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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1258537
審判番号 不服2011-22607  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-19 
確定日 2012-06-14 
事件の表示 特願2008-114083号「遊技機および遊技機用の携帯型音声出力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開、特開2009-261583号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成20年4月24日の出願であって、平成23年7月6日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年7月19日)がなされたものである。
これに対し、同年10月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
なお、拒絶査定と同日に平成23年6月23日付け手続補正についての補正却下の決定がなされている。

第2 平成23年10月19日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年10月19日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 新規事項の追加について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「遊技の演出に関する音声にかかる音声信号を可視光線に変換する変換手段と、携帯型音声出力装置を載置する載置台と、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を照射する照射手段と、を備え、
前記携帯型音声出力装置は、前記遊技機による遊技の演出に関する音声を出力する遊技機用の携帯型音声出力装置であって、前記載置台に載置することによって、前記遊技機から照射される可視光線を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光された可視光線を前記音声信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された音声信号に基づいて、前記携帯型音声出力装置に接続されるヘッドフォンから音声を出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」とあったものを「遊技の演出に関する音声にかかる音声信号を可視光線に変換する変換手段と、携帯型音声出力装置を載置する載置台と、遊技盤を保持する枠部材に設けられ、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を下向きに照射する照射手段と、を備え、
前記携帯型音声出力装置は、前記遊技機による遊技の演出に関する音声を出力する遊技機用の携帯型音声出力装置であって、前記載置台に載置することによって、前記遊技機から照射される可視光線を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光された可視光線を前記音声信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された音声信号に基づいて、前記携帯型音声出力装置に接続されるヘッドフォンから音声を出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」(下線は当審にて付与。以下同様。)と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、照射手段について、本件補正前に「変換手段によって変換された可視光線を照射する照射手段」とあったものを「遊技盤を保持する枠部材に設けられ、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を下向きに照射する照射手段」と限定するものである。
ここで、本件補正により付加された「遊技盤を保持する枠部材に設けられ」るとする事項について検討する。
本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、遊技盤の設置箇所について、「図1は、この発明の遊技機の一例を示す正面図である。この発明の遊技機は、遊技盤101を備えている。」(段落【0019】)こと、「遊技盤101の遊技領域103の外周部分には、枠部材110が設けられている。枠部材110は、遊技盤101の上下左右の4辺において遊技領域103の周囲を囲む形状を有している。また、枠部材110は、遊技盤101の盤面から遊技者側に突出する形状を有している。」(段落【0028】)ことが記載されている。
上記記載事項から、当初明細書等には、「遊技盤101」が、遊技機に備えられること、「遊技盤101」の遊技領域103の外周部分に「枠部材110」が設けられていること、「枠部材110」は、「遊技盤101」の遊技領域103の周囲を囲む形状を有していることが記載されている。これらの記載からすると、当初明細書等には、「枠部材110」が「遊技盤101」の周囲を囲むことは記載されているといえる。
しかしながら、当初明細書等には、「枠部材」が「遊技盤」を保持することについて記載も示唆もされていない。
しかも、「枠部材」が「遊技盤」を保持することは、当初明細書等の記載から自明なものでもなく、また、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでもない。
したがって、「枠部材」が「遊技盤を保持する」ことは、当初明細書等に記載されていない。
よって、平成23年10月19日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2 独立特許要件について
(1)補正後の本件補正発明
前記「1 新規事項の追加について」で述べたとおりであるが、本件補正により付加された「遊技盤を保持する枠部材に設けられ」ることを、「遊技盤101の遊技領域103の周囲を囲む枠部材110に設けられ」ることと正しく置き換えて、以下に検討する。そうすると、本件補正は、照射手段について、「変換手段によって変換された可視光線を照射する照射手段」とあったものを「遊技盤101の遊技領域103の周囲を囲む枠部材110に設けられ、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を下向きに照射する照射手段」と限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。
「遊技の演出に関する音声にかかる音声信号を可視光線に変換する変換手段と、携帯型音声出力装置を載置する載置台と、遊技盤101の遊技領域103の周囲を囲む枠部材110に設けられ、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を下向きに照射する照射手段と、を備え、
