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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 F28F |
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管理番号 | 1258576 |
審判番号 | 無効2011-800076 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-05-13 |
確定日 | 2012-06-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3567000号発明「熱交換チューブ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第3567000号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。 平成 5年12月14日 優先日 平成 6年12月13日 特許出願(特願平6-308941号) 平成16年 6月18日 特許権の設定登録(請求項の数3) 平成20年10月 1日 無効審判(無効2008-800192号)請 求 平成21年 1月27日 審判事件答弁書 平成21年 4月27日 口頭審理、無効理由通知 平成21年 6月 5日 訂正請求書(請求項の数1)、意見書 平成21年 7月27日 弁駁書 平成21年10月23日 審決(訂正認容。請求は成り立たない。) 平成22年 2月23日 知的財産高等裁判所出訴(平成22年(行ケ) 第10063号) 平成23年 2月28日 知的財産高等裁判所判決(請求を棄却する。) 平成23年 5月13日 本件無効審判の請求 平成23年 8月29日 審判事件答弁書 平成22年 9月29日 審理事項通知書 平成22年11月 8日 口頭審理陳述要領書(請求人)、上申書(請求 人) 平成22年11月15日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成23年11月29日 口頭審理 平成23年12月19日 上申書(請求人) 第2 当事者の主張 1.請求人の主張の概要 請求人は、審判請求書において、「特許第3567000号発明の明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書、口頭審理陳述要領書、及び、上申書を提出した。そして、口頭審理の結果を総合すると、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。 本件の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証?甲第9号証に記載された発明(以下「甲第1発明」?「甲第9発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない。 したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 そして、その理由について以下のように主張する。 (1)無効理由I(甲第1号証を主引例とした場合) 本件特許発明と、甲第1発明とを対比すると、両者は、チューブ本体とこのチューブ本体上に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブであって、この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数のピンから構成された熱交換チューブである点で共通する。一方、本件特許発明ではピン及びチューブ本体が共に炭素鋼であり、且つ、ピン及びチューブ本体の炭素含有量の数値範囲が具体的に特定されているのに対し、甲第1発明ではピン及びチューブ本体の材質の特定がなされていない点で両者は相違する。 しかしながら、甲第1号証及び本件特許明細書で出願人が自認する公知事実(甲第2?3号証からも導き出せる事実)から把握される本件特許発明の優先権主張の日当時における技術水準から出発して、甲第4、5及び8号証における示唆に従って、甲第1号証のピンの炭素含有量を、熱交換チューブのピンの熱伝導度を向上させる目的で、あるいは、発電用ボイラにおける熱交換チューブの溶接割れを防止する目的で、本件の優先権主張の日当時における技術水準における「少なくとも0.1%」から、「0.03乃至0.05%」に変更することは当業者にとって容易であったというべきである。 また、平成22年11月8日口頭審理陳述要領書(請求人)において、「甲1号証のような熱交換チューブにおけるチューブ本体の炭素含有量とピンの炭素含有量の両方を少なくとも0.1%とすることは、本件発明の優先日当時における技術水準(以下、「優先日当時の技術水準」という。)であったと認められる。そうすると、本件発明は、チューブ本体の炭素含有量とピンの炭素含有量の両方が少なくとも0.1%であった優先日当時の技術水準における亀裂発生のリスクという課題に鑑みて、ピンの炭素含有量を0.03乃至0.05%にした点にこそ特徴があると見なければならない。すなわち、本件発明の特徴点は、『ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されていること』である。」(第2ページ第21?30行)と主張すると共に、甲第5号証について、「仮に『発電用ボイラ・・・の鉄皮』が発電用ボイラにおける特定の箇所(例えば火炉の構造部材)のみを意味し、その文言から発電用ボイラにおける熱交換チューブの管やピンが排除されると解釈しても、上記発電用ボイラの特定の箇所(例えば火炉の構造部材)と熱交換チューブとが発電用ボイラ内において一緒に使用されるものであり、両者に密接な関連性があることは明らかである。」(第5ページ第13?17行)と主張する。 (2)無効理由II(甲第3号証を主引例とした場合) 本件特許発明と、甲第3発明とを対比すると、両者は、チューブ本体とこのチューブ本体上に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブであって、この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数のピン(スタッド)から構成されており、前記チューブ本体と前記ピンとが共に炭素鋼から構成されている熱交換チューブである点で共通している。一方、本件特許発明ではピン及びチューブ本体の炭素含有量の数値範囲が具体的に特定されているのに対し、甲第3発明ではスタッド及び管10の材質がそれぞれA36炭素鋼、SA178炭素鋼であることが記載されているものの、それらの炭素含有量の具体的数値は不明である。 しかし、ASME制定規格SA178に対応するASTEM制定の規格A178(甲第7号証)の炭素含有量に鑑みれば、甲第3号証の管10の材料であるSA178炭素鋼は、「少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼」と言ってよい。 そして、甲第5号証には、「発電用ボイラなどの鉄皮材として、炭素含有量が0.03?0.15%の炭素鋼を適用する」が記載されており、しかも甲第5号証は発電用ボイラの鉄皮に適用される炭素鋼に関するものであって本件特許発明及び甲第3発明と同一の技術分野に属する。しかも、炭素含有量を0.03?0.15%とすることで、溶接割れの防止とクリープ強度向上とを両立できる、という効果があることも甲第5号証に開示されている。さらには、甲第8号証には、炭素含有量がゼロに近づくに従って炭素鋼の熱伝導率が上昇する傾向が示されている。