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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1258534
審判番号 不服2011-18144  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-22 
確定日 2012-06-14 
事件の表示 特願2004-352781「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-158580〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年12月6日の出願であって、平成22年8月13日付けで通知された拒絶の理由に対して、同年10月13日付けで手続補正書が提出されたが、平成23年6月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月22日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において、審尋に対する回答書が平成24年3月2日付けで提出されたものである。


第2 平成23年8月22日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正には、特許請求の範囲を次のように補正しようとする事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】
遊技盤面上に設けられた特別始動口への遊技球の入賞を主目的とした通常遊技状態において、前記特別始動口への遊技球の入賞を契機に特別図柄抽選が実行され、図柄群の変動を表現する特別図柄変動パターン演出後の停止図柄配列によって、前記特別図柄抽選の結果を報知する遊技仕様を基礎として、この特別図柄抽選に当選した場合に、入賞することで多くの賞球を獲得できる大入賞口が開放する特別遊技状態に所定期間移行すると共に、前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技として、前記特別遊技状態終了後の所定回数の通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる主特典を付与する遊技機であって、
前記特別遊技状態終了後、かつ前記主特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に、前記主特典よりも賞球の獲得が少なく、かつ特典のない通常遊技よりも賞球の獲得が多い副特典を付与することを特徴とする遊技機。
【請求項2】(略)
【請求項3】(略)
【請求項4】
前記遊技盤面上に入賞口幅を拡大又は縮小する少なくとも2位置を移動する可動部材を設けた入賞口を備え、前記通常遊技による賞球獲得の多少が、前記可動部材による前記入賞口の入賞開口幅の拡大継続時間の違いであり、この入賞口の入賞開口幅の拡大継続時間によって遊技球の発射数に対する払出数の理論上の割合であるベース(%)が調整されるようになっており、当該調整が、
前記副特典が付与されたときのベースが、前記主特典が付与されたときよりも低く、前記主特典が付与されないときのベースよりも高い値となるように調整されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。」

(補正後)
「【請求項1】
遊技盤面上に設けられた特別始動口への遊技球の入賞を主目的とした通常遊技状態において、前記特別始動口への遊技球の入賞を契機に特別図柄抽選が実行され、図柄群の変動を表現する特別図柄変動パターン演出後の停止図柄配列によって、前記特別図柄抽選の結果を報知する遊技仕様を基礎として、この特別図柄抽選に当選した場合に、入賞することで多くの賞球を獲得できる大入賞口が開放する特別遊技状態に所定期間移行すると共に、前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技として、前記特別遊技状態終了後の前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる主特典と副特典を含む特典を付与する遊技機であって、
前記特別遊技状態終了後、前記主特典よりも賞球の獲得が少ない前記副特典を付与し、該副特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記副特典が終了した後に前記主特典を付与し、該主特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行うことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記遊技盤面上に入賞口幅を拡大又は縮小する少なくとも2位置を移動する可動部材を設けた入賞口を備え、前記通常遊技による賞球獲得の多少が、前記可動部材による前記入賞口の入賞開口幅の拡大継続時間の違いであり、この入賞口の入賞開口幅の拡大継続時間によって遊技球の発射数に対する払出数の理論上の割合であるベース(%)が調整されるようになっており、当該調整が、
前記副特典が付与されたときのベースが、前記主特典が付与されたときよりも低く、前記主特典が付与されないときのベースよりも高い値となるように調整されることを特徴とする請求項1記載の遊技機。」

この補正事項は、請求項1について、補正前の主特典と副特典に関して、「前記特別遊技状態終了後の前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる主特典と副特典を含む特典を付与する遊技機であって、前記特別遊技状態終了後、前記主特典よりも賞球の獲得が少ない前記副特典を付与し」とすることにより、不明りょうな記載を釈明したものといえ、また、補正により付加された「該副特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記副特典が終了した後に前記主特典を付与し、該主特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行う」事項は、主特典と副特典の内容を限定したものである。
さらに、補正前の請求項2,3は、削除され、また、この削除に伴い、補正前の請求項4(補正前の請求項1,2を引用していた)は、補正後の請求項1のみを引用する形式に変更されたものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同項第2号の特許請求の範囲の減縮、同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。


