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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1258543
審判番号 不服2008-7210  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-24 
確定日 2012-06-13 
事件の表示 平成8年特許願第533598号「1以上の血漿誘導体を含む,品質保証された薬物」拒絶査定不服審判事件〔平成8年11月14日国際公開,WO96/35437,平成10年3月17日国内公表,特表平10-502943〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,1996年5月6日(パリ条約による優先権主張1995年5月8日 オーストリア)を国際出願日とする出願であって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】C型肝炎ウイルス(HCV)による汚染に関し,品質保証された血漿プールを製造する方法であって,以下のことを特徴とする方法:
(a)個々の血漿献物の汚染の不存在を出発物質中のHCV抗体の不存在により測定し;
(b)C型肝炎ウイルス(HCV)のゲノム当量の測定を以下により行う;
-n個の個々の献物 (donation) から試料をとり,
-その個々の献物試料をm個の試料プールに集め,
-それぞれ核酸検出または測定方法によりこれらの試料プール中に存在するウイルスHCVゲノムまたはHCVゲノム配列の量を,1つまたは数個の内部標準を添加することによる内部標準を用いて検出し,その標準は,多分存在するHCVゲノムまたはHCVゲノム配列を1つの同じ試験管中で同時にそれぞれ測定または検出し,
それによって試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出された量が規定された限界値以下であるこれらの個々の献物(ng)を品質保証血漿プールに混合し,
試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出された量が該規定された限界値より大きい,または等しいこれらの個々の献物(na)をさらなる処理に付すか,または除去する(nおよびmは正の整数である)。」

2.引用刊行物及びその記載事項
これに対して,当審で通知した拒絶理由通知書に引用された,本願優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな刊行物A?Dには,それぞれ以下のことが記載されている。
刊行物A:特開平4-99799号公報
刊行物B:JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, Vol.31, No.2, 323-328
(1993)
刊行物C:Vox Sang, Vol.64, 73-81 (1993)
刊行物D:特開平7-87978号公報
(2-1)刊行物Aの記載事項
(A-1)公報第3頁左下欄第5?12行
「すなわち,本発明はHCV遺伝子でコードされたポリプロティンの構造領域の核蛋白に対応するペプチド抗原を見いだしたことによりなされたもので,このペプチドはHCV感染によるHC患者の診断や,血液及び血液製剤中のHCV被爆のスクリーニングについて高い信頼性,高い特異性でかつ誤った結果が極めて少なくなる方法に用いられるものとして有用である。」
(A-2)公報第4頁右上欄第5行?左下欄第8行
「以下,具体的な実施態様についてELISAを例にとって概説する。
上述の合成ペプチドを適当な緩衝液,例えばPBSに溶解し,ELISAプレートの各ウェルへ入れ,4℃で一夜放置して該合成ペプチドをプレートへ結合させる。0.05%PBSTween 20で洗浄した後,1%BSAを各ウェルへ入れ37℃で1時間放置してブロッキングを行なう,さらに0.05%PBSTween 20などの洗浄液で洗浄し,被検サンプルを希釈して各ウェルへ入れ,37℃で一時間反応させる。再び0.05%PBSTween 20で洗浄した後,抗ヒトIgG-HRPコンジュゲート液を各ウェルへ入れ,37℃で一時間反応させる。0.05%PBSTween 20で洗浄後,OPD基質液を入れ室温,暗所で発色させる。30分後2Mの硫酸を加え,反応を停止し,492nmの吸光度を測定する。
Peptide-0の合成ペプチドを用いてELISAの系を作製したところ,非A非B型肝炎特異性が高く,また,非A非B型肝炎患者における抗体検出率が非常に高いことが明らかになった。特にこのELISA系では,従来のオルソ社製HCV AbELISAキットでは検出することのできなかった非A非B型肝炎患者からも高率に抗体を検出することが可能になった。」
(A-3)公報第5頁左上欄第10行?左下欄第8行
「実施例 1
日本人の濃縮血漿より分離したHCVcDNAのシークェンス情報(米国出願408,405号)より,Peptide-0を合成した。合成には,Applied Bio-systems社の430A Peptide Synthesizerを用い,精製は合成ペプチド精製用HPLCカラム(Aquapore Prep-10,C-8,300A pore size, 20μm spherical Silica, 10mm ID x 250mm, Applied Biosystems社)を用いた。精製した合成ペプチドについて常法に従って組成分析を行なったところ,所望のペプチドが合成されたことが確認できた。
Peptide-0をPBS(0.1M Phosphate buffered saline)へ溶解し,1μg/mlとし,イムノプレートの各ウェルへ200μlずつ加え,4℃で一夜反応させ,0.01%Tween 80を含むPBS(PBS-T)で洗浄し,0.1%BSA(Bovine serum albumin),PBS溶液250μl/ウエルでポストコーティングを行なった。その後,0.1%BSA PBS-Tを各ウェルに200μl加え,これに血漿サンプル20μlを入れ,プレートミキサーで軽く攪拌した後,37℃で1時間反応させた。