したがって、甲第3発明の熱交換器において、溶接性の改善や熱効率の改善を目的として、炭素含有量が「0.03?0.05%」の炭素鋼からなるピン(スタッド)を採用することは当業者が容易になし得たことである。 (3)無効理由III(甲第9号証を主引例とした場合) 本件特許発明と甲第9発明とを対比すると、両者は、チューブ本体とこのチューブ本体上に設けれた表面拡大要素からなる熱交換チューブであって、前記チューブ本体と前記ピンとが共に炭素鋼から構成されている熱交換チューブである点で共通している。一方、本件特許発明では表面拡大要素としてピンを用いるのに対し、甲第9発明の表面拡大要素はフィンである点で両者は相違する。また、本件特許発明ではピン及びチューブ本体の炭素含有量の数値範囲が具体的に特定されているのに対し、甲第9発明ではチューブの材質として通常の炭素鋼を用いることが開示されているもののチューブの具体的な炭素含有量は開示されておらず、フィンの材質として炭素含有量が少ない炭素鋼が開示されているもののフィンの炭素含有量の具体的な数値としては0.003%のみが示されているにとどまる点で相違する。 しかしながら、甲第2?3号証に記載された技術事項に倣って、甲第9発明において、チューブを少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、甲第5号証には、「発電用ボイラなどの鉄皮材として、炭素含有量が0.03?0.15%の炭素鋼を適用する」ことが記載されており、しかも甲第5号証は発電用ボイラの鉄皮に適用される炭素鋼に関するものであって、本件特許発明と甲第9発明とは同一の技術分野に属する。しかも、炭素含有量を0.03?0.15%とすることで、溶接割れの防止とクリープ強度向上とを両立できる、という効果があることも甲第5号証に開示されている。さらに、甲第8号証には、炭素含有量がゼロに近づくに従って炭素鋼の熱伝導率が上昇する傾向が示されている。したがって、甲第9発明のフィンチューブにおいて、溶接性の改善や熱効率の改善を目的として、炭素含有量が「0.03?0.05%」の炭素鋼からなる表面拡大要素を採用することは当業者が容易になし得たことである。 [証拠方法] (ア)甲第1号証:国際公開第90/02916号公報 (イ)甲第2号証:米国特許第3731738号明細書 (ウ)甲第3号証:特開平63-187002号公報 (エ)甲第4号証:特表平4-500717号公報 (オ)甲第5号証:特開平5-320753号公報 (カ)甲第6号証:特開昭48-33205号公報 (キ)甲第7号証:ASTM(アメリカ材料試験協会)による規格A17 8/A178M-90aの写し (ク)甲第8号証:溶接・接合便覧 溶接学会編、852ページ (ケ)甲第8-2号証:同上、853?854ページ (コ)甲第9号証:特開昭57-60194号公報 2.被請求人の主張の概要 被請求人は、審判事件答弁書において「特許第3567000号特許を無効とする理由は認められない。従って、当該特許を無効とすることはできない。審判費用は、審判請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書を提出した。そして、口頭審理の結果を総合すると被請求人の主張は、概略、次のとおりのものである。 本件特許発明は、甲第1発明?甲第9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものでない。 そして、その理由について以下のように主張する。 (1)無効理由I(甲第1号証を主引例とした場合)について 甲第1発明に甲第2?8発明を適用する動機づけは存在しない。 仮に適用したとしても、甲第1?8発明のいずれにも本件特許発明の「チューブ本体17の炭素含有量を少なくとも0.1%以上とし、ピン18の炭素含有量を0.03?0.05%として炭素含有量の差を設けること」は、開示も示唆もされておらず、本件特許発明の出願当時において当業者が容易に想到し得たとは到底言えない。 (2)無効理由II(甲第3号証を主引例とした場合)について 甲第3発明に甲第5、7?8発明を適用する動機づけは存在しない。 仮に適用したとしても、甲第3、5、7?8発明のいずれにも本件特許発明の「チューブ本体17の炭素含有量を少なくとも0.1%以上とし、ピン18の炭素含有量を0.03?0.05%として炭素含有量の差を設けること」は、開示も示唆もされておらず、本件特許発明の出願当時において当業者が容易に想到し得たとは到底言えない。 (3)無効理由III(甲第9号証を主引例とした場合)について 甲第9発明に甲第2?3、5、7?8発明を適用する動機づけは存在しない。 仮に適用したとしても、甲第2?3、5、7?9発明のいずれにも本件特許発明の「チューブ本体17の炭素含有量を少なくとも0.1%以上とし、ピン18の炭素含有量を0.03?0.05%として炭素含有量の差を設けること」は、開示も示唆もされておらず、本件特許発明の出願当時において当業者が容易に想到し得たとは到底言えない。 [証拠方法] (ア)乙第1号証:ASTM(アメリカ材料試験協会)による規格A36 /A36M-84aの写し 第3.本件特許発明 本件特許第3567000号に係る発明は、平成21年6月5日にした訂正請求が認容され確定したので、当該訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「チューブ本体(17)とこのチューブ本体上に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブ(16)であって、この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数のピン(18)から構成されており、前記チューブ本体と前記ピンとが共に炭素鋼から構成されている熱交換チューブ(16)において、チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されていることを特徴とする熱交換チューブ。」 第4 当審の判断 1.甲各号証に記載された発明、あるいは、甲各号証に記載された技術事項について (1)甲第1号証(国際公開第90/02916号)について 甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「An object of the present invention is therefore to offer an improved design of a pin tube of the type described in SE 346 370, said improvement entailing a considerable increase in heat-recovery at the rear of the pin tube, without any substantial increase in flow resistance.(訳:それゆえ、本発明の目的は、SE 346 370号明細書で説明した形式のピンチューブの改良された設計を提案することにある。前記改良によって、実質的に流れ抵抗を全く増大させることなく、ピンチューブの後方における熱回収を著しく高める。)」(第2ページ第22?26行。訳は、平成23年11月8日付け上申書(請求人)に記載された翻訳文を基に当審により修正した。以下同様。) イ.