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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07F
管理番号 1258528
審判番号 不服2011-9816  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-11 
確定日 2012-06-14 
事件の表示 特願2006-253647号「自動販売機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年4月3日出願公開、特開2008-77254号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月20日の出願であって、平成23年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成23年5月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年5月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により請求項1は、次のように補正された。
「商用電源からの給電の他に、無停電電源装置を備え、常時は商用電源側からの給電により商品の搬出を行い、停電時は無停電電源装置からの給電により商品の搬出を行う自動販売機において、自動販売機の外面から操作可能な位置に設けられ、かつ、前面は透明板にて覆われており、透明板内部に商用電源側から無停電電源装置への切り替え、商品を無料提供可能とする操作スイッチを設け、停電時に前記透明板を壊して前記操作スイッチを操作することで、商用電源側から無停電電源装置への(当審注:「無停電電源装置へ」の誤記と認める。)切り替えるとともに、商品の無料搬出が可能となり、かつ、前記商用電源の通電時に前記操作スイッチが操作されても無効とすることを特徴とする自動販売機。」(下線は補正箇所。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「操作スイッチ」の操作について、「停電時に前記透明板を壊」すことを限定すると共に、その操作により「商品の無料搬出が可能とな」ることを限定したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開2006-195950号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「本発明は、大規模地震などの災害で商用電源が停電した際に、商品を提供できる自動販売機に関し、特に、災害規模に応じて商品の搬出を行うことができる自動販売機に関する。」(段落【0001】、下線は当審で付与。以下、同様。)
イ 「上記目的を達成するために、本発明は、商用電源からの給電の他に、無停電電源装置を備え、常時は、商用電源側からの給電により商品の販売を行うとともに無停電電源装置への充電を行うようにした自動販売機において、停電による商用電源停止時に、商用電源側から無停電電源装置側へ切り換えるための手動の操作手段と、該操作手段の操作により無停電電源装置側に切り換えられたことを検知して、無料販売モードに切り換える制御手段とを備えたことを特徴とする。
また、上記構成に加え、以下の構成を選択的に有するものである。
(1)モード切換手段を備え、通常の販売モードと通常の無料販売モードと災害時の無料販売モードと災害時の有料販売モードとを切り換え可能にしたことを特徴とする。
(2)無停電電源装置による給電の際には、照明装置、冷却装置、加熱装置への電力供給を停止し、商品選択ボタンと商品搬出装置に電力を供給することを特徴とする。
(3)災害時の無料販売モードの販売モードとして単品販売モードあるいは連続販売モードとに切り換え可能であり、このモードの切換は、商品選択ボタンの操作によることを特徴とする。
(4)手動の操作手段は、自動販売機の外側から操作されるキースイッチであることを特徴とする。
(5)商用電源と無停電電源装置とを切り換える際に、商用電源と無停電電源装置間との短絡を防止する防止回路を設けたことを特徴とする。
(6)商用電源と無停電電源装置とのへ切換えを、手動による切換と自動による切換とを設定できることを特徴とする。
(7)無停電電源装置側に商用電源が停電状態であるか否かを検出する検出手段を設け、前記操作手段の操作にて無停電電源装置側に切り換えられたとしても、該検出手段の検出により商用電源が停電状態ではないと判断した場合には無停電電源装置の起動を行わないようしたことを特徴とする。」(段落【0005】)
ウ 「(実施例3)
次に、手動の操作手段を自動販売機の外側から操作可能キースイッチにて構成した例について図8ないし図10を用いて説明する。
まず、図8は、実施例3における自動販売機の概略正面図の一例を示すものであり、図5の自動販売機と異なる点は、新たに、外扉20に電源切換スイッチ30を設けたものである。」(段落【0024】、【0025】)
エ 「(実施例4)
図12のブロック図は、無停電電源装置18側に商用電源入力部17の状態を検出する検出部18aを備えた例を示す。