次にPBS-Tで洗浄後,anti-Human IgG-HRPコンジュゲートを200μl/ウェル加え,37℃で1時間反応させた。
PBS-Tで洗浄後,TMBZ(3,3,5,5-Tetramethylbenzldine塩酸塩)基質溶液200μlを各ウェルへ加え,37℃で30分反応させた後,2M硫酸を50μl/ウェル加えて反応を停止した。これをEmaxprecision microplate reader (Molecular Device社)を用いて,450nm/650nmの2波長で測定を行なった。
本測定に用いた血漿サンプルは世界的に広く用いられている市販のオルソ社製HCV Ab ELISAキット陽性サンプル(C100抗体陽性),オルソ社製HCV Ab ELISAキット陰性サンプル(C100抗体陰性)さらに陰性対照としてB型肝炎ウィルス抗体陽性サンプル(HBV’),及びA型肝炎ウィルス抗体陽性サンプル(HAV’)の4種類を用い,各々10検体ずつ測定した。
また,比較のために,本件発明者等により見いだされたHCVcDNAをバキュロウィルスベクターを用いた発現系に組み込み産生させたポリペプチド(HCV-3F9)を使用したアッセイ系による測定を実施した。測定結果を第1表に示す,数値はELISAにおけるOD値を表す。
(第1表省略)」
(2-2)刊行物Bの記載事項(英文のため訳文で記載する)
(B-1)p.323の要約
「多数の献血単位に対する,パーボウイルスB19のための,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による日常的なスクリーニングのための非常に敏感で急速な方法が開発された。エジンバラでの3ヵ月の試行期間の間,20,000の連続的な血液単位のうちの6つ(0.03%)でB19 DNAが検出された,それぞれ1ml当たり2.4x10(exp4)?5×10(exp)10の範囲の濃度のウイルスDNAのコピー数であった。…B19 DNAは,B19 DNAのためのスクリーンがされていない寄贈血漿から製造される非熱処理第VIII及びIX因子の濃縮物の27の別々のバッチのうちの18で検出された。第VIII因子濃縮物から検出可能なB19を,72hの80℃の乾燥熱処理によって減らせるが,必ずしも常に排除することはできなかった。このことは,血液製剤製造の間のウイルス不活化のための現在の方法が,B19感染力を完全に除くには不十分であるという最近の観察と一致するものであった。PCRスクリーニングのための本研究により開発された方法は,血液と血液製剤におけるB19の伝染を妨げるために通常適用される得るものであり,感染の医原性の伝染の防止において,重要な役割を演ずることができるであろう。PCRスクリーニングが,現在の血清学的検出方法が部分的にしか効果的でない,他の伝染関連のウイルスの範囲の検出及び排除のために使用されることもできるであろう。」
(B-2)p.323本文左欄第15?末行
「いくつかの技術は,ウィルス抗原(9),交雑分析評価(11,21,23,26)とより最近より敏感なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(8,16,26)を回すために分析評価を含むパーボウイルスB19ウイルス血症を発見するのに用いられた。この研究において,我々は3ヵ月の期間の間集められるウイルス血症献血者の頻度を測定して,ウイルスを血液製剤から除外するために通常この方法を使用することの実現可能性を探るためにPCRを使った。スクリーニングは,DNA抽出とPCRの前に献血をプールすることによって行われた;陽性なプールは,さらに,ウイルス血症提供者を特定し,リコール及び臨床評価をさせるために再分割された。パーボウイルスB19の検出のためにこの研究において開発される方法は,輸血と血液製剤製造プロセスからの他の病原性ウイルスのPCRによる除外のモデルと考えることができる。」
(B-3)p.324のFig.1,


図1。連続したPCRスクリーニングによるB19感染した献血者の同定の例。500血液単位の陽性プール(no.17と20;下線)は,100単位の5つのプールで再テストされた。プール600の同定は,10(600/3が陽性を示した)のプール及び最終的に感染献血者(600/3/6)の同定において再スクリーニングにかけられた。」
(B-4)p.324右欄第3?22行
「献血者スクリーニング。南東部スコットランドでおよそ3ヵ月間にわたってボランティア提供者から集められる合計20,000の血液単位は,500の単位の40の別々のプールで,PCRでスクリーンされた。このスクリーニング方法の感度の限界は,1つのプールの1mlにつき5ビリオン(ウィルス粒子数),したがって,各々の構成単位において1mlにつき2,500のビリオンであった。PV1からPV4へのプライマーを使った最初のスクリーニングで,40のプールのうちの6つが,B19 DNAの検出可能量を含むと判明した。全6つのサンプルは,PV5からPV8へのプライマーを使ったテストでも陽性であった。ウイルス血液提供者を特定するために,各々の原陽性プールは100単位からなる5つのプールに分けられ,そして,それらは再スクリーンされた。このように分けられた5つのプールの各々のセットは,100からなる単一のPCR陽性プールを与えた。100単位からなる6つの陽性プールの各々は,10の献血からなる10のプールとして順番に再構成された,そして,10のプールの各々のセットは単一のPCR陽性サンプルを生じた。最後に,10の6つの陽性プールを作るのに用いられた各々の単位は,6人の陽性献血者(p1からp6)を特定するためにテストされた。ウイルス血液単位を同定するために用いられたステップの例は,図1に示される。」
(B-5)p.324右欄第25?35行
