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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1258607 |
審判番号 | 不服2009-3426 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-16 |
確定日 | 2012-06-13 |
事件の表示 | 特願2000-538445「受信信号の信号強度の推定値を提供する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月30日国際公開、WO99/49588、平成14年 3月19日国内公表、特表2002-508617〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成11年3月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年3月25日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年2月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月13日付けで拒絶査定され、これに対して平成21年2月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月18日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成21年3月18日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。 「受信信号強度の推定値を提供する方法において、 所要信号を含む信号を受信することと、 所要信号のエネルギを測定して、測定エネルギを提供することと、 測定エネルギの1以上の観測に基づいて所要信号の信号強度を推定することとを含み、 推定された信号強度は受信信号強度を示し、 測定することは、 シンボルシーケンスの複数のシンボルに対して所要信号の積分をして、エネルギ測定値を提供することと、 複数のエネルギ測定値を合計して、測定エネルギを計算することとを含む方法。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-284205号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はディジタル無線通信、特にCDMA(符号分割多元接続)方式を適用する移動通信に関するものであり、特に受信SIR(希望信号対干渉信号電力比)を測定に関するものである。」 (イ)「【0015】 【発明の実施の形態】図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。 【0016】図1に、本発明の実施形態で使用している内挿補間同期検波に用いている信号の構成例を示す。図に示すように、送信信号に送信側、受信側で互いに既知の位相のパイロット信号を周期的に挿入して送信している。パイロット信号として、1?複数の既知のシンボルを用いる。パイロット間の情報シンボル期間をフレームという。 【0017】図2は、本発明の実施形態の受信SIR測定装置の構成例である。図において、22は内挿補間同期検波部、24は判定信号電力計算部、26は積算部である。また、21は同期部、25は疑似干渉電力検出部、27は積算部である。28はSIR測定部である。 【0018】この回路構成において、受信したベースバンドの受信信号20は、同期部21に入力し、シンボルのクロック・タイミングとパイロット信号の繰り返し周期であるフレーム・タイミングを再生する。この同期部21で再生したタイミングにより、他の回路の動作タイミングが定まる。受信信号20は、内挿補間同期検波部22において、同期部21からのクロック・タイミングでサンプリングされ、内挿補間同期検波部22内の図示しないメモリに蓄えられる。また、受信信号のパイロット信号は、フレーム・タイミングにより受信信号から抽出され、伝搬路の伝達関数の推定に用いられる。この操作をフレーム・タイミングで繰り返すことにより、その時刻での伝達関数を推定することができる。情報シンボル期間の両端にあるパイロットにより得られた伝達関数を一次内挿補間し、各情報シンボルに対応する伝達関数を求め、情報シンボルの補償を行う。補償された情報シンボルを判定することにより絶対位相同期検波された情報シンボル23が得られる。 【0019】次に、判定信号電力計算部24において、複素信号空間上で、判定された情報シンボル23の原点からの距離の二乗、すなわち希望波電力値を求める。一方、疑似干渉電力計算部25において、複素信号空間上で、判定された情報シンボル23と受信信号20の距離の二乗を求める。これは、データシンボルと同一のサンプリング・タイムにおけるフェージング・エンベロープとの電力値の差を求めていることになる。この求めた値を疑似干渉電力として用いる。 【0020】希望波受信電力および疑似干渉波電力をそれぞれ1フレーム分内で、積算部26および27を用いて積算することにより平均する。SIR測定部28において、平均した希望波受信電力積算値を平均した疑似干渉電力積算値で除することにより受信SIR29が求められる。」 (ウ)上記(ア)には、「受信SIR(希望信号対干渉信号電力比)を測定に関するもの」と記載されているので、引用例の「(受信)信号」には、希望信号以外に干渉信号が含まれたものであるといえる。 (エ)上記(イ)には、実際に受信信号を測定して希望信号の電力値を求めることが記載されているので、引用例には、受信SIRを測定するために、希望信号の電力値を測定するものであるといえる。 よって、上記(ア)乃至(エ)及び関連図面から、引用例には、 「受信SIRを測定する方法において、 希望信号を含む信号を受信することと、 希望信号の電力を測定することと、 測定した希望信号の電力に基づいて受信SIRを求めることとを含み、 前記希望信号の電力の測定は、 複素信号空間上で、判定された情報シンボルの原点からの距離の二乗から求めることとを含む方法。」 