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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1258603
審判番号 不服2011-15050  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-12 
確定日 2012-06-11 
事件の表示 特願2005-178184号「半導体装置及び半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-351950号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年6月17日の出願であって、平成23年4月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年7月12日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成23年7月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップが半田層を介してダイボンディングされた基板と
を備えた半導体装置であって、
前記半導体チップの下面から上面に渡った側面の辺に、長方形の平面からなる側辺面取り部を有するとともに、前記半田層が前記半導体チップの下面の角、前記側面および前記側辺面取り部と接していることを特徴とする半導体装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「半田層」について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開平7-312474号公報(以下「引用例」という。)には、「電子部品の搭載構造」と題して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、線膨張係数の異なる基材と電子部品とを接合材を介して接合してなる電子部品の搭載構造に関するものである。」
・「【0013】
【実施例】
〔実施例1〕以下、本発明を具体化した一実施例におけるシリコンチップの搭載構造を図1?図3に基づき詳細に説明する。
【0014】本実施例では、基材として銅板1が選択され、電子部品としてシリコンチップ(9mm角,0.5mm厚)2が選択されている。また、両者を接合するための接合材として、Pb:Sn=37:63という合金組成を有する共晶はんだ3が選択されている。なお、銅の線膨張係数は約17×10^(-6)/℃、シリコンの線膨張係数は約3×10^(-6)/℃、共晶はんだの線膨張係数は約25×10^(-6)/℃である。従って、搭載物であるシリコンチップ2と、被搭載物である銅板1との線膨張係数の差は、およそ14×10^(-6)/℃となっている。
【0015】シリコンチップ2の内部及び上面側(即ち非接合面S1側)には、従来公知の半導体製造プロセスによって、あらかじめ所定の回路パターン(図示略)が形成されている。一方、シリコンチップ2の裏面側(即ち接合面S2)は、その外周部全域にわたって直線的に切り欠かれている。その結果、接合面S2にあった直角のエッジ部の代わりに、図2に示されるような切り欠き部4が形成されている。同図において、P1はあらたに形成されたエッジ部P1を示し、P2は切り欠き部4と底面との中間にあたる屈曲部P2を示している。
【0016】切り欠き部4の大きさ(ここでは図1に示すLの長さ)は大きいほどよく、エッジ部P1及び屈曲部P2のそれぞれの角度θ1,θ2は180°に近いほどよい。その理由は、以下に示す通りである。切り欠き部4の大きさLについては、屈曲部P2がチップ中心部に近いほど屈曲部P2にかる応力集中が緩和され、切り欠いていない接合面S2の膨張等による変化量が少なくなるためである。また、エッジ部P1及び屈曲部P2の角度θ1,θ2については、大きいほど当該部分への応力集中が緩和されるためである。従って、互いの条件の兼ね合いで最適値が決定されることになる。例えばエッジ部P1の角度θ1と屈曲部P2の角度θ2とをほぼ等しくすると、両部分における応力が適切に分散されることになる。」
・「【0034】(4) 基材として銅板1以外にも、例えば銅合金からなる板、鉄合金からなる板、鉄板、アルミニウム板、アルマイト板等の金属板を使用してもよい。また、表面に接続用パッド等が形成された、アルミナ、窒化アルミニウム等のセラミックス基板や、ガラスエポキシ等の樹脂基板であっても勿論よい。」

ここにおいて、段落【0034】の記載によれば、「銅板1」は、セラミック基板であっても樹脂基板であってもよいのであるから、これを「基板」と言い換えることができるので、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されているものと認められる。
「シリコンチップ2と、前記シリコンチップ2が共晶はんだ3を介して接合された基板とを備えた電子部品の搭載構造であって、前記シリコンチップ2の裏面側の外周部全域にわたって直線的に切り欠かれた切り欠き部4を有する電子部品の搭載構造。」

なお、原査定の拒絶の理由に引用文献2,3として挙げられた、特開平6-177178号公報、実願昭59-50358号(実開昭60-163740号)のマイクロフィルムにも同様の発明について記載がある。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「シリコンチップ2」が、本願補正発明の「半導体チップ」に相当する。同様に「共晶はんだ3」が「半田層」に、「接合」が「ダイボンディング」に、「電子部品の搭載構造」が「半導体装置」にそれぞれ相当する。また、本願補正発明の「半導体チップの下面から上面に渡った側面の辺に、長方形の平面からなる側辺面取り部」と、引用発明の「シリコンチップの裏面側の外周部全域にわたって直線的に切り欠かれた切り欠き部4」とは、ともに「半導体チップの一部に平面からなる面取り部」との点において概念上共通する。

すると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「半導体チップと、前記半導体チップが半田層を介してダイボンディングされた基板とを備えた半導体装置であって、前記半導体チップの一部に平面からなる面取り部を有する半導体装置。」

(相違点)
(ア)本願補正発明の「半導体チップ」が「下面から上面に渡った側面の辺に、長方形の平面からなる側辺面取り部を有する」のに対して、引用発明の「シリコンチップ」は「裏面側の外周部全域にわたって直線的に切り欠かれた切り欠き部4を有する」点。
(イ)本願補正発明の「半田層」が「半導体チップの下面の角、前記側面および前記側辺面取り部と接している」のに対して、引用発明は、そのような構成となっていない点。

(4)相違点についての判断
・相違点(ア)について
半導体チップとして、「下面から上面に渡った側面の辺に、長方形の平面からなる側辺面取り部を有する」構成は、例えば、原審査定時に挙げられた文献である特開2004-79667号公報をはじめ、特開平5-102300号公報(【図4】など参照)、特開平11-251493号公報(【図24】など参照)、特開2000-306958号公報(【図4】など参照)、特開2004-119985号公報(【図24】など参照)などにも記載があり周知である。いずれも半導体チップに生ずる応力集中を緩和する。
ここで、「側辺面取り部」に関し、これを「下面から上面に渡った側面の辺に」設けるとの限定は、出願当初の特許請求の範囲に記載がなかったのであるから、原審における査定時に、これを周知であるとした点は正当といえる。
すると、引用発明において、シリコンチップの形状につきチップに生じる応力集中を緩和するための構成として、裏面側の外周部全域にわたって直線的に切り欠かれた切り欠き部4に替えて、又はそれに加えて、下面から上面に渡った側面の辺に、長方形の平面からなる側辺面取り部を施し、本願補正発明の上記相違点(ア)に係る構成とすることは当業者にとって容易の範囲である。

・相違点(イ)について
チップと基板とを半田にて接合するに、半田をチップの側面に達するようにするものも、達しないようにするものも、ともに周知の技術である。前者については、当審前置審尋において挙げた、特開平2-257644号公報、特開平10-233416号公報などに記載があり、後者については、原査定の拒絶理由に挙げられた、引用文献1ないし3(引用文献1について【図9】など)や特開平8-11476号公報などに記載がある。
すると、引用発明において、半田層をチップ側面に達するように接合して、本願補正発明の上記相違点(イ)に係る構成とすることは当業者にとって想到容易ということができる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年7月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年10月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、そこには次のとおり記載されている。
「【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップが半田層を介してダイボンディングされた基板と
を備えた半導体装置であって、
前記半導体チップの下面から上面に渡った側面の辺に、長方形の平面からなる側辺面取り部を有することを特徴とする半導体装置。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から前記の限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)において検討したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-30 
結審通知日 2012-04-05 
審決日 2012-04-20 
出願番号 特願2005-178184(P2005-178184)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 崇  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 半導体装置及び半導体装置の製造方法  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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