2.引用刊行物の記載事項
本願の出願前に頒布された特開2002-52198号公報(原査定の引用文献2。以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)刊行物1
(1a)「【0010】
【課題を解決するための手段及び効果】前記課題を解決するため請求項1に記載の遊技機は、図柄の変動停止の起因となる始動手段と、遊技者に有利なゲームを実行するか否かを決定する条件成立判定手段と、前記始動手段の作動に起因して前記図柄を変動表示させ、前記条件成立判定手段により条件が成立した場合には遊技者に有利なゲームが実行される旨の有利報知図柄、条件が成立しない場合には有利なゲームが実行されない旨の不利報知図柄を表示する報知図柄表示手段と、前記有利報知図柄で停止表示された場合、前記遊技者に有利なゲームが実行された後であって、所定の場合、前記図柄が有利報知図柄で表示される確率を向上させる確率向上期間とし、その後、該確率を低下させる確率変動手段と、前記有利報知図柄で停止表示された場合、前記遊技者に有利なゲームを実行した後、前記図柄の変動時間を短縮するとともに前記始動手段を遊技者に有利な作動状態とする利益状態付与手段と、を備えた遊技機において、前記確率変動手段による前記確率向上期間と前記利益状態付与手段による利益付与期間を異ならせることを特徴とする遊技機である。
【0011】前記構成を有する請求項1に記載の弾球遊技機は、前記確率変動手段による前記確率向上期間と前記利益状態付与手段による利益付与期間を異ならせることで、従来にはない構成の遊技を実現でき、前記課題が好適に解決できる。また、確率向上期間終了後でも、時短期間という特典を設けることにより、遊技者を飽きさせず、一方、時短期間の終了後でも、確率向上期間という特典を設けることにより、遊技者を飽きさせないという効果がある。
【0012】ここで、「前記確率変動手段による前記確率向上期間と前記利益状態付与手段による利益付与期間を異ならせること」の構成を具体的に説明すると、(1)確率向上期間と利益付与期間の始期を異ならせる場合、(2)確率向上期間と利益付与期間の終期を異ならせる場合、(3)確率向上期間と利益付与期間の始期及び終期を異ならせる場合、(4)確率向上期間と利益付与期間が部分的に重複する場合、(5)確率向上期間と利益付与期間が重複しない場合であって、期間が連続的なとき、非連続的なとき等、様々な態様が挙げられる」

(1b)「【0073】(第1具体例の確変及び時短処理)次に主制御基板30で実行される第1具体例の確変及び時短処理を図9ないし図12を参照して説明する。まず、確率変動制御のサブルーチンについて図9を参照して説明する。特別図柄変動の表示結果が大当りか否かを判定する(S110)。S110で大当りとなる場合は、次にその大当り図柄が確変図柄であるか否かを判定する(S120)。S120で確変図柄であると判定した場合は、確変フラグJをセット(S130)しリターンに抜ける。一方、上記S110で特別図柄変動の表示結果が大当りでないと判定した場合、S120で確変図柄以外の通常図柄であると判定した場合は、そのままリターンに抜ける。
【0074】次に主制御基板30で実行される確率向上期間制御1のサブルーチンについて図10を参照して説明する。まず、大当り動作が終了したか否かを判定する(S210)。S210で大当り動作が終了したと判定された場合、確変フラグJがセットされているか否かを判定する(S220)。確変フラグJがセットされている場合、大当り抽選を高確率に設定する(S230)。これにより、大当り抽選の確率を高確率に設定した状態で、特別図柄の各変動動作に伴って大当り抽選が行われる。」

(1c)「【0079】(第2具体例の確変及び時短処理)次に主制御基板30で実行される第2具体例の確変及び時短処理を図13及び図14を参照して説明する。図9の確率変動制御のサブルーチン及び図10の確率向上期間制御1のサブルーチンについては同様の処理となるから、それらを援用するので、主制御基板30で実行される時短期間制御2のサブルーチンについて図13を参照して説明する。まず、大当り動作が終了したか否かを判定する(S410)。S410で大当り動作が終了したと判定された場合、確変フラグJがセット状態からリセット状態となったか否かを判定する(S420)。確変フラグJがリセット状態とされた場合、時短期間フラグKをセットし(S430)、時短動作を行う(S440)。この時短動作は、特別図柄の変動時間を短縮して特別図柄の確定を早めるとともに、普通図柄の変動時間を短縮して普通電動役物36への入賞の機会を増大させるものである。次に特別図柄が変動したか否か、即ち、保留記憶の有無の判定、又は第1種始動口スイッチ36aがオンしたか否かを判定する(S450)。保留記憶が有れば、又は無くとも第1種始動口スイッチ36aがオンになれば特別図柄を変動させる。S450で特別図柄が変動したことを検出した場合、時短変動カウンタHを+1インクリメントし、メモリに記憶する(S460)とともに、背景画面52に「時短による変動回数はH回です」「時短は後、○○回です」と表示し遊技者に時短中における特別図柄の変動回数(始動回数)を報知する(S470)。続いて時短変動カウンタHが50回に達したか否かを判定する(S480)。時短変動カウンタHが50回に達しない場合は、リターンに抜ける。時短変動カウンタHが50回に達した場合は、確変動作を終了するため、時短期間フラグKをリセットして時短動作を停止し(S490)、時短変動カウンタHを0にセットし(S495)、リターンに抜ける。
【0080】上記した確変制御、確率向上期間制御及び時短期間制御2の一例を図14のタイムチャートを参照して説明する。図14において、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って確率向上期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了する。また一方、該期間が終了したことに伴い、時短期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続して時短動作が実行され、50回になると該期間が終了する。
【0081】以上のように、本具体例2では、確変図柄での大当り動作が終了すると、まず確率向上期間での確変制御が付与され、該確率向上期間終了後、所定の時短期間での時短動作が付与される。このため、従来では、同時期に確変と時短とが終了していたが、本実施形態では、時短期間を確率向上期間の後にずらすことで、確率向上期間が終了した後から時短期間が設定されているので、時短の楽しみを後にとっておくことができるし、確率向上期間に引きつづいて時短を楽しむことができ、射幸性の維持向上を図ることができる。一方、ホールにとっても時短期間が規制されるため利益を確保できる効果がある。」