すなわち、無停電電源装置18内部に電源切換部19の機能を内蔵し、電源切換スイッチ30のキースイッチ30bがオンしたことを検出し、その時点での商用電源入力部17の停電か否かの電源状態を検出部18aにて検出し、停電状態であれば、無停電電源装置18側からの給電に切換え、停電でなければ、無停電電源装置18側への切り換えは行わない。」(段落【0033】)
そして、上記記載イには、停電による商用電源停止時に、商用電源側から無停電電源装置側へ切り換えるための手動の操作手段を有し、該操作手段の操作により無停電電源装置側に切り換えられると、無停電電源装置からの給電による無料販売モードに切り換わることが記載されている。
また、図8には、自動販売機の外扉20の前面に電源切換スイッチ30を設けることが図示されており、自動販売機の外面から操作可能な位置に設けられている。
さらに、記載イ及びエには、商用電源が停電状態ではない、すなわち、商用電源の通電時には電源切換スイッチ30が操作されても、無停電電源装置の起動させず、これを検知して切り換わる無料販売モードにもならない、すなわち、電源切換スイッチ30の操作を無効とすることが記載されている。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「商用電源からの給電の他に、無停電電源装置を備え、常時は商用電源側からの給電により商品の販売を行い、停電時は無停電電源装置からの給電により商品搬出装置に電力を供給する自動販売機において、自動販売機の外面から操作可能な位置に設けられ、商用電源側から無停電電源装置への切り替え、無料販売モードとする電源切換スイッチ30を設け、停電時に前記電源切換スイッチ30を操作することで、商用電源側から無停電電源装置へ切り替えるとともに、無料販売モードとなり、かつ、前記商用電源の通電時に前記電源切換スイッチ30が操作されても無効とする自動販売機。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特公昭54-36744号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「本発明はスイツチに係り、特に非常時にエスカレータあるいは動く歩道などのマンコベアを急停止させるためのスイツチに関するものである。」(1ページ1欄26?28行)
イ 「ここで、マンコンベアは第1図に示したように回動するステツプ1で、乗客を運ぶもので、このステツプ2の両側には乗客がつかまるハンドレール2のほか、ハンドレールフレーム3、ガラスパネル4、支柱5、外装パネル6などで構成される欄干部分が直立して設けられている。この支柱5には非常時にマンコンベアの運行を自動停止させる停止スイツチ7を埋めこんでおくのが最も一般的であり、少ない例では外装板6などの欄干下方に設けるものも僅かに実在している。支柱5に設けられた従来の停止スイツチについて第2図以下第4図により詳述すれば、支柱5の補強材5aの内方には押しボタン7aを有する停止スイツチ7が内蔵されており、その先端からgだけ離れた所に乱用防止カバー8が設けられている。さらに、9は支柱5に固定された状態で支柱5の外方に突出するホルダーで、この先端の雄ねじ部にねじ込まれるキヤツプ10とともに乱用防止カバー8を固定している。この乱用防止カバー8は詳しくは透明なアクリル板などで構成され、第3図および第4図に示したようにVカツト部8aを有して外力を受けた場合に簡単に破損するようになつており、人身事故が発生した時などの非常時には第2図に示したように指先Fで矢印方向に押すことにより前記乱用防止カバー8を突き破つて押しボタン7aを押し、マンコンベアの運行を電気的に急停止させるものである。」(1ページ2欄6?32行)

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されている。
「前面は透明な乱用防止カバー8にて覆われており、乱用防止カバー8内部に設けられた押しボタン7aであって、非常時には前記乱用防止カバー8を突き破って操作する押しボタン7a。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「商用電源側からの給電により商品の販売を行い」は、本願補正発明の「商用電源側からの給電により商品の搬出を行い」に相当し、以下同様に、
「無停電電源装置からの給電により商品搬出装置に電力を供給する」は「無停電電源装置からの給電により商品の搬出を行う」に、
「無料販売モード」は「商品を無料提供可能」及び「商品の無料搬出が可能」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「電源切換スイッチ30」は本願補正発明の「操作スイッチ」と商用電源側から無停電電源装置への切り替え、商品を無料提供可能とするスイッチとして共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「商用電源からの給電の他に、無停電電源装置を備え、常時は商用電源側からの給電により商品の搬出を行い、停電時は無停電電源装置からの給電により商品の搬出を行う自動販売機において、自動販売機の外面から操作可能な位置に設けられ、かつ、商用電源側から無停電電源装置への切り替え、商品を無料提供可能とするスイッチを設け、停電時に前記スイッチを操作することで、商用電源側から無停電電源装置へ切り替えるとともに、商品の無料搬出が可能となり、かつ、前記商用電源の通電時に前記スイッチが操作されても無効とする自動販売機。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