「陽性サンプルと一致する血症の6つの単位はProtein Fractionation Centreから回収された,そして,すべてがPCR陽性であると判明した。6人の献血者に由来する,PV1-PV2及びPV5-PV6のプライマーを使って増幅されたDNA核酸配列は,1つの例外でを除いて,B19(5,30)について過去に報告されている配列とは異なっていた,そして,1?6つの置換(表1)で示されたように互いにも異なっていた。2人の献血者が同じウィルス配列を与えた1つの例によって,2つの感染が疫学的に関連している(夫と妻;下記参照)ことが示された。異なる配列を各々の献血者で発見したことは,スクリーニングで得られた陽性結果が,サンプルまたは緩衝液の不注意な汚染の結果であったという可能性を排除している。」
(B-6)p.324右欄下から7行?p.325左欄第8行
「感染した献血者の臨床及びウィルス学的研究。以前,PCRに対して陽性の献血者の各々から献血と引き続いてのサンプルは,B19に特有のIgGとIgMのために,そして,PCR(図2)によるB19を見つけるため検査された。6人の個体のうちの5人(p1からp5)は,献血の前には,すべてのサンプルでIgMとIgGとは陰性だった,そして,ウイルス血液が検出されたとき,5つのうちの4つはその時にまだ陰性だった。その後リコールされたそれらのうちの全4人は,献血後3?6月で,IgGとIgMが陽性になった。p6からのサンプルは,献血の前,途中,後においてIgG陽性だった。B19に特有のIgMは,この個体からの追跡サンプルで検出できなかった。B19 DNAは,リコール(献血後60?100日)された献血者から集められるすべてのサンプルで検出されなかった;全6人の献血者によって以前に献血された血液単位は,一様にPCR陰性だった。」
(B-7)p.326右欄最下行?p.327左欄第11行
「PCRによるドナースクリーニングの実現可能性。PCR陽性血液単位の同定は,4つの連続した別々のDNA抽出と入れ子増幅反応を必要としていた。しかし,陰性であるとわかった500の最初のプールを作っている血漿は(テストされる40のうちの34),たった1つの増幅反応の後で,安全に注入されるであろう。僅かばかりの一部単位(この研究においては,20,000のうちの54)が,汚染を除外するために,PCRによる4回のスクリーンが要求される。この研究において,DNA抽出とPCRのための所要時間の最適化は試みていない。これにもかかわらず,我々はなんとか製造の前に感染したプラズマの全6つの単位をタンパク質分離センターから取り戻すことができた。」
(B-8)p.327左欄第21?27行
「敏感な個体のパーボウイルスB19感染の危険性を大いに減らすだけでなく,それに付随する複雑化で,スクリーニングのこの方法は他の輸血感染ウイルス,特にB型肝炎ウイルスの血清学的スクリーニングを補うのに役立てられるだろう。というのは,感染の継続した伝染は,B型肝炎表面抗原陰性血液から起こるからである。」
(2-3)刊行物Cの記載事項(英文のため訳文で記載する)
(C-1)p.73の要約
「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は,熱安定DNAポリメラーゼ,Mg^(2+)及び4つのヌクレオチド三リン酸塩と共に,目標DNAの鎖と反対の相補的な適当なオリゴヌクレオチドプライマーの存在下で,テスト・サンプルにおけるDNAの変性と再アニールを交互に行うことを含む。DNA標的部分は,そのような25-35サイクルによって1千万倍『増幅される』こともありえる。強化された特性によるさらにより大きな増幅(ほぼ10の12乗倍)は,原プライマーによって定義されるDNA配列の範囲内で設置される1対の更なる『入れ子になった』プライマーを使って増幅サイクルの第2セットによって得ることができる。PCRは,血漿と細胞が関連する輸血媒介感染症の全部の範囲の研究に適用される得る;DNA複写物が逆転写酵素での処置によってウィルスRNAから作られるならば,RNAウイルスは分析することができる。輸血関係では,レトロウイルス(HIV-1,HIV-2,HTLVI,HTLV-II),HCV及びHBVは,最も重点的にPCR分析を受けるウイルスである。この関連におけるPCRの長所は,『ウインドウ期間』または感染症の血清陰性のステージの間のウィルスを検出するその能力,並びに,ウィルス血症のためや血漿の大きなプールから製造される製品のウイルスの探知のための標識としてのその価値を含む。本当の免疫も,抗体の存在によって,持続性の感染症と区別されるかもしれない。同様に,PCRは受動的に移された抗体の存在に起因する急性感染症の診断の問題を解決することができる。詳細な菌株の区別も,配列やまたは制限エンドヌクレアーゼの手助けとの連携で,PCRによって可能となる。」
(C-2)73右欄下から4行?p.74左欄第6行
「HBVのための献血のスクリーニングを除いて,すべての微生物輸血前テストは,輸血安全性に難題を提示する,持続性感染症に対する抗体の検出に頼っている。そのように,献血が伝染性であるかも知れないが,しかしスクリーニングで陰性である場合に,血清陰性の段階が常に存在する。たとえ,HBsAgに対するスクリーニングであっても,現在の分析の感度は,ウィルス血症直接指標を提供するPCRのようなゲノム増幅技術によって潜在的に達成可能なもののほんの一部分程度に過ぎない。」
(C-3)p.74左欄下から6行?p.75左欄第7行
「輸血細菌学のためのPCRの潜在的有用性は,以下の通りである: (1) 感度(10(exp-18)gの核酸まで検出する);これは大きな血漿プールから作られた産物の試験の際及び,血清転換前の「ウインドウ期間」における感染検出にも価値があり,急性診断を可能とする; (2) 抗体の存在で,本当の免疫と持続性感染症を区別すること; (3) 例えば輸血後の(HIV,HCVにおける母親由来抗体のような)受動抗体に起因する診断における問題を解決すること; (4)系統の区別(HIV-1/2,HTLV-I/II,HCV,HBV 変異体)。