図14は次のとおり。

(1d)「【0086】(第4具体例の確変及び時短処理)次に主制御基板30で実行される第4具体例の確変及び時短処理を参照して説明する。この処理は第1具体例の確率向上期間と時短期間とを入れ替えたものであり、フローチャートについては図9ないし図12から当業者がフローチャートを作成できるので、説明は第1具体例を援用する。
【0087】上記した確変制御、確率向上期間制御、及び時短期間制御の一例を図18のタイムチャートを参照して説明する。図18において、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って時短期間が発生され、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了する。また一方、時短期間の開始に伴い、確率向上期間も発生し、特別図柄の変動が100回になるまで該期間が継続して確率向上動作が実行され、100回になると該期間が終了する。
【0088】以上のように、本具体例4では、確変図柄での大当り動作が終了すると、時短期間での確変制御の付与と、前記時短期間より終期が長い所定期間での確変動作の付与とを行っている。このため、従来では、同時期に確変と時短とが終了していたが、本実施形態では、時短期間が終了した後でも確率向上期間が設定されているので、射幸性の維持向上を図ることができる。」

図18は次のとおり。


(1e)「【0090】上記した確変制御、確率向上期間制御、及び時短期間制御の一例を図19のタイムチャートを参照して説明する。図19において、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って時短期間が発生され、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了する。また一方、該期間が終了したことに伴い、確率向上期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続して確率向上動作が実行され、50回になると該期間が終了する。
【0091】以上のように、本具体例5では、確変図柄での大当り動作が終了すると、まず時短期間での時短動作が付与され、該時短期間終了後、所定の確率向上期間での確率向上動作が付与される。このため、従来では、同時期に確変と時短とが終了していたが、本実施形態では、確率向上期間を時短期間の後にずらすことで、時短期間が終了した後から確率向上期間が設定されているので、確率変動の楽しみを後にとっておくことができるし、時短期間に引きつづいて確率変動を楽しむことができ、射幸性の維持向上を図ることができる。一方、ホールにとっても確率向上期間が規制されるため利益を確保できる効果がある。」

図19は次のとおり。


(1f)「【0095】(本実施形態の動作)前述した各処理を実行することにより、パチンコ機10は次のような動作を実行する。即ち、遊技者により操作される発射ハンドル24の回動量に応じて発射モータ33aにより遊技球が遊技盤22上に発射され、発射された遊技球が第1種始動口としての普通電動役物36に入賞すれば第1種始動口スイッチ36aにより検出され、特別図柄表示装置32のLCD32a画面上の特別図柄表示領域50a?50c(図6参照)に特別図柄を所定時間変動表示した後に静止表示するよう働く。主制御基板30から図柄制御基板32bへ図柄に関するコマンド等が送信され、図柄制御基板32bでは前述の通りリーチ発生の判定を行って、LCD32a画面上への特別図柄、背景図柄等の画像を表示するように画像制御が実行される。特別図柄に関しては、まず左図柄が静止表示され、次に右図柄が静止表示され、右図柄と左図柄が一致しない場合は外れが確定し、その後、中図柄が静止表示される。右図柄と左図柄が一致した場合(例えば7?7)はリーチとなり、中図柄が変動した後に静止表示する。この静止表示した中図柄が右及び左図柄と一致しない場合はリーチ外れとなる(例えば727)。一方、この静止表示した特別図柄が予め定められた特定図柄、例えば、前記リーチの後、全ての特別図柄が一致した場合(「777」等の3桁同一図柄)を表示すると大当り状態として、その後、遊技者に有利なゲーム内容を提供する。前述の通り、大当り状態となるか否かは、主制御基板30により遊技球が第1種始動口スイッチ36aにより検出されたとき抽出される当否決定乱数の値が所定値であるか否かにより決定される。また、リーチとなるか否かは、図柄制御基板32bによりリーチ判定乱数の値が判定値であるか否かにより決定される。
【0096】こうして大当り状態となると、大入賞口40が約30秒間又は遊技球が10個入賞したことがカウントスイッチ40bにより検出されるまでいずれか早く経過する時まで開放され、このとき大入賞口40内に入賞した遊技球が特別領域を通過したことがVスイッチ40aにより検出されると一旦大入賞口40が閉鎖された後に再び開放され、この開放動作を最大16回繰り返す。通常、遊技球1個の入賞に対して15個の遊技球が賞球として払い出すよう構成しているので、1回の大当り状態が発生すると、約2400(=15×10×16)個の遊技球を賞球として獲得することができる。この賞球排出動作は、賞球制御基板31が実行する。尚、大入賞口40の特別領域を開閉するVソレノイド40dは、特別領域に遊技球が1個通過すると特別領域を閉鎖するためのものである。その後、大当り動作が終了すると、前述の具体例1ないし3で説明したような確変動作及び時短動作が実行される。」