前記携帯型音声出力装置は、前記遊技機による遊技の演出に関する音声を出力する遊技機用の携帯型音声出力装置であって、前記載置台に載置することによって、前記遊技機から照射される可視光線を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光された可視光線を前記音声信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された音声信号に基づいて、前記携帯型音声出力装置に接続されるヘッドフォンから音声を出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された発明
ア 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-117565号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a 「【技術分野】
本発明は、パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機と電子端末とを用いた遊技システム、遊技機及び電子端末に関する。」(段落【0001】)
b 「【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1乃至3に記載された従来技術においては、遊技機側の構造を大幅に変更する必要がある。例えば、ICカードや磁気カードへの情報の書き込みを実現するためには、遊技機にカード挿入口等を設けなければならない。しかしながら、遊技機の大きさは限られており、信号送信専用の構造を遊技機前面に追加すると、発光演出用の装飾ランプ等を配設するためのスペースが減少し、演出性能が低下するおそれがあるという問題がある。
解決しようとする課題は、遊技機に既存の構成を利用した簡単且つ安価な構成により遊技者所有の電子端末に対する信号送信が可能な遊技システム、遊技機及び電子端末を提供することである。」(段落【0005】?【0006】)
c 「1.遊技機と、遊技者により所有される電子端末とからなる遊技システムであって、前記遊技機は、遊技機前面に設けられ、可視光を発する可視光素子を有する装飾ランプと、その装飾ランプの可視光素子を所定の条件に応じて変調する変調手段とを備え、前記電子端末は、可視光を受光可能な受光部と、前記装飾ランプの可視光素子より発せられる変調された可視光を前記受光部により受光することに基づいて前記遊技機からの信号を受信する受信手段とを備えたことを特徴とする遊技システム。
手段1によれば、遊技機側において、遊技機前面に設けられた装飾ランプの可視光素子が所定の条件に応じて変調手段により変調されることによって、可視光素子から変調された可視光が発せられ、電子端末側において、その変調された可視光を受光部により受光し、それに基づいて遊技機からの信号を受信手段により受信することができる。
従って、遊技機前面に一般的に設けられている発光演出用の装飾ランプを利用することにより、遊技機側に信号送信用の新たな構成を追加することなく、遊技機から電子端末への信号送信を実現することができる。また、人間の目に安全な可視光域を利用するので、高い電力で高速な信号送信を行うことができる。」(段落【0008】?【0010】)
d 「5.前記可視光素子における発光演出用の点灯/消灯のパターンを表す発光演出パターンを記憶する発光演出パターン記憶手段を備え、
前記変調手段は、前記発光演出パターンに基づく前記可視光素子の点灯期間中に前記可視光素子の変調を実行することを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の遊技システム。
手段5によれば、装飾ランプの発光素子が、発光演出パターン記憶手段に記憶された発光演出パターンに基づいて点灯されている期間中に、変調手段が所定の条件に応じて変調を実行するので、確実に信号の送信を行うことができる。」(段落【0017】?【0018】)
e 「12.前記変調手段による前記可視光素子の変調パターンが遊技状態に応じて設定されることを特徴とする手段1乃至11のいずれかに記載の遊技システム。
手段12によれば、変調手段による可視光素子の変調パターンが遊技状態に応じて設定されるので、電子端末が遊技状態に応じて異なる信号を受信することにより興趣の向上を図ることができる。」(段落【0031】?【0032】)
f 「18.前記遊技機は、前記電子端末を着脱可能に取り付けるための取付部を備えたことを特徴とする手段1乃至17のいずれかに記載の遊技システム。
手段18によれば、遊技者は、自身が所有する電子端末を遊技機の取付部に取り付けた状態で遊技を楽しむことができると共に、電子端末が床に落下して破損すること等を防止することができる。」(段落【0043】?【0044】)
g 「24.前記取付部は、前記電子端末と前記装飾ランプの少なくとも一部とが正面視で重なる状態で前記電子端末を保持することを特徴とする手段18乃至23のいずれかに記載の遊技システム。
手段24によれば、取付部が電子端末と装飾ランプの少なくとも一部とが正面視で重なる状態で電子端末を保持するので、装飾ランプの可視光素子からの可視光を受光部において確実に受光できると共に、装飾ランプの前方領域を有効に活用することができる。」(段落【0055】?【0056】)
h 「27.前記受光部は、少なくとも前記可視光素子の発する可視光領域に対して感度を有するフォトダイオードであることを特徴とする手段1乃至26のいずれかに記載の遊技システム。
手段27によれば、受光部が少なくとも装飾ランプの可視光素子の発する可視光領域に対して感度を有するフォトダイオードであるので、可視光素子の発する変調された可視光を受光して電気信号を出力することができる。」(段落【0061】?【0062】)
i 「32.前記表現動作手段は、音声を発生する音声発生手段を含むことを特徴とする手段29乃至31のいずれかに記載の遊技システム。
手段32によれば、電子端末に設けられた音声発生手段が、受信手段により受信された信号に基づいて音声を発生するので、遊技者は、遊技機において遊技の実行を楽しむと共に電子端末における音声の発生を楽しむことができる。」(段落【0071】?【0072】)
j 「35.前記電子端末は、携帯電話であることを特徴とする手段29乃至33のいずれかに記載の遊技システム。
手段35によれば、携帯電話において、表現動作手段が受信手段により受信された信号に基づいて所定の表現動作を行うので、遊技者が所有する携帯電話を有効に活用して興趣の向上を図ることができる。
36.前記遊技機は、パチンコ遊技機であることを特徴とする手段1乃至35のいずれかに記載の遊技システム。
手段36によれば、パチンコ遊技機の前面に一般的に設けられている発光演出用の装飾ランプを利用することにより、パチンコ遊技機側に信号送信用の新たな構成を追加することなく、パチンコ遊技機から電子端末への信号送信を実現することができる。
37.前記装飾ランプは、遊技領域を臨む視認窓の周囲に設けられたことを特徴とする手段36に記載の遊技システム。
手段37によれば、パチンコ遊技機前面の遊技領域を臨む視認窓の周囲に設けられている発光演出用の装飾ランプの可視光素子を変調することにより、パチンコ遊技機側に信号送信用の新たな構成を追加することなく、パチンコ遊技機から電子端末への信号送信を実現することができる。」(段落【0077】?【0082】)
k 上記hの記載事項によれば、電子端末は、受光部によって受光された可視光素子の発する変調された可視光を電気信号として出力する手段を具備することが示されている。