PCRの驚異的な感受性は,最高25,000の血漿献血プールから製造される血漿製品の分析によってよく示されている。高い希釈剤要因が関与するにもかかわらず,PCRは,そのような血漿プール[3]からのサンプルや最終凝固因子製品からにおいて,ウィルス核酸(HCVとHIV)を検出できる[4,5]。さらにまた,第VIII因子の所定のバッチにおけるC型肝炎ウィルスRNAのPCRによる検出と,被輸血者に対するその製品の非A非B肝炎(NANBH)の感染の見込みとの間に,強い関連性が観察されている。したがって,PCRは,血液製剤の安全性テストのための実験動物の役割を拡大するかもしれない。」
(C-4)p.78左欄下から6行?右上欄第2行
「C型肝炎ウイルス
HCVの最初のクローニングに続いて,我々自身のグループはUKにおいて臨床的にNANBHに感染されたことが確認されたヒト血清から得られたウイルスを独立にクローニング及び配列決定した。他のグループもまた我々と同様にHCVをクローニングし,それゆえ引き続く適用におけるHCVウイルス血症の検出のためのPCRを早期に利用可能とした。」
(C-5)p.78右欄第30行?下から5行
「この非常に高い感度のため,その調整において多数の血漿献物のプールがなされているにもかかわらず,濃縮第VIII因子のバッチにおいて,PCRはまたHCVのようなウイルスの検出において大きな価値を持ち,以前に議論されたように;PCRはこれらの産物によるNANBHの伝播の可能性と良好な正の相関を持つ。
PCRの鋭敏な感度に照らしてみれば,HCVによる感染のハイリスク患者が試験されたときに,抗HCVの血清学的解析が,全てのPCR反応性サンプルを検出できないことは驚くべきことではない。
先に述べた通り,PCRはHCVの異なる系統の区別に利用されうる。この文脈において,配列解析のためのウイルス核酸の増幅へのPCRの使用は明らかな有益性を持つ。」
(C-6)p.79左欄下から7行?p.80右欄第2行
「まとめ
輸血微生物学のほとんどの実務者はしばしば,血清学的結果の「ボーダーライン」を明確にする感度の追加のマージンを求めた。PCRを用いて,感度は検出可能なゲノムコピーのレベルによって測定され,これらの要求は欠点なく実現された。DNA抽出過程の単純化が進展しても,RNAウイルスは未だ逆転写工程を要求する。増幅及び可視化のための最新の過程は現在発展中であるが,日々のサンプル数百個の繰り返しの取り扱いにおいて生じるクロス汚染の問題が生じており,PCRのコストを現在の血清学的手法と同レベルにまで減縮できたとしても,日常の輸血前試験のためには巨大なハードルが残っている。少なくとも短期的には,輸血微生物学におけるPCRの初期の役割は,研究及びより感度の低い日常のスクリーニング方法を有効なものとするためのものであると思われる。」
(2-4)刊行物Dの記載事項
(D-1)特許請求の範囲
「【請求項15】 標本中の特定の核酸を検出する方法において,陽性調節ベクターの存在のもとで,上記特定の核酸配列を含む疑いのある標本に対してポリメラーゼ連鎖反応を実行することを含む方法。
【請求項16】 上記標本は,尿,血液,痰,脊髄液であることを特徴とする請求項15に記載の方法。」
(D-2)【0013】?【0019】
「【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,PCRがこれらの応用のすべてにおいて成功裡に用いられたとしても,診断,特に感染症の診断におけるそのルーチン使用には1つの大きな欠点がある。この欠点は,誤った陽性または誤った陰性結果を得る可能性である。誤った陽性結果は,通常,標本と増幅生成物との交差汚染に起因する。このような交差汚染は,たとえば,増幅生成物の操作からDNA抽出過程を物理的に分離するなどの良好な実験手法を用いることにより,あるいは,使い捨てピペットその他の使い捨て物質を用いることにより,比較的容易に回避できる。
【0014】一方,誤った陰性結果,すなわち,標本中に標的核酸が存在しないという誤った試験結果は,PCR反応自体が正しく働かなかったときに得られる。このような結果は,たとえば,反応がうまくいかなかったとき,操作を誤ったとき,逆転写酵素PCR(RT-PCR)標本にRNase(リボヌクレアーゼ)が存在するとき,もっとも頻繁には反応標本にPCRの阻害因子が存在するときに生じる。たとえば,ミコバクテリアなどの微生物についてもっとも頻繁に試験される臨床標本である痰は,PCRの阻害因子を含むことが知られている。
【0015】感染性微生物のPCRを介した診断において誤った陰性結果を得る可能性があることは,明らかに,この技術の使用に対する重大な妨害である。このような結果を得る虞れがあるため,結果が陰性なのは標本中に標的核酸がないからなのか,それとも増幅プロセスがなにかしら阻害されたからなのかについて,試験者にはわからないことになる。
【0016】核酸標本のPCR増幅において誤った陰性結果が生じることは頻繁にあり,文献にも多く述べられているが,いまだに,このような結果を防ぐための信頼性ある方法はない。
【0017】本発明の目的は,核酸標本のPCR増幅における誤った陰性結果の発生を防ぐことである。
【0018】本発明のさらなる目的は,臨床標本から直接,感染性微生物の同定を行なうことを可能とすることである。
【0019】本発明のさらなる目的は,誤った陰性結果を得る虞れなしに,PCR増幅技術を用いた微生物の同定のためのプロセスを提供することである。」
(D-3)【0024】
「【0024】さらに,本発明によれば,標本中の特定の核酸の検出方法において,陽性調節ベクターの存在のもとで,上記特定の核酸配列を含む疑いのある標本に対してポリメラーゼ連鎖反応を実行することを含む方法が得られる。」
(D-4)【0051】?【0055】
「【0051】上述したように,PCR増幅混合物における陽性調節ベクターの存在により,誤った陰性結果の発生が防止される。すなわち,標的核酸断片が存在しているのに,陰性の結果が出ることが防止される。ポリメラーゼ連鎖反応を介した核酸配列の検出の増幅生成物を観察するとき,つぎの3つの可能性が生じる。
【0052】1.陽性調節ベクターのみの増幅生成物に対応する,唯一のバンドが存在する。
