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、オクチル、イソデシル、ラウリル、ラウリルートデシル、トリデシル、セチル-ステアリル、ステアリル、シクロヘキシル、ベンジルエステル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、メチルスチレン、スチルベン、ケイ皮アルコール、ケイ皮酸ニトリル、4-ビニルピリジン等が挙げられる。これらに限定されるものではないが、なかでもアクリル酸ステアリルおよび/またはスチレンを用いた場合が最も好ましい。
【0016】
エチレン性不飽和化合物はポリフェニレンエーテル樹脂100重量%に対して、0.1?15重量%、より好ましくは0.5?10重量%の割合で配合される。0.1重量%より少ないと成形流動性、着色性等の効果が小さくなり、15重量%より多すぎると耐熱性の低下が大きくなり好ましくない。
アクリル酸ステアリル等のエチレン性不飽和化合物とポリフェニレンエーテル樹脂との反応は、有機過酸化物の存在下または非存在下で両者を混合しポリフェニレンエーテル重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって製造できる。
【0017】
本発明の強化樹脂組成物を製造する際には、あらかじめエチレン性不飽和化合物を結合したポリフェニレンエーテル樹脂を用いても良いし、強化樹脂組成物を製造する際に同時にアクリル酸ステアリル等のエチレン性不飽和化合物を添加することによりポリフェニレンエーテル重合体と反応させる方法でも良い。
さらに(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂にはポリスチレン系樹脂を混合したものを含むことが出来る。
ポリスチレン系樹脂とは、一般式(c)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Rは水素、低級アルキルまたはハロゲンを示し、Zはビニル、水素、ハロゲン及び低級アルキルよりなる群から選択され、pは0?5の整数である。)で表される芳香族ビニル系単量体単位50重量%以上から構成される単独重合体または共重合可能な他のビニル系単量体またはゴム質重合体との共重合体であり、これら単独重合体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としてはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、またゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムあるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物のコポリマーあるいはエチレン-プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。
【0020】
(A)成分においては、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂を任意の割合で配合することが出来るが、通常その配合比率はポリフェニレンエーテル系樹脂99?1重量部に対してポリスチレン系樹脂1?99重量部であり、好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂85?20重量部に対してポリスチレン系樹脂15?80重量部である。
【0021】
本発明の(B)成分に用いる無機質充填剤の種類は、従来熱可塑性樹脂の補強剤として慣用されているもの、例えば、無機塩、ガラス、カーボン、金属、セラミックスなどの中から任意のものを、要求特性に応じて適宜選択して用いることが出来る。また、その形態は粉末状、粒状、繊維状、ウィスカー状などのいずれであってもよい。例えば、低寸法異方性が要求される場合にはガラスビーズやガラスフレークを、高剛性、高耐衝撃性が要求される場合にはガラス繊維やウィスカー類を導電性付与の目的には金属繊維を、高比重が要求される場合には酸化鉄を選択して用いることが好ましい。
【0022】
前記無機質充填剤は1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、本発明の目的を損なわない範囲で、所望に応じシラン系カップリング剤による表面処理や、集束剤による集束処理が施されたものも用いることができる。
この無機質充填剤は、前記した基本樹脂成分の合計量100重量部に対し、5?200重量部の割合で配合することが必須である。この配合量が5重量部未満では剛性及び寸法精度の改良効果が不十分であるし、200重量部を超えると該充填剤間の接合のための樹脂量が不足し、著しく機械的強度が低下する。
【0023】
本発明の(C)成分に用いる硫化亜鉛は、本発明の強化樹脂組成物を有彩色に着色するために、従来一般的に用いられている酸化チタンの代わりに用い、目的の着色に必要な量使用することが出来る。通常は0.5?5重量%、好ましくは0.5?3重量%である。硫化亜鉛は、一般的には、0.2?0.5μmの平均粒子径であり、湿潤性および分散特性を向上させるために有機界面活性剤でコーティングされたものが用いられる。さらに製法、形状に特に制限はなく、従来熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の着色剤、または安定剤として慣用されているものを用いることが出来る。また、その成分中に硫酸バリウム等の他の金属硫化物、酸化亜鉛等の他の金属酸化物を不純物として含んでいても構わない。
【0024】
本発明の強化樹脂組成物および成形体が耐性を示すエポキシ硬化剤としては、電気部品、電気絶縁材料に一般的に用いられる酸無水物、イミダゾール化合物、BF_(3)錯体等のエポキシ硬化剤を挙げることができる。酸無水物系としては無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等であり、イミダゾール化合物系としてはイミダゾール、2-メチルイミダゾール等であり、BF_(3)錯体としては3フッ化ホウ素エチルアミン錯体であり、特に酸無水物系のエポキシ硬化剤に効果を示す。
【0025】
本発明の硫化亜鉛を含む組成物がエポキシ硬化剤に耐性を示す理由は現時点では不明であるが、何らかの弱い化学結合が生じている可能性もある。
