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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1258535
審判番号 不服2011-19958  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-14 
確定日 2012-06-14 
事件の表示 特願2008-147236「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-291365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成20年 6月 4日 出願
平成23年 1月25日 拒絶理由通知
平成23年 4月 4日 手続補正
平成23年 6月 9日 拒絶査定
平成23年 9月14日 本件審判請求、手続補正
平成23年11月15日 審尋
平成24年 1月23日 回答書

2.平成23年9月14日付けの手続補正
本件補正は平成23年4月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面を補正するものであって、その補正の前後の特許請求の範囲は以下のとおりである。

(補正前)
「 【請求項1】
所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、
前記表示画面の前面において所定の球体形状の移動部材が自重によって上方から下方へと移動する移動経路を備え、
前記移動経路は、前記移動部材が回転移動する領域に、当該移動経路に沿った溝部と、
前記移動部材が前記移動経路に投入された際に、当該移動部材の移動位置を前記溝部に沿って案内する案内部と、
を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記溝部は、2つの溝側部と当該溝側部の間にある溝底面部とから構成され、
前記溝側部に当接した前記移動部材が、前記溝底面部に当接することなく、前記移動経路上を回転移動することを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記溝側部は、エッジ部を備え、当該溝側部のうち当該エッジ部のみが前記移動部材に当接することを特徴とする請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記溝側部は、前記移動部材が当接して回転移動する際に、当該移動部材が前記表示画面に接触しない位置に構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の遊技機。
【請求項5】
前記球体形状の部材は、少なくとも遊技球の外見と同等の外見によって形成されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の遊技機。」
(補正後)
「 【請求項1】
所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、
前記表示画面の前面において所定の球体形状の移動部材が自重によって上方から下方へと移動する移動経路を備え、
前記移動経路は、前記移動部材が回転移動する領域に、当該移動経路に沿った溝部と、
前記移動部材が前記移動経路に投入された際に、当該移動部材の移動位置を前記溝部に沿って案内する案内部と、
を備え、
前記溝部は、2つの溝側部と当該溝側部の間にある溝底面部とから構成され、
前記溝側部に当接した前記移動部材が、前記溝底面部に当接することなく、前記移動経路上を回転移動することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記溝側部は、エッジ部を備え、当該溝側部のうち当該エッジ部のみが前記移動部材に当接することを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記溝側部は、前記移動部材が当接して回転移動する際に、当該移動部材が前記表示画面に接触しない位置に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記球体形状の部材は、少なくとも遊技球の外見と同等の外見によって形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか一つに記載の遊技機。」

上記補正は、補正前請求項1を削除した上で、補正前請求項1を引用する補正前請求項2を独立記載形式として新たな請求項1とし、補正前請求項3?5を新たな請求項2?4とするものであり、特許法17条の2第5項1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-238975号公報(公開日:平成18年9月14日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

【0001】
本発明は、演出画像を表示するための表示領域を有する表示手段が設けられている弾球遊技機に関する。
【0027】
遊技盤10の中央部には、中央役物20内に表示領域24aが配置された表示手段24が設けられている。表示手段24は、液晶ディスプレイ、7セグメントディスプレイ、あるいはドットディスプレイによって図柄の変動表示や各種の演出画像の表示などを行うものである。
【0031】
本実施の形態では、第1?第4の回転体21a?21dおよび第1?第3のガイドレール22a?22cが、遊技球移動空間20a内において遊技球BLを誘導する遊技球誘導手段として機能する。
また、第1のガイドレール22aは、表示手段24の表示領域24aと重ならないように(あるいは交差しないように)配設され、第2,第3のガイドレール22b,22cは、表示領域24aと交差するように(あるいは重なるように)配設されている。また、第1?第3のガイドレール22a?22cは、遊技球BLが一定の方向に転動するように傾けて設けられている。本実施の形態では、第2,第3のガイドレール22b,22cを利用して遊技球BLが表示領域24aを通過移動するように導くため、遊技球BLの表示領域24aに対する移動軌跡を固定化することによって遊技球BLの表示領域24aに対する位置を把握しやすくなっている。このため、このような構成を採用することによって表示領域24aに表示される演出画像と遊技球BLの動きとの連動性を高めることができる。
【0035】
そして、回転部RTが収容部GPに遊技球BLを収容した状態で回転していくと、収容部GPが第2開口部RTOと一致したところで、遊技球BLは自重によって転動し、ガイドレール22へ放出される(図3(C)参照)。・・・
【0038】・・・第2の回転体21bから遊技球BLが放出されて遊技球BLが表示領域24aを通過移動する・・・
【0039】・・・遊技球BLが第2のガイドレール22bへ移動して表示領域24aへの通過移動を開始した直後から・・・