上記a?jの記載事項、上記kの認定事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「装飾ランプの可視光素子を、発光演出パターンに基づく可視光素子の点灯期間中に、遊技状態に応じて変調する変調手段と、
携帯電話を着脱可能に取り付けるための取付部と、
遊技領域を臨む視認窓の周囲に設けられ、取付部に保持される携帯電話に対して、少なくとも一部が正面視で重なる状態で変調手段で変調された可視光を発する可視光素子を有する装飾ランプと、
を備えた遊技機と、携帯電話とからなり、
携帯電話は、遊技状態に応じて変調された可視光を受信し、受信された信号に基づいて音声を発生する携帯電話であって、取付部に保持することによって、装飾ランプの可視光素子からの可視光を受光できる受光部と、受光部によって受光された可視光素子の発する変調された可視光を電気信号として出力する手段と、受信された電気信号に基づいて音声を発生する音声発生手段とを具備する遊技システム。」

イ 当審にて新たに提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-296990号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の技術事項が記載されている。
a 「図9は発明の実施の形態3に係る遊技機のブロック図であり、図2と同一又は相当部分には同じ符号を付してある。この遊技機は、受信許可信号発生部93と、この出力により点灯又は点滅する2つの発光部(LED)94を備えることを特徴とする。
図10は動作説明図である。図10(a)は遊技機の列(いわゆる島)を上から見た図を示す。2つの発光部(LED)94が遊技機の左右端にそれぞれ設けられている。その照射領域は遊技機の中央に向けられていて、2つの発光部(LED)94の照射領域が重なっている(斜線の部分)。当該重複領域に携帯端末(携帯電話)CPのアダプタAPがあるときにのみ、遊技台情報を受信する。図10(b)は遊技機の上下に2つの発光部(LED)94を設けた場合を示す。斜線の部分に携帯端末(携帯電話)CPのアダプタAPがあるときにのみ、遊技台情報を受信することは同様である。隣接する遊技機どうしで、斜線の受信可能な領域が重ならないようにすることで情報の漏洩や隣の遊技機との混信を防止することができる。」(段落【0070】?【0071】)
b 「 第1発光素子92R?第3発光素子92Bは、点滅制御部91により点滅制御される。点滅制御は、LEDを超高速で点滅させることで光に情報を載せる技術(可視光通信)を装飾用照明92に適用したもので、非接触で遊技台情報を遊技者に提供するためのものである。本発明の実施の形態では、装飾用照明92を装飾用と可視光通信用の両方に用いているのである。ひとつの光源を同時に点灯状態と点滅状態にするには、点滅速度を人間が認識できない程度に早くすることで可能である。すなわち、第1発光素子92R?第3発光素子92Bが超高速で点滅しても、人間の目からは連続して点灯しているように見える。したがって、点滅制御部91の点滅速度は、人間が認識できない程度に十分高速である必要がある。」(段落【0038】)
c 上記aの記載事項及び【図10】(b)の図示内容によれば、遊技機の前面上部から携帯電話CPのアダプタAPに向けて下向きに点灯又は点滅する発光部94を設けたことが示されている。