の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 4.対比 (1)本願発明と引用発明との対応関係について (あ)本願明細書の段落【0010】には、 「本発明は通信システムまたはデータ送信システムにおいて受信信号の信号強度の正確な推定値を提供する方法および装置である。信号強度は、信号対雑音比(SNR)として、あるいは信号対信号プラス雑音比(S/Nt)として測定することができる。」 と記載され、段落【0011】には、 「宛先デバイスにおける受信信号は所要信号と雑音を含む。受信信号を処理して受信された雑音のある信号から所要信号を分離することができる。所要信号のエネルギが測定あるいは計算される。」 と記載されていることから、引用発明の「希望信号」、「電力」は、本願発明の「所要信号」、「エネルギ」に相当する。 また、本願発明の「受信信号強度」は、所要信号自体の強度ではなく、所要信号と雑音などの信号との比であるから、引用発明の「受信SIR」は、本願発明の「受信信号強度」に相当している。 (い)引用例の段落【0001】には、移動通信の受信SIRの測定に関するものであることが記載されているので、引用発明の希望信号の電力値は、移動局の位置や通信経路の状況に応じて刻々と変化することを鑑みれば、引用発明の測定結果とされる受信SIRの値は「推定値」であるということができる。 (う)本願明細書の段落【0041】には、1つのI信号とQ信号をそれぞれ二乗して加算したものを観測結果yとすることが【数1】に示され、段落【0042】には、1つまたは数個の観測結果y_(j)を使用して所要信号の強度を推定することが記載されている。そして、引用発明では、希望信号における、「複素信号空間上で、判定された情報シンボルの原点からの距離の二乗」から希望信号の電力を測定しているので、引用発明においても、「測定エネルギの1以上の観測に基づいて所要信号の信号強度を推定」しているといえる。 (2)本願発明と引用発明の一致点と相違点について 上記の対応関係から、本願発明と引用発明には、下記の一致点と相違点がある。 (一致点) 「受信信号強度の推定値を提供する方法において、 所要信号を含む信号を受信することと、 所要信号のエネルギを測定して、測定エネルギを提供することと、 測定エネルギの1以上の観測に基づいて所要信号の信号強度を推定することとを含み、 推定された信号強度は受信信号強度を示す、方法。」 (相違点) 本願発明では、エネルギを測定するために、 「シンボルシーケンスの複数のシンボルに対して所要信号の積分をして、エネルギ測定値を提供することと、 複数のエネルギ測定値を合計して、測定エネルギを計算する」 ことを行っているのに対して、引用発明はそのような処理を行うものに限られたものではない点。 5.当審の判断 本願発明の「エネルギを測定する」処理については、本願明細書の段落【0039】乃至【0042】に、I及びQ信号に対してコヒーレント積分器により積分を行い、また、積分された出力は合計器により合計することが記載されている。 また、引用発明では「希望信号の電力の測定」するために、「複素信号空間上で、判定された情報シンボルの原点からの距離の二乗から求めること」が行われ、情報シンボルはI及びQ信号で表せられるものであることを鑑みれば、引用発明もI及びQ信号を用いて希望信号の電力の測定が行われているといえる。 そこで、I信号及びQ信号を用いて、信号強度を測定することについて検討すると、受信信号の信号強度を測定するために、同相成分のI信号と垂直成分のQ信号について、それぞれ積分器またはローパスフィルタにより積分を行ってから合計することは、特開平7-140224号公報(図1には、巡回積分器4aから出力されたIチャネル成分と巡回積分器4bから出力されたQチャネル成分をそれぞれ加算器6で加算する構成が記載されている)、特開平9-238171号公報(図1には、LPF26から出力された信号IとLPF28から出力された信号Qをそれぞれ振幅検出部30で二乗して加算する構成が記載されている)、特開平10-51380号公報(図4には、積分放電405から出力された信号と積分放電406から出力された信号をそれぞれ電力測定器410で加算する構成が記載されている)に記載されているように周知技術にすぎない。 してみると、引用発明に上記周知技術を適用して、情報シンボルの同相成分の信号を積分したものと垂直成分の信号を積分したものを合計することで、相違点の、 「シンボルシーケンスの複数のシンボルに対して所要信号の積分をして、エネルギ測定値を提供することと、 複数のエネルギ測定値を合計して、測定エネルギを計算する」 とすることは、当業者が容易に推考し得たものである。 また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-11 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-02-02 |
出願番号 | 特願2000-538445(P2000-538445) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 江口 能弘、藤井 浩 |
特許庁審判長 |
岩崎 伸二 |
特許庁審判官 |
間野 裕一 飯田 清司 |
発明の名称 | 受信信号の信号強度の推定値を提供する方法およびシステム |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 市原 卓三 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 勝村 紘 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 河井 将次 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 山下 元 |
代理人 | 福原 淑弘 |