また、適応されるエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサブロロアセトンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等が挙げられ、1種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】
本発明の組成物には、他の添加剤、例えば、耐衝撃性付与剤、可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、離型剤を添加することができる。
耐衝撃性付与剤としては、ブロック共重合体、水添ブロック共重合体を単独でまたは組み合わせて使用することが出来る。ブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックXおよび共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックYとからなるブロック共重合体であり、これに水素添加反応して得られるものが水添ブロック共重合体である。各部ブロックの結合形式は、例えばX-Y、X-Y-X、X-Y-X-Y、(X-Y-)_(4)-Si、X-Y-X-Y-Xなどである。
【0027】
安定剤としては、亜リン酸エステル類、ヒンダードフェノール類、アルカノールアミン類、酸アミド類、ジチオカルバミン酸金属塩類、無機硫化物、金属酸化物類の中から単独でまたは組み合わせて使用することができる。
難燃剤としては、芳香族リン酸エステル、赤燐、芳香族ハロゲン化合物、三酸化アンチモン等が特に有効である。
【0028】
本発明を構成する各成分を混合する方法は通常公知の方法が用いられ、例えば、押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を使用することが出来るが、特にサイドフィーダーを備えた押出機を用い、無機充填剤をサイドフィーダーを介して混合する方法が好ましい。
本発明の成形体を作製する方法は、通常公知である例えば溶融射出成形、加熱圧縮成形等の手法をとることが出来る。
【0029】
本発明の成形は耐熱性、耐電気特性を要求され、接着剤としてエポキシ樹脂が使用されるフライバックトランスなどのコイルボビン、パソコン用電源に用いられるバックアップ電源ボックスの一部の部品として使用される。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
成分(A):ポリフェニレンエーテル系樹脂
A-1:2,6-キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.54のポリフェニレンエーテル。
A-2:2,6-キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.42のポリフェニレンエーテル。
A-3:2,6-キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.54のポリフェニレンエーテル100重量部に対して、アクリル酸ステアリル2重量部を320℃に設定したベントポート付き二軸押出機(PCM-30;池貝鉄工(株))を用いて溶融混練しアクリル酸ステアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を得たもの。
A-4:2,6-キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.54のポリフェニレンエーテル100重量部に対して、無水マレイン酸1.0重量部、パーブチルD0.5重量部を均一に混合した後、二軸押出機(PCM-30;池貝鉄工(株))を用い、窒素雰囲気下で300℃にて溶融混練しマレイン酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂を得た。該樹脂を赤外分光光度計により分析した結果、0.4重量%の無水マレイン酸が付加していた。
A-5:ポリスチレン(旭化成工業(株)製、商品名、旭化成ポリスチレン685)
A-6:ゴム変性ポリスチレン(旭化成工業(株)製、商品名、旭化成ポリスチレン494)
成分(B):無機充填剤
B-1:アミノシラン処理された直径13μm、3mmチョップドストランドのガラス繊維
B-2:ガラスフレーク(日本板硝子(株)製、商品名、CEF150A)
成分(C):硫化亜鉛
C-1:硫化亜鉛(SACHTLEBEN CHEMIE GMBH製;ドイツ国、商品名、Sachtolith HD)
その他の成分
HTR:ポリスチレン(1)-水素添加されたポリブタジエン-ポリスチレン(2)の構造を有し、結合スチレン量55%、数平均分子量57,000、分子量分布1.06、ポリスチレン(1)の数平均分子量16,000、ポリスチレン(2)の数平均分子量15,350、ポリブタジエン部の水素添加率が99.9%の水添ブロック共重合体。
リン系難燃剤:ビスフェノールA-ポリクレジルホスフェート:化学式(d)
(n=1?3の混合物)
【0031】
【化3】

【0032】
酸化チタン:TiO_(2)(Tioxide(株)商品名、R-TC30))
本実施例中の物性値または特性値は下記の方法により測定した。
荷重たわみ温度(DTULと略す。):ASTM D648に基づき、荷重18.6Kg/cm^(2)にて測定した。
耐衝撃性:4分の1インチ厚試験片を用いてASTM D256に従ってノッチ付きIZOD衝撃強さを測定した。
耐エポキシ硬化剤性:ASTM1号ダンベル試験片を曲げ歪み治具に取り付け、試験片中央部にエポキシ硬化剤を浸み込ませたガーゼを乗せる。サンプルにクラック、クレーズが発生するまでの時間を測定することにより耐エポキシ硬化剤性を評価した。測定はエポキシ硬化剤にヘキサヒドロ無水フタル酸系硬化剤を用い、360分まで測定を行った。クラック、クレーズが発生するまでの時間が長いほど、エポキシ硬化剤に対する耐性に優れる。
【0033】
【実施例1】
(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂(A-1)及び(A-4)、それぞれ35重量部、3重量部、ポリスチレン系樹脂(A-5)及び(A-6)各31部、(B)成分の無機充填剤(B-1)20重量部、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)1.5重量部をサイドフィーダー付き二軸押出機(PCM-87池貝鉄工(株))を用い、サイドフィーダー部より無機充填剤を投入、上流のメインフィーダーより残り全ての原料を投入し300℃の温度にて溶融混練して強化樹脂組成物をペレットとして得た。このペレットを用いて290?310℃に設定したインラインスクリュー型射出成形機に供給し、金型温度90℃または120℃の条件で試験用テストピースを射出成形した。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0034】