「In Figure 1,10 denotes a heat exchanger tube for a steam or hot-water boiler of optional known type, inserted in a casing tube 11 extending from an inlet 12 at a combustion chamber 13 to an outlet 14 at a flue-gas channel. The boiler may of course comprise a plurality of tubes arranged in parallel. The tube 10 communicates via pipe pieces 15 and 16, respectively, with a water space 17 surrounding the casing tube 11. Along a substantial portion L of its length the tube 10 is provided externally with pins welded radially and at right angles to the longitudinal axis of the tube 10.(訳:図1において、符号10は、任意の公知の形式の蒸気又は熱水ボイラーに用いられる熱交換チューブを示している。熱交換チューブ10は、燃焼室13における入口12から、燃焼排ガス路における出口14まで延びるケーシングチューブ11に挿入されている。もちろん、ボイラーは、並列に配置される複数のチューブから構成されてもよい。 チューブ10は、管ピース15及び16を介して、ケーシングチューブ11を取り囲むウォータースペース17に連通している。チューブ10のうち長さLの部分に沿って、その外側に多数のピンが設けられている。これらピンは、チューブ10の半径方向に、且つ、長手方向に対して直角に溶接されている。)」(第4ページ第19?30行) ウ.「The pins are welded radially to the outer wall of the tube 10, with uniform spacing between the pins in each row and with uniform pitch between the rows. The pins in adjacent rows may possibly be displaced half a space in relation to each other.(訳:複数のピンは、各列におけるピン間に一定の空間を有し、各列同士が一定の幅を有して、チューブ10の外壁に半径方向に溶接されている。隣接する列におけるピンは、互いに半空間を置いて配置されてもよい。)」(第5ページ第8?12行) そこで、上記ア?ウの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の甲第1発明が記載されている。 「外側に多数のピンが設けられている熱交換チューブ10において、ピンは、熱交換チューブ10の半径方向に、且つ、長手方向に対して直角に溶接されている熱交換チューブ10。」 (2)甲第2号証(米国特許第3731738号明細書)について 甲第2号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア.「Therefore, one object of this invention (inter alia) is to increase heat transfer of convection tubes. Another object of this invention is to increase the useful life of fins on convection tubes and prevent their deterioration.(訳:それゆえ、本発明の目的の1つは、(とりわけ)対流チューブの熱伝達を高めることである。本発明の別の目的は、対流チューブのフィンの耐用寿命を長くし、それらの劣化を防止することにある。)」(第1欄第54?59行) イ.「As seen in FIGS. 2 and 3, finned tubes 26 include tube walls 27 with fins 28 connected thereto (usually by welding) and projecting outwardly therefrom. Fins 28 have proximal portions 29 adjacent tube walls 27 and distal portions 31 remote therefrom. Fins 28 of FIG. 2 are serrated and wrapped helically about cylindrical tube walls 27. It will be understood that fins 28 need not be serrated, nor need they be wound helically. Fins 28 could likewise be in the form of studs or otherwise within the context of this disclosure. According to the teaching of this invention, tube walls 27 and proximal portions 29 are made preferably of carbon steel or a like relatively-high heat-conducting and relatively-low heat-resisting material. Of course, modified low carbon steels, such as United States Steel Company's Cor-Ten A which is similar to carbon steel but has better corrosion resistance, are contemplated here along with carbon steel. The composition of Core-Ten A is as follows: Element Percentage Carbon 0.12-max ・・・ Also according to the teaching of this invention, distal portions 31 are made of a relatively-low heat-conducting and relatively-high heat-resisting material such as stainless steel, preferably with one of the compositions set forth in Table I.(訳:図2及び3に、チューブ壁27に多数のフィン28が(通常は溶接により)取り付けられた多数のフィン付きチューブ26が示されている。フィン28は、チューブ壁27から外向きに突出している。フィン28は、チューブ壁27に隣接した近傍部位29とチューブ壁27から遠隔の末端部位31とを有する。図2のフィン28は、鋸歯状であって、円筒状のチューブ壁27の周りにらせん状に巻き付けられている。フィン28は鋸歯状である必要も、らせん状に巻き付けられている必要もない。フィン28は、スタッド状のものであっても、本開示の範囲内にある他のものであってもよい。 本発明の教示によれば、チューブ壁27と近傍部位29は好ましくは炭素鋼で作られ、又は比較的高い熱伝導性及び比較的低い耐熱性の炭素鋼に似た材料で作られる。ここで、もちろん、炭素鋼に似ているが、良好な耐食性を有するUnited States Steel CompanyのCore-Ten Aのような改質された低炭素鋼も考えられる。 