【0053】この場合には,試験標本中に標的核酸断片が存在しないことが明らかである。
【0054】2.陽性調節ベクターの増幅生成物に対応するものと,標的核酸配列の増幅生成物に対応するものとの,2つのバンドが存在する。この場合には,標的核酸配列は良好に検出され,PCR増幅は阻止されなかった。
【0055】3.陽性調節ベクターの増幅生成物,あるいは,標的核酸配列の増幅生成物に対応するバンドはまったく存在しない。この場合には,PCR増幅が何らかの形で阻止されたのであり,標本中の標的核酸配列の有無に関する結論を出すことはできない。」
(D-5)【0091】?【0110】
「【0091】実施例3
血液標本中のC型肝炎の検出
A.PCR陽性調節ウィルスの作成
次の配列[配列ID番号8および9]をもつプライマーMHCV1およびMHCV2を用いて,C型肝炎含有標本の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応により,C型肝炎ウィルス5’非翻訳領域が得られた。

【0106】pPG17と称され,図5および以下にその構造を示す新たな組換えプラスミドは,C型肝炎ウィルス5’非翻訳領域に挿入された陽性調節プローブ配列を含んでいた。これは,また,XウィルスcDHAクローンにも挿入された。その転写は酵母菌PGK1プロモーターの制御下において行なわれた。
【0107】つぎに,1本鎖および2本鎖RNA突然変異ウィルスゲノムは,以下のようにして得られた。酵母菌株Y59[American Type CultureCollection, ATCCより入手可能](アルファ,trp1,ski2,L-A-HN,Mo)は,上述したように調製されたプラスミドpPG17で転換された。このプラスミドpPG17は,陽性調節配列を含む組換えXウィルスをコード化するものである。形質転換体は,H-Trp板上にプレーティングすることにより選別された。酵母菌株Y59は,RNA依存RNAポリメラーゼと,X主被覆プロテインを供給するとして知られているL-A介助ウィルスを含んでいる。この酵母菌は,ウィルス配列を含むpPG17転写体の複製と被包を可能とする。pPG17の転写は,酵母菌RNAポリメラーゼを用いて,PGK1プロモーターにより推進される。
【0108】つぎに,選別された形質転換体を,2日間にわたり,30℃で,トリプトファンなしに,BRLから購入した合成培地において成長させた。J.Biol.Chem.263(1988)454ページにおいてFujimurara &Wicknerにより説明された手法にしたがって,塩化カルシウム遠心分離により,ウィルス粒子が得られた。突然変異ウィルスの複製型は,標準的な技術を用いて,電気泳動により,分離された。PCRを用いたpPG17の増幅により,342塩基対の断片に相当するバンドが生成された。
【0109】B.血液標本中のC型肝炎ウィルスの検出
Hepatology 14(1991)51ページにおいてCristiano et alにより説明された条件と技術にしたがって,RNAが,血液標本から分離された。上記ステップAに説明されたようにして調製された陽性調節RNAの量を変化させて,すなわち,10から10000分子量の範囲で,逆転写酵素PCR(RT-PCR)を実行した。RT-PCRの手順は上記Cristiano et alにおいて説明されているとおりである。
【0110】増幅生成物は,臭化エチジウムで染色した2%アガロースゲルにおいて分析された。もしC型肝炎ウィルスが標本中に存在すれば,259塩基対を有する断片に相当するバンドが生成される。一方,陽性調節ウィルスの増幅生成物は,上述したように,342塩基対に等しい。標本中にC型肝炎ウィルスが存在する場合に得られた2つのバンドは,陽性調節ウィルスとC型肝炎ウィルスの5’非翻訳領域をオリゴヌクレオチドプローブとして用いて,ハイブリダイゼーション技術により,さらに特徴づけられる。」

3.対比
刊行物Aは,「本発明はHCV遺伝子でコードされたポリプロティンの構造領域の核蛋白に対応するペプチド抗原を見いだしたことによりなされたもので,このペプチドは…血液及び血液製剤中のHCV被爆のスクリーニングについて高い信頼性,高い特異性でかつ誤った結果が極めて少なくなる方法に用いられるものとして有用である。」(A-1)と記載されているように,血液及び血液製剤中のHCV被爆のスクリーニングに用いられるHCV遺伝子によりコードされたペプチド抗原に関するものであって,該ペプチド抗原を使用して,血漿サンプル中のHCVに対する抗体を検出する方法についても具体的に記載されている((A-2)及び(A-3))。
すなわち,刊行物Aには,「血液,血液製剤及び血漿といった試料中の抗HCV抗体の存在を確認する抗HCV抗体検出方法。」(以下,「引用発明A」という。)が記載されているといえる。
本願発明と引用発明Aとを対比すると,
「C型肝炎ウイルス(HCV)による汚染に関し,
(a)個々の血漿献物の汚染の不存在を出発物質中のHCV抗体の不存在により測定する方法。」
で一致し,以下の点で相違する。
[相違点]
本願発明は,
「品質保証された血漿プールを製造する方法であって,
C型肝炎ウイルス(HCV)のゲノム当量の測定を以下により行う;
-n個の個々の献物 (donation) から試料をとり,
-その個々の献物試料をm個の試料プールに集め,
-それぞれ核酸検出または測定方法によりこれらの試料プール中に存在するウイルスHCVゲノムまたはHCVゲノム配列の量を,1つまたは数個の内部標準を添加することによる内部標準を用いて検出し,その標準は,多分存在するHCVゲノムまたはHCVゲノム配列を1つの同じ試験管中で同時にそれぞれ測定または検出し,
それによって試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出された量が規定された限界値以下であるこれらの個々の献物(ng)を品質保証血漿プールに混合し,