【実施例2】
(A)成分、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A-1)及び(A-4)、それぞれ60重量部、5重量部、ポリスチレン系樹脂(A-5)及び(A-6)各17.5部、(B)成分の無機充填剤(B-1)20重量部、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)1.5重量部を実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0035】
【実施例3】
実施例2の(A-1)成分を(A-2)へ、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)を5重量部へ代えた以外は、実施例2と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0036】
【実施例4】
実施例2の(A-1)成分を(A-3)へ、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)を10重量部へ代えた以外は、実施例2と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。結果を表1に示す。
【0037】
【実施例5】
実施例2の(B-1)成分を、30重量部へ代えた以外は、実施例2と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0038】
【実施例6】
(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂(A-1)及び(A-4)、それぞれ60重量部、5重量部、ポリスチレン系樹脂(A-5)及び(A-6)各17.5部、(B)成分の無機充填剤(B-1)及び(B-2)を、それぞれ20重量部、10重量部、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)1.5重量部を実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0039】
【実施例7】
(A)成分ポリフェニレンエーテル系樹脂(A-1)及び(A-4)、それぞれ60重量部、5重量部、ポリスチレン系樹脂(A-5)及び(A-6)各15部、その他の成分としてHTRを5重量部、(B)成分の無機充填剤(B-1)20重量部、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)1.5重量部を実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0040】
【実施例8】
(A)成分、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A-1)及び(A-4)、それぞれ55重量部、5重量部、ポリスチレン系樹脂(A-5)及び(A-6)各10部、その他の成分として、リン系難燃剤を15重量部、(B)成分の無機充填剤(B-1)、20重量部、(C)成分の硫化亜鉛(C-1)、1.5重量部を実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0041】
【比較例1】
実施例1中の(C)成分、硫化亜鉛(C-1)を、酸化チタンへ代える他は実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0042】
【比較例2】
実施例2中の(C)成分、硫化亜鉛(C-1)を、酸化チタンへ代える他は実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0043】
【比較例3】
実施例3中の(C)成分、硫化亜鉛(C-1)を、酸化チタンへ代える他は実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0044】
【比較例4】
実施例4中の(C)成分、硫化亜鉛(C-1)を、酸化チタンへ代える他は実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0045】
【比較例5】
実施例5中の(C)成分、硫化亜鉛(C-1)を、酸化チタンへ代える他は実施例1と同様の操作により強化樹脂組成物および試験用テストピースを得た。該強化樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【発明の効果】
本発明の組成物、及び成形体は、従来の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物では達し得なかった高い耐エポキシ硬化剤性、耐熱性、機械物性のバランスに優れ、イグニッションコイルボビン芯材用途等、産業上有用である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-11-09 
結審通知日 2010-11-15 
審決日 2010-12-02 
出願番号 特願平9-162928
審決分類 P 1 113・ 121- YA (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 松浦 新司
▲吉▼澤 英一
登録日 2005-01-28 
登録番号 特許第3640503号(P3640503)
発明の名称 エポキシ硬化剤の耐性に優れる強化樹脂組成物およびその成形体  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 村上 博司  
代理人 内藤 和彦  
代理人 加藤 由加里  
代理人 岡野 聡二郎  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 小平 哲司  
代理人 岡野 聡二郎  
代理人 松井 光夫  

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