Core-Ten Aの成分は次の通りである。 元素 質量% 炭素 0.12%?最大値 ・・・ また、本発明の教示によれば、末端部位31は、ステンレス鋼、好ましくは表1に記載する成分のような比較的低い熱伝導性および比較的高い耐熱性の材料で作られる。)」(第2欄第39行?第3欄第5行) そこで、上記ア?イの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第2号証には、次の甲第2発明が記載されている。 「チューブ壁27上に取り付けられたフィン付きチューブ26であって、フィン28は、チューブ壁27に溶接により、外向きに突出する多数のスタッド状に構成されているフィン付きチューブ26において、チューブ壁27とフィン28の近傍部位29とは、比較的高い熱伝導性及び比較的低い耐熱性の材料である炭素含有量0.12%以上の低炭素鋼で作られ、フィン28の末端部位31は比較的低い熱伝導性および比較的高い耐熱性の材料であるステンレス鋼から構成されているフィン付きチューブ26。」 (3)甲第3号証(特開昭63-187002号公報)について 甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「(1)ハウジング、該ハウジング内に設けた反応室、該反応室に設けた空気分配手段、該反応室内の流動床領域と共に設けた複数の熱交換管、及び該熱交換管の燃焼側温度を上昇させるために該熱交換管に設けたフィン手段からなる流動床ボイラー。」(特許請求の範囲) イ.「第4A図は、管10に円周フィン13を取付けることによって燃焼側温度を高くする、本発明による一つの方法を示す図である。これら円周フィンは、第6図に示すように、管に連続螺旋状に巻付けることができる。第4B図に示すように、フィン間に縦方向に間隔sを維持するが、この間隔は管に隣接して不活性床材料の停滞層を維持するのに十分小さくなければならない。しかし、少なくとも垂直床管においては、円周フィンの使用による全体的な効果によって、伝熱(率)が低下することがある。本発明では、直径(D)が1?6インチの範囲にあるSA178及びSA106炭素鋼の管を使用することを意図している。また、A36炭素鋼、タイプ304Hステンレス鋼、又はタイプ316Hステンレス鋼から形成したフィンを使用した。」(第5ページ左上欄第19行?同右上欄第15行) ウ.「直径(D)が3.0インチ、そして肉厚(W)が0.120インチのSA178炭素鋼管及びA36炭素鋼フィンを使用すると共に、フィン・管間を完全に浸透熔接した一つの特定装置では、・・・得られた。」(第5ページ右下欄第4?11行) エ.「円周フィンあるいは縦フィンのいずれも連続リボン材料で構成する必要はない。すなわち、連続円周パターン又は縦パターンを構成するように、管に取付けた異なる形状のスタッドから形成してもよい。」(第5ページ右下欄第18行?第6ページ左上欄第2行) オ.上記ア?エの記載事項及び図面の図示内容から、「流動床ボイラー」が、熱交換管10と、この熱交換管10に取付けられた円周フィン13とからなる熱交換器を構成すること、及び、熱交換管10には外向きに延在する多数のスタッドが取り付けられていることが示されている。 そこで、上記ア?エの記載事項、上記オの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、甲第3号証には、次の甲第3発明が記載されている。 「熱交換管10とこの熱交換管10に取付けられた円周フィン13からなる熱交換器であって、円周フィン13は、熱交換管10の外側に浸透熔接されて熱交換管10から外向きに延在する多数のスタッドから構成されており、熱交換管10とスタッドとが共に炭素鋼から構成されている熱交換器において、 熱交換管10は、SA178炭素鋼から形成され、スタッドは、A36炭素鋼から形成されている熱交換器。」 (4)甲第4号証(特表平4-500717号公報)について 甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「1.実質的に四角型の薄板-金属片(11)からなり、前記薄板-金属片は一方の長手方向側部の中央-領域に180°以下の角度で延在する実質的に円形の凹部を備え、チューブに対して溶接するよう設計されている熱交換器チュ-ブの表面拡大要素において、前記薄板-金属片は金属片の他方の長手方向側部から延在して薄板-金属片(11)の短手方向側部と略平行して進行するスリット(14、15、16)を有し、かつ中央部スリットは金属片の短手方向側部に最近接して位置するスリットに対して少なくとも同じ長さである熱-交換器チューブの表面拡大要素。」(請求の範囲) イ.「種々の表面拡大要素が年来開発されて来たが、これらの中には、チューブに沿ってもしくは直角方向に溶接されるピン、フィンおよびストリップやあるいはチューブの周りに螺旋状に適用されるリボン形状の要素などが含まれる。 公知の表面拡大要素では、熱交換器の製造コストを制限しかつこれと同時に比較的容易に外側表面に清浄度を保持できると共に作動中の変形を無視できる程度に維持できる熱交換器を提供することは困難であることが明らかにされている。 従って、本発明の1つの目的は、表面拡大要素が、それ自体を容易かつ低コストで製造できると共にチューブに対して簡単かつ安価に溶接され、そしてその構造が効率的に清掃できると共に作動中の変形を無視できる程度に維持できるような、前記形式の熱交換器チューブにおける表面拡大要素を提供することにある。」(第2ページ左上欄第15行?同右上欄第5行) ウ.「第1図において、参照符号10は熱交換器の一部分を構成するチューブを示し、このチューブはその外側に溶接された金属片11形状の表面拡大要素を備える。この部品11は同一平面内において好適には抵抗溶接によりチューブに対して対状に溶接されており、第2および3図から分かるように、一対の金属プレートはチューブに沿って正確な間隔、例えば10mmを離間して配置されている。」(第3ページ左上欄第9?15行) エ.「要素11はチューブ11と同じ材料、例えば鋼から構成することができる。要素の材料は、効率を向上するために、高い熱伝導率を有することが重要である。従って、鋼を使用する場合には、低炭素含有量の鋼が好適に選定される。」(第3ページ左下欄第21?24行) そこで、上記ア?エの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第4号証には、次の甲第4発明が記載されている。 「チューブ10とこのチューブ10上に設けられた表面拡大要素11からなる熱交換器であって、表面拡大要素11は、チューブ10の外側に溶接された四角型の簿板-金属片から構成され、チューブ10は鋼から構成され、表面拡大要素11は、高い熱伝導率を有する低炭素含有量の鋼から構成されている熱交換器。」 (5)甲第5号証(特開平5-320753号公報)について 甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「【請求項1】重量%で、C:0.03?0.15%、Si≦1.0%、Mn:0.5?1.5%、P≦0.03%、S≦0.03%、Cr:0.1?0.5%、Mo:0.05?0.3%、Al≦0.01%、N:0.005?0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼をオーステナイト化温度以上に加熱した後、冷却途中のAr3よりも高い温度からAr1直上の温度域で連続して熱間加工してなることを特徴とする高温強度の優れた炭素鋼の製造方法。」(【特許請求の範囲】) イ.