(1g)「【0097】(本実施形態の効果)以上、詳細に説明した本実施形態によると、確率向上期間と時短期間との期間を異ならせることで、従来にはない構成の遊技を実現でき、確率向上期間と時短期間の関係を改善し、趣向性を向上させることができる。また、確率向上期間終了後でも、時短期間という特典を設けることにより、遊技者を飽きさせず、一方、時短期間の終了後でも、確率向上期間という特典を設けることにより、遊技者を飽きさせないし、確率向上期間又は時短期間が早期に終了してしまう事態を回避でき、一定期間以上の遊技者に有利の期間を遊技者に付与でき、遊技者に安心感を与える効果がある。また、それらの期間を特別図柄の変動回数を基準とすることで、遊技者は期間の終期の目安が付けやすくなる効果がある。さらに確率向上期間或いは時短期間を間欠的な期間とすることで、遊技者が確率向上期間或いは時短期間が終了したと思っても前記期間が復活することで遊技の趣向性を高めることができるという効果がある。一方、ホールにとっても確率向上期間又は時間期間を規制することができるので、利益を確保できる効果がある。
【0098】尚、本発明は、前述した具体例に何等制限されるものではなく、本発明の意図する範囲内で実施変更可能なことは言うまでもないことである。」

これら記載事項、特に図18に示される具体例に関する(1d)、及び(1b)(1f)によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「遊技球が遊技盤22上に発射され、発射された遊技球が第1種始動口としての普通電動役物36に入賞すれば第1種始動口スイッチ36aにより検出され、特別図柄表示装置32のLCD32a画面上の特別図柄表示領域50a?50cに特別図柄を所定時間変動表示した後に静止表示するよう働き、LCD32a画面上への特別図柄、背景図柄等の画像を表示するように画像制御が実行され、
静止表示した特別図柄が予め定められた特定図柄、例えば、前記リーチの後、全ての特別図柄が一致した場合を表示すると大当り状態として、その後、大入賞口40が約30秒間又は遊技球が10個入賞したことがカウントスイッチ40bにより検出されるまでいずれか早く経過する時まで開放され、
大当り動作が終了すると、大当り図柄が確変図柄である場合に、確変動作及び時短動作が実行される、遊技機であって、
当該確変動作及び時短動作は、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って時短期間が発生され、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了し、一方、時短期間の開始に伴い、確率向上期間も発生し、特別図柄の変動が100回になるまで該期間が継続して確率向上動作が実行され、100回になると該期間が終了するものである、
遊技機。」

3.対比・判断
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「第1種始動口としての普通電動役物36」「静止表示した特別図柄」「大当り状態」は、それぞれ、本願補正発明の「特別始動口」「停止図柄」「特別遊技状態」に相当する。

また、刊行物1記載の発明の「特別図柄表示装置32のLCD32a画面上の特別図柄表示領域50a?50cに特別図柄を所定時間変動表示した後に静止表示する」は、本願補正発明の「図柄群の変動を表現する特別図柄変動パターン演出後の停止図柄配列によって、前記特別図柄抽選の結果を報知する」に相当する。

刊行物1記載の発明の「大当り動作が終了すると、大当り図柄が確変図柄である場合に、確変動作及び時短動作が実行される」における「確変動作及び時短動作」の遊技は、本願補正発明の「前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技」に相当するといえる。