上記a?bの記載事項、上記cの認定事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「遊技機前面上部から携帯電話CPのアダプタAPに向けて下向きに、受信許可信号発生部93からの受信許可信号により点灯又は点滅する発光部94を設け、発光部94と携帯電話CPのアダプタAPとの間で可視光通信を行う遊技機。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「装飾ランプの可視光素子を、発光演出パターンに基づく可視光素子の点灯期間中に、遊技状態に応じて変調する変調手段」と、本件補正発明の「遊技の演出に関する音声にかかる音声信号を可視光線に変換する変換手段」とは、前者において、変調手段により変調された可視光は、受光部において受信され音声を発生するものであって、「変調された可視光」は音声に関する信号といえるから、両者は、「遊技の演出に関する音声にかかる信号を可視光線に変換する変換手段」である点で共通し、以下同様に、
刊行物1に記載された発明の「遊技領域を臨む視認窓の周囲に設けられ、取付部に保持される携帯電話に対して、少なくとも一部が正面視で重なる状態で変調手段で変調された可視光を発する可視光素子を有する装飾ランプ」を備えることと、本件補正発明の「遊技盤101の遊技領域103の周囲を囲む枠部材110に設けられ、載置台に載置された携帯型音声出力装置に対して、変換手段によって変換された可視光線を下向きに照射する照射手段」を備えることとは、前者において、「装飾ランプ」は、遊技機の前面に設けられるものであり、後者において、「照射手段」は、遊技機の前面に設けられているものであるから、両者は、「遊技機の前面に設けられ、載置台に載置された携帯型音声出力装置に対して、変換手段によって変換された可視光線を照射する照射手段」を備えることで、
刊行物1に記載された発明の「受信された電気信号に基づいて音声を発生する音声発生手段」を具備することと、本件補正発明の「変換手段によって変換された音声信号に基づいて、携帯型音声出力装置に接続されるヘッドフォンから音声を出力する音声出力手段」を備えることとは、後者では、携帯型音声出力装置から出力される音声を、携帯型音声出力装置に接続されたヘッドフォンから出力するものであるから、両者は、「変換手段によって変換された音声信号に基づいて、携帯型音声出力装置から音声を出力する音声出力手段」を備えることで、
それぞれ共通する。
そして、刊行物1に記載された発明の「携帯電話を着脱可能に取り付けるための取付部」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「携帯型音声出力装置を載置する載置台」に相当し、以下同様に、
刊行物1に記載された発明の「携帯電話は、遊技状態に応じて変調された可視光を受信し、受信された信号に基づいて音声を発生する携帯電話であ」ることは、本件補正発明の「携帯型音声出力装置は、遊技機による遊技の演出に関する音声を出力する遊技機用の携帯型音声出力装置であ」ることに、
刊行物1に記載された発明の「取付部に保持することによって、装飾ランプの可視光素子からの可視光を受光できる受光部」を具備することは、本件補正発明の「載置台に載置することによって、遊技機から照射される可視光線を受光する受光手段」を備えることに、
刊行物1に記載された発明の「受光部によって受光された可視光素子の発する変調された可視光を電気信号として出力する手段」を具備することは、本件補正発明の「受光手段によって受光された可視光線を音声信号に変換する変換手段」を備えることに、
刊行物1に記載された発明の「遊技システム」は、本件補正発明の「遊技機」に、
それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「遊技の演出に関する音声にかかる信号を可視光線に変換する変換手段と、携帯型音声出力装置を載置する載置台と、遊技機の前面に設けられ、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を照射する照射手段と、を備え、
前記携帯型音声出力装置は、前記遊技機による遊技の演出に関する音声を出力する遊技機用の携帯型音声出力装置であって、前記載置台に載置することによって、前記遊技機から照射される可視光線を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光された可視光線を前記音声信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された音声信号に基づいて、前記携帯型音声出力装置から音声を出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」

[相違点1]
変換手段により可視光線に変換される、遊技の演出に関する音声にかかる信号が、本件補正発明では、音声信号であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、音声信号であるか否か不明である点。