「【産業上の利用分野】この発明は溶接性を損ねることなく、高温強度を改善したもので、発電用ボイラや転炉などの鉄皮に適用される高温強度の優れた炭素鋼の製造方法に関するものである。」(段落【0001】) ウ.「【発明が解決しようとする課題】上記の従来鋼を発電用ボイラおよび転炉などの鉄皮の高温環境下で構造部材に使用した場合、炭素鋼は、常温および高温での降伏応力、引張強さおよびクリープ強度が低いために板厚を厚くしなければならないので設備費がかさむ。また0.5Mo 鋼はクリープ破断強度は炭素鋼に比べて著しく優れているが、クリープ破断伸びが著しく低く、長時間使用中に亀裂が生じたりするし、溶接性も悪い。本発明の目的は、溶接性を損なわない成分範囲の炭素鋼において、優れた高温強度を附与する製造方法を提供することである。」(段落【0003】) エ.「【作用】まず、本発明における成分限定理由について説明する。C:CはCr、Moとともに炭化物を形成し、クリープ強度を上昇させる。しかし0.15%を越えると溶接割れが生じやすく、またかえってクリープ強度を低下させることになる。一方、クリープ強度上昇のためには、0.03%以上必要であり、従って0.03?0.15%とした。」(段落【0005】) そこで、上記ア?エの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第5号証には、次の甲第5発明が記載されている。 「発電用ボイラおよび転炉などの鉄皮の材料として使用される炭素鋼において、溶接割れを生じないためには0.15%以下の炭素含有率とすることが必要であり、一定の強さの力を継続してかけて破断したときの強度であるクリープ強度を大きくするためには0.03%以上の炭素含有率とすることが必要であること。」 (6)甲第6号証(特開昭48-33205号公報)について 甲第6号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「煙道ガス通路7の内部には、棒管13が配置されている。これら棒管13の下部中の中には水区域3から水が流入し、そしてこれら棒管13は水によつて通流される。棒管13の上端部は蒸気区域5と連通されている。棒管13の周囲には煙道ガスが流れ、そして棒管13の外面には、棒14の形式にされた表面拡大要素が取付けられている。」(第2ページ左上欄第10?17行) イ.「棒14が焼切れるという前述した問題は、これら棒14が鉄から作られているか、・・・かに関係無く従来生じていることに留意を要する。」(第2ページ右上欄第8?12行) (7)甲第7号証(ASTM(アメリカ材料試験協会)による規格A178/A178M-90a)について 甲第7号証には、次の事項が記載されている。 ア.表1には、Grade A の低炭素鋼の組成について、炭素含有量が0.06?0.18%であることが示されている。 (8)甲第8及び8-2号証(溶接・接合便覧 溶接学会編)について 甲第8及び8-2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.甲第8号証の図2・6には、炭素鋼の炭素含有量がゼロに近づくに従って熱伝導率が上昇する傾向が図示されている。 イ.甲第8-2号証の図2・12には、炭素鋼の12.7mm溶接部の最高硬さについて、炭素含有率がおよそ0.1?0.5%の範囲において、炭素含有量が増加すると12.7mm溶接部の最高硬さが増加する傾向が図示されている。 (9)甲第9号証(特開昭57-60194号公報)について 甲第9号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア.「(1)金属製のチユーブと、このチユーブに一体または別個に設けられた一連の金属製のフインからなる金属製フインチユーブにおいて、前記チユーブおよびフインの外表面にほうろう被膜が施こされていることを特徴とするフインチユーブ。 (2)前記フインチユーブの材質は通常の炭素鋼でありかつ各前記フインの材質は炭素含有率の低い低炭素鋼である特許請求の範囲第1項記載のフインチユーブ。」(特許請求の範囲) イ.「本発明は熱交換器に含まれるフインチユーブの改良に関するものである。 通常、硫黄分の少ない排ガスを用いる排熱回収用熱交換器においては炭素鋼、アルミニウム、ステンレス鋼等のフインチユーブを使用しても特に問題を起こしていないが、ボイラーの燃焼排ガスなどのように硫黄分の多い排ガスから熱回収する多管式熱交換器の場合、酸露点腐食、すなわち排ガス中に含まれる硫黄酸化物がフインチユーブに接触し、酸露点温度以下になるとフインチユーブの表面に硫酸となつて付着し、その硫酸がフインチユーブを腐食する現象が生じ、そのため多管式熱交換器の耐用年数を著しく短縮する問題があつた。 このような酸露点腐食の問題に対処するため従来はフインチユーブにチタン等の高級材料を使用して熱交換器の寿命を延長するような努力がなされてきたが、これらの材料は高価でしかも加工性が悪く、その上熱交換性能が悪いためこの種の用途に用いられる熱交換器としては好適なものとは言えなかつた。また、酸露点腐食の防止のため安価な材料、例えば炭素鋼からなるフインチユーブの表面に耐食性および耐熱性のある塗料をコーテイングすることも行われてきたが、冷却と加熱の繰り返しによつて被膜の剥離が生じ、コーテイングの不完全な部分が酸露点腐食によつて著しく浸食され、熱交換器の品質安定化が計れず、充分な耐用年数が得られない等の欠点があつた。」(第1ページ左下欄第16行?第2ページ左上欄第8行) ウ.「第1図は適宜本数のフインチユーブからなる熱交換器(1)の全体を示すものであり、フインチユーブ(10)、(10)は金属製のチユーブ(11)と、溶接などの適当な方法によりチユーブ(11)に一体または別個に取付けられた一連の金属製のフイン(12)からなり、熱交換器の両端に設けられたヘツダー(2)、(3)の間に設置される。それらのヘツダーには、一方に入口管(4)が他方に出口管(5)が取付けられる。本発明によるフインチユーブの特徴は、第2図に示すように、チユーブ(11)およびフイン(12)の外表面にほうろう被膜(13)が施されていることであり、チユーブ(11)およびフイン(12)の材料としては安価な炭素鋼を用いることができる。さらに好ましくは、チユーブ(11)の材質は通常の炭素鋼であつても良いが、フイン(12)の材料としては炭素含有率の低い低炭素鋼、例えばほうろう用極低炭素鋼が用いられる。」(第2ページ左上欄第17行?同右上欄第15行) エ.「炭素鋼へのほうろう被膜の施行に関しては、その片面にのみ施す場合には炭素鋼の炭素含有率は被膜の性能にあまり影響を及ぼさないが、両面にほうろう被膜を施す場合には炭素鋼の炭素含有率が高いと、ほうろう被膜に所謂「つま飛び」現象なる欠陥や、焼成中に発泡が生じ、ほうろう被膜の性能を損なうのみでなく、被膜の生成さえも難しくなる。母材たる炭素鋼の両面にほうろう被膜を施すには例えば0.003%程度の炭素含有率の低い低炭素鋼を用いると両面に良好なほうろう被膜が形成される。従つて、チユーブは外表面のみにほうろう被膜が施されるので通常の炭素鋼でよい。この方が安価に製作できる。フインにはその両面にほうろう被膜が施されるので、前記のように低炭素鋼が用いられるのが好ましい。」(第2ページ右上欄第16行?同左下欄第12行) オ.第2図には、チユーブ11には、外向きに延在する多数のフインが設けられていることが図示されている。 そこで、上記ア?エ記載事項、上記オの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、甲第9号証には、次の甲第9発明が記載されている。 