さらに、刊行物1記載の発明の「当該確変動作及び時短動作は、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って時短期間が発生され、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了し、一方、時短期間の開始に伴い、確率向上期間も発生し、特別図柄の変動が100回になるまで該期間が継続して確率向上動作が実行され、100回になると該期間が終了するものである」は、
見方を変えると、特別図柄の変動が100回である確率向上期間(高確率状態である確変動作の期間)のうち、前半50回の期間が、時短動作と確変動作が同時になされる期間(以下、「大きな特典」という。)であり、後半50回の期間が、時短動作のみの期間(以下、「小さな特典」という。)であるということができる。ここで、大きな特典も小さな特典も、特別図柄抽選における当選確率は同じである。
そうすると、刊行物1記載の発明の「確変動作及び時短動作」の内容と、
本願補正発明の「前記特別遊技状態終了後、前記主特典よりも賞球の獲得が少ない前記副特典を付与し、該副特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記副特典が終了した後に前記主特典を付与し、該主特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行う」とは、
「前記特別遊技状態終了後、第1の特典を付与し、該第1の特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記第1の特典が終了した後に前記第2の特典を付与し、該第2の特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行う」点で共通するといえる。

また、刊行物1記載の発明の「確変動作及び時短動作」の実行は、その具体的な動作内容を勘案すると、本願補正発明の「前記特別遊技状態終了後の前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる主特典と副特典を含む特典を付与する」ことと、「前記特別遊技状態終了後の前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、第1の特典と第2の特典を含む特典を付与する」点で共通するといえる。

したがって、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「遊技盤面上に設けられた特別始動口への遊技球の入賞を主目的とした通常遊技状態において、前記特別始動口への遊技球の入賞を契機に特別図柄抽選が実行され、図柄群の変動を表現する特別図柄変動パターン演出後の停止図柄配列によって、前記特別図柄抽選の結果を報知する遊技仕様を基礎として、この特別図柄抽選に当選した場合に、入賞することで多くの賞球を獲得できる大入賞口が開放する特別遊技状態に所定期間移行すると共に、前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技として、前記特別遊技状態終了後の前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、第1の特典と第2の特典を含む特典を付与する遊技機であって、
前記特別遊技状態終了後、第1の特典を付与し、該第1の特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記第1の特典が終了した後に前記第2の特典を付与し、該第2の特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行うという動作を含む
遊技機。」

[相違点]
本願補正発明は、
第1の特典、第2の特典がそれぞれ主特典、副特典であって、それらは特別遊技状態終了後の前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる特典であって、
前記特別遊技状態終了後、前記主特典よりも賞球の獲得が少ない前記副特
典を付与し、該副特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記副特典が終了した後に前記主特典を付与し、該主特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行うものであるのに対して、
刊行物1記載の発明は、
第1の特典、第2の特典が、それぞれ、大きな特典(時短動作と確変動作が同時になされる特典)、小さな特典(時短動作のみの特典)であって、
特別遊技状態終了後、大きな特典を付与し、大きな特典の終了後に小さな特典を付与する点。

(相違点について)
そこで、上記相違点について検討する。

まず、本願補正発明の「前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得する」「賞球の獲得が少ない」における賞球とは、その文言からみて、通常遊技の賞球にとどまらず、通常遊技の間に実行される特別図柄抽選に当選したことによる特別遊技状態の賞球を含むものと解される。なお、本願明細書【0019】には、「特別遊技状態以外における、遊技球の総払出数/投入(発射)数の割合」であるベースという概念が示されているが、本願補正発明の「賞球」は、当該ベースの概念に限定されない上記のとおりと認められる。
そして、このような賞球の獲得でみれば、刊行物1記載の発明における小さな特典(時短動作のみの特典)、大きな特典(時短動作と確変動作が同時になされる特典)は、共に、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる特典である。また、小さな特典は大きな特典よりも賞球の獲得が少ないことは、自明である。
したがって、刊行物1記載の発明の小さな特典、大きな特典は、それぞれ本願補正発明の副特典、主特典に相当するといえる。