試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出された量が該規定された限界値より大きい,または等しいこれらの個々の献物(na)をさらなる処理に付すか,または除去する(nおよびmは正の整数である)。」と特定されているのに対して,引用発明Aでは,そのような特定がない点。

4.検討・判断
上記相違点について検討する。
(4-1)刊行物B記載の発明
刊行物Bの記載について検討する。
刊行物Bのp.324(Fig.1及び「RESULS」欄)には,次のことが記載されている。


図1。連続したPCRスクリーニングによるB19感染した献血者の同定の例。500血液単位の陽性プール(no.17と20;下線)は,100単位の5つのプールで再テストされた。プール600の同定は,10(600/3が陽性を示した)のプール及び最終的に感染献血者(600/3/6)の同定において再スクリーニングにかけられた。」(B-3)
「…ボランティア提供者から集められる合計20,000の血液単位は,500の単位の40の別々のプールで,PCRでスクリーンされた。このスクリーニング方法の感度の限界は,…,各々の構成単位において1mlにつき2,500ビリオン(審決注;「ウィルス粒子」のこと)であった。PV1からPV4へのプライマーを使った最初のスクリーニングで,40のプールのうちの6つが,B19 DNAの検出可能量を含むと判明した。全6つのサンプルは,PV5からPV8へのプライマーを使ったテストでも陽性であった。ウイルス血液提供者を特定するために,各々の原陽性プールは100単位からなる5つのプールに分けられ,そして,それらは再スクリーンされた。このように分けられた5つのプールの各々のセットは,100からなる単一のPCR陽性プールを与えた。100単位からなる6つの陽性プールの各々は,10の献血からなる10のプールとして順番に再構成され,そして,10のプールの各々のセットは単一のPCR陽性サンプルを生じた。最後に,10の6つの陽性プールを作るのに用いられた各々の単位は,6人の陽性献血者(p1からp6)を特定するためにテストされた。ウイルス血液単位を同定するために用いられたステップの例は,図1に示される。」(B-4)
これらの記載を整理すると,次の4段階にまとめられる。
「(1)献血により集められた20,000の血液サンプルをまず500毎の40のプールに分け,これらを,各プールにおいて1mlに付き2,500ビリオンを限界値とするPCR検査法を行い,その結果40プール中6プールが陽性と判定された。
(2)さらに,(1)で陽性と判定された6プールに対応する各500の血液サンプルをそれぞれ100毎に分けて再度同様なPCR検査を行い,その結果陽性と判定された6つの100血液サンプルからなるプールを特定する。
(3)さらに,(2)で陽性とされた6つの,100単位からなる各サンプルを,それぞれ10サンプル毎の10プールに分けて同様なPCR検査を行って,6つの陽性プールを特定する。
(4)最後に,(3)で陽性とされた6つのプールに対応する各10単位のサンプルを個別に,同様なPCR検査を行い,6つの陽性血液サンプルを特定する。」(以下,「引用発明B」という。)
ここで引用発明Bの(1)の段階を本願発明の(b)工程と対比する。まず,引用発明Bを本願発明の表現に即して記載すると次のようになる。
「パーボウィルスB19のゲノム当量を以下により行う;
-20,000個の個々の献物(donation)から試料をとり,
-その個々の献物試料を40個の試料プールに集め,
-それぞれ核酸測定方法によりこれらの試料中に存在するB19ウィルスゲノムの量を検出し,
それによって試料プール中のウィルスゲノムの検出された量が規定された限界値以下であるこれらの個々の献物(500×34=17000)を品質保証血漿プールに混合し,
試料プール中のウィルスゲノムの検出された量が規定された限界値より大きい,または等しいこれらの個々の献物(500×6=3000)をさらなる処理に付す。」
すなわち,引用発明Bの(1)の段階と,本願発明の(b)は,
「ウィルスのゲノム当量を以下により行う;
-20,000個の個々の献物(donation)から試料をとり,
-その個々の献物試料を40個の試料プールに集め,
-それぞれ核酸測定方法によりこれらの試料中に存在するウィルスゲノムの量を検出し,
それによって試料プール中のウィルスゲノムの検出された量が規定された限界値以下であるこれらの個々の献物(500×34=17000)を品質保証血漿プールに混合し,
試料プール中のウィルスゲノムの検出された量が規定された限界値より大きい,または等しいこれらの個々の献物(500×6=3000)をさらなる処理に付す。」点で一致するものである。
(相違するのは,(i)検出対象のウィルスが,本願発明はHCVであるのに対して,引用発明BではパーボウィルスB19である点,及び,(ii)本願発明は内部標準を使用して限界値を規定しているのに対して,引用発明Bは検出限界値を基準に判定している点,である。)
また,刊行物Bには,
「陰性であるとわかった500の最初のプールを作っている血漿は(テストされる40のうちの34),たった1つの増幅反応の後で,安全に注入されるであろう。僅かばかりの一部単位(この研究においては,20,000のうちの54)が,汚染を除外するために,PCRによる4回のスクリーンが要求される。…我々はなんとか製造の前に感染したプラズマの全6つの単位をタンパク質分離センターから取り戻すことができた。」(B-7)
とも記載されていて,このような記載から,最初のPCR検査で陰性とされたプールに対応する血液,及び,その後のPCR検査で陰性とされたサンプルに対応する血液は,後の血液製剤工程に付される旨理解されるから,引用発明Bに係る方法は,本願発明でいう「品質保証された血漿プールを製造する方法」に相当するものといえる。
そうすると,上記引用発明Aにおいて,抗体試験において「抗体不存在」とされた血漿サンプルに対して,さらに,刊行物Bにおいて,パーボウィルスB19に対する検査法として示されている引用発明Bに係るPCR検査法と同様な方法であって,HCVを対象としたPCR検査法としたものを適用し,そしてその際の「陰性/陽性」の判定を内部標準の検出値を基準として行うことが,当業者にとって容易になし得ることといえるならば,上記相違点に関しては,当業者にとって容易になし得ることといえることになるので,以下,この点について検討する。