「チユーブ11とこのチユーブ11に設けられたフイン12からなるフインチユーブ10であって、フイン12は、チユーブ11の外側に溶接され、チユーブ11から外向きに延在する多数のフイン12から構成されており、チユーブ11およびフイン12の外表面にほうろう被膜が施され、チユーブ11とフイン12が共に炭素鋼から構成されているフインチユーブ10において、 チユーブ11は通常の炭素鋼から構成され、フイン12は0.003%程度の低炭素鋼から構成されているフインチユーブ10。」 2.無効理由Iについて (1)本件特許発明と甲第1発明との対比 本件特許発明と甲第1発明とを対比する。 甲第1発明の「外側に多数のピンが設けられている熱交換チューブ10」は、ピンが熱交換チューブ10を構成する管に設けられるものであり、ピンは管の表面積を増大させるものであるから、本件特許発明の「チューブ本体(17)とこのチューブ本体上に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブ(16)」に相当し、同様に、 「ピンは、熱交換チューブ10の半径方向に、且つ、長手方向に対して直角に溶接されている」ことは、「この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数のピン(18)から構成されて」いることに相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「チューブ本体とこのチューブ本体上に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブであって、この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数のピンから構成されている熱交換チューブ。」 [相違点] 本件特許発明では、チューブ本体とピンとが共に炭素鋼から構成され、チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は,0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成されているのに対して、甲第1発明では、チューブ本体とピンの材料が共に不明である点。 (2)当審における判断 ア.甲第2発明について 甲第2発明のフィン付きチューブ26のチューブ壁27と、フィン28の近傍部位29とは、比較的高い熱伝導性および比較的低い耐熱性の材料である炭素含有量0.12%以上の低炭素鋼から作られている。 一方、フィン28の末端部位31は、比較的低い熱伝導性および比較的高い耐熱性のステンレス鋼から作られ、炭素鋼は用いられていない。 そうすると、甲第2発明は、チューブ壁27についてみると、少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成されているが、フィン28についてみると、比較的低い熱伝導性および比較的高い耐熱性の材料で作られるステンレス鋼からなる末端部位31を有するので、本件特許発明の「ピンが炭素鋼から構成されている」なる発明特定事項を具備しないとともに、本件特許発明の奏する「低減された炭素含有量がピンの熱電導率を増大」させる(特許明細書段落【0018】)なる効果を奏するものではない。 また、甲第2発明のフィン28は、ステンレス鋼からなる末端部位31と、炭素含有量0.12%以上の低炭素鋼で作られる近傍部位29からなるので、本件特許発明の「ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる発明特定事項も具備しない。 そして、甲第2発明は、対流チューブの熱伝達を高め対流チューブのフィンの耐用寿命を長くし、それらの劣化を防止することを解決する(上記1.(2)アを参照。)ために、フィン28とチューブ壁28との材料を特定するものであるから、技術事項としてチューブ壁28のうち、課題解決のために不可欠のステンレス鋼で作られる末端部位31と近傍部位29とを一体として抽出することなく、近傍部位29のみを単独で抽出することはできない。 してみると、甲第2発明は、チューブ壁27とフィン28とが、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することを示唆するものではない。 さらに、甲第1発明の解決しようとする課題は、「実質的に流れ抵抗を全く増大させることなく、ピンチューブの後方における熱回収を著しく高める」(上記1.(1)アを参照。)ことであり、一方、甲第2発明の解決しようとする課題は、「対流チューブの熱伝達を高め対流チューブのフィンの耐用寿命を長くし、それらの劣化を防止する」(上記1.(2)アを参照。)ことであり、両者の課題は異なることから、甲第1発明に甲第2発明を適用する動機付けは存在しない。 また、そもそも、甲第1発明は、チューブ本体とピンの材料に炭素鋼を用いることも記載されていない。 イ.甲第3発明について 甲第3発明の熱交換管10を構成する「SA178炭素鋼」は、甲第7号証によると、0.06?0.18%の炭素含有量を有するものであるから、甲第3発明の熱交換管10は、0.06?0.18%の炭素含有量を有する。 また、甲第3発明のスタッドを構成する「A36炭素鋼」は、乙第1号証によると、最大で0.25?0.29%の炭素含有量を有するものであるから、甲第3発明のスタッドは、最大で0.25?0.29%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成される。 そうすると、甲第3発明は、熱交換管10についてみると、炭素鋼が少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成されるが、スタッドについてみると、炭素鋼が0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成されない。 してみると、甲第3発明は、熱交換管10とスタッドとが、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することを示唆するものではない。 ウ.甲第4発明について 甲第4発明の熱交換器は、チューブ10は鋼から構成され、表面拡大要素11は低炭素含有量の鋼から構成される。 そして、甲第4号証については、「熱交換チューブの表面拡大要素の材料に低炭素鋼を使用することが記載されているのみで、それ以上に、上記材料の炭素含有率の具体的数値を限定する構成は開示も示唆もされていない」(本件特許に係る無効審判(無効2008-800192)の審決取消判決(平成22年(行ケ)第10063号)の第26ページ第26?第27ページ第2行)と判断されている。 してみると、甲第4発明は、チューブ10と表面拡大要素11とが、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することを示唆するものではない。 エ.甲第5発明について 甲第5発明は、「発電用ボイラや転炉などの鉄皮」の材料に関する発明であるが、発電用ボイラや転炉などの「鉄皮」同士の溶接と、「熱交換チューブとピン」との溶接は、前者が筐体構造を形成する材料同士を溶接対象とするものであるのに対して、後者は筐体内部に取り付けられる熱交換器を構成するチューブと、チューブに比べて更に細いピンとの溶接を対象とするものである。 このように、両者は、溶接対象の材料に必要とされる強度、形状、板厚等は大きく異なるものである。 ここで、甲第1発明の解決しようとする課題は、「実質的に流れ抵抗を全く増大させることなく、ピンチューブの後方における熱回収を著しく高める」(上記1.(1)アを参照。)ことである。 