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「各種の演出画像の表示を行う表示領域24aを有する表示手段24を備えた遊技機であって、
表示領域24aと交差するように(あるいは重なるように)配設され、遊技球BLが一定の方向に転動するように傾けて設けられた第2のガイドレール22bを備え、
第2の回転体21bから遊技球BLが第2のガイドレール22bに放出される、遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明を対比する。
引用発明の「各種の演出画像の表示を行う」、「第2のガイドレール22b」は、本願発明の「所定の演出内容を表示する」、「移動経路」に、相当する。また、引用発明の「遊技球BL」は、「第2のガイドレール22b」を「一定の方向に転動する」ものであるから、「移動経路に沿って移動可能な物体であれば特に限定されるものでない」(本願段落【0061】参照)とされる本願発明の「所定の球体形状の移動部材」に相当する。
そして、引用発明の「表示領域24a」は「各種の演出画像の表示を行う」ものであるから「表示画面」であることは自明である。また、「傾けて設けられた第2のガイドレール22b」を「遊技球BLが一定の方向に転動する」ということは、本願発明の「所定の球体形状の移動部材が自重によって上方から下方へと移動する」に相当する。そして、「第2のガイドレール22b」は「表示領域24aと交差するように(あるいは重なるように)配設され」たものであるから、「第2のガイドレール22b」における遊技球BLの転動は、「表示画面の前面において」行われるものである。

そうすると、両者は、
「所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、
前記表示画面の前面において所定の球体形状の移動部材が自重によって上方から下方へと移動する移動経路を備えた遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では、移動経路は、移動部材が回転移動する領域に、当該移動経路に沿った溝部を備え、前記溝部は、2つの溝側部と当該溝側部の間にある溝底面部とから構成され、前記溝側部に当接した前記移動部材が、前記溝底面部に当接することなく、前記移動経路上を回転移動するのに対し、引用発明ではそのような構成となっているか不明な点。
<相違点2>
本願発明では、移動経路は、移動部材が前記移動経路に投入された際に、当該移動部材の移動位置を前記溝部に沿って案内する案内部を備えているのに対し、引用発明ではそのような構成となっているか不明な点。

5.判断
上記各相違点について、検討する。
<相違点1>について
遊技機において、遊技球が回転移動する領域に、遊技球の移動経路に沿って、2つの溝側部と当該溝側部の間にある溝底面部とから構成された溝部を設け、溝側部に当接した遊技球が、溝底面部に当接することなく、移動経路上を回転移動するようにすることは、原査定の拒絶の理由にも周知例とされた下記の周知例1、2に示されるように従来周知技術Aである。そうすると、引用発明において、移動経路について上記周知技術Aを採用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。
周知例1:特開2003-236109号公報
段落【0042】には「<球案内路>突出部18により左右に二分さ れた枠部16の上面16a,16bには、遊技球Pを枠部16の左右側 方へ導くための球案内路30が設けられている。この球案内路30は、 枠部16の左右方向にほぼ一直線状となるように設けられ、枠部16の 上面16a,16bの傾斜に沿って配置されている。」、段落【004 4】には、「球案内路30の形状は、図4(a)に示すような溝状・・ ・となっている。」と記載されており、【図4】(a)には、2つの溝 側部と当該溝側部の間にある溝底面部とから構成された溝部を設け、溝 側部に当接した遊技球Pが、溝底面部に当接することがないことが、 図示されている。
周知例2:特開平8-182836号公報
段落【0010】には「図2(a)は図1のAA線に沿う拡大断面図 であり、前記球受皿3の前記流入口6の近傍領域の底面3aには、前記 前面板2に沿うように細長い凹溝が形成され、この凹溝によりパチンコ 球の誘導溝11が形成されている。」、段落【0011】には「この誘 導溝11は、断面が凹字状に形成されており、その溝幅はパチンコ球P の直径よりも小さい寸法とされている。また、その深さはパチンコ球P の下側の面が溝の底に接触されることがないような深さとされている。 そして、この誘導溝11の両側の縁部11aはここでは直角断面とされ ている。」、段落【0012】には「このように、球受皿3の流入口6 の近傍領域に誘導溝11を形成しておくと、図2(b)に示すように、 球受皿3内のパチンコ球Pが球受皿3の底面3aの傾斜によって流入口 6に向けて移動されてきたときに誘導溝11に入り込み、その下面の2 箇所において誘導溝11の両側の縁部11aにそれぞれ接触支持される 。したがって、パチンコ球Pと球受皿3とはこの2箇所11aにおいて のみ接触され、しかもその接触状態は直線と球面との接触であるために 点接触状態となる。」と記載されている。

<相違点2>について
遊技機において、流下させる移動部材を所定箇所に移動させるべく案内部材を設けることは、原査定の拒絶の理由にも周知例とされた下記の周知例3に示されるように、また上記周知例2(【図1】、【図8】の球受皿3の外周壁内面を参照)に示されるように、従来周知技術Bである。そうすると、引用発明において、移動経路について上記周知技術Bを採用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。
周知例3:特開2002-355380号公報
段落【0018】には「前記遊技球供給皿9の上面は、・・・その貯 留部27から転がり落ちる遊技球5を最終的に1列に整列させて発射手 段に供給する整列樋部28が形成されているとともに、前記流下樋部2 6と整列樋部28との間には後者に下端が迫り出している傾斜面部29 が設けられている。この傾斜面部29は遊技球供給皿9内に多くの遊技 球5が入れられたとき絶えず整列樋部28に遊技球5を流下させる作用 をする。」と記載されている。

そして、本願発明の効果は、引用発明、上記周知技術A、Bから当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、上記周知技術A、Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術A、Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-11 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-01 
出願番号 特願2008-147236(P2008-147236)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 酒井 昭徳  

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