商用電源側から無停電電源装置への切り替え、商品を無料提供可能とするスイッチについて、本願補正発明では「前面は透明板にて覆われており、透明板内部に」設けられた「操作スイッチ」であって、「透明板を壊して」操作する「操作スイッチ」であるのに対して、引用発明では「電源切換スイッチ30」であって、前面を透明板に覆われるものではない点。

3-3.相違点の判断
本願補正発明と引用例2に記載された事項とを対比すると、引用例2に記載された事項の「透明な乱用防止カバー8」は本願補正発明の「透明板」に相当し、同様に、「乱用防止カバー8内部に設けられた」「押しボタン7a」は「透明板内部に」設けられた「操作スイッチ」に、「乱用防止カバー8を突き破って操作する」ことは「透明板を壊して」操作することに相当する。そうすると、引用例2に記載された事項は本願補正発明の用語を用いて表すと「前面は透明板で覆われており、透明板内部に設けられた操作スイッチであって、非常時に透明板を壊して操作する操作スイッチ。」と言い換えることができる。なお、このような非常時に操作するスイッチとして、スイッチを透明な板で覆い、操作時に透明な板を破壊して操作するものは、実願昭55-107885号(実開昭57-30923号)のマイクロフィルム(2ページ、第1,2図)、特開平8-87927号公報(段落【0005】、図6,7)にも記載されているように従来周知でもある。
そして、引用例2に記載された操作スイッチは非常時に操作するスイッチであって、引用発明の「電源切換スイッチ30」も、また、災害などの非常時に操作されるスイッチである。してみると、非常時に操作するスイッチに関する引用例2に記載された事項を同じく非常時に操作する引用発明のスイッチに適用することに、困難性があるものとはいえず、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載された事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

なお、請求人は、回答書において、「引用文献1は、キースイッチまたは小扉内のトグルスイッチの操作によるもので、所詮、管理者しか操作できない構成であり、この引用文献1の自動販売機に上記各スイッチの例を適用したとしましても、管理者不要の災害用自動販売機とはならず、スイッチの形式が変わるだけに過ぎず、誰でも操作可能な本願発明の操作スイッチとは異なるものであります。
このように、本願発明は、自動販売機の外面で見える位置に設けられている透明板に覆われた操作スイッチを透明板を壊して操作することで、管理者で無くとも、災害時に簡単な操作で商用電源側から無停電電源装置へ切り替えるとともに商品を無料提供でき、しかも、商用電源の通電時に前記操作スイッチを操作しても、操作を無効とすることで、商用電源の通電時(災害状態ではない)に操作スイッチが操作されて無料で商品を搬出させるという悪戯を防止する点を特徴とするものであり、このような構成は、引用文献ならびに周知技術に開示されておりませんので、本願発明は引用文献ならびに周知技術から容易に発明できたものではありません。」と主張しているが、自動販売機において、非常時に管理者でなくとも商品を提供できるようにすることは、例えば、特開2000-123227号公報(段落【0022】、【0023】)、特開2000-132737号公報(段落【0035】)に記載されているように従来より行われていたことであって、請求人の主張に理由はない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年1月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「商用電源からの給電の他に、無停電電源装置を備え、常時は商用電源側からの給電により商品の搬出を行い、停電時は無停電電源装置からの給電により商品の搬出を行う自動販売機において、自動販売機の外面から操作可能な位置に設けられ、かつ、前面は透明板にて覆われており、透明板内部に商用電源側から無停電電源装置への切り替え、商品を無料提供可能とする操作スイッチを設け、前記商用電源通電時に前記操作スイッチを操作しても商用電源側から無停電電源装置への切り替えを無効とすることを特徴とする自動販売機。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、「操作スイッチ」の操作についての限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-12 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-02 
出願番号 特願2006-253647(P2006-253647)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07F)
P 1 8・ 575- Z (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平田 慎二  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 森川 元嗣
亀田 貴志
発明の名称 自動販売機  
代理人 松本 洋一  

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