(4-2)引用発明Aと引用発明Bの組合せ
献血血液中のパルボウィルスB19に対するPCR検査法について記載した刊行物Bには,
「B19 DNAは,B19 DNAのためのスクリーンがされていない寄贈血漿から製造される非熱処理第VIII及びIX因子の濃縮物の27の別々のバッチのうちの18で検出された。」(B-1),及び,
「6人の個体のうちの5人(p1からp5)は,献血の前には,すべてのサンプルでIgMとIgGとは陰性だった,そして,ウイルス血液が検出されたとき,5つのうちの4つはその時にまだ陰性だった。」(B-6)
として,従来の抗体検査法では陽性判定がなされない血液製剤からPCR検査法によりウイルスDNAが検出されることが示されていて,しかも,
「第VIII因子濃縮物から検出可能なB19を,72hの80℃の乾燥熱処理によって減らせるが,必ずしも常に排除することはできなかった。このことは,血液製剤製造の間のウイルス不活化のための現在の方法が,B19感染力を完全に除くには不十分であるという最近の観察と一致するものであった。」(B-1)
として,汚染DNAは従来行われている加熱処理では完全には排除されないことから,従来の検査法及びウィルス不活化処理には限界があることが述べられている。
また,
「PCRスクリーニングのための本研究により開発された方法は,血液と血液製剤におけるB19の伝染を妨げるために通常適用される得るものであり,感染の医原性の伝染の防止において,重要な役割を演ずることができるであろう。」(B-1)
と記載,血液検査におけるPCR検査法が輸血に伴うB19ウィルス感染防止に対する有効性について記載され,さらに,
「PCRスクリーニングが,現在の血清学的検出方法が部分的にしか効果的でない,他の伝染関連のウイルスの範囲の検出及び排除のために使用されることもできるであろう。」(B-1),
「パーボウイルスB19の検出のためにこの研究において開発される方法は,輸血と血液製剤製造プロセスからの他の病原性ウイルスのPCRによる除外のモデルと考えることができる。」(B-2),
「敏感な個体のパーボウイルスB19感染と,それに付随する合併症の危険性を大いに減らすだけでなく,スクリーニングのこの方法は他の輸血感染ウイルス,特にB型肝炎ウイルスの血清学的スクリーニングを補うのに役立てられるだろう。というのは,感染の継続した伝染は,B型肝炎表面抗原陰性血液から起こるからである。」(B-8)
として,PCR検査法が他の伝染ウィルス検出に対しても応用され得ることことが記載されている。
これに加えて,刊行物Cには,
「PCRは,血漿と細胞が関連する輸血媒介感染症の全部の範囲の研究に適用される得る;DNA複写物が逆転写酵素での処置によってウィルスRNAから作られるならば,RNAウイルスは分析することができる。輸血関係では,レトロウイルス(HIV-1,HIV-2,HTLVI,HTLV-II),HCV及びHBVは,最も重点的にPCR分析を受けるウイルスである。この関連におけるPCRの長所は,『ウインドウ期間』または感染症の血清陰性のステージの間のウィルスを検出するその能力,並びに,ウィルス血症のためや血漿の大きなプールから製造される製品のウイルスの探知のための標識としてのその価値を含む。」(C-1),
「HBVのための献血のスクリーニングを除いて,すべての微生物輸血前テストは,輸血安全性に難題を提示する,持続性感染症に対する抗体の検出に頼っている。そのように,献血が伝染性であるかも知れないが,しかしスクリーニングで陰性である場合に,血清陰性の段階が常に存在する。たとえ,HBsAgに対するスクリーニングであっても,現在の分析の感度は,ウィルス血症直接指標を提供するPCRのようなゲノム増幅技術によって潜在的に達成可能なもののほんの一部分程度に過ぎない。」(C-2),及び,
「輸血細菌学のためのPCRの潜在的有用性は,以下の通りである: (1) 感度(10(exp-18)gの核酸まで検出する);これは大きな血漿プールから作られた産物の試験の際及び,血清転換前の「ウインドウ期間」における感染検出にも価値があり,急性診断を可能とする; (2) 抗体の存在で,本当の免疫と持続性感染症を区別すること; (3) 例えば輸血後の(HIV,HCVにおける母親由来抗体のような)受動抗体に起因する診断における問題を解決すること; (4)系統の区別(HIV-1/2,HTLV-I/II,HCV,HBV 変異体)。」(C-3)
などと記載して,従来の抗体検出法においては,「ウィンドウ期間」と呼ばれる,汚染した血液を検出できずにそのまま「陰性」と判断してしまう期間が存在するという問題があること,及び,そのような問題を解決するためには,PCR検査が有効であることについても記載されている。
さらに,該刊行物Cには,
「C型肝炎ウイルス
HCVの最初のクローニングに続いて我々自身のグループはUKにおいて臨床的にNANBHに感染されたことが確認されたヒト血清から得られたウイルスを独立にクローニング及び配列決定した。他のグループもまた我々と同様にHCVをクローニングし,それゆえ引き続く適用におけるHCVウイルス血症の検出のためのPCRを早期に利用可能とした。」(C-4),及び,
「この非常に高い感度のため,その調整において多数の血漿献物のプールがなされているにもかかわらず,濃縮第VIII因子のバッチにおいて,PCRはまたHCVのようなウイルスの検出において大きな価値を持ち,以前に議論されたように;PCRはこれらの産物によるNANBHの伝播の可能性と良好な正の相関を持つ。
PCRの鋭敏な感度に照らしてみれば,HCVによる感染のハイリスク患者が試験されたときに,抗HCVの血清学的解析が,全てのPCR反応性サンプルを検出できないことは驚くべきことではない。
先に述べた通り,PCRはHCVの異なる系統の区別に利用されうる。この文脈において,配列解析のためのウイルス核酸の増幅へのPCRの使用は明らかな有益性を持つ。」(C-5)