そうすると、甲第5発明が、発電用ボイラおよび転炉などの「鉄皮」において、「溶接割れを生じないためには0.15%以下の炭素含有率とすることが必要であり、一定の強さの力を継続してかけて破断したときの強度であるクリープ強度を大きくするためには0.03%以上の炭素含有率とすることが必要」であることを示しているからといって、発電用ボイラおよび転炉の鉄皮と較べて求められる強度、形状、板厚等の大きく異なる甲第1発明に、クリープ強度を高めた甲第5号証を適用する動機付けは存在しない。 そのうえ、請求人が、平成22年11月8日口頭審理陳述要領書において主張するように、甲第5発明の発電用ボイラや転炉などの「鉄皮」が、仮に、チューブ本体と表面拡大要素とからなる熱交換器と関連する分野のものであったとしても、炭素含有率が0.03%以上で0.15%以下の炭素鋼のうち、チューブ本体に炭素含有率が上限に近い値の炭素鋼を適用し、表面拡大要素に炭素含有率が下限に近い値の炭素鋼を適用する、動機付けが存在しない。しかも、炭素含有率が0.03%以上で0.15%以下の炭素鋼を、チューブ本体には適用しないで、表面拡大要素にのみ適用する動機付けも存在しない。 してみると、甲第5発明には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することを示唆するものではない。 オ.甲第6号証について 甲第6号証には、ボイラ棒管13の棒14が鉄から作られていることが記載されているが、ボイラ棒管13の材料が特定して記載されていないと共に、そのうえ、棒14が炭素鋼から構成されることも記載されていない。 してみると、甲第6号証には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することは、記載も示唆もされていない。 カ.甲第8号証及び甲第8-2号証について 請求人が主張するように、甲第8号証には、図2・6に、炭素鋼の炭素含有量がゼロに近づくに従って熱伝導率が上昇する傾向が示されている 一方、甲第8-2号証には、図2・12に、炭素鋼の12.7mm溶接部の最高硬さについて、炭素含有率がおよそ0.1?0.5%の範囲において、炭素含有量が増加すると12.7mm溶接部の最高硬さが増加する傾向が図示されているが、炭素含有量が0から、およそ0.1%以下の範囲には、試験結果が図示されておらず、一方が0.1%以上の炭素鋼と、他方が0.03?0.15%の炭素鋼とを溶接した場合の溶接部の最高硬さを何等表すものでない。 してみると、甲第8号証及び甲第8-2号証には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することは、記載も示唆もされていない。 キ.小括 以上ア?カにおいて検討したように、甲第1?8号証には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することは、記載も示唆もされていない。 そして、本件特許発明が当該発明特定事項を具備することにより、溶接接合部等に亀裂が生じるリスクが相当程度小さくなり、ピンの熱伝達効率、ひいては熱交換チューブ全体の熱伝達効率が増大するという作用効果を奏するものである(本件特許明細書段落【0009】、【0015】を参照。)。 してみると、仮に、請求人が主張するように、「甲1号証のような熱交換チューブにおけるチューブ本体の炭素含有量とピンの炭素含有量の両方を少なくとも0.1%とすることは、本件発明の優先日当時における技術水準」「であったと認められる」(前記第2.1.(1))としても、甲第1?8号証には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる発明特定事項について、記載も示唆もないのであるから、本件特許発明は、甲第1発明に、甲第2?5発明及び甲第6?8に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、請求人は、本件特許発明にいう「0.03乃至0.05%」の炭素含有率の数値範囲は臨界的意義を有しない等として、本件特許発明には進歩性がない旨を主張するが、その主張内容は上記数値範囲を採用することは当業者の通常の創作能力の範囲にすぎないというに帰し、上記のとおり理由がない。 2.無効理由IIについて (1)本件特許発明と甲第3発明との対比 本件特許発明と甲第3発明とを対比する。 甲第3発明の「熱交換管10」は、本件特許発明の「チューブ本体」に相当し、以下同様に、 「熱交換器」は「熱交換チューブ」に、 「浸透溶接」は「溶着」に、 「スタッド」は「表面拡大要素」及び「ピン」に、 それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「チューブ本体とこのチューブ本体に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブであって、この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数のピンから構成されており、前記チューブ本体と前記ピンとが共に炭素鋼から構成されている熱交換チューブ。」 [相違点] 本件特許発明では、チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は,0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成されているのに対して、甲第3発明では、熱交換管10と円周フィン13とを構成する炭素鋼の炭素含有量が明らかでない点。 (2)当審における判断 上記相違点について検討する。 甲第3発明の熱交換管10を構成する「SA178炭素鋼」は、甲第7号証によると、0.06?0.18%の炭素含有量を有するものであるから、甲第3発明の熱交換管10は、0.06?0.18%の炭素含有量を有する。 そうしてみると、甲第3発明の熱交換管10は、0.06?0.18%の炭素含有量を有するものであるから、甲第3発明は、「少なくとも0.1%」の炭素含有量を有するチューブ本体を具備するものといえるから、上記相違点のうち、チューブ本体を構成する炭素鋼が少なくとも0.1%に炭素含有量を有することは実質的な相違点とはいえない。 そして、甲第3発明のスタッドを構成する「A36炭素鋼」は、乙第1号証によると、最大で0.25?0.29%の炭素含有量を有するものであるから、甲第3発明のスタッドは、最大で0.25?0.29%の炭素含有量を有する。 また、乙第1号証に炭素鋼の炭素含有量が「最大0.25?0.29%」であることが示されているとしても、甲第3号証には、A36炭素鋼の炭素含有量についての具体的な記載も示唆もなく、さらに、ピンの亀裂形成のリスクを減少させ、熱効率を改善させるといった課題を解決するために、A36炭素鋼の炭素含有量を0.03乃至0.05%に調整することは記載も示唆もされていない。 また、上記「2.無効理由Iについて」において検討したように、甲第5発明及び甲第7?8号証に記載された技術事項には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することは記載も示唆もされていない。 そして、本件特許発明が当該発明特定事項を具備することにより、溶接接合部等に亀裂が生じるリスクが相当程度小さくなり、ピンの熱伝達効率、ひいては熱交換チューブ全体の熱伝達効率が増大するという作用効果を奏するものである(本件特許明細書段落【0009】、【0015】を参照。)。 してみると、本件特許発明は、甲第3発明に、甲第5発明及び甲第7?8に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.無効理由IIIについて (1)本件特許発明と甲第9発明との対比 本件特許発明と甲第9発明とを対比する。 