[相違点2]
遊技機の前面に設けられる照射手段が、本件補正発明では、遊技盤101の遊技領域103の周囲を囲む枠部材110に設けられ、携帯型音声出力装置に対して、可視光線を下向きに照射するのに対して、刊行物1に記載された発明では、遊技領域を臨む視認窓の周囲に設けられ、携帯電話に対して、少なくとも一部が正面視で重なる状態で可視光を発する点。

[相違点3]
音声出力手段から出力される音声が、本件補正発明では、携帯型音声出力装置に接続されるヘッドフォンから出力されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、ヘッドフォンから出力されるか否か不明である点。

(4)当審の判断
ア 上記相違点1について
発光素子を用いた光通信の技術分野において、音声に係る音声信号を可視光線に変換して送信することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2004-221946号公報に示された音声用LED211や、実願昭59-7163号(実開昭60-121347号)に示されたマイクロフィルムの発光ダイオード11や、特開昭64-86725号公報に示された音声用LED8を参照。)。
そうすると、刊行物1に記載された発明に上記周知の技術事項を適用して、音声に係る音声信号を可視光線に変換して装飾ランプの可視光素子を用いて送信することは当業者が容易になし得たものである。

イ 上記相違点2について
刊行物2には、遊技機前面上部から携帯電話CPのアダプタAP(本件補正発明の「携帯型音声出力装置」に相当する。)に向けて下向きに、受信許可信号発生部93からの受信許可信号により点灯又は点滅(本件補正発明の「照射」に相当する。)する発光部94(本件補正発明の「照射手段」に相当する。)を設け、発光部94と携帯電話CPのアダプタAPとの間で可視光通信を行う遊技機について記載されている。
そして、遊技機の技術分野において、遊技盤の遊技領域の周囲を囲む枠部材上部に装飾のための照射手段を設けることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2006-158703号公報に示された表示装飾部材16や、特開2004-49836号公報に示された装飾用LED80や、特開2001-149560号公報に示された装飾用ランプ29A、29Bや、特開2003-236085号公報に示された枠ランプ19を参照。)。
また、同じく、遊技機の技術分野において、照射手段に装飾用と可視光通信用の両方の機能を兼用させることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、刊行物1の前記(2)アdや、刊行物2の前記(2)イa、cを参照。)。
してみると、刊行物1に記載された発明の装飾ランプの可視光素子に、装飾のため上記周知の技術事項を適用して、枠部材上部に設けられた可視光素子を用いると共に、装飾用の可視光素子に可視光送信用の機能を兼用させ、その際に、刊行物2に記載された発明に倣って、可視光素子から可視光線を携帯電話に向けて下向きに照射して、上記相違点2に係る本件補正発明の具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 上記相違点3について
携帯電話を含め、音源からの音声を聴く装置一般において、音源からの音声をヘッドフォンやイヤフォンから出力することは、本願出願前から普通に行われていた技術事項である。
さらに、遊技機の技術分野においても、音源からの音声をヘッドフォンやイヤフォンから出力することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2007-275347号公報の段落【0023】や、実開平5-70686号(実開平7-39890号)のCD-ROMの段落【0034】や、特開2007-260124号公報の段落【0057】を参照。)。
そうすると、上記周知の技術事項に倣って、刊行物1に記載された発明において、音声発生手段に接続されるヘッドフォンから音声を出力することは当業者が必要に応じてなし得たものである。

エ 小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
ゆえに、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。

3 まとめ
以上、前記1、2で検討したとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項あるいは同法第126条第5項に規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年10月19日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年1月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「遊技の演出に関する音声にかかる音声信号を可視光線に変換する変換手段と、携帯型音声出力装置を載置する載置台と、前記載置台に載置された前記携帯型音声出力装置に対して、前記変換手段によって変換された可視光線を照射する照射手段と、を備え、
前記携帯型音声出力装置は、前記遊技機による遊技の演出に関する音声を出力する遊技機用の携帯型音声出力装置であって、前記載置台に載置することによって、前記遊技機から照射される可視光線を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光された可視光線を前記音声信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された音声信号に基づいて、前記携帯型音声出力装置に接続されるヘッドフォンから音声を出力する音声出力手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1、刊行物1の記載事項及び刊行物1に記載された発明は、前記「第2[理由]2(2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明において、照射手段についての限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由](3)対比および(4)当審の判断」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、刊行物1に記載された発明と相違点1及び3で相違する本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-12 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-01 
出願番号 特願2008-114083(P2008-114083)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石塚 良一  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 秋山 斉昭
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機および遊技機用の携帯型音声出力装置  
代理人 酒井 昭徳  

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