次に、刊行物1記載の発明は、特別遊技状態終了後の付与する特典の順序が、賞球の獲得が多い主特典を付与し、主特典が終了した後に副特典を付与する点で、本願補正発明における特典付与の順序と逆であることについて検討する。
刊行物1の【0011】【0012】(上記(1a))には、「前記確率変動手段による前記確率向上期間と前記利益状態付与手段による利益付与期間を異ならせることで、従来にはない構成の遊技を実現でき、前記課題が好適に解決できる。」と記載され、具体的には、「(1)確率向上期間と利益付与期間の始期を異ならせる場合、(2)確率向上期間と利益付与期間の終期を異ならせる場合、(3)確率向上期間と利益付与期間の始期及び終期を異ならせる場合、(4)確率向上期間と利益付与期間が部分的に重複する場合、(5)確率向上期間と利益付与期間が重複しない場合であって、期間が連続的なとき、非連続的なとき等、様々な態様が挙げられる」と記載されている。
そうすると、これら記載に接した当業者であれば、確率向上期間と利益付与期間を異ならせるという観点から、上記(1)?(4)のうち、例えば(1)と(4)を組み合わせて、先ず利益付与期間を開始し、その後、利益付与期間が継続するなかで確率向上期間を開始するような態様、すなわち、先ず賞球の獲得が少ない副特典(小さな特典(時短動作のみの特典))を付与し、副特典が終了した後に主特典(大きな特典(時短動作と確変動作が同時になされる特典))を付与することを容易に考え付くものといえる。
あるいは、刊行物1の図14の具体例((1c)参照)に依拠した論理として、図14の具体例は、先ず確変動作(確率向上)期間を開始して、当該期間が経過した後、時短動作期間を開始する態様であり、確変動作よりも時短動作の始期を遅くする考え方が示されているといえる。そして、図14の態様に接した当業者であれば、刊行物1記載の発明(図18の具体例)において、確変動作よりも時短動作の始期を遅くする考え方を導入して、先ず確変動作の期間を開始し、その後、確変動作の期間が継続するなかで時短動作を開始する態様とすること、すなわち、先ず賞球の獲得が少ない副特典(小さな特典(時短動作のみの特典))を付与し、副特典が終了した後に主特典(大きな特典(時短動作と確変動作が同時になされる特典))を付与することを、容易に想到することができるというべきである。

したがって、刊行物1記載の発明において、特別遊技状態終了後、先ず主特典よりも賞球の獲得が少ない副特典を付与し、該副特典では特別図柄抽選を特定の当選確率で行い、前記副特典が終了した後に前記主特典を付与し、該主特典では特別図柄抽選を前記特定の当選確率で行うものとすることは、当業者が容易に想到しうることである。

そして、全体として、本願補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものではない。

(まとめ)
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願の請求項1に係る発明
平成23年8月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成22年10月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記「第2 1.(補正前)【請求項1】」に記載したとおりである。

2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-52198号公報(原査定の引用文献2。上記「第2 2.」の刊行物1)、特開2004-222925号公報(原査定の引用文献1。以下、「刊行物2」という。)の記載事項等は、以下のとおりである。

(1)刊行物1
刊行物1の記載事項は、上記「第2 2.(1)」に摘記したとおりである。
また、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の第2発明」という。図14の具体例((1c)参照)、図19の具体例((1e)参照)から認定した。)が記載されているものと認められる。

「遊技球が遊技盤22上に発射され、発射された遊技球が第1種始動口としての普通電動役物36に入賞すれば第1種始動口スイッチ36aにより検出され、特別図柄表示装置32のLCD32a画面上の特別図柄表示領域50a?50cに特別図柄を所定時間変動表示した後に静止表示するよう働き、LCD32a画面上への特別図柄、背景図柄等の画像を表示するように画像制御が実行され、
静止表示した特別図柄が予め定められた特定図柄、例えば、前記リーチの後、全ての特別図柄が一致した場合を表示すると大当り状態として、その後、大入賞口40が約30秒間又は遊技球が10個入賞したことがカウントスイッチ40bにより検出されるまでいずれか早く経過する時まで開放され、
大当り動作が終了すると、大当り図柄が確変図柄である場合に、確変動作及び時短動作が実行される、遊技機であって、
当該確変動作及び時短動作は、
先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って確率向上期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了し、一方、該期間が終了したことに伴い、時短期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続して時短動作が実行され、50回になると該期間が終了するものであるか(図14の態様)、
あるいは、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って時短期間が発生され、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了し、一方、該期間が終了したことに伴い、確率向上期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続して確率向上動作が実行され、50回になると該期間が終了するものである(図19の態様)、
遊技機。」

(2)刊行物2
(2a)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来のパチンコ機は、ベース値を高めて持ち玉維持率を向上させるための装置(例えば普通電動役物)及びその制御が、確変遊技時と時短遊技時とで共通であった(同じ役物を使い同じ制御をしていた)ので、確変遊技時と時短遊技時とでベース値を変化させる(差別化する)ことができなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載のパチンコ機は、ベース値が基底値である通常遊技と、ベース値が前記基底値よりも高められた高ベース遊技とを切り替え実行するパチンコ機において、前記ベース値を高めるために用いられるベース値向上手段が異なることで区別される複数の前記高ベース遊技を有するので、複数の高ベース遊技において(例えば確変遊技時と時短遊技時とで)ベース値を変化させて差別化することが可能になる。」