甲第9発明における「チユーブ11」は、本件特許発明における「チューブ本体」に相当し、以下同様に、 「フイン12」は、「表面拡大要素」に、 「溶接」は「溶着」に、 「フインチユーブ10」は「熱交換チューブ」に、 それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「チューブ本体とこのチューブ本体上に設けられた表面拡大要素からなる熱交換チューブであって、この表面拡大要素は、チューブ本体の外側に溶着されてチューブ本体から外向きに延在する多数の表面拡大要素から構成されており、前記チューブ本体と前記表面拡大要素とが共に炭素鋼から構成されている熱交換チューブ」 [相違点1] 表面拡大要素が、本件特許発明では、「ピン」であるのに対して、甲第9発明では、「フイン」である点。 [相違点2] チューブ本体を構成する炭素鋼が、本件特許発明では、「少なくとも0.1%の炭素含有量を有する」のに対して、甲第9発明では、炭素含有量について不明である点。 [相違点3] 表面拡大要素を構成する炭素鋼が、本件特許発明では、「0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する」のに対して、甲第9発明では、「0.003%程度」である点。 (2)当審における判断 ア.相違点1について 熱交換器の技術分野において、熱交換チューブに溶着する表面拡大部材として「ピン」を用いることは、本件の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、国際公開第90/02916号公報(甲第1号証)のピンや、特開昭63-187002号公報(甲第3号証)のスタッドを参照。)。 したがって、甲第9発明において、「フイン」に換えて、「ピン」を用いることは、上記周知技術に倣って当業者が容易に想到し得たことである。 イ.相違点2について 熱交換器の技術分野において、チューブ本体を少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成することは、本件の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、米国特許第3731738号明細書(甲第2号証)のチューブ壁27や、特開昭63-187002号公報(甲第3号証)の熱交換管10を参照。)。 したがって、甲第9発明において、チューブ11を少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成することは、当業者が容易になし得たものである。 ウ.相違点3について 本件特許発明は、「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる発明特定事項を具備することによって、溶接接合部等に亀裂が生じるリスクが相当程度小さくなり、ピンの熱伝達効率、ひいては熱交換チューブ全体の熱伝達効率が増大するという作用効果を奏するものである(本件特許明細書段落【0009】、【0015】を参照。)。 これに対し、甲第9発明は、「酸露点腐食の防止のため安価な材料、例えば炭素鋼からなるフインチユーブの表面に耐食性および耐熱性のある塗料をコーテイングすることも行われてきたが、冷却と加熱の繰り返しによつて被膜の剥離が生じ、コーテイングの不完全な部分が酸露点腐食によつて著しく浸食され、熱交換器の品質安定化が計れず、充分な耐用年数が得られない等の欠点があつた。」(甲第9号証の第1ページ右下欄下から1行?第2ページ左上欄第8行)という課題を解決するためになされたものであり、フインチユーブの表面にコーテイングとしてのほうろう被膜を施すにあたり、所謂「つま飛び」現象なる欠陥や焼成中に発泡が生じ、ほうろう被膜の性能を損なうのみでなく、被膜の生成さえも難しくなることを防止し、良好なほうろう被膜を形成するために、フインの材料として、「0.003%程度」の低炭素鋼を用いるものである。 したがって、本件特許発明と甲第9発明とは、解決すべき技術的課題が、前者では溶接接合部等の亀裂防止にあり、後者では酸腐食に対する耐久性の向上等にあって、両者は耐久性の向上というごく抽象的な観点で共通するにすぎず、技術的には相違するものである。また、甲第9発明では表面拡大要素にほうろう被膜を施すことが大きな要点となっているが、本件特許発明では表面拡大要素にほうろう被膜を施すことは予定されていない。そして、甲第9発明においてフインの材料に炭素含有率が小さい炭素鋼が採用された趣旨も、熱交換性能を損なわないことを前提に、ほうろう被膜の欠陥等の発生を防止し、熱交換チューブの耐久性を発揮することができるようにする点にあるものであって、本件特許発明でピンの材料の炭素鋼の炭素含有率がチューブ本体の材料の炭素鋼の炭素含有率よりも小さくされた趣旨である溶接接合部等の亀裂防止の点は、甲第9号証においては開示も示唆もされていない(上記審決取消判決(平成22年(行ケ)第10063号)の第23ページ第8?19行を参照。)。 さらに、上記相違点3のとおり、本件特許発明のピンの炭素含有率は甲第9発明のフインの炭素含有率の10倍程度にもなるのであって、両者の炭素鋼(低炭素鋼)としての性格は本質的に異なるとも評し得るものである。そうすると、本件特許発明と甲第9発明とでは、解決すべき技術的課題も異なるし、表面拡大要素の材料に炭素含有率が小さい炭素鋼を採用した趣旨も両者で異なるから、本件特許発明の優先権主張の日当時、当業者にとって、ピンの材料に炭素含有率0.03ないし0.05%の低炭素鋼を採用することが、当業者において甲第9発明に基づき相違点3に係る構成に容易に想到できたということもできない(上記審決取消判決(平成22年(行ケ)第10063号)の第24ぺージ第2?10行を参照。)。 そのうえ、上記「2.無効理由Iについて」において検討したように、甲第2?3、5発明、甲第7?8に記載された技術事項には、本件特許発明の「チューブ本体(17)は少なくとも0.1%の炭素含有量を有する炭素鋼から構成され、ピン(18)は、0.03乃至0.05%の炭素含有量を有する材料から構成されている」なる、チューブ本体とピンの両材料のそれぞれを特定する事項を具備することは記載も示唆もされていない。 してみると、本件特許発明は、甲第9発明に、甲第2?3発明及び甲第7?8に記載された技術事項、及び、周知の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由(無効理由I?III)および提出された証拠方法(甲第1?9号証)によっては、本件特許発明に係る特許を無効とすることはできない。 また、他に、本件特許発明を無効とすべき理由を発見しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-24 |
結審通知日 | 2012-01-26 |
審決日 | 2012-02-07 |
出願番号 | 特願平6-308941 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(F28F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丸山 英行 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 長崎 洋一 |
登録日 | 2004-06-18 |
登録番号 | 特許第3567000号(P3567000) |
発明の名称 | 熱交換チューブ |
代理人 | 高橋 昌久 |
代理人 | 松本 廣 |
代理人 | 渡邊 裕樹 |
代理人 | 浜田 治雄 |
代理人 | 石橋 克之 |
復代理人 | 西口 克 |