などと記載しており,HCVに対するPCR検査法が実際に利用可能となっていること加えて,そのようなHCVのPCR検査法は,感度が高く多数の血漿プールを対象とする検査にも有益である旨記載されている。
そすうすると,刊行物B及びCにおいて,上記したような従来の抗体検査法に関する問題点が指摘されていることに加えて,そのような問題点に対する解決策としてPCR法が有効に機能するであろうとする示唆がなされており,さらに,HCVに対するPCR検査法についても,刊行物Cに記載のように既に利用可能となっているのであるから,当業者が,刊行物C記載のようにHCVに対するPCR検査法が利用可能となっていることを踏まえて,刊行物B及びCに記載された,従来の抗体検査法に関する問題点,並びに,その問題点の解決策としてPCR検査法があることの示唆に触れたならば,引用発明Aに係る献血血液に由来する血漿に対する抗体検査法に対して,さらに引用発明Bに係るPCR法によるウィルス検査法を,HCVに対するPCR検査法に変更しつつ,組み合わせることを想到することは,格別の創意工夫を要することとはいえない。
そして,輸血のための使用する血液における感染症ウィルスによる汚染ということの重大性に鑑み,より慎重を期して,複数の検査を組み合わせて行うことは,当業者ならば当然に考慮することといえることから,従来の抗体検査に加えて,さらにPCR検査法を組み合わせることも当業者が適宜なし得ることといえる。
また,刊行物Cの『まとめ』の項には,該刊行物Cで記載した事項を開示した上でなお,
「増幅及び可視化のための最新の過程は現在発展中であるが,日々のサンプル数百個の繰り返しの取り扱いにおいて生じるクロス汚染の問題が生じており,PCRのコストを現在の血清学的手法と同レベルにまで減縮できたとしても,日常の輸血前試験のためには巨大なハードルが残っている。」(C-6)
として,PCR検査法に関して,『コストの問題』に加えて『クロス汚染の問題』が大きなハードルである旨指摘している。しかしながら,前者については,コスト等の経済的な理由は,技術思想として容易に想到し得るか否かを直接否定する根拠となるものとはいえないし,また,後者についても,刊行物Bにおいて「異なる配列を各々の献血者で発見したことは,スクリーニングで得られた陽性結果が,サンプルまたは緩衝液の不注意な汚染の結果であったという可能性を排除している。」(B-5)と記載されていて,大量サンプルを対象とした複数回に及ぶPCR検査法においても,実際にはそのようなクロス汚染が生じなかったことを記載しているのであるから,上記2点とも,PCR検査法を献血血液の汚染検査へ適用することについての阻害要因として考慮すべき事項であるとすることができない。
したがって,引用発明Aに対して,さらに引用発明BをHCVに対するPCR検査法に変更しつつ,組み合わせることは当業者が容易になし得ることである。
(4-3)内部標準について
引用発明BのPCR検査法では,検出限界値を基準として汚染ウィルスの有無を判定しているのに対して,本願発明は内部標準を使用してその検出値を基準として汚染ウィルスの有無を判断しているので,この点について検討する。
刊行物Dには,PCR検査法において頻繁に生じる誤った陰性結果の発生を防ぐための陽性コントロールに関する発明が記載されている。そして,その内容は,当該検査法の条件下で同様に増幅する,同一配列のプライマーを有する配列既知のベクターを陽性コントロールとして用い,該陽性コントロールの存在のもとで,特定の核酸配列を含む疑いのある標本に対してPCR検査法を実行する,というものであり((D-1)?(D-4)),さらに具体例として,血液標本中のC型肝炎の検出に対する応用例についても記載されている(D-5)。
PCR検査法における誤った陰性結果の発生は,広くPCR検査法に共通する問題であるから,引用発明Bに係るPCR検査法を,引用発明Aに組み合わせる際にも当然に同様な問題の解決のために,刊行物Dに記載の陽性コントロールを利用した手法が考慮されるべきものである。
してみると,上記引用発明に対して,刊行物B記載のPCR検査法を組み合わせる際に,刊行物D記載のPCR検査法における陽性コントロール,すなわち内部標準を同一試験管中に存在させてPCR検査を行って,該内部標準の検出値を基準として汚染ウイルスの有無を判断することによりPCR検査の精度・信頼性を高めることは,当業者が容易になし得ることといえる。
したがって,内部標準を使用することなく,検出限界値を基準としている引用発明Bに係るPCR検査法に対して,刊行物Dに記載の陽性コントロールを内部標準として使用する手法を適用することは,当業者が容易になし得たものである。
(4-4)効果について
一方,本願明細書の記載を検討しても,本願発明により,当業者にとって,格別予期し得ない効果が奏されたものとすることができない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,上記刊行物A?Dに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので,その余の請求項について言及するまでもなく,本出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

以上
 
審理終結日 2012-01-12 
結審通知日 2012-01-17 
審決日 2012-01-30 
出願番号 特願平8-533598
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 広介  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 上條 のぶよ
大久保 元浩
発明の名称 1以上の血漿誘導体を含む、品質保証された薬物  
代理人 田村 恭生  
代理人 品川 永敏  
代理人 山中 伸一郎  
代理人 鮫島 睦  
代理人 森本 靖  

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