(2b)「【0051】
上述したとおり、遊技球が第1ゲート18を通過したことに起因する普通図柄抽選で当たりとなると第1普通電動役物22が開放され、遊技球が第2ゲート20を通過したことに起因する普通図柄抽選で当たりとなると第2普通電動役物23が開放されるのであるが、高ベース化制御においては、普通図柄表示器22b、23bの変動表示時間(普通図柄抽選の実行から結果表示の確定までの時間)を短縮し、普通電役の開放時間を長くすることでベース値の向上を図っている。
【0052】
本実施例のパチンコ機は、特別図柄始動口(第1普通電動役物22、第2普通電動役物23)への1入賞当たりの賞球数が4個、1分間の発射数は約100球という性能で、通常遊技時、確変モード時、時短モード時におけるベース値(設計値)は次の通りである。なお、通常遊技とは、確変モード、時短モード又は大当たり遊技のどれでもない状態である。また、ここでは説明を簡明にするために普通入賞口25(通常遊技時、確変モード時、時短モード時とも入賞率は変わらない。)を計算から除外している。
[通常遊技時]
ベース値が基底値である通常遊技時は、250球(1000円分の球数)で20回特別図柄始動口に入賞する設計であり、特別図柄の1変動(1回の大当たり抽選)に対応する球数は、
250(1000円分)÷20(1000円分の変動回数)=12.5
1分間に特別図柄始動口に入賞が見込まれる球数は、
100(1分間の発射数)÷12.5(1変動分球数)=8
1分間の特別図柄始動口への入賞に対する賞球数は、
8×4(1入賞の賞球数)=32
となって、ベース値は32÷100×=32である。
[確変モード時]
第1ゲート18と第1普通電動役物22とによる第1高ベース遊技では、第1ゲート18の位置がセンターケース14の左側にあって遊技球が通過しやすい(普通図柄抽選の機会が多い)こと、第1普通電動役物22の位置がセンターケース14のステージに近いこと、普通図柄の変動時間の短縮及び第1普通電動役物22の開放時間が通常遊技時(約0.3秒)よりも格段に長くされる(約2.6秒)ことにより、250球で特別図柄始動口に50回の入賞が見込まれる設計である。
【0053】
すると、特別図柄の1変動当たりの球数は250÷50=5、1分間に特別図柄始動口に入賞が見込まれる球数は100÷5=20、1分間の特別図柄始動口への入賞に対する賞球数(=ベース)は20×4=80である。
[時短モード時]
第2ゲート20と第2普通電動役物23とによる第2高ベース遊技は、普通図柄の変動時間の短縮及び第2普通電動役物23の開放時間が通常遊技時(約0.3秒)よりも格段に長くされる(約2.0秒)ことは、第1高ベース遊技とほぼ同じであるが、第2ゲート20の位置がセンターケース14の右側にあって第1ゲート18よりは遊技球が通過しにくい(普通図柄抽選の機会が少ない)こと、第2普通電動役物23の位置が第1普通電動役物22の下側にあることにより、250球で特別図柄始動口に40回の入賞が見込まれる設計である。
【0054】
すると、特別図柄の1変動当たりの球数は250÷40=6.25、1分間に特別図柄始動口に入賞が見込まれる球数は100÷6.25=16、1分間の特別図柄始動口への入賞に対する賞球数(=ベース)は16×4=64である。」

3.対比・判断
本願発明1と刊行物1記載の第2発明とを対比すると、
刊行物1記載の第2発明の「第1種始動口としての普通電動役物36」「静止表示した特別図柄」「大当り状態」は、それぞれ、本願発明1の「特別始動口」「停止図柄」「特別遊技状態」に相当する。

また、刊行物1記載の第2発明の「特別図柄表示装置32のLCD32a画面上の特別図柄表示領域50a?50cに特別図柄を所定時間変動表示した後に静止表示する」は、本願発明1の「図柄群の変動を表現する特別図柄変動パターン演出後の停止図柄配列によって、前記特別図柄抽選の結果を報知する」に相当する。

刊行物1記載の第2発明の「大当り動作が終了すると、大当り図柄が確変図柄である場合に、確変動作及び時短動作が実行される」における「確変動作及び時短動作」による遊技は、本願発明1の「前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技」に相当するといえる。
また、刊行物1記載の第2発明の「確変動作」の特典と「時短動作」の特典の組み合わせと、本願発明1の「主特典」と「副特典」の組み合わせは、便宜上の表現ではあるが、共に「特典a」と「特典b」の組み合わせの点で共通するといえる。

そうすると、刊行物1記載の第2発明の
「先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って確率向上期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了し、一方、該期間が終了したことに伴い、時短期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続して時短動作が実行され、50回になると該期間が終了するものであるか(図14の態様)、
あるいは、先ず、LCD32aの各特別図柄表示領域50a?50cに確率図柄の大当り図柄が導出されると、これに伴って時短期間が発生され、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続し高確率状態となり、50回になると該期間が終了し、一方、該期間が終了したことに伴い、確率向上期間が発生し、特別図柄の変動が50回になるまで該期間が継続して確率向上動作が実行され、50回になると該期間が終了するものである(図19の態様)」と、
本願発明1の
「前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技として、前記特別遊技状態終了後の所定回数の通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる主特典を付与する遊技機であって、
前記特別遊技状態終了後、かつ前記主特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に、前記主特典よりも賞球の獲得が少なく、かつ特典のない通常遊技よりも賞球の獲得が多い副特典を付与する」とは、
「前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技として、前記特別遊技状態終了後の所定回数の通常遊技の間、特典aを付与する遊技機であって、前記特別遊技状態終了後、かつ前記特典aを付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に、副特典bを付与する」点で共通するといえる。

したがって、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「遊技盤面上に設けられた特別始動口への遊技球の入賞を主目的とした通常遊技状態において、前記特別始動口への遊技球の入賞を契機に特別図柄抽選が実行され、図柄群の変動を表現する特別図柄変動パターン演出後の停止図柄配列によって、前記特別図柄抽選の結果を報知する遊技仕様を基礎として、この特別図柄抽選に当選した場合に、入賞することで多くの賞球を獲得できる大入賞口が開放する特別遊技状態に所定期間移行すると共に、前記特別図柄抽選に当選することで所定の確率で権利を得ることができる特典遊技として、前記特別遊技状態終了後の所定回数の通常遊技の間、特典aを付与する遊技機であって、
前記特別遊技状態終了後、かつ前記特典aを付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に、特典bを付与する、
遊技機」

[相違点]
本願発明1は、
特典a、特典bが、それぞれ主特典、副特典であり、特別遊技状態終了後の特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができる特典であって、
前記特別遊技状態終了後、かつ前記主特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に、前記主特典よりも賞球の獲得が少ない副特典を付与するのに対して、
刊行物1記載の第2発明は、
特典a、特典bが、「確変動作」の特典、または「時短動作」の特典であって、
特別遊技状態終了後、かつ「時短動作」の特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に「確変動作」の特典を付与するか(図14の態様)、
あるいは、特別遊技状態終了後、かつ「確変動作」の特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に「時短動作」の特典を付与するもの(図19の態様)である点。

(相違点について)
そこで、上記相違点について検討する。

まず、本願発明1の「前記特別図柄抽選が所定回数実行される通常遊技の間、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得する」「賞球の獲得が少ない」における賞球とは、その文言からみて、通常遊技の賞球にとどまらず、通常遊技の間に実行される特別図柄抽選に当選したことによる特別遊技状態の賞球を含むものと解される。
そして、本願発明1のような賞球の獲得でみれば、刊行物1記載の第2発明における「確変動作」の特典や「時短動作」の特典は、特典のない通常遊技よりも多くの賞球を獲得することができるものである。
また、「時短動作」の特典は、通常、「確変動作」の特典よりも、賞球の獲得が少ないことは、自明である。
そうすると、刊行物1記載の第2発明における、特別遊技状態終了後、かつ「確変動作」の特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に「時短動作」の特典を付与する態様(図19の態様。以下、「刊行物1記載の第2発明における図19の態様」という。)は、本願発明1と同じ構成であるか、あるいは、当業者が「刊行物1記載の第2発明における図19の態様」から相違点に係る本願発明1の構成を容易に想到できるものである。
仮に、「確変動作」の特典が「時短動作」の特典よりも賞球の獲得が少ないとしても、刊行物1記載の第2発明における、特別遊技状態終了後、かつ「時短動作」の特典を付与するまでの間の所定回数の通常遊技中に「確変動作」の特典を付与する態様(図14の態様。以下、「刊行物1記載の第2発明における図14の態様」という。)は、本願発明1と同じ構成であるか、あるいは、当業者が「刊行物1記載の第2発明における図14の態様」から相違点に係る本願発明1の構成を容易に想到できるものである。
あるいは、仮に、「時短動作」の特典が「確変動作」の特典よりも賞球の獲得が少ないことが不明であるとしても、刊行物2を用いた、ベース値による検討で補うことができる。すなわち、刊行物2には、確変遊技時と時短遊技時という複数の高ベース遊技について、確変遊技時と時短遊技時のベース値を変化させて差別化する技術が記載されており、ベース値が、通常遊技時は32、確変モード時は80、時短モード時は64である例が示されているから、これを参考にして、「刊行物1記載の第2発明における図19の態様」について、「時短動作」の特典のときのベース値を、「確変動作」の特典のときのベース値よりも小さくして、本願発明1のごとくすることは、当業者が容易になし得ることである。

したがって、刊行物1記載の第2発明において、相違点に係る本願発明1の構成事項を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1,2に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものではない。

(まとめ)
したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-16 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-02 
出願番号 特願2004-352781(P2004-352781)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 恵一  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 瀬津 太朗
秋山 斉昭
発明の名称 遊技機  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  

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